記憶障害のリハビリテーションを実施するには、詳細な評価と対象者に適したリハビリテーションアプローチを選択する必要があります。

目次

記憶障害の詳しすぎる評価法やリハビリテーションアプローチを紹介

神経心理ピラミッドと注意障害

神経ピラミッドとは、前頭葉機能を基本とした高次脳機能を、土台(底辺)から順に

①神経疲労
②抑制と発動性
③注意力と集中力
④情報処理
⑤記憶
⑥論理的思考力と遂行機能
⑦自己の気づき

という階層的に分けており、より上の階層が働くためには、その下の階層がしっかり働いている必要があるということを示しています。

これに対応する高次脳機能障害としては

②無気力・脱抑制
③注意・集中力の低下
④情報の処理が遅い、正確に把握できない、脈絡なし、断片的
⑤記憶低下
⑥遂行機能低下
⑦病識欠如

などが挙げられます。

・神経疲労
無気力症では発動性の欠如、発想の欠如、無表情、無感動などがあります。
抑制困難症では衝動的、感情の調整が困難、ストレス耐性の低下、イライラ感、激怒、気性爆発、多動症などがあります。警戒態勢ではある刺激に対し反応があるかを示し、神経系を賦活していくためには、この警戒態勢をまず上げていくことが必要になります。
覚醒レベルの評価では精神疾患(うつ病など)薬剤の影響も考慮する必要があります。

・注意力と集中力
選択的注意や配分性注意と、その注意を維持するための集中力の低下などがあります。

・情報処理
情報のスピードに対応しながら正確に受信し、相手に伝わるように発信する事に関わります。

・記憶
エピソードや予定を覚えていたりすることに関係します。

・論理的思考と遂行機能
言われた事や本の内容などをまとめたり、同類に分類するための「まとめ力」、様々な発想を思いついたり臨機応変に対応するための多様な発想力に関係があります。
遂行機能では、日常生活上のゴール設定、オーガナイズ(分類整理)、優先順位をつける、計画の立案、計画の実行、自己モニター(検証)、問題解決)に関係します。

・自己の気づき
自己の症状を知り、認識して、それぞれの症状に対する戦略を自ら使用する事で、生活を豊かにしていくために必要な事を理解する能力に関係します。

上の階層の、より高次なレベルでは自覚が生じやすいですが、より下の階層の、基礎的なレベルでは自覚が生じにくいとされています。

 

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記憶障害の評価バッテリー

Rey複雑図形検査

Rey複雑図形検査の概要

Rey複雑図形検査は必要物品が少なく、全所要時間も5分〜10分と短く(再生の条件設定により時間が長くなることあり)実施できます。

図形は上下左右とも対照的ではない幾何学的図形で、点数化してデータの比較が可能です。

非言語性の視覚性記憶も評価できるため、失語症の方にも実施可能です。また被験者にとって教示する内容の理解が容易で導入しやすくなっています。

Rey複雑図形検査の実施方法

*模写終了時に、後でまた書いてもらうことには触れないようにします。
*模写と再生の間は、言語性課題や雑談などの干渉を入れます(他の模写や描画の課題は挟まない)。
方法1
①Rey複雑図形の模写(時間指定はなし。終わったら声をかけてもらう)
②3〜30分後、Reyの図形を隠し、図形をもう一度書いてもらう。

方法2
①Rey複雑図形の模写(時間指定はなし。終わったら声をかけてもらう)
②Reyの図形を隠し、図形をもう一度書いてもらう(即時再生)
③30分後、Reyの図形を隠し、図形をもう一度書いてもらう(遅延再生)

方法1が一般的な実施方法で時間を要さず、3分後再生で前向性健忘の有無を評価することが可能です。
一方、方法2は即時再生と遅延再生の差を比較することができ、エピソード記憶障害患者は、遅延再生で著名な点数の低下が認められます。

Rey複雑図形検査の結果の解釈

こちらをご覧ください。

三宅式記銘力検査

三宅式記銘力検査の概要

三宅式記銘力検査は、言語性記憶検査のひとつであり、対連合学習という古典的記憶検査法を基にした日本で開発された検査です。

主な内容は、「ビール-コップ」のような関係性が近い組み合わせと「本-空」のような関係性が無いものを読み上げて聞かせた後、最初の単語を検査者が言って、対になっているもう一方の単語を言ってもらう検査です。

