リハビリテーションでは運動学習理論をもとに課題を設定していきますが、その際にセラピストから患者様へのフィードバックの伝え方が重要な要素になります。今回、運動学習における適したフィードバックについてまとめていきたいと思います。

運動学習とリハビリテーション!フィードバックについて

運動の定着や保持に影響するフィードバック

リハビリテーションの対象者は、何かしらの影響で動作遂行がうまくいかないという状態にあります。
そのような状態から行動変化を起こして、それを定着させることが運動学習になります。
動作練習を通じて一時的に動作ができるようになっても、それが保持されて次回できなければ運動学習がうまくいったとは言えません。
何かしらのキャリーオーバーが見えてこそ運動学習の成果が現れたと解釈できるわけです。

行動の変化を起こし、それを定着させるために大切なのがフィードバックになります。
フィードバックは「与えすぎてもダメ」とはよく聞きますが、そのあたりについてもこの記事では考えていこうと思っています。

フィードバックを入れすぎるとどうなるのか

運動学習を進める上で大切なことは、患者様が自ら環境に対して探索しながら運動を制御することです。
例えば立位保持課題であれば、グラグラするのをいかに制御するのかを、学んでいくことが必要になります。

このとき、一番良いのは患者様が主体的に取り組み、自ら「できた」「できる」と感じることで運動学習は図られやすくなります。
そのため、フィードバックの量は必要最小限で、セラピストが期待する動きや修正したい動きに関することは言い過ぎない方が良いとも考えることができます。

これは課題の難易度にも関わりますが、基本的には「少し努力したらできる課題」を設定し、内的強化因子として「できた」「できる」という感情を沸き起こらせていくようにするのが一番望ましいと考えられます。
特に急性期の場合、患者様は自信を失い、自己効力感が低い可能性がありますので、「できた」「できる」と思えるような課題遂行の成功に対するフィードバックを多く入れることは重要だと思われます。
課題の難易度設定については以下の記事も参照してください。
脳卒中片麻痺者の上肢機能訓練の課題設定と段階付け(変更の基準)の考え方

課題遂行中のフィードバックのいれ方

課題遂行中に、フィードバックを入れるのは最小限にする理由については上記で述べた通りです。
しかしながら、どうしても修正していきたい動作や動きがある場合もあるかもしれません。
その場合のフィードバックのいれ方について考えていきたいと思います。

例えば、「左に寄ってください」「もっと真っ直ぐ」「姿勢を良くして」「もうすこし体重を乗せていって」などというフィードバックが患者様に与えられるとします。
このような言語指示では患者様は「?」となってしまうのではないでしょうか。
セラピストは学生さんのケースレポートを読んで、「もっと具体的に!!」と指導したことはありませんか。
まさしく、これと同じことが患者様とセラピストの間でも起きていることがあるのです。

同じフィードバックを入れるのであれば「あと2cm右に寄って」「右肩を壁につけて」「私(セラピスト)が握ったのと同じくらいの力を入れて」などと具体的に動きの方向やタイミングがわかるようにフィードバックを入れることが大切になります。

フィードバックと情動

リハビリテーションにおいては、運動だけでなくて情動についても患者様の状態を把握しておくことが必要になります。
リハビリテーションにおいては情動面を考慮した場合には、
①負の情動を引き起こさせない
②過負荷な運動を避ける
③痛み、過緊張、防御性収縮などが確認された場合、負荷量を調節する
などがポイントとして挙げられます。
これらの事を注意しながら課題の難易度設定を適切に行い、運動学習を進めていくことが大切になります。

また、フィードバックは当たり前ですが快の刺激を入力できるようにしなくてはなりません。
リハビリテーション場面では、患者様は元の体の状態に戻る事を最大の報酬にしていると考えられます。
その経過の中で、少しでも自分の体の状態の変化に気付けることは、かなりの報酬になるはずです。
高いモチベーションが運動野の活動性を高めることも示唆されています。
目標はスモールステップとすることで、その達成(少しの変化)に対して喜びを共有することが大切だと思われます。
情動とリハビリテーションの関係については以下の記事を参照してください。
ニューロリハビリテーションと情動-不快刺激は入れてはダメ-