脊髄損傷者で痛みや異常感覚が生じている場合、機能低下やADL低下につながり、患者にとって大変大きなストレスがかかることになります。今回、脊髄損傷(不全型)の痛み、異常感覚の発生機序とリハビリテーションについて、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 脊髄損傷(不全型)の痛み、異常感覚の発生機序とリハビリテーション

引用、参考文献

栗田 英明ら「不全型脊髄損傷に伴う痛み・異常感覚と理学療法」PTジャーナル・第43巻第3号・2009年3月

脊髄損傷者の痛みの分類

脊髄損傷者の痛みには、侵害受容性疼痛と神経因性疼痛の2つに分けられます。
侵害受容性疼痛は筋骨格系に生じる痛みと内臓痛に分けられます。
神経因性疼痛は損傷髄節レベルよりも上位、損傷髄節レベル、損傷髄節レベルよりも下位レベルに分けられます。

筋骨格系の痛みは脊柱の不安定性からくるものや、使いすぎによる上肢の痛み、痙縮による痛みなどがあります。
内臓痛は排尿、排便時の腹部の痛みや、自律神経過反射による頭痛などがあります。
神経因性疼痛で、損傷髄節レベルよりも上位の痛みでは、手根管症候群などの末梢神経による痛みと複合性局所疼痛症候群(CRPS)があります。
損傷髄節レベルの痛みでは、神経根の痛みと脊髄由来の痛みがあります。
損傷髄節レベルよりも下位レベルの痛みでは、脊髄由来の痛みがあります。

神経因性疼痛を求心路遮断痛とそれ以外に分けることが重要とされています。
求心路遮断痛は、

正常な痛覚求心路、主に脊髄視床路系が、その伝導路のいずれかのレベルで遮断された結果として生じる痛みである。

 栗田 英明ら「不全型脊髄損傷に伴う痛み・異常感覚と理学療法」PTジャーナル・第43巻第3号・2009年3月

とあります。
求心路遮断痛の臨床的特徴には以下のようなものがあります。
①脊髄視床路系の遮断:
 損傷髄節レベル以下での温痛覚鈍麻がみられる
②遮断されたレベルよりも口に近い側の脊髄視床路系の活動過敏
 損傷髄節レベル以下で異常な自発痛がある
③脊髄後索内側毛帯系の痛み抑制機能が失われる
 損傷髄節レベル以下での誘発痛がある

求心路遮断痛はさらに2つに分けられます。
神経根を含むそれよりも末梢での障害の場合(馬尾損傷、神経引き抜き損傷など)と、脊髄後角を含むそれよりも中枢側での障害の場合(脊髄損傷後の痛み、視床痛など)です。

 

損傷髄節レベル、損傷髄節レベルより下位に生じる痛みの発生機序

損傷髄節レベルより上位に起こる痛みは、一般的な疼痛の問題と考えます。

損傷髄節レベルでの帯状の痛みは脊髄後角由来の痛みとされています。
損傷髄節レベルより下位の痛みは脊髄視床路や精髄網様体路由来の痛みとされています。

①Wind-up現象
可塑的現象のひとつで、C繊維に低頻度の刺激を行うと脊髄後角レベルの深層の細胞の応答が徐々に増え、発火頻度が高くなる現象です。
刺激をやめても発火の持続が確認されています。
皮膚に痛み刺激を繰り返した際の痛みの強さが徐々に大きくなる反応と似ています。

②軸索発芽
座骨神経を切断したラットで、非侵害性感覚情報を伝えるAβ繊維が軸索発芽を起こすことが確認されています。
Aβ繊維は脊髄後角の第Ⅲ層以下に終末しますが、損傷により軸索発芽を起こし、第Ⅱ層の膠様質に侵入します。
このことは、触刺激が痛みを誘発するアロディニアの発生機序と関連があると考えられています。

③Ephase形成
末梢神経の損傷では、近くの交感神経が神経突起を作り、C繊維との間に架橋(Ephase)を作ります。
Ephaseが形成されると、交感神経は常に発火している状態となり、慢性疼痛を感じることになります。

④長期増強、長期抑制
長期増強は、海馬でシナプスが長期間増強する現象で確認されます。
ラットの実験では、海馬でみられる長期増強が、脊髄膠様質細胞でも誘発されるとの報告があります。

長期増強は、脊髄後根で頻回刺激を行った後に、興奮性シナプス後電位の振幅増大が数時間以上持続することから、痛覚過敏などの病的状態の発生原因となる可能性がある。

 栗田 英明ら「不全型脊髄損傷に伴う痛み・異常感覚と理学療法」PTジャーナル・第43巻第3号・2009年3月

長期抑制は低頻度でAδ繊維を刺激すると誘発されるとされています。
しかし、これがどのような症状と関係あるかはわかっていません。

⑤下行性痛覚抑制機構の可塑的変化
下行性痛覚抑制機構では、痛みを選択的に抑制しています。

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卵巣摘出ラットでの神経繊維終末のセロトニン受容体数は変化なく、C繊維終末のセロトニン受容体数が減少したとの報告があります。
このことは、C繊維に対する下行性痛覚抑制機構の機能低下が起こり、伝達物質放出の抑制がされなくなり、知覚過敏の原因になる可能性があると考えられています。

⑥中枢神経系の可塑的変化
髄節レベルよりも下位に痛みを有する患者では、正常な感覚入力がなされない視床の活動が亢進し、その視床部位は異上感覚を引き起こしているとの報告があります。
神経因性疼痛患者では、視床や内包に電気刺激を入力すると痛みを感じ、時に痛みを再現することもあるとされています。
健常者ではそのようなことは滅多にみられないことから、視床における可塑的変化が関与していると考えられます。

リハビリテーション

①経皮的電気刺激療法(TENS)
有効性は不確かとされています。
筋の痛みや損傷髄節に起こる痛みには効果を認めることもありますが、損傷髄節レベルよりも下位レベルの痛みでは効果がないとの報告があります。

②運動療法
慢性痛から活動量低下が起こり、廃用症候群を起こしていることがあります。
そのような場合、運動療法により廃用症候群を改善す必要があります。
これが、心理的側面の関与による痛みの影響を少なくすることにつながると考えられます。

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