マッケンジー体操は腰痛に対する治療法のひとつです。その名の通り、体操を行う事で腰痛を軽減したり、完全に痛みを消失できる可能性がある体操になります。
マッケンジー体操の行い方は実に簡単です。椎間板ヘルニアやぎっくり腰にも対応可能で、場合によっては手術を行わなくてもよい場合もあります。
今回は腰痛の仕組みと、自分でできる診断方法、マッケンジー体操の行い方を紹介していきます。

マッケンジー体操!腰痛の知識、原因の解明から実践方法まで

腰痛について

どんな痛みがありますか

腰痛の痛みの訴えとしてよく聞かれることは「体を動かす時に痛い」「じっとしていても痛い」「痛みが足の方にまである」「急に痛くなった」など様々な訴えがあります。患者さんによっては、腰の痛みの質を聞いても、どのように、どこが、どのくらいなどの詳しい状態をよく説明できないこともあります。

手術適応となる腰痛は全体のなかでもごくわずかです

手術が必要になる腰痛はごくわずかであり、その他の腰痛は保存療法といい手術を行わない腰痛になります。しかし、保存療法となる腰痛には決定的な治療法に欠けていることが多いです。腰痛の根本原因が解明されていないため、適切な腰痛治療が選択できないということが理由に挙がります。

牽引が効く腰痛、効かない腰痛

牽引とは腰の骨(腰椎)を器具を用いて引き延ばす治療法です。「持続牽引」と「間欠牽引」の2種類があります。慢性的な腰痛に対して行われているのは間欠牽引ですがこの治療法が効くのは椎間関節性の腰痛と筋筋膜性の腰痛であると考えられており、椎間板ヘルニアなどの椎間板性腰痛には効果がありません。間欠牽引を行っても、飛び出したヘルニアが引っ込むというようなことはありません。

MRI画像が全てではありません

MRI(磁気共鳴断層撮影)画像は全身の様々な断面を画像化できる装置で、骨や椎間板、筋肉、神経などの組織を画像化します。MRIは椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などの診断には必須のものとなっています。しかしこの画像診断でわかることと、実際の症状は一致しないことも多く、画像で見えることとは別の原因により腰痛が起きていることもしばしばあります。

背骨のS字カーブと腰痛の関係

背骨は椎骨と呼ばれる骨が連なってできており、これらの部分全体を脊椎といい、それぞれ頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙骨(1個)、尾骨(1個)からできています。
背骨を横から見るとS字カーブを描いています。頚椎は前へ、胸椎は後ろへ、腰椎は前へカーブすることでS字となっています。このS字カーブを描いていることにより、背骨はしなやかさと強靭さを持ち合わせることができます。そのことで重さにも耐えることができ、体のバランスを取ることも可能になり、その中を通る脊髄と脊髄神経を保護するのにも適しています。

人は直立歩行をしているため、背骨は重力がかかる縦方向の重みがかかります。この体の重みが一番かかるのが腰椎の部分になります。腰椎への負担を和らげるために腰椎は前側にカーブしているのですが、これが失われていると腰椎への負担が過度にかかることになります。それが腰痛を引き起こすことになります。この腰椎の前へのカーブは腰椎の前弯と言います。

腰椎前弯が失われる原因

腰椎前弯が失われる最も多い原因は日常生活の習慣の中に隠れています。オフィスワークで長時間座らなければならない、荷物の上げ下ろしで体を前かがみにした姿勢を続けるなどといったことにより腰椎前弯は失われていきます。また腰椎の前弯が失われていたとしても、元の湾曲を取り戻そうとすることはまずしないと思います。これでは腰痛が良くなることはありません。

椎間板の役割と腰への負担

人は直立歩行のため腰への負担がかかりやすく、その負担を軽くするために腰椎の前弯をつくり対応していることはお話しました。もうひとつその負担を軽減するものとして「椎間板」があります。椎間板は椎骨と椎骨の間にあり、衝撃を吸収するクッションのような役割をしています。
私たちは立っているだけ、寝ているだけでも背骨にはある程度の負荷がかかっています。この時最も大きな負荷がかかっているのが椎間板で、特に腰椎の椎間板に負荷がかかります。実際にはこの負荷の7割が椎間板で吸収され、残り3割が椎間関節で吸収されます。つまり、腰椎で最も負荷がかかるのが椎間板で、次に負荷が大きいのが椎間関節になります。

