筋緊張亢進に対するアプローチの考え方としては、Ib抑制、シナプス前抑制、遠心性収縮によるアプローチがあります。今回、筋緊張亢進(痙縮筋)に対する遠心性収縮によるアプローチの考え方について、まとめていきたいと思います。

筋緊張亢進(痙縮筋)に対する遠心性収縮によるアプローチの考え方

筋緊張亢進とはどういう状態なのか

「筋緊張亢進」は、筋を他動伸張したときの抵抗感に用いられる言葉です。

「痙縮」とは、

反応強度が筋の伸張速度に依存する相同性筋伸張反射が病的に亢進した状態

〜中略〜

痙縮は伸張反射の亢進、筋緊張の亢進を特徴とし、重度になると、クローヌスや折りたたみナイフ現象が出現する。

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント

とあります。

脳卒中では伸張反射の異常が起こるとされ、そのことにより腱反射の亢進や被動性検査での抵抗感の亢進につながっています。
動作上の困難さでは、例えば前方にリーチしたい場合に、上腕二頭筋の筋緊張が高ければ、スムーズに対象物にリーチすることはできなくなります。

筋緊張にも関連することとして、連合反応に関する記事も参照してください。
脳卒中片麻痺者と連合反応!何がよくて何が良くないのか!

遠心性収縮とはどのような収縮様式なのか

筋の収縮様式には3種類があります。
・求心性収縮(筋が短くなりながら、起始と停止が近づく)
・遠心性収縮(筋が長くなりながら、起始と停止が遠ざかる)
・等尺性収縮(筋の長さが変わらない)

筋力トレーニングを思い浮かべてみると、ダンベルを持ちながら肘屈曲を行うのが上腕二頭筋の求心性収縮で、肘ゆっくりと伸ばしていくのが上腕二頭筋の遠心性収縮です。
遠心性収縮は、筋肉の粘性要素と深い関わりがあり、錐体外路(脊髄前角細胞のγニューロンにシナプスする)によりコントロールしています。
錐体外路は筋緊張のコントロールをしているところであり、筋緊張が低ければ遠心性収縮はコントロールされにくいといえます。
詳しくは、以下の記事を参照してください。
筋緊張のコントロールに関わる遠心性収縮とγ系!筋緊張を高めるアプローチ

筋緊張亢進(痙縮)と遠心性収縮の関係

先ほどのダンベルを持ちながら肘の曲げ伸ばしをするトレーニングを例に挙げながら考えていきます。

収縮力に関しては、肘を曲げる時にはダンベル(肘伸展方向への抵抗)よりも大きな収縮力を発揮させる必要があります。
逆に、肘を伸ばしていく時にはダンベルよりもわずかに小さな力でブレーキをかけながら収縮力を調整する必要があります。
この収縮力は、運動単位の参加数と発火頻度により調節される必要があります。
伸張性収縮と求心性収縮の違いについて、

運動単位活動パターンが短縮性収縮と伸張性収縮では異なる

入門運動神経生理学;ヒトの運動の巧みさを探る

とあります。

遠心性収縮と他の筋収を比較すると、遠心性収縮では、
・伸張反射の興奮性が低い
・皮質脊髄路の興奮性が低い
ことがわかっています。
しかしながら、筋紡錘からのインパルスの発射頻度は高いこともわかっています。
この理由としては、以下のようなことが考えられています。

・下行性入力の一部が抑制性の脊髄介在ニューロンに結合している
・筋の興奮性が低くとも運動野の活動性は高い

入門運動神経生理学;ヒトの運動の巧みさを探る

このようなことから、上位中枢からの制御により、伸張反射回路の興奮性を下げていることが考えられます。
初めの方に示しましたが、痙縮は伸張反射の亢進がみられるとありました。
遠心性収縮を利用することで、伸張反射の興奮性を抑制できるかもしれないことがわかります。

遠心性収縮と筋緊張亢進に対するリハビリテーション

筋緊張亢進(痙縮筋)に対して、Ib抑制(ストレッチ)を用いることは、筋緊張調整に役立ちますが、これは静的な場面でのことになります。
遠心性収縮では関節運動が行われるため、より動的な場面につなげることができるかもしれません。
例えば歩行中の筋収縮の様式は多くが遠心性収縮が用いられます。
筋緊張が高い方に対して、遠心性収縮による筋緊張のコントロールを学習することができれば、機能的な歩行につなげることができる可能性があります。
そのような場合、姿勢や参加する関節の数などを考慮して、課題を設定する必要がありそうです。
課題が対象者にとって難しすぎる場合、努力的な活動となりより筋緊張が亢進してしまう可能性も考えられます。

重要なことは、痙縮筋に遠心性収縮を繰り返し行わせることで、伸張反射回路の興奮性を低下できる可能性があるということです。
なお、遠心性収縮による筋緊張コントロールのエビデンスは明確なものがありません。