大腿骨頸部骨折のリハビリテーションにおけるポイントでは、大腿骨頸部に関する筋、神経、血管と手術療法について理解しておくことが大切です。今回、大腿骨頸部骨折の知識として、筋、神経、血管と手術療法で把握すべきポイントについてまとめていきたいと思います。

大腿骨頸部骨折のリハビリの知識!筋、神経、血管と手術療法で把握すべきポイント!

大腿骨頸部と股関節に作用する筋肉

股関節の運動に作用する筋肉には、以下のようなものがあります。

股関節屈曲:腸腰筋、縫工筋、大腿直筋、恥骨筋

股関節伸展:大臀筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋

股関節外転:中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋

股関節内転:大内転筋、短内転筋、長内転筋、腸腰筋

股関節外旋:短外旋筋(梨状筋、内閉鎖筋、上・下双子筋、大腿方形筋)

股関節内旋:大腿筋膜張筋、小臀筋、中臀筋、大内転筋、大腿屈筋群

 

股関節の運動にはこれだけ多くの筋肉が関与しており、痛みの原因や関節可動域制限の原因になる筋肉も数多くあるということになります。

股関節と神経

股関節を支配する神経は主に以下のものがあります。

・大腿神経
・閉鎖神経
・上・下殿神経
・座骨神経

大腿骨頸部骨折の手術療法において、

前方侵入では大腿外側皮神経の損傷

後方侵入では座骨神経の損傷

の可能性があります。

また、外傷による股関節脱臼においては座骨神経の損傷の可能性があります。

股関節と血管

大腿骨に栄養する血管には以下のものがあります。

・上支帯動脈:骨頭の外上方2/3を栄養
・下支帯動脈:骨頭の1/3を栄養
・大腿骨頭靭帯動脈:靭帯内を通り、骨頭の小さな領域を栄養

大腿骨頸部骨折は治りにくい

大腿骨頸部骨折は、関節包内の骨折になります。

大腿骨頸部の関節包には骨膜がありません。

また、滑液がないために血腫も形成されにくくなっています。

骨折の修復には、滑膜の骨形成細胞、血腫内の白血球・単球・貧食細胞、血小板の生物活性を有する成長因子の作用により仮骨が形成されます。

滑膜がなく、血腫が形成されにくいということは、修復が起こりにくいということになります。

つまりは、大腿骨頸部骨折は治りにくい疾患であるということです。

大腿骨頸部骨折と手術療法の要点

大腿骨頸部骨折では、骨頭壊死との関係性から、骨接合術もしくは人工骨頭置換術が選択されます。

骨接合術では、人工骨頭置換術による合併症を回避することができます。

人工骨頭置換術による合併症には、脱臼、感染、緩み、摩耗、寛骨への影響などがあります。

骨接合術では、偽関節や骨壊死が起こった骨が運動などにより陥没や変形を起こすリスクがあります。

なお、偽関節とは、

骨折部の骨癒合プロセスが完全に停止したものをいう。骨折の重篤な後遺症のひとつである[1]。骨折部の不安定、血行不良、骨癒合の始めに形成される血腫の流出、糖尿病などの疾患などにより発生する。 偽関節では骨折端の間が結合組織で埋められ、また異常可動性[2]が認められる。

偽関節に対して、骨癒合プロセスが遅れてはいるが停止していない状態を遷延治癒(せんえんちゆ、delayed union )と呼ぶ。

一般的に、受傷後6ヶ月経過しても異常可動性が明らかな場合は偽関節と見なされ、外科手術の対象となることが多い。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%BD%E9%96%A2%E7%AF%80

とあります。

 

人工骨頭置換術は、血行障害による大腿骨頭壊死のリスクが高い場合に行われます。

大腿骨頸部骨折の手術療法とリハビリテーション実施上の注意点

大腿骨頸部骨折の手術療法実施後におけるリハビリテーションでの注意点として、

・皮膚の損傷

・筋の損傷

・神経への影響

・禁忌肢位

を考慮する必要があります。

皮膚の損傷では、手術の際に皮膚牽引をし、裂傷や挫滅傷が生じていることがあります。

リハビリを行う際に、瘢痕形成を阻害しないように注意します。

 

筋の損傷では、中臀筋や大腿筋膜張筋の筋膜が切開されることを知っておくことです。

これは、前方・後方アプローチのどちらにおいても切開されます。

これらの筋肉は、歩行時に重要な働きをしており、体重の2〜3倍の筋力を発揮する必要があります。

手術後では、筋力の回復には時間を要すため、早期から積極的に加重や歩行訓練を行いすぎると痛みの発生につながることがあります。

外転筋が適切に働くようなアライメントでの動作が学習されるとよいのですが、異常なアライメントでの運動学習が進んでしまうと、外転筋力が発揮されず、他の部位に痛みが生じる可能性があります。

 

神経の影響では、脚長差が生じることにより、大腿神経、閉鎖神経、座骨神経が伸ばされ神経症状を呈することがあります。

 

人工骨頭置換術における禁忌肢位では、侵入経路により異なります。

後方侵入では、

・過屈曲
・屈曲、内転、内旋

前方侵入では、

・伸展位での外旋

が禁忌肢位になります。