今回、「脳卒中片麻痺患者におけるトイレ動作の自立に対する 立位バランスの影響」という文献を読む機会があったので、その紹介と要点をまとめ、筆者なりの意見を交えながらまとめていきたいと思います。

文献レビュー:トイレ動作の自立を決定する要因

文献の要約(要旨より引用)

【 目的 】 本研究は層別化した片麻痺患者を対象にトイレ動作の自立に対する筋力と立位バランス能力につ いて比較し, 影響を与える具体的なバランス能力について検討することである .
【 方法 】 対象は回復期病棟に入院した脳卒中片麻痺患者のうち包含基準を満たした 27 名とした.方法はFIM細項目(トイレ動作)から自立群11名,非自立群16名に分類し , 測定項目は非麻痺側下肢筋力,Berg Balance Scale (以下,BBS)を用いたバランス能力および BBS各項目の4点獲得率とし , 両群間で比較した .
【 結果 】 非麻痺側下肢筋力に差はなかったがバランス能力は自立群が有意に高いBBS得点であった.自立群のバランス能力は着座,移乗,閉眼立位,立ち上がり,立位保持の5項目のバランス能力が高いことが特徴的であった.
【 結論 】トイレ動作の自立には一定レベルの非麻痺側下肢筋力に加え, 非麻痺側肢を中心とした安定的な立位での静的バランス能力と限定的範囲における動的バランス能力の獲得が必要不可欠であることが示唆された.

米持利枝ら「脳卒中片麻痺患者におけるトイレ動作の自立に対する 立位バランスの影響」愛知県理学療法学会誌 第29巻 第2号 2017年12月

我々がリハビリテーションを行っていて気になるところは、どのような要素に注目して改善を目指していけばよいかということだと思います。

動作自体の練習ももちろん大切なのですが、機能的に改善できる点があればそれも考慮に入れてトレーニンングを行う必要があると思います。
そのためにも、どの要素がトイレ動作の自立の因子になっているかを知ることは非常に大切だと思います。

トイレ動作の自立を決定する要因

この文献のレビューをしていると、トイレ動作の自立要因にはバランス能力の高い関与があるとされています。
確かにトイレ動作は立位でズボンの上げ下げを行ったりする動作を含むため、バランス能力は非常に大切な要素だと思います。

この文献では、BBSの中で、
・着座
・移乗
・閉眼立位
・立ち上がり
・立位保持
を特に重要な要素としてあげています。

トイレ動作が自立している群は、4/5の方が5つの項目において4点以上を取れていたとしています。
なお、BBSにおけるこれらの項目の4点には下記のようなものが当てはまります。
・着座:最小限の手の支えで腰掛ける
・移乗:わずかな手の支えで移乗する
・閉眼立位:閉眼で10秒間立っている
・立ち上がり:手を用いず自力で立ち上がる
・立位保持:2分間立っているこれらの項目が達成されている方においては、トイレ動作が自立する可能性が高いということになります。

着座や立ち上がり動作に関しては、以下の記事も参照してください。
立ち上がり動作に必要な筋活動と立ち座りテスト
リハビリテーションと運動学習:立ち上がり訓練における多様練習
住宅改修に役立つ!立ち上がり動作での手すり設置位置の考え方
立ち上がり動作の誘導!リハビリでの動作方法から神経基盤まで!
着座動作のバイオメカニクスと必要な筋活動、介助のポイント
リーチ動作の段階付けによる訓練は立ち上がり動作の改善につながる

このような指標があれば、トイレ動作練習を考える際の参考になるのではないでしょうか。
なお、BBSについては以下の記事も参照してください。
ベルグバランススケールの概要と評価方法、結果の解釈

トイレ動作自立に向けた訓練の要素を改めて考える

前途してきたことからも、トイレ動作の自立にはバランス能力の改善が必要なことがわかりました。

トイレ動作では、まずは立位をしっかりと保持したなかでズボンを操作していくことになります(静的立位バランス)。
ズボンの上げ下ろしをする際には、重心が前後左右上下に移動するので、それを制御するためのバランス能力が必要になります(動的立位バランス)。
文献にもありますが、ズボンを上げ下ろしする際には上肢をフリーにして様々な箇所に注意を配分しながら操作を行う必要があります。

トイレ動作では下衣操作やレバー操作など立位保持と上 肢操作を同時に行う動作が含まれるため視覚に依 存した立位姿勢保持では自立することが困難である.そのため,前庭系や体性感覚を用いた立位での静的バランス能力が可能になることがトイレ動作の自立に不可欠であると考えられた .

米持利枝ら「脳卒中片麻痺患者におけるトイレ動作の自立に対する 立位バランスの影響」愛知県理学療法学会誌 第29巻 第2号 2017年12月

感覚障害があると閉眼立位は難しくなるかもしれませんが、前庭系や体性感覚を用いるような姿勢制御を積極的にトレーニングする必要性もありそうです。
感覚障害とバランスの関係性には、以下の記事も参照してください。
バランス障害と感覚の組織化、評価とリハビリテーション