どの姿勢で椎間板に大きな負荷がかかるのか

立っている時に椎間板にかかる負荷を100とすると、仰向けの姿勢では25、前かがみになって立つ時は150、まえかがみで荷物を持ち上げると230になります。姿勢良く座っている場合には、立っている時よりも負荷は大きく140です。姿勢をわるくして座った場合には、負荷は185にもなります。
このことから、日常生活上の多い動きの中で最も負荷をかけているのは悪い姿勢で座っている時であることがわかります。悪い姿勢は腰椎の前弯を失わせることにつながり、腰椎椎間板に大きな負荷をかけてしまうのです。

椎間板の構造

椎間板は円柱状で、中心には髄核と呼ばれるゼリー状の物質があり、そのまわりには線維輪という繊維の束が取り巻いています。上下には軟骨板というフタで閉じられています。椎間板は水分が豊富なため柔らかさがあります。

椎間板性腰痛

椎間板性腰痛には椎間板の変化、変形の度合いにより4つのタイプに分けることができます。

①椎間板膨隆
腰椎前弯が失われると、腰椎の前部に圧がかかり、髄核が後方に移動し、椎間板が後方に膨らむ

②椎間板突出
①よりも髄核がさらに後方に移動し、椎間板が後方に飛び出す

③椎間板脱出
繊維輪が破れて髄核の一部が外に飛び出してくる

④椎間板塊遊離
繊維輪を突き破り、椎間板の組織が外に出て離れた状態となる。

一般に椎間板性腰痛は①を言い、②〜④は座骨神経痛を伴い椎間板ヘルニアと呼ばれています。

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアでは繊維輪が裂けたことによる痛みだけでなく、飛び出した組織が背骨の後方にある脊髄神経の根元(神経根)を圧迫します。神経根は坐骨神経となるので神経の通り道に沿って痛みやしびれが出現します。坐骨神経は太もも裏から膝下へと通っており、神経圧迫が強くなると痛み、しびれから麻痺に進行していきます。

椎間関節性腰痛

椎骨は前方にある椎体と後方にある椎弓からなっています。上下の椎体をつないでいるのが椎間板で、上下の椎弓をつないでいるのが椎間関節になります。
椎間関節の軟骨がすり減ったり、椎間関節にずれができて起こる腰痛が椎間関節性の腰痛になります。

 

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自分でできる腰痛チェック法

危険な腰痛チェック1

①安静にしている時に痛いか
通常ぎっくり腰のように急激な痛みでも、安静にしていると痛みは少ないことが多いです。安静にしていても痛みが強い場合、痛みがどんどんと大きくなってくる場合注意が必要となり、整形外科への受診が必要となってきます。

②寝返りが打てるか
腰椎の圧迫骨折がある場合、痛みにより寝返りがうてなくなります。背骨のヒビはレントゲンでは発見できないため、MRI撮影が可能な医療機関の受診が必要になります。

③腰痛以外の症状の有無
腰痛に加えて、熱発、腹痛、倦怠感、血尿など、内科的問題がある場合には、内科等での診察が必要になります。

危険な腰痛チェック2

①足裏の感覚がない
②足のしびれがだんだん強くなる
③足の脱力感
④足がうまく運べず歩きにくい
⑤尿の出方がおかしい
⑥排尿に時間がかかる
⑦排便が難しい
⑧歩いてしばらくすると足のしびれ、痛みが強くなり歩けなくなり、少し休むとまた歩けるがしばらくするとまた歩けなくなる(間欠性跛行)

チェック2の①〜⑧に出てくる症状は、すぐにでも整形外科での診察を受ける必要がある神経症状になります。

腰痛の原因を知るテスト

ここで紹介するテストは椎間板性腰痛(腰椎ヘルニア含む)と、椎間関節性腰痛の判別法になります。

①足を肩幅に開いて立ちます。
②体を前に1回倒します。
③体を後ろに1回反らします。

ポイントは限界まで体を前に倒す、反らすことです。2秒程度限界でキープし、元に戻します。
このときの、「腰の痛み」「体の前への倒しにくさ」「体の後ろへの反らしにくさ」を確認していきます。

