筋緊張のコントロールが困難な方、特に筋緊張が低下している方においては、遠心性収縮を用いることがひとつのポイントになっていきます。今回、筋緊張のコントロールに関わる遠心性収縮とγ系について、まとめていきたいと思います。

筋緊張のコントロールに関わる遠心性収縮とγ系!筋緊張を高めるアプローチ

筋の収縮要素

筋肉には、3つの要素から成り立っています。
・収縮要素
・弾性要素
・粘性要素

筋の収縮要素は、筋肉がどの程度伸ばされたということを表します。
筋の弾性要素は、バネのようなもので、関節の角度によって変化があります。
筋の粘性要素とは、シリンダーやピストンのようなもので、収縮速度により変化があります。

例を挙げると、ヒモの下にバネを取り付け、その下に重りがついていることを想像します。
ヒモを引っ張ることは収縮要素であり、ヒモを離すとバネは大きく上下に変形します(弾性)。
この時、バネの変形をコントロール(ブレーキをかける)しようとすると、ピストン機構のように粘性要素を用いる必要があります。
バネは長くなればなるほど強く変形がみられます。そして、ピストンは速度によって粘性が変わる必要があります。

このブレーキをかける粘性要素が、筋収縮の様式のひとつである遠心性収縮に関わっていることになります。

筋収縮の様式

筋収縮は、3つの様式に分類されています。
・求心性収縮
 求心性収縮は、筋の長さが短くなり、起始と停止が近づくような収縮で、アクセルの役割があります。

・遠心性収縮
 遠心性収縮は、筋の長さが伸びながら、起始と停止が離れるような収縮で、ブレーキの役割があります。

・等尺性収縮
 等尺性収縮は、筋の長さが変化しない収縮で、体節の支持や安定化の役割があります。

筋緊張と筋の収縮力

筋緊張が低下している状態というのは、筋が「学習された不使用」の状態であるということがいえます。
筋の収縮力は運動に参加する運動単位の数と筋の断面積によって決定されます。
たくさんの運動単位が参加すればするほど、収縮力が大きくなることを表しています。
綱引きで多くの人数がいる方が強く引くことができるのと同じ原理です。

運動単位は、どの程度の負荷がかかればどの程度の運動単位が参加するかがあらかじめ決められています。
石井慎一郎先生の例えを借りると、10〜30%の負荷であればAチーム、30〜50%の負荷であればA+Bチーム、50〜80%の負荷であればA+B+Cチーム、それ以上の負荷であればA+B+C+Dチームというような感じです。
普段からあまり使用できていない場合や、収縮力を必要としない場合、上記の例で挙げたようにAチームしか参加しないことになります。
そうなると、B・C・Dチームは参加できない状態が続きます。これが、学習された不使用の状態につながります。

ある負荷に対して、どの程度収縮すればよいのか、どの程度の力が必要なのか、それにはどの程度の運動単位を発火させればよいのかという調整役を担っているのが錐体外路です。
錐体外路は脊髄前角細胞のγ運動ニューロンにシナプスしています。
γ系は、運動単位がいつでも参加できるように常に見守っておく指令役ということも言えます。
使用されていない状態が長く続くと、いざ必要な時に運動単位が参加できないということが起こってしまいま

遠心性収縮と筋緊張の関係

対象者の方は遠心性収縮がかなり苦手なことが多いです。
対象者は、運動をゆっくりとコントロールしようとすると、粘性が高くないのでバネ要素を用いて大きく揺れるようにコントロールしてしまいます。
また、速くコントロールしようとしても、粘性の低さから一気に崩れてしまいます。

筋の弾性要素は、伸張反射(α運動ニューロン)がコントロールしており、その時の状態によって都度変化させています。
筋の粘性要素は、γ系がコントロールしており、これが筋緊張を調整しています。
筋緊張の低下がみられる場合、粘性がコントロールできず、遠心性収縮もコントロールができないことになります。

筋緊張を高めるために遠心性収縮を用いる

以上の話から、筋緊張の低下がみられる対象者には、遠心性収縮を用いる必要があると言えます。
もちろん、脳卒中の方では錐体路系の回復によりα運動ニューロンの活動が高まる必要もあります。
遠心性収縮を利用していくことで、筋の粘性要素を高めながら、γ系を亢進させていくことが重要といえます。
筋緊張亢進に対する遠心性収縮を用いたアプローチの考え方については以下の記事を参照してください。
筋緊張亢進(痙縮筋)に対する遠心性収縮によるアプローチの考え方