学習の汎化を狙うことは、作業療法理学療法などのリハビリテーションにおいて重要です。今回、学習の汎化を促進させる要因と作業療法理学療法への応用について、文献をさんこうにまとめていきたいと思います。

 学習の汎化を促進させる要因と作業療法理学療法への応用

文献

学習の3段階

①獲得
獲得の時期は、技能の初期の指導や練習の時期です。
この時期では、対象者は例えば、麻痺側上肢を使ったリーチ動作を学びます。

②保持
保持の時期では、初期練習期間後に生じ、獲得した技能をどれくらいうまく遂行できるかを示すように要求されます。
学習の保持とも呼び、対象者は例えば、以前獲得したリーチ動作を行う患者の能力をさします。

③転移
転移の時期では、対象者は獲得した技能を新規の状況で使用します。
これは例えば、上衣の更衣で、リーチ動作を動作に取り入れるような場合です。

 

学習の汎化を促進する要素(フィードバックの種類)

フィードバックは反応に関する情報です。
内在的、外在的、同時進行的、最終的など、様々な種類とタイミングがあります。
フィードバックは遂行の知識、結果の知識を提供します。

内在的フィードバックは、対象者自身の固有感覚、表在覚、前庭覚、視覚、聴覚などの感覚システムの結果です。
脳卒中では感覚障害により内在的フィードバックが阻害されることがあります。

外在的フィードバックは対象者自身の気づきを高めたり、学習促進のための情報となりますが、汎化の促進のためには徐々に減少させる必要があります。

同時フィードバックは課題遂行中に提供されます。
内在的な体性感覚フィードバックやセラピストからの言語・徒手的誘導が含まれます。
最終的フィードバックは課題終了後に与えられるものです。
どちらにせよ、過度の外在的フィードバックは避ける必要があります。

①遂行の知識(knoeledge of performance:KP)
遂行の知識は、課題遂行中に用いられる処理に関連する情報です。
これには例えば、肩甲骨を動かす方法などがあります。
固有感覚システムの損傷がなければ、動きに伴い同時進行的に内在的な遂行の知識を受け取ることが可能です。
脳卒中者では、感覚システムの破綻から内在的な情報を受け取ることが困難になることがあります。

外在的な遂行の知識は、課題開始前に提供されることがあります。
例えば運動遂行のための姿勢の構えをとらせたり、認知的な要素を含む課題遂行のための戦略の計画をさせるなどの指導があります。

内的な遂行要素に焦点を当てることは、学習にとって逆効果であるかもしれないとされています。
ある運動パターンや手順などの基本的要素に注意を内的に向けるよりも、環境に関連する情報(対象物への距離、形状など)に焦点を当てる方が効果的だとの指摘もあります。

②結果の知識(knoeledge of results:KR)
結果の知識は目標達成に関連した行為の結果についてのフィードバックです。
結果の知識は、今後の遂行に向けた遂行や誤り修正のための基準となります。
頻回な、正確な、即時的な結果の知識は獲得の時期において良い結果をもたらしますが、保持や転移においては拙劣な遂行を招く可能性があると、健常者の研究では示唆しています。
限定した結果の知識が獲得の時期で提供されると、以降は自身の遂行改善のために内的な手がかりに頼らざるを得なくなり、外在的なフィードバックを減らしていく傾向となります。
このことから、脳卒中者において、結果の知識の即時性と頻度の限定は、対象者にとって必要なことになります。
また、対象者自身に課題をいかに効率良く行うかを決めさせるようにすることが大切です。
これにより、課題以外の状況で知識を汎化して使用することにもつながります。

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学習の汎化を促進する要素(方略)

様々な状況で行為を導く組織化された計画やルールのことをさします。
様々な課題を遂行できるための方略を学習することができていれば、獲得の時期の後に新たな知識がより汎化されやすくなります。
治療としては、

表面的には関連性がないように見える一連の課題を行うことを通して、選択された運動や認知のつながりを発展させることを模索している。

脳卒中リハビリテーション

とあります。
様々な課題において、選択された方略を使用していきます。
方略の汎化を促すために、選択された基礎技能は様々な文脈のもとで繰り返し練習を行います。
治療目標が座位でのリーチや、座位からの立ち上がりにおいて、選択された腰椎の運動だとします。
治療場面では対象者が行為の運動力学的モデルを理解できるように骨盤を誘導することから始めるかもしれません。
また、バランスボール上に座り、骨盤の動きで前後に揺れるようにさせるかもしれません。
リーチ動作練習では「背中を真っ直ぐ」「鼻がつま先を越えるように」などと指示して骨盤前傾運動を促すかもしれません。
最後に、今までの練習で行った腰椎の運動の関係性を強調しながら様々な場面での立ち座りを練習するようになります。
このように、様々な練習の変数を用いるような、絶え間ない一続きの練習スケジュールがよりよい転移を促す可能性が高くなります。