三宅式記銘力検査の実施方法

検査内容を伝える時には、わかりやすい言葉で説明し、理解を求めていきます。
説明の例を以下に挙げます。

「これから、私がビール-コップというような言葉の組み合わせを10組言いますから、そのとおりによく覚えてください。一通り言い終わったら、ビールというように最初の言葉を言いますから、組み合わせのもう一方を言ってください。それでは、ビールなら何ですか?」のように教示し、「コップ」と答えられることを確認する。

高次脳機能障害学 第2版

単語リストを読み上げていく時には、ひとつの対語と次の対語の区別がはっきりするように2秒程度間隔をあけていきます。
10組読み上げた後、最初の単語を言い、対語を答えてもらいます。

読み上げに対する答えを全部で3回行い、その答えの内容と正答数を記録していきます。記録では、1回目に6個、2回目に8個、3回目に10個正答であれば、「(6-8-10)」のように記載します。

1回目や2回目までに全問正答できた場合は、その時点で検査を終了しても構いません。

有関係対語試験→無関係対語試験の順番で実施していきます。

このテストは記憶障害がある方にとってはストレスがかかりやすいものであり、実施中正答できないことに自信をなくしてしまうような場合も考えられます。

そのため、ストレス耐性が弱いと思われる対象者には、あらかじめフォローの言葉(「難しいテストなので、上手くいかなくても大丈夫ですよ」)や検査終了後のフォローの言葉をかけて、少しでも精神的不安を増大させないようにする必要があります。

三宅式記銘力検査の結果の解釈

こちらをご覧ください。

聴覚言語性学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test(AVLT))

聴覚言語性学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test(AVLT))の概要

30分程度で実施でき、即時記憶容量、学習曲線、前方干渉・後方干渉、作話傾向、時間的順序記憶、再認・自由再生の差異などの評価が可能です。
検査は日本では標準化されていません。

聴覚言語性学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test(AVLT))は言語性記憶を評価できる検査法のひとつです。エピドード記憶に障害がある患者では、会話の内容を忘れることがあるため、このような評価を行うことは大変重要です。

聴覚言語性学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test(AVLT))の実施方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

ベントン視覚記名検査

ベントン視覚記名検査の概要

ベントン視覚記名検査は、視覚認知、視覚記名、視覚構成能力を評価する検査です。
心因性障害と器質性脳障害の鑑別、認知症早期のスクリーニングにも有効とされています。

記憶検査としては、即時記憶課題となります。

ベントン視覚記名検査の実施方法や結果の解釈

こちらをご覧ください。

日本版リバーミード行動記憶検査(RBMT)

日本版リバーミード行動記憶検査(RBMT)の概要

日本版リバーミード行動記憶検査は、日常生活に類似した状況で検査が行われるという特徴があります。
課題には人の名前を覚える、約束を覚える、道順を覚えるなどがあり、記憶障害がどのような種類の日常課題に現れやすいかを推測しやすくなります。
また障害の時間的変化を追うことにも適しています。

11種類の下位検査で構成されており、そのうち3種類は直後・遅延検査で2回使用されます。
また4種類の並行検査が用意されていることから、繰り返しの検査による練習効果を避けることができます。

日本版リバーミード行動記憶検査(RBMT)の方法や結果の解釈

こちらをご覧ください。

生活健忘チェックリストによる記憶障害の評価

生活健忘チェックリストの概要

生活健忘チェックリストでは、記憶障害により日常生活上起こりうる問題やそのような場面を13項目設定しています。
この検査により、日常生活上の起こりうる問題の把握と予測、また患者の記憶力に対する認識(アウェアネス)を把握することが可能です。

リハビリテーションを行う中での記憶障害の改善を追うこともできますし、患者の認識力の変化も評価することができます。また、この評価結果を示すことで患者の気づきを促すための一助となる事も考えられます。

生活健忘チェックリストの実施方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

 

