脳卒中片麻痺者の上肢機能評価とリハビリテーションに必要な実践的知識をまとめていきたいと思います。
目次
脳卒中片麻痺者と上肢機能評価、リハビリテーションに向けた実践的知識と方法!
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参考文献
リハビリテーション臨床のための脳科学 〜運動麻痺治療のポイント
富永 孝紀,市村 幸盛,大植 賢治,河野 正志 協同医書出版社 2012-07-14
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片麻痺能力回復と自立達成の技術―現在の限界を超えて
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脳外臨床研究会和歌山支部研修会 「苦手意識から克服 脳卒中基礎セミナー 運動麻痺の”動かせない”がわかる!〜基礎から評価の視点を明確に〜」 講義資料
竹川 徹ら「上肢痙縮に伴う肩関節機能障害に対するボツリヌス毒素治療」JOUNAL OF CLINICAL REHABILITATION Vol.23 No.10 2014.10
大野 勘太ら「脳卒中後麻痺側上肢の使用行動を促進するためのアプリケーションツール:ADOC for Hand」臨床作業療法 Vol.14.No.4 2017
田部 浩文「生活場面への汎化の定着を強化する行動療法(トランスファーパッケージ)ーその3 ホームスキル課題(宿題)」臨床作業療法 Vol.14.No.4 2017
高見 美貴ら「片麻痺患者の包丁操作能力ーMFS、握力、上肢能力テスト(上田式)、箸操作実用性での検討」
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脳卒中運動麻痺〜一次運動野と皮質脊髄路による捉え方の違い〜
一次運動野と皮質脊髄路(錐体路)による運動麻痺の違い
運動麻痺は随意運動実行系の障害であり、運動の計画や調節(大脳基底核や小脳)の障害は関係ありません。
運動麻痺には一次運動野と皮質脊髄路(錐体路)によるものがあります。
これらの違いを知る事により運動麻痺の解釈が行いやすくなります。
一次運動野による運動麻痺の特徴
一次運動野には、身体部位に対応したマッピングがあり(体部位局在)、そこを刺激すると対応した身体部位の運動が起こります。
また一つの筋肉に出力しているだけでなく、複数の筋肉に出力している領域も存在します。
図を見てもわかるように、運動野Aが障害された場合には、それを補うために運動野AB、ACが働くことになります。
この状態がいわゆる共同運動という現象になります。
一次運動野はスイッチの役割を担っており、一次運動野が障害されることにより分離運動が障害されることになります。
皮質脊髄路(錐体路)による運動麻痺の特徴
一次運動野から出た皮質脊髄路は放線冠、内包、大脳脚を通って延髄の錐体で交叉して反対側の脊髄を下降して脊髄前角の運動細胞へと伝わります。
皮質脊髄路は筋収縮の強さ、すなわち
①何個の運動細胞が興奮するか(量)
②1つの運動細胞がどれだけ強く興奮するか(強さ)
という事に関与しています。
そのため、皮質脊髄路が障害されると、脊髄運動細胞の興奮が低下し、筋収縮が弱くなります。この状態を神経原性筋力低下といいます。
改めて運動麻痺とは
一次運動野から皮質脊髄路のどこかが損傷されています。
皮質の障害であれば、分離運動障害が生じます(Brs-stageⅠ〜Ⅲ)。
皮質脊髄路の障害であれば、筋力低下が生じます(Brs-stageⅣ以上)。
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Brs-stageの評価と一次運動野、皮質脊髄路
運動麻痺とは何か
運動麻痺とは、随意運動の機能障害だとし、運動の実行系には一次運動野と皮質脊髄路が関与しています。
一次運動野からの運動出力は皮質脊髄路により脊髄前角細胞に伝達され、筋に伝わり随意運動が発現されます。
一次運動野と皮質脊髄路の違い
脳を作る神経細胞において、細胞体は「運動の指示」をし、軸索は出力装置で情報を「維持し、速く伝える」役割があります。
細胞体は一次運動野に存在し、運動の指示(運動パターンの出力・抑制)を行います。また軸索(髄鞘含む)は皮質脊髄路において情報伝達を行います。
運動麻痺の臨床評価
脳卒中運動麻痺の評価ではBrs-stageをよく評価として選択します。