腰痛テストの判定

判定①体を後ろに反らす時にのみ腰の痛みや反らしにくさがある。
この場合、椎間板性腰痛(椎間板ヘルニア含む)が疑われます。
最終判定では次に体反らし体操をしてみて腰痛が楽になる、消える、運動制限が改善されるようであればほぼ椎間板性腰痛と思われます。

判定②体を前に倒す時にのみ腰の痛みや倒しにくさがある。
この場合、椎間関節性腰痛が疑われます。
最終判定では次に前かがみ体操をしてみて腰痛が楽になる、消える、運動制限が改善されるようであればほぼ椎間関節性腰痛と思われます。

判定③体を前に倒す、後ろに反らすことの両方に腰の痛みや運動制限がある。
この場合、椎間板性腰痛と椎間関節性腰痛の両方が疑われます。
最終判定ではそのためまず体反らし体操を行い、次に前かがみ体操を行います。両方を行い、体反らし体操で症状が改善されるとほぼ椎間板性腰痛、前かがみ体操で症状が改善されるとほぼ椎間関節性腰痛と思われます。

それ以外の腰痛について

判定テスト①〜③に当てはまらない方もいるかと思います。それは体を前に倒す、後ろに反らせても両方に腰の痛みや運動制限がないパターンです。
また最終判定にて体操を行ってみても改善が見られないパターンもあります。
これらのパターンの場合には椎間板性腰痛や椎間関節性腰痛以外の腰痛が疑われることになります。

 

マッケンジー体操

体反らし体操

この体操が適用できる方は体を後ろにそらした時に腰の痛みや運動制限が見られる場合です。
この体操はうつぶせになり腰を反らせていきますが、慢性腰痛を抱えている方にとっては大変しんどい姿勢になります。またぎっくり腰で急激に痛みがつよくなった場合には腰を反らせるなんて考えられないと思う方もいるかもしれません。
しかし、ぎっくり腰を含む椎間板性腰痛を自分で治すにはこの体反らし体操が非常に有効なのです。はじめは恐怖心もあると思いますが、できる範囲から体反らし体操を行うようにしてください。

 

体反らし体操の方法

①うつぶせに寝る
両手を体の横にリラックスして置き、顔は左右どちらかに向けます。
この姿勢のまま何度か深呼吸をして、5分程度リラックスした状態でいます。

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はじめ痛みが強くても、時間経過とともに痛みが和らいでいくのを感じることができると思います。痛みが落ち着いてきて、心地よくなってきたら体から力を抜いて、もっとリラックスさせます。ポイントは息を吐き切ることです。
腰が痛くてうつぶせがどうしてもできない場合には、枕、クッション、布団などをお腹の下に入れて行ってみて下さい。痛みが落ち着いてきたら、高さを低くしていきうつぶせ姿勢に近づけていきます。

②肘立てうつぶせ姿勢
①の体勢から肘を曲げていき、床に当て肩の下で立てます。この姿勢で息を吐き切る事を意識しながら深呼吸し、5分程度リラックスした状態でいます。

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この体操をする前は、必ず①の体操から始めて下さい。最初から大きく体を反らせずに、徐々に反らしていきます。腰に強い痛みがあると、体を反らした際に下腹部が地面から浮いてしまう事があります。その場合痛みが徐々に和らいでくると自然と下腹部が地面についてくる事が多いです。
腰の関節が固くなりすぎていると、どうやっても下腹部が地面につかないこともあります。その時には胸のところにクッションなどを当て、ゆっくり体重をかけながら柔らかさを取り戻していきます。

③うつぶせで体を大きく反らせる
①の体勢から顔を前に向けます。両手を腕立て伏せのようにし肩の下に置きます。肘を徐々に伸ばしていき上半身を起こしていきます。できるだけ体を反らせるように息を吐きながら腕を伸ばしていきます。この過程を10秒程度かけて5回行います。

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筋力や持久力が低下していて腕立て姿勢が取れない方は無理をしないで下さい。
腰が痛いと下腹が地面につかないこともありますが時間経過とともに痛みが和らいでくると、リラックスできるので下腹は地面についてきます。
徐々に腰を大きく反らすようにしながら、慣れてきたら10回程度行えるようになると良いでしょう。

