HRQOLを評価できるものとして、SIP(sickness impact profile)があります。SIPは、慢性疼痛の方にも用いられる評価であり、リハビリテーション従事者としては把握しておきたいものの一つになります。今回、SIP(sickness impact profile)の概要と評価方法、結果の解釈についてまとめていきたいと思います。

SIP(sickness impact profile)の概要と評価方法、結果の解釈

HRQOLとは何か?

QOLという言葉は聞いたことがあると思います。

Quality of life(生活の質)です。

では、HRQOLとは何のことを指すのでしょうか。

HRQOLとは、Health-related QOLのことを指し、すなわち「健康関連QOL」ということになります。

HRQOL は、「身体機能」「メンタルヘルス」「社会生活・役割機能」が基本要素となり、 それに加え、「痛み」「活力」「睡眠」「食事」「性生活」などの要素も付加的に含まれることがある。

QOL の概 念とその評価

SIP(sickness impact profile)の概要

SIP(sickness impact profile)は、健康関連QOL(HRQOL)を包括的に評価できるものです。

SIPは、身体的領域(移動、可動性、身体介護と運動)、心理社会的領域(社会相互性、コミュニケーション、行動の変化、感情的行動)、その他の領域(睡眠と休息、栄養摂取、家庭管理、レクリエーションと娯楽、雇用)の3つのカテゴリーで、12下位尺度、136項目から構成されています。

質問項目は多いのですが、回答は「はい」「いいえ」の二択になっており、回答はしやすい評価方法となっています。

SIP(sickness impact profile)の評価方法

評価項目

 

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SR(睡眠と休息)
1. 休息のため一日,ほとんど横になって過ごしています.
2. 一日の大半は座って過ごしています.
3. 一日の大半は眠ったようにぼんやりしています.
4. 休息のため一日のうちで,たびたび横になります.
5. 座りながら,うとうとしています.
6. 夜,よく眠れません.たとえば,早く目覚めたり,長時間眠れなかったり,ときどき目覚めたりします.
7. 以前に比べて日中,眠ったり,うたた寝をします.

EB(感情的行動)
1. たとえば,他人の重荷になっているなど,自分のことを悪く言ったり,役に立たないと言ったりすることがあります.
2. 急に笑い出したり,泣き出したりすることがあります.
3. 痛みや不快感でよく嘆いたり,苦しんだりします.
4. 自殺しようとしたことがあります.
5. イライラ,そわそわして落ち着かないことがあります.
6. 痛みや不快感のため体の一部をなでたり,さわっていたりすることがあります.
7. 自分自身に対してイライラしたり,我慢ができなくなり,自分自身を非難したり,ののしったり,起こったことを自分のせいにてしまったりします.
8. 将来に対し悲観的なことを言ったりすることがあります.
9. 急に恐怖に襲われることがあります.

BCM(身体介護と運動)
1. 自動車に乗り降りする時や,浴槽への出入りの際に人の手を借りなければなりません.
2. 自分では寝起きや,椅子から立ったり座ったりすることができないので,人や物の助けを借りています.
3. 立っていられるのは,ほんの短い時間だけです.
4. ふらふらして,身体のバランスを保つことができません.
5. 手や指を動かす際に,少し制限があったり,困難だったりします.
6. 人の助けがないと立ち上がることができません.
7. 何かに寄りかからなければ,ひざまずいたり,かがんだり,前かがみになれません.
8. いつも同じような姿勢をとっています.
9. 動作がうまくできず,ぎこちないです.
10. 寝起きや,椅子から立ったり座ったりする時などには物につかまるか,杖や歩行器などを使います.
11. ほとんど一日中横になり寝たままでいます.
12. 同じ姿勢を保てず,しょっちゅう姿勢を変えています.
13. 自分でベッド上(寝床)で姿勢を変える際には,何かにつかまったりしなければなりません.
14. 入浴することは出来ますが,体を洗う時などに人の助けが必要です.
15. ひとりでは全く入浴出来ないので,人に入れてもらいます.
16. 人の手を借りて(さし込み)便器やしびんを使っています.
17. 靴や靴下やストッキングをうまくはけません.
18. 尿失禁しています.(気が付かないうちに尿が漏れたり,我慢できなかったりします.)
19. ひとりでボタン,ジッパー,靴ひもなどを結んだり,つけたり出来ません.
20. ほとんど一日中ねまきのままでいたり,きちんと身支度をしないで過ごします.(たとえば,ズボンや上着を身につけなかったり,下着のままで過ごす)
21. 便失禁しています.(気が付かないうちに便が漏れたり,我慢できなかったりします.)
22. とてもゆっくりやれば,ひとりで着物をきることが出来ます.
23. 人の助けがなければ,着替えることができません.