脳卒中後の対象者の運動方略発展を助けるプログラムには
①言語教示
②動作の視覚化
③徒手的誘導
④正確な適時フィードバック
⑤練習の一貫性
が重要とされており、これにより対象者は、運動遂行の運動力学についての内在的フィードバックを自身で提供することを発展させます。

認知的な課題の例を挙げます。
①初期課題では、トランプの1組を赤(ハートとダイヤ)、黒(スペードとクラブ)に分けます。
②転移に近い時期には、記号による4つのグループ、または奇数や偶数の2つのグループに分類します。
③転移の時期(中間)では、初期課題といくつかの同じ性質を有している課題(アルバムの最後に乗せる写真の束を分類するために、3つのカテゴリーを作る)
④さらなる転移の時期では、初期課題と概念は同じで、物理的には異なる課題(訓練室の図書の雑誌をグループごとに配置する)
⑤さらなる転移の時期では、日常における実用的な方略を自発的に使用できる課題(買い物前に、店ごとに買うもののリストを分類する)

上記のような様々な文脈におけるアプローチでは、自己評価と内在的な遂行の知識の使用が強調されます。
新規課題の前に、対象者自ら行為の正確性や効果を見積もり、課題と以前の課題との類似点や相違点などについて検討します。
課題遂行後は、自身の行為を評価し、今後のための手法を確認します。

練習状況

練習スケジュール:
無作為の(変化のある)練習では、課題のうちのどれかを習得する前に、多数の、多様な課題を対象者に求めるものです。
さらにこれらは無作為な順序で行われます。
リーチ動作と物品操作の改善の長期保持においては、無作為練習が効果的だとされています。
変化の富む練習は、状況に応じた柔軟性を促すことが可能になります。

文脈的干渉:
文脈的な干渉の強さが、新規課題の技能の保有と汎化(転移)を促すとされています。
これは、技能獲得の初期の困難さが、新たな状況下で使用する際に柔軟性の欠如を作り出すことを防ぐためだとされています。
また、学習獲得時期において、初期学習の困難さの克服のための方略を学習するさいに、文脈的干渉の強さにより融通を利かせられるようになるからともされています。
限定的な結果の知識のフィードバックが、文脈的干渉の例になります。
無作為な練習スケジュールは、強い文脈的干渉の例です。

全体練習と部分練習:
不連続なものよりも連続した技能(全体の課題遂行)の方が覚えやすいとされています。
また、部分的な型の運動技能は獲得しやすいですが、長期間の保持には向いていません。
そのため、更衣動作練習では、異なった部分ごとに教えられるよりも、一度に全て教えられる方がよいとされています。
全行程を同時に習得することが困難な場合、選択された課題の側面に手がかりを出したり、徒手誘導を行います。
これを行うことで、対象者は課題の中で達成するべきことを習慣づけることができます。

 自然な状況での練習:

練習によって獲得した技能の実生活状況への学習転移は、練習環境と実生活環境の類似性の程度により、大いに影響される。

脳卒中リハビリテーション

リーチ動作練習では実際の対象物を用いる方が、よりよく遂行できるとしています。
更衣、入浴動作では、その活動が最終的に行われる環境になぞらえた状況において技能が獲得された場合に、最もよく汎化されるとしています。
模擬的な状況ががよりよい汎化を促しますが、対象者全てが学習したことの汎化ができるわけではなく、そのような場合、在宅でのリハビリテーションが必要になります。

課題の分類(カテゴリー):
「クローズドタスク」は、環境が安定しており、予測でき、動作の遂行方法が一貫しているものをさします。
歯磨きや浴槽の出入りなどが当てはまります。
このような動作では、課題の繰り返し練習をすることにより正確で一貫した動作方法を身につけていきます。

「可変的で動きのない課題」は、

安定して予測可能な環境との相互作用を含むが、環境における固有の特徴は遂行で異なるようである。

脳卒中リハビリテーション

とあります。
飲み物を飲むことがそのような課題で、使用するコップの種類、飲み物の量が異なります。
更衣も、様々な生地や寸、スタイルを持った衣服があります。
このような課題では、対象者は1つ以上の動作方法を学習する必要があります。
様々な状況で行う機会が与えられることになります。

「一貫した動きの課題」は、対象者は遂行中に動きにおける環境的な状況の処理が必要です。
動きは一定で予測できるものです。
エスカレーターに乗ること、回転式のドアを通るなどがあります。
対象者は、動いている対象の予測可能な変化に対し、自身の行為のタイミングを正確に合わせるような練習が必要です。

「オープンタスク」では、動作遂行中に、対象が無作為に動いており、予測できないことに対して判断を行えるようになる必要があります。
関連する対象が動くであろう位置を予測したり、タイミングを合わせるような動きが必要になります。
電車内でのバランス保持、道路横断、キャッチボールなどがあります。
オープンタスク課題の遂行技能を発展させるには、予測できない環境での自然な練習がよいとされています。

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