認知症者においては、訴えが強く、その対応により周辺症状が強くなってしまうということが多々あるかと思います。そのようなときに、我々はどのように対応するかということは、周辺症状を落ち着かせ、対象者が安心して過ごせる環境を提供するかということにとって非常に大切です。今回、認知症者の訴えが多い場合にどう対応するかということを、作業療法的な視点から考えていきたいと思います。

認知症に対する作業療法の書籍

 

認知症と作業療法!訴えが多い場合にどう対応するか!

認知症に対する作業療法の強み

人間作業モデルでは、BPSDを作業適応障害として捉えています。
認知症の方は、記憶障害や思考・判断力低下、失語などの中核症状により、意味ある作業に基づく生活ができていなかったり、他者に作業ニーズを伝えることができないことがあります。
作業ニーズが満たされないことで、不安や焦燥が生じ、BPSDが生じてしまうことにつながります。これは、マズローの欲求段階からも、捉えることが可能と思われます。

認知症高齢者のBPSDはクライアントの作業適応障害の状態であるととらえることができる。そのため、OTRが認知症高齢者のBPSDを理解して作業適応を促進するためには、クライアントの作業と作業的生活を理解することが必要である。

事例でわかる人間作業モデル P206

そのような点において、作業療法では、認知症者の方の生活歴や今までにどんな人生を送ってきたか、趣味や嗜好は何か、どのようなグループに所属してきたかなどの情報を把握し、それを作業療法プログラムに取り入れることが大切だと考えることができます。
詳しくは以下の記事を参照してください。
認知症高齢者の絵カード評価法(APCD)を用いたニーズの評価

認知症者の訴えとよくある対応

認知症の方は、コミュニケーションの障害により自分の訴えることが適切に表現できないことがあります。
また、訴えが多いような場合、最初はスタッフが傾聴していても、そのうち「また言うてるわ」などと関わりをしないでおこうとすることもあるかもしれません。

「目を合わすと訴えが多くなるから」などと考えて行動しているとどうなるでしょうか。
考えてみてください、皆さんが認知症の方の立場に立ったとき、自分が訴えているのに無視されると、、、
悲しいし、嫌ですし、怒りの感情が湧いてこないですか。
そのような状況が長く続くと、対象者の方の精神状態も悪くなるのは目に見えていますね。
そのような精神状態で、訴えに対してスタッフが説得したり説明したりしても、認知症の方は納得できないし、落ち着かないというのは当たり前かもしれません。

利用者の方が居室やフロアで生活している環境では、スタッフはなかなか個別的な関わりやケアができない状況にあると思います。
これは業務上仕方がないことではあるかもしれませんが、できるだけ利用者の訴えに耳を傾けることも必要だと考えられます。

個別的な関わりを増やす

個別的な関わりを増やすにはどうすればよいでしょうか。
リハビリテーションの場面では、個別的な関わりを増やすにはもってこいな場面と考えることができます。
そして、作業療法は何かしらの作業を介してコミュニーケーションをとったり、作業自体に集中することができます。

このような関わりは、作業適応障害状態にある利用者の方にとっては、精神的に落ち着きやすい状況を作り出すことができると考えられます。

個別的な関わりの中でも、訴えがみられることはもちろんあると思います。
例えば、排泄の訴えを例にとってみます。

利用者の方が「トイレにいきたい」という訴えがあったとします。
しかし、利用者がトイレに行こうとしても排泄は行われないこともあるでしょう。
このようなことが、スタッフが訴えに対応しても「どうせ空振り」と思い訴えを無視したりする原因になったり、利用者が納得しない関わりにつながっているのかもしれません。

そのような場合、
①訴えに対して傾聴する
②話をそらすor作業を提供して集中してとりくんでもらう
③それでも訴えがあればトイレ誘導を行う
などの対応が考えられます。
また、日々の排泄状況を確認し、実際に排泄を行ったタイミングを把握できればそれを元にトイレ誘導を行えるかもしれません。

その訴えは本当の訴えなのか

上記では排泄の訴えを例にとりましたが、利用者の訴えが本当にその訴えなのかを分析する必要があると考えます。
そのため、上記の対応では一度他の話題に切り替えたり作業に取り組んでもらうような対応を提案しました。
これにより、対象者を再度観察し、排泄の訴えが本当の訴えなのかをしることができます。

ただ単に普段適切な関わりが取れていないために対象者がかまってほしい気持ちになって訴えがみられることがあるかもしれません。
そのために個別的な関わりがとれるリハビリテーション場面は重要な役割を持っているといえます。

作業療法場面を通して、対象者の周辺症状への対応方法を発見することができれば、それを病棟やフロア、居室において利用できる可能性もあります。
このように、認知症に対する作業療法を考えていくのもよいかもしれません。