脳卒中片麻痺者の自主トレに、家族が関わることで、目標とする作業を麻痺手を使用して達成できた症例についての文献レビューを行いました。そこから、自主トレにおける家族の役割を考えていきたいと思います。

脳卒中片麻痺者の自主トレと家族の役割を考える

文献

原田 朋美ら 「家族参加型の上肢集中練習により希望であった麻痺手での作業を達成できた一症例」作業療法Vol.36 No.4 2017

文献の内容

回復期の重度運動麻痺者(脳卒中)に対し、CI療法に準じた訓練を行い、対象者の妻が自主練習の管理者になることで、麻痺側上肢の訓練量を確保し、日常生活動作における麻痺側上肢の使用につながった。

脳卒中片麻痺と訓練量

脳卒中を発症すると、運動麻痺が生じることがあります。
運動麻痺が生じると、自分の思い通りに腕や指を動かすことができなくなります。
運動麻痺の回復には、早期からの訓練を実施し、いかに訓練量を確保するかにも依存します。
1日は24時間であり、病院でのリハビリは多くても3時間ほどです。睡眠時間など、他にも活動することはありますが、その他の時間をいかに腕を動かす機会として捉えていくかは、対象者のみでなく、家族も重要性を知っておく必要があります。

脳卒中になったとき、家族の混乱は

一般の方にとって、「脳卒中」という言葉は知っているかもしれませんが、具体的に、どのような症状が出て、回復のためにはどのようなことをしていけばよいかなどという知識はあまりないと思います。
そんな状態で、家族の方がいきなり脳卒中になったとなれば、混乱するのは当たり前です。

そして、知識がないということは、何をやってよいかがわからないことになります。
「リハビリ以外の時間は腕を動かさなくてもいい」「私たちが体を触って、もし何かあったらどうしよう」などという認識や不安もあるかもしれません。

そんな時に病棟の看護師や、リハビリスタッフがいかに家族に対して、脳卒中に対する知識、リハビリに対する知識を知ってもらえるかということは、とても重要なことだと思います。
知識や方法を知ることができれば、最初は見よう見まねから始まっても、経験をすればかなり優れた身近なコーチになれると思うのです。

家族=コーチ

家族は心の支えであり、時には叱咤激励をしてくれる仲間でもあり、リハビリの優秀なコーチにもなりえます。
もし、家族の方が、作業療法士や理学療法士が行うプログラムの内容をしっかりと理解して、注意点や実施方法を知っているとしたらどうなるでしょう。
通常のリハビリの時間に加えて、家族の方が行ってくれるリハビリ、本人が自主的に行うリハビリなど、訓練量が明らかに増えていきます。
脳卒中のリハビリにおいては、訓練量の確保がキーポイントになりますから、家族をいかに巻き込めるかは、重要な要素になります。

セラピストから家族にどんな指導を行うか

家族を優秀なコーチに育て上げるには、まず家族の理解を得なければなりません。
家族も対象者につきっきりというわけにはいきませんから、忙しい間にでも、対象者のリハビリに関わる時間を作ってもらわなければなりません。

そのためにも、
①脳卒中の回復のメカニズムに対する正しい知識
②治療プログラムの内容の理解
③適切な実施方法と介助方法の理解
などをセラピストから家族に伝える必要があります。

全てを理解する必要はありませんし、理解しながら行ってくれればという感じでもあります。
文献では、セラピストが考案した自主練習内容の資料(写真付き)を元に、家族(妻)が課題を設定して行うというものでした。
その際に、注意点(肩が上がる代償運動が起こらない、体が横に傾かない、◯◯がみられたときには休憩して)などを理解してもらっておくことで、家族が対象者をモニタリングすることが可能になります。

家族の中には、過介助になる場合も予測されます。
過介助になれば、せっかく自分で行えることも、機会がなくなってしまうなどのデモリットも生じます。
そのため、過介助な様子が観察されたら、対象者がどこまでできるかを説明するなどの対応が必要です。

自主訓練の中では、不適切な動作がみられたら、それを対象者にフィードバックできるように、異常な運動を知ってもらうようにしておく必要もあります。

対象者によっては、家族が関わりすぎると逆に良くない場合もあるので、そこは対象者の置かれている環境や性格を評価しながら、どこまで家族が介入できるかを考えていくことが大切になります。

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川平法と家族による訓練

私が知っている方は、退院後に家族(妻)が川平法を毎日行っていました。
DVDを見ながら見よう見まねでおこなっていたと言っていました。
川平法では、家族向けの本も出ているなど、家族参加型のリハビリを推奨しているものと思われます。
川平法自体が、一つの運動自体に100回は行うようにしているくらい、練習量の確保が大切だとしています。
川平法を取り入れているセラピストであれば、家族に対して具体的方法も指導できると思います。
このような取り組みが、対象者の回復を左右することを、セラピスト、対象者、家族が理解しておくことは非常に意義があることだと思います。
今はこのように専門的な内容を、家族向けの内容にしてくれているので助かります。

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改めて家族参加型のリハビリについて考える

ここまでで家族参加の意義を述べてきましたが、実際にはなかなか家族が参加できるような状況は少ないかもしれません。
家族にもそれぞれ用事がありますし、それぞれの想いもあります。

セラピストは積極的に家族と関わり、話をし、その中で家族がどのように考えているか、不安が多いのか、リハビリにどんな期待があるのかなど、様々なことを知るべきです。
こちらから「ぜひ見学していってください」と誘えるようにしていくことも大切かもしれません。
家族は対象者の取り組む姿勢を見ることで、回復の姿がよりよく見えます。
そのことが、家族に参加してもらうきっかけになるかもしれません。
関係ないかもしれませんが、ダイエットでは友達と行った方が、一人で行うよりも長続きするといったことがよく聞かれます。
リハビリも一人で行うのではなく、誰かと行った方が愚痴も言えるし、喜びも一緒に共感できます。
家族がリハビリに参加できるような、スタッフの環境設定も、今後学んでいかなければなりません。
今回の文献レビューを機に、家族用のリハビリパンフレットを作成しようと思っています。

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