体反らし体操と腰痛解消の仕組み

椎間板性腰痛(椎間板ヘルニア含む)は、腰椎の前弯が失われることで椎間板に過度の負担がかかり、椎間板内の髄核という組織が後方に移動したり、飛び出したりすることで起こります。
腰を後ろに反らす動作を行うことによって、腰椎の前弯を取り戻すことで椎間板への負担が減り、腰痛解消につながっていくことになります。
この体操のポイントは、中途半端に反らすよりも、自分が行える最大限の範囲で腰を反らせることにあります(無理はしない範囲で)。

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前かがみ体操

この体操が適用できる方は体を前に倒した時に腰の痛みや運動制限が見られる場合です。前かがみ体操は椅子を使用します。椅子はどのようなものでも構いませんが、自分の足が地面につき、しっかり安定した座りやすい椅子が良いでしょう。

前かがみ体操の方法

椅子に座り、肩幅よりやや広めに足を開きます。
体を前に倒し、息を吐きながら両手でそれぞれの足首を持ち、できるだけ腰を曲げていきます。これを5回繰り返します。

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無理をせず徐々に腰を曲げる範囲を広げていってください。行っているうちに腰の痛みが楽になったり、腰がリラックスできてくるのを感じれると思います。

効果が期待できる時間、回数

腰痛がある方は、だんだんと腰の重さを感じていくことが多いと思います。そんな時にもマッケンジー体操は効果を発揮します。そのため、普段座って仕事をすることが多い方は1〜2時間おきに1度体操を行うと良いでしょう。しかし、職場等でうつぶせにはなかなかなれないと思うので、立ってできる体反らし体操を紹介します。

①足は肩幅に開いて、背筋を伸ばして立ちます。両手を腰に当て、親指をお腹側に残し、残りの指で腰をつかみ支えます。
②両手で腰を支えながら、膝を曲げずにまっすぐに背中を伸ばしながら体を後ろに反らせます。

後ろに倒れないよう注意してください。

いつまで行うのか

マッケンジー体操を行うことで痛みが完全になくなってしまうこともあるかもしれません。あるいは痛みが軽くなる、痛む範囲が狭くなるといったこともあるかもしれません。痛む範囲が狭くなってくる場合、痛みが腰の中央に集まってくることが多いのですが、これを「痛みの中央化」と呼び、この状態になると2〜3日で痛みが急に楽になり、3日ほどでほぼなくなってきます。
しかし、痛みが取れても予防目的でマッケンジー体操を行うことをお勧めします。
腰椎前弯の消失は普段の椅子に座っている姿勢などの日常生活習慣が原因となっているからです。

マッケンジー体操を中止する場合

マッケンジー体操を2週間続けても効果がない場合、マッケンジー体操は適応ではないと考えてください。
体反らし体操で効果がなかった場合試しに前かがみ体操を、前かがみ体操で効果がなかった場合試しに体反らし体操を行ってみてください。それでも効果がみられない場合は整形外科への受診をお願いします。
マッケンジー体操を行って神経症状(足のしびれ、足の痛み)が出た場合、危険な腰痛である可能性が高いため、すぐにでも整形外科への受診をしてください。

体反らし体操で片方に痛みが残った時の対処方法

体反らし体操を行い痛みは改善傾向にあるが腰の片側に痛みが残っている場合には、腰をずらして行う体反らし体操を行ってみてください。

①まずうつぶせに寝て数分間リラックスします。
②うつぶせで腰を痛む側と反対に10センチ程度移動させます。この状態で5分程度リラックスします。
③腰をずらした状態をキープしながら、肘を立て5分程度維持します。
④腰をずらした状態をキープしながら、肘を伸ばして上半身をできる限り大きく反らしていきます。

基本は体反らし体操の方法に腰を痛い方と反対側に移動しているだけです。例えば右の腰に痛みが残っていれば左方向に10センチ程度腰をずらし行います。

きっくり腰の場合

ぎっくり腰になると急激に腰に痛みが出ます。ぎっっくり腰の場合、通常2〜3日安静にしていると痛みは引いて楽になってきます。1〜2週間経っても激しい痛みが残っているのであれば整形外科での診察が必要になります。
痛みが和らいできたら、一度うつぶせになってみましょう。
ぎっくり腰の方は腰が曲がったようになっているため、うつぶせになることで曲がった腰が伸びていくのを感じることができると思います。そうなると痛みも取れていきます。
うつぶせで落ち着いてきたら、体反らし体操のうつぶせで肘を立てる、うつぶせで体を大きく反らせる体操を行うことで、さらに腰を伸ばしていきます。

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