脳卒中片麻痺者では、痙縮と呼ばれる、筋緊張に異常をきたすことで、歩く際に肘が曲がった姿勢をとっていることが多く見られます。今回、片麻痺者の歩行で肘が曲がる時に、手関節固定装具を用いることで痙縮が軽減する可能性があることについてまとめていきたいと思います。

片麻痺者の歩行で肘が曲がる(痙縮)時に、手関節固定装具をつけるのはいかが?

歩行中に肘が曲がるのは、痙縮が原因

脳卒中片麻痺者でのよくあるパターンとして、歩行中に肘が曲がってしまうことが挙げられます。

本人は意識せずとも、歩いていると勝手に腕(肘)に力が入ってしまい、伸ばすこと(手を下ろして腕を振ること)ができなくなってしまいます。

これは、痙縮と呼ばれるものが原因となっています。

痙縮については、

痙縮(けいしゅく)とは筋肉が緊張しすぎて、手足が動かしにくかったり勝手に動いてしまう状態のことです。
手指が握ったままとなり開きにくい、ひじが曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうなどの症状がみられます。
脳卒中の発症後、時間の経過とともにまひ(片まひ)と一緒にあらわれることが多い症状です。

http://keishuku.jp/chiryou/

専門的には、

痙縮・筋緊張亢進は筋の伸張速度に比例する速度依存的な収縮です。
痙性麻痺により筋紡錘の錘内繊維の伸張がおこると、γ運動神経の亢進により痙縮が出現しやすくなります。
このような反射性要素以外にも筋・腱などの非反射性の要素も大きく関わるとされ、筋紡錘内の感受性が亢進するとされています。

(参考)内山 侑紀ら「痙縮に対する運動療法」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.7

となっています。

この痙縮筋が、歩行中の肘が勝手に曲がってしまう状態を作り出してしまっているのです。

痙縮を軽減させる方法にはどんなものがあるのか

痙縮が運動の邪魔になるのは、主に収縮してほしい筋肉(主動作筋)が働くのと同時に拮抗筋(逆の関節運動を引き起こす筋肉)が同時に働いてしまうことにあります。

通常であれば、主動作筋が働く時には拮抗筋が相反的に抑制が行われます(これを相反抑制と呼びます)。拮抗筋の筋肉の収縮力が減少することにより、主動作筋の筋収縮力が増加することになります。

そのため、リハビリテーションでは、いかに相反抑制を改善させていくのかがポイントになります。

リハビリテーションでは痙縮を軽減させるために、ストレッチ(持続的な伸張)がよく用いられています。

また、自分で関節を動かせる方は、肘が曲がるのであれば肘を伸ばす運動をしっかりと行っていく必要があります。

近年のリハビリテーションでは、電気刺激の力を借りて、自分が動かしたい筋肉の収縮をアシストしてくれる環境の中でどんどんと運動をしていくような手法も登場しています。

そして今回は、タイトルにあるように手関節固定装具について紹介していきたいと思います。

 

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手関節固定装具と痙縮筋の抑制

まず、手関節固定装具がどのようなものかを紹介します。

私が手関節固定装具と脳卒中片麻痺者の痙縮筋の関係性について深く知ろうと思ったきっかけは、「HANDS therapy」と呼ばれるリハビリ方法があるのを知ったからです。

以下の書籍に詳しい内容がか書かれています。
 

HANDS therapyでは、手関節を機能的な肢位に保つために手関節固定装具が使用されています。

この手関節固定装具は、筋緊張の抑制に一役買ってることが研究によりわかっています。

手関節固定装具について、

手関節固定装具により手関節を中間位に保持することで痙縮抑制効果が得られ、屈筋共同運動パターンの患者で随意運動時の屈筋群の過剰な筋活動を抑制できる。

さらに、1日8時間の装着により自動運動可動域ならびに痙縮の改善を認めることが報告されている。

HANDS therapy―脳卒中片麻痺上肢の新しい治療戦略

とあります。

このことから、手関節固定装具をリハビリ場面だけでなく、日中活動時も装着することにより、痙縮を軽減させる可能性があります。

 

市販の手関節固定装具

市販の手関節固定装具には、以下のようなものがあります。

 

この装具は、プレートにより手関節の背屈角度を調節することが可能になります。

ポイントとしては、手関節を中間位で保持できるようにすることが大切です。

注意点としては、長時間の装着での圧迫による皮膚への影響には気をつけてください。

 

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手関節固定装具と歩行

本題に入ることができました。

脳卒中片麻痺者の歩行中の肘が曲がってしまう(痙縮による影響)ことに対する手関節固定装具の効果について考えていきます。

手関節固定装具により痙縮が減少することはなんとなくわかりましたが、手関節の良肢位保持が、肘が曲がってしまう(肘関節屈筋の筋緊張亢進)になぜ効果があるのかが疑問点になります。

手関節固定装具装着で、肘屈筋群への抑制効果は電気生理学的にも認められている。

〜中略〜

手関節屈筋の伸張によりtypeⅡ求心性繊維を介し、共同筋である上腕二頭筋への全角細胞の興奮が抑制されることが示されている。

HANDS therapy―脳卒中片麻痺上肢の新しい治療戦略

とあるように、手関節屈筋のストレッチが、上腕二頭筋の筋活動を抑制できることがわかっています。

となると、歩行中も手関節固定装具を使用することにより、肘関節屈筋の筋緊張亢進を抑制することが期待できるということが予測できます。

歩行中に肘が曲がってきてしまって、コスメティック的にも気にされてる方がいるとしたら、手関節固定装具を一度試してみることも一つの有効な方法になる可能性があります!!

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