記憶障害の認識(アウェアネス)の評価

認識(アウェアネス)の問題

認識(アウェアネス)の問題とは、患者による自分自身への障害への気づきという問題です。
認識力が低下していると、自分の障害に気づかなかったり、気付いたとしても無頓着になっていたりします。
自分の現状を正しく理解している患者も中にはいますが、自分の最大能力を甘く見積もるような方もしばしば見受けられます。
アウェアネスの問題が重いほど、機能の再獲得が困難になるということが知られています。
一方で、患者のアウェアネスを援助者側が低く見積もっている場合もあるため、しっかりと評価していくことが求められます。

KapurとPearsonの記憶評価スケールの概要

患者自身と介護者が個別に、各項目に対する現在の能力と病前の能力を比較し、「ほぼ同じ」「やや悪い」「非常に悪い」のどれに当てはまるか判定します。
両者の評価結果がよく一致している場合、患者の記憶障害への認識は適切であることが推測されます。

この評価を行うときに、患者と介護者では異なる場面(経験)を根拠にして質問に答えている場合があるため、各質問項目に対して、具体的なエピソードを聞き取りながら行うこともひとつの方法であると思われます(記憶障害のため具体的なエピソードが出て来にくいかもしれませんが)。

KapurとPearsonの記憶評価スケールの実施方法やその他のアウェアネスの評価

こちらをご覧ください。

ワーキングメモリの評価

ワーキングメモリの概要

ワーキングメモリは、認知活動において認知的処理と処理されている情報の両者に関与するシステムです。
情報を一時的・同時的に保持、または処理するための能動的で目的指向的な記憶といえます。
ワーキングメモリは別名で「脳のメモ帳」「作動記憶」「作業記憶」と呼ばれることがあります。
記憶の保持時間としては、数秒〜数日、情報保持が可能です。
行動の目標達成のためには、陳述記憶、手続き記憶、エピソード記憶などの長期記憶をうまく短期記憶につなげることが重要ですが、ワーキングメモリは情報を時間的に接着する役割を持ちます。
ワーキングメモリの容量を超えると、もの忘れやし忘れにつながります。

ワーキングメモリに関連する脳領域

ワーキングメモリに関連する脳領域として、前頭前野背外側皮質と前頭前野腹外側皮質があり、背外側部は加齢による衰退が指摘されています。
ワーキングメモリの短期貯蔵部に容量が収まる程度の情報記憶には腹外側皮質が関与し、それを超える情報量の場合は背外側部が関与します。
中央実行系には前頭前野内側皮質と前部帯状回皮質の相互作用が必要で。機能が良好なほど前部帯状回皮質の活動が高いことが言われています。

ワーキングメモリはどのように評価されるのか

ワーキングメモリの評価方法には、様々なものが開発されています。

①リーディングスパンテスト

リーディングスパンテストは、提示された文章の音読、言葉を覚えることを繰り返し実施し、再生の合図が出された時に覚えた言葉を順番に再生するものです。

②ディジットスパン(数唱)

数唱課題は数字を順番に読み上げたものを記銘し、提示終了後に覚えた順番に再生する課題です。
順唱と逆唱があり、逆唱では読み上げた数字を逆順に再生します。
例:1-2-3-4→1-2-3-4(順唱)
  1-2-3-4→4-3-2-1(逆唱)

数唱課題の解釈では、失語症の影響を考慮する必要があります。
標準注意評価法(CAT)の中にある課題です。

③タッピングスパン

用紙などに視覚的に提示されたいくつかの「︎」などのマスに、不規則に指差されたのを、それを覚え、提示終了後に再生させる課題です。
タッピングスパンの成績は、通常はディジットスパンよりも1〜2個少ないとされています。

タッピングスパンの解釈では、視空間の障害を考慮する必要があります。
標準注意評価法(CAT)の中にある課題です。

④オペレーションスパンテスト

オペレーションスパンテストでは、計算と言葉の記銘を繰り返し、単語の再生成績によって容量を測定します。
例えば、(1×2)+1=?のような計算課題とアルファベットを記銘することを数試行繰り返します。

記憶障害のリハビリテーション

エラーレス学習が基本戦略になる

エラーレス学習とは

エラーレス学習(誤りなし学習)とは、誤りをさせない学習方法です。
一方、誤り(試行錯誤)を通じて学習していく方法は、エラーフル学習(誤りあり学習)になります。

記憶障害を有する方においては、エラーレス学習とエラーフル学習を比較すると、エラーレス学習の方がよい成績になると言われています。
そのため記憶障害を有する方には、エラーレス学習を中心にリハビリテーションを行っていく必要があるとされています。

