脳卒中片麻痺の方においては、利き手が不自由になることで箸操作や書字操作が行いにくくなるということが日常生活面で問題になります。リハビリテーションにおいて麻痺側上肢・手指の改善が見込まれない場合、利き手交換を行っていく必要があります。今回、箸操作の利き手交換用の練習が載っているパンフレットを作成しました。

目次

箸操作の利き手交換用練習パンフレット〜自主的なリハビリテーションで行ってほしいこと〜を作成しました!

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脳卒中片麻痺者における上肢運動麻痺の予後予測について

利き手交換を進めていく上では、対象者の運動麻痺がどの程度良くなるのかという予後予測をしておくことが、利き手交換を提案する過程においては重要になります。
対象者の運動麻痺がかなり改善することが見込まれれば、運動麻痺改善のためのリハビリテーションを進めていくべきですし、回復が見込まれないのであれば利き手交換を進めていかなければならないからです。

脳卒中片麻痺者における上肢運動麻痺の予後予測についてですが、麻痺側上肢で箸操作を行うためには実用種に回復するかの予後予測が必要になります。
いくつかの予後予測の指標がありますので紹介していきます。

福井による予後予測
実用手(stageⅥ)に達するには、発症直後にstageⅢ〜Ⅳレベルが保たれている不全麻痺、もしくは発症後1〜3ヶ月で上肢、手指がともにstageⅤに入ることが必要としている(1-3-5の法則)。
実用手になるための必要条件(上肢、手指)としては、N÷(3+3/4m)≧1としている(N:Br-stage、m:発症後月数(0.5≦m≦4))。これが十分条件となるには、知覚障害、不随意運動、小脳生失調がないことを加える。

補助手と実用手
補助手以上の回復には、発症4ヶ月以内でBrunnstrom Stage上肢4、手指4以上が必要と言われている。
実用手に達するためには、3ヶ月以内に上肢、手指がともにstage5に達し、深部感覚、失調、不随意運動がないものと限定されている。
なお実用手とは、Brunnstrom Stage手指、上肢とも正常、感覚ほぼ正常、不随意運動なし、簡易上肢機能検査で健側の90%以上の成績、の4点を全て満たし、日常場面で意識しなくても自然に手が出て、書字、箸操作が行え、その耐久性があるものとされている。

SIASを用いた予後予測(道免による)
発症1ヶ月の時点で、
手指SIAS3:5割以上の確率で実用手
手指SIAS4以上:8割が実用手

様々な予後予測がありますが、最悪準実用手レベルで、自助箸を使用できると考えられるため、それ以下の予後予測に終わるようであれば利き手交換を進めていくことが必要になります。

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箸操作の利き手交換の進め方

ここからは、箸操作の利き手交換の練習方法を確認していきます。
まずは、箸の正しい持ち方を確認していきます。

上の箸(操作箸)の正しい持ち方

上の箸(操作箸)正しい持ち方は、鉛筆の正しい持ち方と同じ持ち方になります。
(参考:http://www.kitaboshi.co.jp/howto/

①人差し指は指腹で上から押し当てる
②中指のつめの根元の箸を支える
③人差し指と箸の間に隙間が出来ないようにする
④人差し指よりも上に親指が来て、親指は力を加えず指腹で添える程度に箸を支える
⑤手のひらは、卵をにぎったような空間をつくる

下の箸(固定箸)の正しい持ち方

①親指の付け根に挟む
②薬指の第一関節に乗せる

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練習方法①

非利き手における箸操作練習として何が難しいかというと、箸先を合わせることです。
筆者も含めて、非利き手では箸先を合わせるのには苦労しますし、余分な力が入りやすくなってしまいます。
そのため、練習の第一段階としては、箸先を合わせた状態で様々な動きができることが重要になります。


①箸先を合わせる
②机の上で箸先を合わせたまま、腕を様々な方向に動かす

練習方法②

①箸先を合わせる
②箸先を合わせたまま手首を様々な方向に動かす

練習方法③

①箸先を合わせる
②箸先を合わせたまま「8の字」を描く

練習方法④

①箸先を合わせる
②机の上に箸を立て、上下に動かす

練習方法⑤

①箸先を合わせる
②手のひらを上下に返す

練習方法⑥

①上の箸(操作箸)を動かす

練習方法⑦

①下の箸(固定箸)を動かす

練習方法⑧

①上の箸(操作箸)と下の箸(固定箸)を持ち、箸先が合うように動かす

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つまみ動作の練習の難易度は?

「箸動作利き手交換における効果的練習方法の検討 ―脳血流動態,難易度及びパフォーマンスの観点から―」という論文では、つまみ動作の難易度について言及されています。

佐野ら(2016)によると、
箸では箸ぞう→割り箸→塗り箸
対象物では木片≒スポンジ→大豆
の順で難易度が難しいという結果だとしています。

前途した、箸の基本的な操作練習がスムーズになれば、対象物を用いたつまみ動作に移行するようにします。
その際、上記の難易度を考慮しながら物品を選択すると良いと思われます。
また、つまんだ物品を移動させる課題では、口元に移動させる練習も行う必要があります。

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PDFファイルのダウンロードはこちらから

パンフレットのPDFファイルをダウンロードしていただけます。
こちらから。

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