HM(家庭管理)
1. ほんの短時間だけ,あるいは休みながらだと,家のまわりの仕事ができます.
2. 家庭での日課が以前に比べて少なくなっています.
3. 以前行っていた家事を全くしなくなりました.
4. 以前のように家の中や庭の手入れや修理の仕事はしていません.
5. 以前行っていた買い物に全く行かなくなりました.
6. 以前行っていた家の掃除を全くしなくなりました.
7. 水道の蛇口をひねる,調理道具を便う,裁縫をする,大工仕事をするなどの手作業をすることは困難です.
8. 以前行っていた洗濯を全く行わなくなりました.
9. 家庭ではきつい仕事はしていません.
10. お金の支払い,銀行での用事,家計のやりくりなどの自分や家の用事をしなくなりました.

M(可動性)
1. 家(屋内)だけで過ごしています.
2. 一つの部屋の中だけで過ごしています.
3. 以前に比べるとベッド(寝床)で過ごす時間が長くなりました.
4. ほとんど一日中ベッド(寝床)で過ごします.
5. 今はバスや電車などの公共交通機関を利用しません.
6. ほとんど外出しなくなりました.
7. 近くにトイレが付いているところにしか行きません.
8. 町に出かけることはなくなりました.
9. ごく短時間しか外出しません.
10. 暗いところや,明かりのついていないところは人の助けを借りないと動き回れません.

SI(社会相互性)
1. 人を訪ねることは少なくなりました.
2. 人の家を訪ねることは全くありません.
3. 他人の問題に興味を抱くのが少なくなりました.たとえば,悩みを相談されても聞こうとしなかったり,援助をしようとしなかったりします.
4. まわりの人や物に対してイライラしやすく,しばしば当たり散らしたり,とげとげしく答えたり,批判したりします.
5. 親愛の情を表現しなくなりました.
6. 仲間との付き合いが少なくなっています.
7. 友達を訪問することが少なくなっています.
8. 他人による社交的な訪問をうけることを避けています.
9. 性生活は減っています.
10. 自分の健康がどうなるか,よく心配して口に出してしまいます.
11. 周囲の人と話をすることが少なくなりました.
12. 人に私に対して何かをさせる,やり方を押しつけるなど,要求することが多いです.
13. ほとんど一人で過ごします.
14. 家族とそりが合わず,意地悪をしたり,強情を張ったりします.
15. 家族によく腹を立て,殴ったり,怒鳴ったり,物を投げつけたりします.
16. 家族からできるだけ離れる(交流を絶つ)ようにしています.
17. 子供達に注意をはらうことが少なくなっています.
18. 家族と接することを避けています.たとえば,家族と
顔を合わせないようにしています.
19. 以前のように子供達や家族の世話をしなくなりました.
20. 以前のようには家族と冗談を言わなくなりました.

A(移動)
1. 以前に比べて歩かず,頻繁に立ち止まって休憩します.
2. 丘の上り下りができません.
3. 階段では手すりや杖などの補助具を使わないと昇り降りできません.
4. 人の助けを借りないと,階段の昇り降りができません.
5. 車椅子で移動しています.
6. 全く歩くことができません.
7. ひとりで歩けますが,足を引きずったり,ふらついたり,よろめいたり,足がつっぱたりします.
8. 人の助けを借りないと歩けません.
9. 以前に比べると,階段では,一段ずつ,止まりながらというようにゆっくり昇り降りします.
10. 全く階段を昇り降りできません.
11. 歩行器,松葉杖,杖を使ったり,壁や家具を利用しないと動き回れません.
12. 非常にゆっくりしか歩けません.

AB(行動の変化)
1. 混乱してしまうと一度にいろいろなことをしてしまいます.
2. 思いがけない小さな事故を起こします.たとえば,物を落としたり,つまずいたり,ぶつかるなど
3. 言われたことや,やってもらったことへの反応が遅いです.
4. いったん始めたことを最後まで続けられず中途半端になります.
5. 問題を理屈で解決することが難しいので,計画を立てり,物事を決めたり,新しいことを習う事などは困難です.
6. ときどき混乱したり,時間や場所がわからなくなったりします.(たとえば,自分がどこにいるのか,周りにいる人が誰なのか,今日が何日なのかなど)
7. 最近の出来事や物を置いた場所や人との約束など忘れることが多いです.
8. 集中力を長く保つことが出来ません.
9. 以前に比べて間違いが多くなっています.
10. 物事に集中することがうまくできません.