なぜエラーレス学習なのか

記憶障害を有する方では、一度間違えて覚えてしまうとその誤反応が残ってしまい、正しい反応や行動に修正しにくくなるという特徴があります。
このことから、記憶障害を有する方が、新規の事を覚えようとする際には、先に誤った反応が出るのを避ける必要があるといえます。
そのため、最初から正しい(覚えてほしい)反応が出るように、セラピストや介護スタッフ、家族は関わっていく必要があります。

健常者では、エピソード記憶が正常なので、誤反応があったとしても、その体験をもとに正しい反応や行動に修正することが可能です。

潜在記憶は記憶障害者にも保たれているため、自分の行った誤り反応が潜在記憶に残り、次回以降も同じ誤りを繰り返す結果になると考えられている。

綿森 淑子ら「記憶障害のリハビリテーション-その具体的方法-」リハビリテーション医学 VOL.42 NO.5 2005

潜在記憶は簡単に言うと無意識レベルの記憶で、専門的に言うと「意識的な想起を伴わない記憶」となります。
誤反応が無意識レベルの記憶として保たれてしまうというわけです。

エラーレス学習を用いたリハビリテーション

これまでのことから、記憶障害を有する方においてはエラーレス学習がポイントになることがわかりました。
では、臨床場面においてエラーレス学習をどのように用いるかを考えていきたいと思います。

基本的な戦略としては、対象者に「推量を求めない」ことが重要なポイントになります。
推量(考える、推測する)ことは、試行錯誤をさせることにつながってしまいます。
考えて出した答えが間違ったものだったとすると、記憶障害を有する方はその答えが潜在的に保持されてしまい、次回以降も間違った答えを表出してしまう可能性が高くなります。
それだけは絶対に避けたいですから、常に正しい答え・反応を対象者に提供する必要があります。

このような考え方は、セラピスト、介護スタッフ、家族など、対象者に関わる全ての方に徹底しておく必要があり、セラピストは、行うと決めた戦略を有効にしていくためにも家族教育なども行うことが重要になります。

誤りなし学習と試行錯誤学習の使い分け

試行錯誤学習を用いる場面はどのような時か

論文「記憶障害者への社会生活・復職におけるメモリーノートの汎化に向けた取り組み」では、メモリーノートを社会生活で使用するために試行錯誤学習を用いています。

試行錯誤学習において、様々な状況を通じて「失敗」を体験しますが、この失敗体験により自身の障害への気づきが高まることを期待します。
しかしながら、失敗体験をすることは対象者自身の喪失体験にもつながってしまうため、適切なフィードバックや励まし、賞賛が必要なのは言うまでもありません。

どのような新規課題においても、障害への気づきを高めたい場合には、多少の失敗を伴う試行錯誤学習を導入する方がよいのかもしれません。
注意点としてですが、対象者の精神的機能(ストレス耐性など)を把握した上での導入が必要になります。

試行錯誤学習を用いるのはどのような対象者か

試行錯誤学習を用いることができる対象者の状況としては、ある程度自身の障害認識がある方になるかと思います。
例えば課題遂行後のフィードバックにおいて、セラピストが誤りを指摘してもそれに対して我関せずといったような方には導入が難しいまたは時期尚早と考えられます。
フィードバックに対して誤りに気づけるレベルの方であれば、誤りなし学習を導入して誤りに気付かせないまま課題を進めるよりは、試行錯誤学習により誤りを気付かせる機会を設けた方がよいかもしれません。

記憶障害があっても、注意機能、知的能力や問題解決能力のような前頭葉機能の働きが良好であれば、自身の障害への気づきが高いことが多く見受けられるように思います。
これは、リハビリテーション場面だけではなくて対象者が生活する病棟、家庭、職場などの様々な場面での様子から評価し、得られる情報です。
このような評価情報から対象者のアウェアネスがあるていど高いと判断できれば、試行錯誤学習を用いることもひとつの方法になるかもしれません。

PQRST法

PQRST法の概要

PQRST法は記憶障害の方に対する学習方法の一つで、「Previw」「Question」「Read」「Self-Recitation」「Test」からなります。
要するに、
Previw:全体的なものとして捉えるためにはじめにざっと目を通す
Question:文章の鍵となる意味内容について尋ねる
Read:上記の質問に答えれるように文章を読み込む
Self-Recitation:読み終えた情報を積極的に覚えていく
Test:質問に答え、正誤を再検討する
というような構成になっています。

