脳卒中片麻痺者において、関節運動が持続しにくいということを経験することが多いと思います。運動が持続するには、α-γ連関という機構の働きが重要になります。今回、運動持続のメカニズムと筋紡錘、α-γ連関の役割、リハビリへの応用について、まとめていきたいと思います。

運動持続のメカニズムと筋紡錘、α-γ連関の役割!リハビリへの応用!

運動神経生理学について勉強したい方は

 

脳卒中片麻痺者と運動の持続の障害

脳卒中の方は、損傷を受ける部位により運動野や錐体路に損傷が起こることがあります。
単関節または複数の関節を用いた運動を要求する際に、瞬発的に筋緊張を高めて収縮力を発揮することはできるが、その運動が持続しないということをよく経験します。
患者さんへの説明には「筋肉の持久力が低いので」というように説明することも多く、実際に神経原性の筋力低下も起こることからあながち間違いではないかもしれません。
ここで考えたいのは筋肉の持久力という視点の他に、筋緊張が低下するということが運動の持続力を低下させる要因にもなるということです。
では、筋緊張の低下と運動の持続力という視点について考えていきたいと思います。

α運動ニューロンとγ運動ニューロン

前途した、筋緊張の低下と運動の持続力を考えていくには、α運動ニューロンとγ運動ニューロンについて知っておく必要があります。

α運動ニューロン

α運動ニューロンは、筋繊維(錘外繊維)を支配し、伸張反射に関与し、実際の筋収縮を起こすために必要な運動神経細胞です。
ひとつの運動ニューロンがいくつかの筋繊維を支配し、それらを合わせて運動単位といいます。

γ運動ニューロン

γ運動ニューロンは、錘内繊維(筋紡錘の中に存在)を支配し、筋紡錘に入力します。

筋収縮における筋紡錘の役割

筋収縮において、その力の量は、参加する運動単位の数や筋繊維の型、α運動ニューロンの発火頻度により異なります。
ある運動を行うときに、どれくらい収縮すればよいのかを調整するのには、筋肉や腱の中にある感覚受容器が関与します。
この感覚受容器が筋紡錘やゴルジ腱器官です。

筋紡錘は、筋の長さやその変化率(速度)に反応する感覚受容器です。
筋紡錘は上位中枢からの入力を受け取っており、感受性の調節が可能だとされています。
また、筋紡錘から上位中枢(網様体賦活系や運動野)にも情報(筋の長さの変化)を伝えています。

筋紡錘は関節位置覚への関与(関節角度の変化は筋肉の長さによってわかるため)や、筋緊張の設定や調整、筋収縮の調整にも関与します。
筋緊張の設定では、例えばダンスにおいて足を伸ばして綺麗に見せたい場合、屈筋の筋緊張を低く設定し、伸筋の筋緊張を高く設定することが必要になります。このように、各動作に最適な筋緊張を設定する役割が筋紡錘にはあるとされています。
筋緊張の調整では、例えばでこぼこ道を歩く際に、転倒しないためにはどの方向からの伸張に対してもすぐに反応する必要があります。そのためには、運動ニューロンからの入力が高まっていることが必要です(γループ:γ運動ニューロン→筋紡錘↑→Ⅰa繊維↑(求心性、筋の伸びの程度と速さを感じる)→α運動ニューロン↑)。
ある動作を行うときには、主動作筋を促通し、拮抗筋を抑制することでスムーズな動作が行われます。
非常に重いかばんを肘を曲げて持つとき、重さに負けてそのうち肘が伸びてきますが、その筋肉の伸張が筋紡錘の活動性を高め、伸張反射を起こし肘屈筋の収縮力を高めることができます。

筋紡錘の活動性や伸張反射は意識的に制御できるとされていますが、そのためには筋紡錘や他の感覚受容器からの求心性のフィードバックが必要になります。
リハビリテーションにおいて感覚が重要だと言われているのは、その辺りの関係性ともつながりがあることがうかがえます。

筋収縮の持続とα運動ニューロン、γ運動ニューロンの関わり(α-γ連関)

関節運動が持続するためには、筋肉の長さが一定に、自動的に調節される必要があります。
α運動ニューロンが興奮すると筋収縮(錘外筋の短縮)が起きるのは説明しましたが、α運動ニューロンだけが興奮してしまうと、筋紡錘には負荷がかからなくなり、筋の長さの変化やその速さを検出することができなくなります。
すると、Ⅰa繊維の抑制により主動作筋が抑制され、Ⅰa抑制繊維の脱抑制により拮抗筋が促通され運動が停止してしまいます。

そこで、運動中にはγ運動ニューロンも同時に興奮することで錘内繊維を収縮させます。
すると、Ⅰa繊維の興奮により主動作筋が促通され、Ⅰa抑制繊維の抑制により拮抗筋が抑制され、運動が持続します。
この一連の働きを、α-γ連関といいます。

α-γ連関により筋紡錘の感受性を高めるにはどうすればよいか

α-γ連関の機能を高めるには、筋肉の収縮様式としては等尺・求心性収縮を行う必要があります。

筋収縮時の筋紡錘のたるみを防ぐ機能的必要性からα-γ連関によって筋紡錘の感度を高める機序が働くとともに、筋張力増大に伴って伸張反射回路の興奮性は増大する

入門運動神経生理学: ヒトの運動の巧みさを探る

川平法(促通反復療法)においても、手指伸展の促通の際に、指の伸びを邪魔しない程度に抵抗(求心性収縮と等尺性収縮の間)をかけておくのですが、これはα-γ連関の機能を高めることにより持続的な手指の伸展を実現させているのだと考えられます。
このようなことから臨床的には、動きがあまりみられない時期には、動きを出したい側とは反対方向にストレッチをかけ、伸張反射を誘発し、求心性収縮を促通します。
求心性収縮がうまくいけば、動きを邪魔しない程度にやや抵抗をかけながら、α-γ連関の機能を高め、運動が持続的に起こるようにしていくことが必要になります。