ADLを観察する上で、動作遂行上のエラーからどのような神経行動学的機能障害が関連しているかを考えることが大切です。この際、機能障害のパターンを知っておくことで、仮説がより信頼できるものに近づきます。今回、脳底・椎骨動脈支配領域における神経行動学的異常(機能障害のパターン)について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

ADL観察に役立つ!脳血管支配(脳底・椎骨動脈系)と神経行動学的異常(機能障害のパターン)!

引用・参考文献

脳卒中と機能障害のパターンを知ることの重要性

脳卒中を引き起こす様々な動脈の障害は、種々の機能障害のパターンを引き起こします。
神経学的機能障害は、動脈のどの枝、どの大脳半球が影響を受けるかによって異なります。
ADLの観察から考えられる神経行動学的異常が、障害を受けた部位から引き起こされる機能障害のパターンと合っているかを考えることで、自分の仮説の裏付けをすることにつながります。
また、機能障害のパターンと異なる神経行動学的機能障害が考えられた場合は、過去の既往歴なども考慮することで、なぜそのようなことが起こっているかを考える一助とすることができます。

 

脳底・椎骨動脈系

脳幹、小脳は脳底・椎骨動脈の分枝により栄養されています。
上小脳動脈:上小脳脚、小脳上部を栄養
前下小脳動脈:中小脳脚、小脳前下部、内耳を栄養
後下小脳動脈:下小脳脚、小脳後下部を栄養

中脳は以下の動脈により栄養されます。
後大脳動脈の枝:中脳上部を栄養
上小脳動脈の枝:中脳下部を栄養
傍正中動脈:大脳脚・被蓋部の内側を栄養
短回旋動脈:大脳脚・被蓋部の外側を栄養
長回旋動脈:中脳蓋を栄養

橋は以下の動脈により栄養されます。
上小脳動脈:橋上部外側を栄養
前下小脳動脈:橋下部外側を栄養
橋動脈(脳底動脈から出る):
 傍正中動脈:橋底部内側を栄養
 短回旋動脈:橋底部外側
 長回旋動脈:橋被蓋部、中小脳脚を栄養

延髄は以下の動脈により栄養されます。
 後下小脳動脈:延髄外側
 椎骨動脈:下オリーブ核を栄養
 前脊椎動脈:延髄内側を栄養

脳画像

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出典:中上 博之先生の脳画像資料より

脳底・椎骨動脈系における機能障害のパターン

橋:
四肢麻痺
両側の非対称性筋力低下
球麻痺、仮性球麻痺(顔面、口蓋、咽頭、首、舌の両側性障害)
眼球、外転筋の麻痺
眼振
眼瞼下垂
脳神経異常
複視
めまい
後頭部の頭痛
昏睡

脳幹、視床尾状核
乳頭異常
眼球運動の障害
覚醒レベルの変化
昏睡
記憶障害
不穏
幻覚

外側延髄と小脳:
めまい
嘔吐
眼振
同側眼・顔面の痛み
顔の痺れ
同側肢の不器用さ
同側肢の低緊張
頻脈
歩行失調

上小脳動脈領域梗塞では、小脳性運動失調が主で、めまいや小脳性認知情動症候群の頻度は低くなります。
橋上部外側の梗塞を伴うと、対側温痛覚障害、下肢の強い触覚、深部感覚障害が生じます。
前下小脳動脈領域梗塞では、小脳前下部損傷での同側小脳失調、めまいが生じます。
橋下部外側損傷(顔面神経、内耳神経がある)では顔面神経麻痺や耳鳴りを生じることがあります。
後下小脳動脈梗塞では、小脳下部損傷での同側小脳失調、めまい、小脳性認知情動症候群、ワレンベルグ症候群(対側の温痛覚障害、同側の筋緊張低下、めまい、眼振、球麻痺、ホルネル兆候、小脳失調)が生じます。

中脳大脳脚損傷では対側の運動麻痺、ウェーバー症候群(動眼神経損傷による同側の眼球運動障害)が生じます。
大脳脚損傷が軽度で赤核損傷がある場合、ベネディクト症候群(不随意運動を呈する)が生じます。
被蓋内側部の損傷では上小脳脚交叉損傷により小脳性運動失調、眼球運動障害(動眼神経・滑車神経・内側縦束損傷による)が生じます。
被蓋外側部の損傷では内側毛帯や脊髄視床路損傷による体性感覚障害が生じます。
上丘損傷ではバリノー症候群(垂直性注視麻痺、調節・輻輳反射喪失を呈する)が生じます。

橋底部の梗塞では対側運動麻痺+両側小脳性運動失調が生じる可能性があります。

延髄外側の梗塞ではワレンベルグ症候群を生じます。
延髄内側の梗塞ではデジュリン症候群(病巣側の舌下神経麻痺、対側頸部以下の片麻痺、触覚・深部感覚障害)が生じます。

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