立ち上がり動作は、動作方法や誘導次第で行いやすさにかなり変化があります。さらに、立ち上がり動作に関する神経回路を考慮することでも、動作方法は異なってきます。今回、立ち上がり動作の誘導や、リハビリでの動作方法から神経基盤について、まとめていきたいと思います。

立ち上がり動作の誘導!リハビリでの動作方法から神経基盤まで!

立ち上がり動作の戦略:①体幹前傾

立ち上がり動作のリハビリや誘導場面において「身体を前に傾けて(おじぎして)」と指示することがあります。
体幹を前傾させることによるメリットには、
・重心が前方に移動し、足の支持基底面に重心を乗せやすくなる
・膝伸展筋(大腿広筋群)の力が少なくても動作が行える
ということがあります。
一方で、股関節や腰背部の力をしっかりと発揮することが必要になります。

 

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立ち上がりの動作戦略:②足を後方に位置させる

これも誘導時に「足を後ろに引いて」ということをよく誘導すると思います。
足を後ろに位置させることのメリットとしては、
・離殿時の支持基底面と重心の距離が近く、体幹前傾が少なくて良い
 →重心の前方移動が行いやすい
  股関節、腰背部の力が少なくてよい
・離殿時の重心位置が膝関節に近く、膝伸展筋力の力が少なくて良い
ということがあります。

戦略①とは違い、腰背部、膝伸展筋の両方の力が少なくてよいということは、かなりメリットがあります。

立ち上がりの動作戦略:③勢いをつける

誘導時に「勢いよく!!」といった声かけをすることはないでしょうか。
勢いをつけることのメリットは、
・離殿時に前方への重心速度を利用できる
 →重心が足の支持基底面から多少後ろに外れていても、立ち上がることができる
ということになります。

①〜③の戦略を見ていくと、②と③を組み合わせることができると、重心速度を利用しながら腰背部、膝伸展筋の力が少なくて動作が行えるということがわかります。
しかしながら、身体機能の低下があると勢いがつけられなかったりするので、対象者の状態に合わせた誘導が必要になるといえます。

 

立ち上がり動作と前庭脊髄路

今度は立ち上がり動作時の神経基盤を考えていきます。
前庭脊髄路に関して、

 前庭核から下行し、脊髄前索を通り、脊髄運動神経細胞、または介在神経細胞に終始する投射である。四肢の主に同側の伸筋の運動細胞群に対しては興奮作用を、屈筋の運動細胞群に対しては介在神経細胞を介して抑制作用を及ぼす。動物が何らかの外力を受けると、反射的に四肢の筋緊張が変化し、姿勢の崩れを未然に防ぎ、体平衡を保とうとする。これが前庭脊髄反射であるが、これを主に担うのが前庭脊髄路である。

https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%89%8D%E5%BA%AD%E8%84%8A%E9%AB%84%E8%B7%AF

とあります。
以下は、石井真一郎先生がセミナーで話されていたことです。
前庭脊髄路の働きにより、前方方向に向かう加速度を検出すると、同側の大殿筋(伸筋)を促通し、屈筋(腸腰筋)を抑制します。また、反対側の腸腰筋を促通します。
この前庭脊髄路は、立ち上がり動作時にも働き、立ち上がりにおいては前方方向の加速度を検出することで両側の大殿筋を促通するとされています。

 

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体幹の前傾VS勢いをつける

立ち上がりにおける神経基盤の話から、前庭脊髄路をonにするには、前方への加速度情報が重要になることがわかりました。
体幹を前傾させると、前方の加速度ではなく、下向きの加速度が生じてしまいます。
ということは、体幹を前傾させる戦略よりも、勢いをつける戦略の方が神経学的には立ち上がり動作にとっては良い影響を与えやすいことが伺えます。

おじぎをすると、前庭脊髄路には下向きの情報が入り、伸筋の促通が行えません。また、体重はつま先にかかるために大腿四頭筋の筋緊張は高まりにくい状態になります。
勢いをつけることは、前庭脊髄路に前向きの情報が入り、伸筋が促通されます。また、体重は踵にかかるため、大腿四頭筋の筋緊張が高まりやすくなります。

前庭脊髄路は歩行においても働くため、歩行につなげるためには勢いをつけた立ち上がり練習を行う方がよいとも考えることができます。

立ち上がり動作のバイオメカニクスや関連する事項については以下の記事を参照してください。
立ち上がり動作に必要な筋活動と立ち座りテスト
リーチ動作の段階付けによる訓練は立ち上がり動作の改善につながる

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