C(コミュニケーション)
1. 字を書いたり,タイプしたりすることがうまくできません.
2. ほとんど身ぶりで意志を伝えます.たとえば,頭をふる,指さす,手まね(手話)をするなど
3. 私の言うことは私をよく知っている人にしか理解してもらえません.
4. 話す時よく声のコントロールができないことがあります.たとえば,いきなり声が大きくなったり,小さくなったり,震える.
5. 自分の名前しか書くことができません.
6. すぐ近くか,面と向かってでなければ人と話すことができません.
7. 話の途中で詰まったり,どもったり,口ごもったり,早口で発音が不明瞭になるなど,うまく話せません.
8. 人にわかってもらうのにほねがおれます.(意志の疎通が困難です)
9. 緊張すると,人にわかりやすく話せなくなります.

W(雇用)
1. 私は全く仕事をしていません.
2. 家で仕事の一部をしています.
3. 以前と同じ量の仕事をこなすことができません.
4. くってかかる,つっけんどんに答える,すぐ批判する等仕事の同僚にあたることがあります.
5. 私は以前に比べて,短時間仕事をしています.
6. 軽い仕事ならできます.
7. 短時間に区切ったり,休みをとりながら仕事をしています.
8. 少し工夫することで以前と同程度の仕事をしています.たとえば,前とちがう道具や特別の補助具を使ったり,同僚に一部仕事を交換してもらうなど
9. 以前より仕事に対して注意力,正確さが低下しました.

RP(レクリエーションと娯楽)
1. 趣味や娯楽の時間が短くなりました.
2. 娯楽のために外出することが少なくなっています.
3. テレビ,読書,トランプなど動きの少ない娯楽や気晴らしも以前に比べて減っています.
4. テレビ,読書,トランプなど動きの少ない娯楽や気晴らしは全くしていません.
5. 活動的な娯楽の代わりに活動量の少ない気晴らしが増えました.
6. 地域での活動にかかわることが少なくなっています.
7. 以前より体を使う娯楽や活動が減っています.
8. 以前のように体を使う娯楽や活動は全くしていません.

E(栄養摂取)
1. 以前に比べて,食事の量はだいぶ少なくなっています.
2. 特別に調理された食べ物や道具を使うと自分で食べることができます.(たとえば,普通の食事を刻み食など形状を変えたり,特別な箸やスプーンを必要とする)
3. 特別な食べ物を食べています.たとえば,軟らかい物,刺激の少ない物,塩分の少ない物,脂肪の少ない物,糖分の少ない物
4. 液状(流動食)のみで固形の食べ物は食べません.
5. 食べ物はつまんでも,少しずつしか食べられません.
6. 水分はあまり飲まなくなりました.
7. 食事をするときに人に一部手伝ってもらいます.
8. 一人では全く食べることができず,食べさせてもらいます.
9. 全く食べることができず,栄養はチューブや点滴でとっています.

後藤葉子他「Sickness Impact Profile(SIP)日本語版の作成と慢性呼吸器疾患患者における信頼性および妥当性の検討」東北医誌118: 1-8,2006

 

SIP(sickness impact profile)の結果の解釈

SIP(sickness impact profile)では、各項目に「はい」または「いいえ」で回答します。

各項目には重み付けされたスコアがあり、合計点を算出します。

また、各領域(身体的領域(移動、可動性、身体介護と運動)、心理社会的領域(社会相互性、コミュニケーション、行動の変化、感情的行動)、その他の領域(睡眠と休息、栄養摂取、家庭管理、レクリエーションと娯楽、雇用))におけるスコアも算出可能です。

なお、SIPは得点が高いほどHRQOLが低いことを示しています。

 

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SIPの優れている所は、疾患がどのような行動に影響を及ぼしているかを把握できる点にあります。

SIPは、疼痛・疼痛関連障害評価のアウトカム指標としても利用が勧められています。

このような質問票を用いることによって、痛みの原因がどのようなことにあるのかを確認できたり、対象者本人も自分の状態に気づくことができたりと、副次的な効果も期待できます。

痛みに関連する行動を認識することにより、新たな解決方法の模索ができるなどの効果も考えられるので、ぜひ知っておいて欲しい評価の一つとなっています。

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