移乗の事を調べている時に、看護師の立場からみた移乗自立を決定する要因についての文献がありました。非常に興味深いものだったので、今回、感想を含めて文献レビューを行いたいと思います。

文献レビュー:移乗の自立を許可するのはどんな時か?

文献の要旨

文献は、『脳卒中患者の移乗時「見守り解除」における看護師の臨床判断─中堅看護師を対象としたフォーカス・グループ・インタビューを通して─』という研究報告です。

グループインタビューを通して、看護師が移乗自立を決定する因子として、
・認知能力
・移乗動作能力
・移乗に対する患者の思い
・睡眠薬の内服状況
があり、

移乗決定を迷う要因として、
・見守りに強いイライラ感を呈する患者
・スタッ フ間で見守り解除の意見が分かれる患者
・見守り解除により移乗以外の行動も単独で行う心配がある患者
があるとされています。

 

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移乗はどのような動作から成り立っているか

移乗動作は、動きとしてはいくつかの手順に分けることができます。

・ベッドなどの乗り移る対象に車椅子を近づける
・ブレーキをかける
・フットレストを上げる
・立ち上がる
・その場で回転する
・着座する

簡単に分けるとこのように、6つの相に分けることができ、その中のどこの場面においてもリスクが生じやすいのが移乗動作の特徴といえます。

 

認知能力と移乗自立について

認知能力で特に問題となりやすいのが高次脳機能障害です。

半側空間無視や空間関係の障害(ベッドと車椅子との距離感など)、手順の理解などが挙げられます。

これらの能力が障害されていると、転倒のリスクはかなり高まることが予想されます。

現在ではブレーキ管理が不十分な方のリスクを軽減するために、フランスベッドから販売されている「転ばないす」があります。
どうしても自己管理が行いにくい方にはそのような環境設定も行うとよいかもしれません。

また、手順の理解では、毎回同じ手順で安定して動作が行えるかということはポイントです。
援助者が、支持や誘導を行っている場合、手順の理解は進んでいない可能性があるため、どこまで援助が必要で、どこは自分で行えるかということをはっきりと把握しておくことが重要になります。

学習能力という点では、援助者の指導内容を次回以降実践できるか、援助者が介助が必要だと感じた部分についての介助を頼むことができるかなども今後自立を決定する上では有用な情報になると考えられます。

実際に転倒してしまった場合には、対象者自身が転倒の原因をしっかりと捉えられているのかということも重要です。
どうして転倒してしまったのかを理解できていない状況では、次回以降も転倒してしまうリスクはかなり高くなるはずです。
ですので、転倒の状況をしっかりと説明できる、または対処方法を自らも検討できる能力があるか否かということも評価する必要があります。

移乗動作能力と移乗自立について

身体的要因は、見ている側もわかりやすい視点になります。

動作中のバランスの崩れや座位・立位保持能力、立ち上がり動作など、各動作に転倒のリスクがないのかを判断していくことになります。

注意したいのが、このような動作を、毎回安定して行えるかどうかを視点とすることです。

「毎回」とは、起床時、日中、夜間、睡眠薬服用後など、1日を通して安定して動作が行えているかどうかということです。
移乗自立を決定するには、やはり毎回同じように安定して行えるようになっていることが重要なポイントになります。

 

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移乗に対する患者の思いと移乗自立について

これは文献を読んでいて、「たまにいるな〜」と思いました。

移乗を見守りなく自分で行いたいと訴えのある方です。

これは援助者の立場からすると確実に困るパターンです。

また、介助を頼むのを遠慮してしまって自分で行ってしまう方もこちら側としてはかなり困ることになります。

移乗を自分で行いたいと訴えるだけでなく、自分ならできると自己効力感が高い対象者においても転倒のリスクは高まるでしょう。
自己効力感が高い対象者では「私ならできる」というように思っていると、移乗動作意外の動作においても自分で行ってしまう恐れがあります。
このようなパターンでは、対象者、家族、セラピスト、看護師間で話し合うような、リスクコミュニケーションを進めていくことで対象者の認識に変化が現れることがあります。
リスクコミュニケーションについては以下の記事を参照してください。
転倒予防に向けてのリスクコミュニケーション