身体障害、精神障害、認知症など、リハビリテーション対象者には様々な方がおられますが、精神症状の主観的な評価を実施することで、より対象者の全体像を捉えやすくなることがあります。今回、精神症状の主観的評価として”気分と疲労のチェックリスト”を紹介していきたいと思います。
目次
精神症状の主観的評価〜”気分と疲労のチェックリストを用いて”〜
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筆者の経験
私は以前、統合失調症が既往歴にある脳卒中の対象者を担当させていただく機会がありました。
運動麻痺は重度でしたが、リハビリテーションを行うことでADLなどの活動レベルは改善し、対象者の様子から、気分状態なども調子が良さそうという判断をしていましたが、突然一過性の健忘に陥るということを経験しました。
私がこの方から学んだことは、身体的機能・活動面の回復と、精神状態の改善は必ずしも一致しないということでした。
その時に、主観的な精神状態や気分状態の評価をしておく必要があると強く感じました。
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精神症状が再燃するきっかけ
では、精神症状が再燃するきっかけとしてはどのようなことがあるのでしょうか。
大きくは2つの要因に分けることができます。
現実の問題に直面した時:否定的な感情や将来への不安、絶望感
不安の増強:入院している事を負担に感じる、退院後の社会生活を心配
私が経験した対象者の場合、不安の増強が、精神症状の再燃のきっかけになったのではないかと、今振り返るとも思います。
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精神症状の主観的評価の重要性
次に、精神症状の主観的評価が大切になる理由を考えていきます。
まず知っておきたいこととしては、他者評価と自己評価にはズレが生じている事があるということです。
筆者の経験した症例を振り返ると、対象者は表面上は落ち着いており、コミュニケーション面においても特に問題があるようには私は感じませんでした。
しかし、一過性の健忘を生じた事実からすれば、外面上の他者評価と、内面上の自己評価にはやはりズレが生じているということでしょう。
よくあるパターンとしては、
患者の様子観察:他患との交流もあり、病棟内で落ち着いて穏やかに過ごしている
内面:じつは虚しさや焦りを感じている、他患との交流を煩わしく感じている
などということが挙げられます。
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気分と疲労のチェックリストの概要と検査項目
気分と疲労のチェックリストは、主に視覚的アナログスケールを用いていることが特徴になります。
気分状態、疲労感、回復感の3つのカテゴリー、13項目から構成されます。
それぞれ「感じない」〜「強く感じる」(他の選択肢もあり)の間で、視覚的に当てはまる所にチェックを入れていきます。
また、具体的なことを記入する項目もあります。
検査項目が少ないことから、所要時間も短く実施できます。
検査項目は、
気分状態:緊張・不安、抑うつ・自信喪失、イライラ・ムシャクシャ、混乱・当惑、あせり・たいくつ感
疲労感:疲れやすさ、人疲れ、頭・思考疲れ、身体疲れ
回復感:体調、意欲・活力、回復状態
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気分と疲労のチェックリストの臨床的な用い方
筆者の場合、精神状態や気分状態に何か問題があると感じた場合には、気分と疲労のチェックリストを用いています。
その上で、ある程度の期間を設けながら主観的な状態の変化をチェックしていくことで、こちらのアプローチや対象者を取り巻く環境が、対象者の精神・気分状態に影響を与えていないかを判断する材料にすることがあります。
また、気分と疲労のチェックリストを用いることで、対象者自身が自分の精神・気分状態を知ることにも役立てることができるかもしれません。
強く感じるような項目があれば、それがどこから来るのかを対象者とセラピストで共有することも可能で、改善可能なことがあればアプローチもできます。
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