女性脊髄損傷者の妊娠、出産、育児については、周囲からサポートが受けられる場合と、そうでない場合により、対策が異なってきます。今回、脊髄損傷者の妊娠、出産、育児について知っておくとよいことを、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 脊髄損傷者の妊娠、出産、育児について知っておくとよいこと

妊娠期の身体的問題

妊娠期の身体的な問題としては、
貧血
尿路感染症
自律神経過反射

褥瘡
切迫流産
切迫早産
妊娠高血圧症候群
前期破水
膣感染症
便秘
尿もれ
などがあります。
特に、貧血、尿路感染症、便秘、尿もれのある方が多いとされています。

日常生活上の問題

妊娠中期では移乗動作が困難になることがあります。
排泄では、排便時にお尻に手が届きにくく座薬挿入、摘便、後始末の動作が困難になります。
排尿は、膀胱圧迫により尿もれが多くなります。
導尿回数を増やすことになりますが、その動作も難しくなります。
入浴は自立して浴槽に入ることが難しくなります。
家事動作全般、外出なども行いにくくなります。

病院への受診の問題

自動車の運転や車椅子の積み下ろし、座席への移乗が困難となり、外出が困難となります。
内診台のある診察室に車椅子で入れないことも多く、診察には多数の介助により内診台に移乗しなくてはならないこともあります。
身障者用トイレがないと導尿を行えません。
車椅子用体重計がなければ、体重管理が行えなくなります。

問題への対応

身体的問題に関しては、本人や家族に説明しておくことで、起こりうる問題点について理解してもらうことが重要です。
尿路感染症、膣感染症は正しい排尿管理と清潔保持により予防可能です。
貧血や下肢の浮腫に対しては、食事内容や塩分摂取に注意することで軽減も可能です。
産科スタッッフと、本人、家族、リハビリテーション従事者が連携できることが大切です。

日常生活上の問題に対しては、家族の支援が受けれない場合、福祉サービスや民間サービスを確認します。
本人、家族のみで頑張りすぎないようにすることが重要です。

出産に関する問題点と対応

分娩時のリスクには、自律神経過反射(高位損傷者)による血圧上昇があります。
褥瘡、深部静脈血栓症などに対する管理も重要です。
自律神経過反射、貧血、切迫早産などで早期から入院する場合、安静によるADL低下が考えられます。

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育児での工夫点

a.散歩、外出
赤ちゃんを抱きながらの車椅子移動はリスクがあります。
段差のつまづきや、赤ちゃんが激しく動いた時に赤ちゃんを落とす危険性が高くなります。
子供が歩くようになると、車椅子では追いつけないという可能性もあります。

工夫点:
①家族や友人、ママ友と出かける
②赤ちゃんを前向きに抱き、抱っこひもで車椅子に固定する
③こどもが立てるようになったら、車椅子のステップに立たせ、自分の体に紐で固定する

b.沐浴
床にベビーバスを置くことは車椅子では困難なことが多く、手が不自由だと湯の中で赤ちゃんを支えることも困難です。

工夫点:
①家族やママ友に手伝ってもらう
②臀部ずり落ち防止と頭部サポートつきのベビーバスの使用
③キッチンにベビーバスを入れて沐浴し、キャスターつきワゴンにタオルを敷いて、その上で着替えを行う

c.着替え、おむつ交換
乳児の動きが激しいことで、困難なことが多くなります。
ベビー服は紐で結ぶタイプが多く、手が不自由だと扱いにくくなります。

工夫点:
①車椅子で膝上にクッションを固定し、その上に子供をのせて交換する
②ベビーベッドの工夫(車椅子で直角に入れるように)
 ・市販ベビーベッドの脚部分を切り取り、柵は観音開きにする
 ・パイプ机をベッドの代わりに使用する。柵はブックスタンドを厚手の布で覆う。
③ベビー服の紐部分をマジックテープにする

d.授乳
赤ちゃんを安定した姿勢で抱き、授乳させることが困難になります。

工夫点:
①本人がベッド臥床し、赤ちゃんを胸の上に抱き授乳させる
②車椅子で、膝上にクッションを固定し、赤ちゃんを乗せる

e.その他の問題や工夫点
①排便では時間がかかるため、その間家族や友人に世話をしてもらう
②自動車のチャイルドシートに乗せることが難しい
③子供が車椅子のしたに入り込み、身動きがとれなくなる。車椅子にぶつかり怪我をしてしまう
④車椅子やベッドから落ちたときに抱き上げられない
⑤本人や子供が病気のときに病院に行けない
⑥授業参観などでは、移動を先生や参加している父母に支援してもらう

日常生活上の工夫点

①移動では、介護タクシーを使用し、自室から病院玄関までの送迎介助をしてもらう

②家事では、宅配サービスを使用する

③電動ベッドをレンタルする。

④電動昇降椅子を利用し、車椅子から床に一人で移る(赤ちゃんを床から抱き上げれるように)

⑤自立支援法や自治体のサービス:
自立支援法にて授乳、沐浴、子供が病気の際に病院につれていくサービスの利用
産前産後ヘルパー、産褥サポート、個人保育、シルバー人材センターの利用

参考文献

道木 恭子「女性脊髄損傷者の妊娠・出産・育児」総合リハ・39巻7号・639〜642・2011年7月

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