PQRST法は、文章を記憶するために有効な学習法であり、このような戦略は言語的記憶戦略法と呼ばれています。

この戦略はどんな人が対象になるのか

PQRST法は、言語性記憶障害のある方が対象になります。
日常生活や仕事場面では、文章を読み取り、それに応じた反応または行動を示していくことが重要になります。

学校での授業を考えてみると、授業では教科書を使用しながら基本的な知識を習得していくことが多くあります。
そのような際に、言語性記憶障害があると学習がはかどりにくいことは目に見えています。

PQRST法は近時記憶に対する戦略であり、数分から数時間、数日といった記憶保持過程における新しい情報学習するためにも必要になるといえます。

文章を読み流すだけでない所に意味がある

PQRST法では、前途した通り文章を読み流すだけではないことがわかります。
質問に答えることができるように読んでいくため、精読するのに時間はかかることが特徴でもあります。
質問に答えるためには文章の要点を捉えながら繰り返し読み取っていくことが必要になります。
質問があることによって、記憶を想起する過程で手がかりとなり、それが符号化を促すために記憶保持がなされやすいと考えられています。

PQRST法の実施方法

PQRST法で用いられる課題には、文章のみのものと文章+写真や図(絵)の課題に分けることができます。
課題には新聞紙の記事をよく用います。新聞紙の記事には、短いものから長いもの、写真や図が挿入されているものまで多岐にわたるため、課題選びには困りません。
また、対象者の興味や関心に沿った記事を選択することができ、記憶保持の助けになることも期待できます。

Questionで設定される質問数には特に決まりはありません。文献等を見ていると、5〜6つ程度の質問数を設定しているようです。
質問の内容にも特に規定はなく、「いつ」「だれが」「どのように」「どうして」などの視点から質問を設定していくのがよいと思われます。

Readでは答えを確認しながら読んでいきますが、記憶の保持を助けるために答えとなる文章を見つけたら線を引くなどして目立つようにすることもあります。

Self-Recitationでは質問に沿って積極的に答えを覚えていきます。

Testでは再生までの時間に特に規定はありません。Self-Recitationが終了してから10秒程度経ってからTestを行います。

記憶障害を有する方においては、誤りなし学習を行う方が記憶の定着がよいと考えられており、これはPQRST法にも応用ができます。
Testにおいて即答できない場合に、正解を導くための最初の語などを提示することにより、誤った表出を防ぐようにします。

間隔伸張法(Spaced retrueval法)

間隔伸張法とは

間隔伸張法とは、ある情報を保持する時間間隔を徐々に伸ばし、想起させる方法です。
例えば、ある言葉を覚えてもらって、
①直後
②30秒後
③1分後
④5分後
⑤10分後
⑥20分後
というように徐々に保持時間を伸ばし、想起させていきます。

間隔伸張法は、記憶障害を有する方や認知症を有する方に有効性があるとされています。
記憶障害以外にも、失語症者の訓練にも用いられることがあります。
また日常生活場面でも、車椅子のブレーキ操作や移動時の注意点など、リスク管理能力獲得のためにも用いることができます。
どの場面においても、基本的な戦略としては試行錯誤を避け、不適切な行動や言動が見られた場合には修正行動や手がかりを与えることで誤りなし学習を強化します。

間隔伸張法の対象になるかどうかを判別する

間隔伸張法は、すべての方が対象になるわけではありません。
間隔伸張法を実施するには、ある程度の手続き記憶が必要とされています。
そこで、スクリーニングを行う必要があります。

例えば、セラピストの名前を使用するのであれば、
「私は◯◯です。では私の名前は?」と問いかけます(直後再生)。
次に、「私の名前は?」と15秒程度して問いかけます。
次に、「私の名前は?」と30秒程度して問いかけます。
正しい解答が得られた場合は次の段階に進み、間違えが見られた場合にはもう一度行います。
3段階のうちのどこかで3回間違えが見られたら間隔伸張法の対象にはならないと判断します。

間隔伸張法の課題にはどのようなものを用いるか

間隔伸張法の課題には、基本的には対象者に必要性がある課題をもちいます。
例えば、担当者の名前、日付などがあります。その他は、対象者への情報収集を通じてリストアップする必要があるかもしれません。
また、一般的な課題としては、単語、文章なども用いられることがあります。

リハビリテーション医学の第42巻5号に間隔伸張法を用いたドリル課題の流れが紹介されているため、引用させてもらいます。

きのうの復習
1 前日に覚えた文を想起する
2 自己採点する
3 再度正しい文を書き直す

練習A:メインの課題、短い文を記憶し直後に想起する
1 課題文を記憶する(例:「今日の天気は晴れのち曇り、明日の天気は雨です。」)
2 覚えた文を直後に想起する
3 自己採点
4 再度正しい文を書き直す

練習B:間隔をおくための課題。ぬり絵をして言葉を考える
1 ぬり絵をして絵から思いつく言葉を考えて記憶する
2 覚えた言葉を想起する
3 自己採点
4 再度正しい言葉を書き直す

練習A'(20分後):間隔をおいた後にメインの課題文を想起する
1 覚えた文を遅延後に想起する
2 自己採点
3 再度正しい文を書き直す

綿森 淑子ら「記憶障害のリハビリテーション-その具体的方法-」リハビリテーション医学 VOL.42 NO.5 2005

これを見ていると、遅延再生の前に課題を入れていることが特徴的です。
課題を間に挟むことで、干渉後の再生課題となります。

 

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メモリーノートの使用

メモリーノート使用の意義

メモリーノートを使用することで、仕事や生活に関することについて、自分で管理ができるようになったり、自分自身の行動を振り返ることにつながったり、作業手順の整理に役立てれば確実にミスなく作業ができるようになったりします。
ノートに記載して確認するという記憶を代償する事で、日常生活上様々なメリットがあります。

記憶障害だけでなく、遂行機能障害であれば情報整理により計画的な行動を促す事に役立つ事が考えられ、精神障害であれば近い将来の行動予定が把握できることで不安の軽減に役立つ事が考えられます。
このようなことから、メモリーノートは記憶の代償だけではなく、適切な行動を促すツールとしても用いることができます。

メモリーノートには、情報の共有の機能もあると考えられ、これは、予定や重要事項などを患者だけでなく他者とも共有できるということです。
メモリーノートにうまく書けない場合支援者が記入することで本人との情報共有が図られ、患者がメモリーノートを通じて記録を他者に伝えることで、その経験を他者と共有することにつながります。

メモリーノートの項目

メモリーノートの項目は、患者の将来的な必要性により決定していきます。
例えば、基礎情報、行動メモ、カレンダー(スケジュール)、しなくてはならないこと、交通機関、感想メモ、人名、重要な事などがあります。
カレンダー(スケジュール)では、翌日以降の予定について月日、時間、内容、場所を記載することができます。
しなくてはならないことでは、指示された月日と完了期限、その内容、また実施したかどうかのチェック欄を記載します。
行動メモには、その日行った事やその時に知った情報などを記載することで、行動を振り返るのに役立ちます。
感想メモでは、日記的にその日の感情の変化など、自由に記載することができます。

メモリーノートのサイズ

様々なものを用意することができます。
ルーズリーフ式、大学ノート、大きい小さいなど、患者によって異なります。表紙が興味を惹くような綺麗なものであったり、名前入りのものであったり、患者に選択させることでメモリーノートの使用が促されることもあるかもしれません。
大事なことはメモリーノートの必要性を患者が理解し、日々使用するということにいかに繋げていくかということです。

メモリーノート使用獲得に向けたリハビリテーションの考え方

参照

メモリーノート使用獲得に向けては、その意義や使用の意欲を高めていく必要があります。
そのために、まずはすでにノートに記載されている内容を参照する事から初めていきます。この段階でメモリーノートを使用できるということは、自分で覚えなくても、ノートを適切に使用することで記憶の代償(引き出し)が可能であるということを意味しています。
参照訓練を行うことで、メモの使用に抵抗があった人にノート使用の意義や必要性の理解を促したり、使用意欲を高めるのに役立つことが考えられます。

構成

構成では、メモリーノートを書き分けるための要素を訓練していきます。
シール(インデックス)などを用いて、ノートの適切な場所に、各課題が書かれたシールを貼り付ける作業を行います。
貼り付ける作業は記入することよりも単順で、情報を書くための適切な場所を見つけることを目的としており、シールは間違えても剥がすことが可能なので、失敗をしても再度チャレンジできることもあり、学習機会が増えるというメリットがあります。

記入

記入では、ノートに口頭指示による内容を適切な場所に記入していきます。ここでは障害特性に応じた記入方法の工夫を行い、適切な内容で適切な場所に記入することを獲得します。
構成訓練で書く場所についての学習は図られているため、記入訓練ではその部分への注意の負担は軽減されることが考えられます。

キーワードによる記入の学習

ノートを使用を促すために、キーワードを決めておくことも有用です。これにより、ノートを使用する機会を患者が自ら気付くきっかけになることがあります。
例えば、カレンダー(スケジュール)では、「予定」がキーワードで、しなければならないことでは、「今日のうちに」「〜までに」がキーワードで、重要事項は「重要なこと」がキーワードになります。
これは患者本人だけでなく、支援者や家族も意識的にキーワードを使用することで、ノートの使用獲得が促されやすくなると考えられます。

般化に向けて

般化に向けては、アラームなどの補完手段と組み合わせることが考えられます。
携帯のアラームでメッセージをつけれる機能があれば、定期的にノートの使用を促す機会になるかもしれません。
特定の場面ではノートを使用できるが、環境が異なるとノートの使用ができなくなることもあるため、般化には、患者をとりまく周囲の環境設定が重要になってきます。前途のキーワードを含んだ指示の仕方などを周囲が行うことで般化につながることが考えられます。
「場面」「課題」「支援者」で区別することで、般化に至らない要因を発見することに役立ちます。

「場面」では、同じ指示内容を同じ支援者が違う場面で言う場合です。他の環境(例えば周囲が騒がしい)にて同じ指示を書き分けることができない場合、支援者は口頭指示に加えて視覚的な提示や個別に指示を与えるなど場面設定を行う必要があります。

「課題」では、同じ支援者が一定場面で違う指示内容を言う場合です。指示内容の変化により書き分けることができない場合、口頭指示に加えて視覚的な提示を行ったり、キワーワードを強調する、あらかじめ異なる課題を指示することを説明するなどの設定が必要になります。

「支援者」では、同じ指示内容を一定場面で異なる支援者が言う場合です。この場合は、人による違いのため、段階としてはいきなり新たな支援者からの指示とせず、今までの支援者と新たな支援者両方いる場面で新たな支援者が指示を出すなどのステップが日必要です。

般化を阻害する他の要因

日常場面では、場面・課題・支援者が様々な組み合わせにより生じてきます。対象者にとっては、ノートを使って良いのか、内容的にノートに記入すべきなのか、ノートへの記入を求められているのかなどの不安要素が生じている場合があります。
上記のことも含め、これら般化を阻害する要因を分析し、使用獲得に向けたアプローチを行うことが大切です。

ワーキングメモリのトレーニング!Nitendo 3DSを用いて!

ワーキングメモリのトレーニングとして、Nintendo 3DSの「ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング」がリハビリとしても有用ではないかと思い、紹介することにします。

鬼トレでワーキングメモリを鍛えると、個人差はありますが、
「実行力」「抑制力」「予測や判断」「集中力」が向上し、仕事や勉強の効率が上がったり、家事のスピードアップやスポーツの上達など、様々な効果が期待されます。

https://www.nintendo.co.jp/3ds/asrj/onitore/

とあります。
MRIを用いた前頭前野背外側皮質の体積を測定したところ、2ヶ月実施により体積の増加が認められたようです。しかし、脳損傷による高次脳機能障害者の場合ははっきりとしたデータはないようです。
Nintendo 3DSは場所を選ばず持ち運びもできて、ゲーム感覚で行うこともできるため、操作の理解があり、ゲームとしてなら意欲が高まりやすいような場合、自主トレーニングとしては最適ではないかと思われます。

「ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング」の良い所は、実施者の成績に合わせてレベル調整が自動的になされ、課題も豊富にあることです。
具体的には、各課題の正解率が75%程度であればレベル据え置き、65%以下であればレベルダウン、85%以上でレベルアップします。

詳しくはこちらを参照してください。

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