一次運動野では運動パターンの出力・抑制を行うので、評価としては「単関節が単関節で全方向に動くか(共同運動がみられないか)」をみていきます。
すなわち、動かしたい関節に加えて他の関節も一緒に動いていないかを評価します。
皮質脊髄路では下位運動ニューロンの発火・動員数に関与し、収縮の力(筋出力)をみていきます。
また、発火の速度にも関与しており、発火までのスピードをみていきます。
発火のスピードは、Brs-stageⅥでの評価(スピードテスト)となります。
皮質脊髄路では、運動野からの指示(力・スピード)がどのように伝達されているかを評価しますが、そのためには自動運動あるいは抵抗運動を行い、その際に他の関節が動いてこないか(代償運動)を評価します。
また自動運動をしたときにすぐに筋出力を発揮できるかも評価します。
さらに、運動を数回行うことで変化があるか(できなくなるか)を評価します。
Brs-stageは何を見ているか
Brs-stageは運動麻痺の回復過程を表しているものであり、運動麻痺のみを評価しているわけではありません。
Brs-stageでは痙性麻痺の要素(①伸張反射の異常②異常な連合反応③共同運動パターン④運動単位の動員異常)を全てみており、治療にはつなげにくいことを指摘していました(①②は運動の実行系以外の要素)。
stageⅠ、Ⅱでは運動麻痺以外の要素が強く、Ⅲ、Ⅳでも筋緊張の要素も影響します。
運動野の損傷による共同運動と皮質脊髄路の損傷による共同運動
運動野の障害では、運動パターンの出力・抑制の障害により、共同運動が出現しますが、皮質脊髄路の障害においても分離運動が行いにくいということがよくあります。
皮質脊髄路の障害では、解剖学的に考えると分離運動の障害は起こらないといえます。
皮質脊髄路の障害で分離運動が行いにくい理由として、筋出力の低下により代償運動が起こっている可能性が挙げられます。
皮質脊髄路の障害では、stageⅣ以上の可能性があり、そのため、力が弱くなっているのを助ける(除重力位や自動介助運動)により単関節運動が行えるかを評価する必要があります。
また治療においても、分離運動の練習をするというよりは筋出力を向上させるための練習を行わなければいけません。
皮質脊髄路の損傷後の脳活動は、一次運動野以外の皮質が過剰に働き、情報伝達がスムーズになされず、損傷を受けていない一次運動野における適切な出力が行えず、共同運動が出現します。
このことから、「頑張って」などと無理に動かそうとすると、さらに脳活動のバランスを崩すことにもつながるため、動く範囲で、アシストしながら、動かし筋出力を高めていく必要があります。
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片麻痺の上肢の評価とアクティビティを用いたリハビリ
片麻痺上肢機能評価にはどんなものがあるか
片麻痺上肢機能評価には、様々なものがあります。
理学・神経学的所見による評価では、ROMテスト、筋力テスト、感覚テスト、深部腱反射があります。
中枢神経障害の回復過程に注目した評価では、Brunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストがあります。
片麻痺上肢の運動機能を運動パターンと課題遂行能力からみた評価では、脳卒中上肢機能評価(MFT)があります。
脳卒中の機能障害を包括的にみた評価では、脳卒中機能評価法(SIAS)、Fungl-Meyer評価法などがあります。
片麻痺以外の上肢機能にも使用可能なものとして、簡易上肢機能検査(STEF)があります。
臨床でよく用いられているBrunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストは、治療目標が次の段階であり、機能回復に沿った評価と治療が行えるメリットがあります。
また回復段階の理解しやすく、臨床像の把握も行いやすいという利点があります。
中枢性運動麻痺の回復
中枢神経性麻痺では、質的変化のみと捉えられがちですが、中枢性運動機能障害にも量的な筋力低下はあります。
Brunnstrom stageと徒手筋力テストを対応させた場合、 stageⅠでは筋収縮が見られないためMMT0となります。
stageⅡはMMT 1に対応します。
stageⅢで十分な共同運動が見られるとMMT3以上となります。
このようなことから、運動麻痺の回復過程では質的変化(パターン)と量的変化(筋力)があることがわかります。
Brunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストの特徴と問題点
Brunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストでは、回復段階により分類しています。
Brunnstrom stageではstage1からⅢまでは共同運動が完成する過程となり、stageⅣ〜Ⅵまでは共同運動からの分離となります。
共同運動には屈筋共同運動と伸筋共同運動があります。
屈筋共同運動 | 伸筋共同運動 | |
肩甲帯 | 挙上・後退 | 前方突出 |
肩 | 屈曲・外転・凱旋 | 伸展・内転・内旋 |
肘 | 屈曲 | 伸展 |
前腕 | 回外 | 回内 |
分離運動では、屈筋共同運動と伸筋共同運動の肩甲骨、肩、肘、前腕の各要素が入り混じりながら可能となっていきます。
上肢回復段階のテストにおける主動作筋については、
肩甲帯 | 肩 | 肘 | 前腕 | |
屈筋共同運動 | 上方回旋筋群、菱形筋 | 三角筋中部 | 上腕二頭筋 | 回外筋群 |
伸筋共同運動 | 前鋸筋 | 大胸筋 | 上腕三頭筋 | 回内筋群 |
腰の後ろに手 | 下方回旋筋群、菱形筋群、広背筋、大円筋など | 大胸筋、内旋筋群 | 上腕二頭筋 | |
前方水平挙上 | 上方回旋筋群、前鋸筋 | 三角筋前部 | 上腕三頭筋 | |
肘90°で回内外 | 内旋筋群 | 上腕二頭筋 | 回内筋群 | |
横水平挙上 | 上方回旋筋群 | 三角筋中部 | 上腕三頭筋 | 回内筋群 |
前方頭上に挙上 | 上方回旋筋群、僧帽筋など | 三角筋前部 | 上腕三頭筋 | |
肘伸展位で回内外 | 上方回旋筋群、前鋸筋 | 三角筋前部 | 上腕三頭筋 | 回外筋群 |
というようになります。
Brunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストでは、上肢の運動をひとまとめにしてみていますが、臨床場面では表のような典型的パターンを示す患者ばかりではありません。
様々な上肢の状態でも同じstage、同じgradeとなることもあります。
各テストの動作を行ったときに、分離できつつある関節運動があっても、stageⅢと表現されてしまうことがデメリットとなります。
様々な運動機能をみるための片麻痺の上肢機能評価
片麻痺者の上肢を実用手、補助手など、「良い手」にしていくためには、上肢全体としてみるのではなく、肩、肘、前腕、手関節、手指と個別に評価していく必要があります。
肩の屈曲と外転、肘の屈曲と伸展、上肢を体側につけ肘屈曲位で前腕の回内外など、評価したい動きを行わせ、このときに共同運動の支配下で運動が実行されるのか、もしくは共同運動から分離した単独運動が行われるのかを確認します。
また、肩、肘、前腕などにおける随意運動がどの程度可能か、各関節運動の筋力も評価します。
このような評価を行うことで、質的(パターン)と量的(筋力)の両方を評価していきます。
共同運動に支配されている運動でも、分離されつつある運動でも、分離された運動でも、各関節に相対的評価である徒手筋力テストを行うと、片麻痺患者において各関節の筋力に差があることが多い。
作業療法のとらえかた P14
片麻痺患者の上肢挙上運動では、肩甲骨と肩甲上腕関節の動きの割合が、非麻痺側上肢と比較して異なることが多くなります。
ほとんどの場合、肩甲骨上方回旋の動きが乏しく、肩甲上腕関節の動きにより肩甲骨の動きを代償しています。
逆に肩甲骨の動きが少ない場合では、三角筋の活動が低下しています。
上肢の効果的な使用のためには肩甲骨の前方突出(外転)も重要になるため、評価しておく必要があります。
12段階グレード片麻痺機能テストでは、スピードテスト(予備テスト含む)がありますが、予備テストは肘伸展での側方への90°挙上で、肩の挙上が十分でないときに行われます。
通常のスピードテストでは手を頭上に挙げますが、両者には肩甲骨の上方回旋の差があり、予備テストでは、肩甲骨の動きを肩甲上腕関節で補うことができます。
スピードテストを実施して、最高の回復段階の判定を得たとしても、徒手筋力テストを行うと麻痺側上肢の筋力低下、筋持久力低下、筋疲労をおこしやすい特徴があります。
手指の回復段階と評価
指の回復段階の動作としての評価には、下表のようなものがあります。
Stage1 | 随意運動なし |
Stage2 | 指の総握りのわずかな出現 |
Stage3 | 指の総握りが十分に可能、総開きは不能 |
Stage4 | 指の総開きが自動的に少し可能 横つまみが可能、母指の動きで離せる |
Stage5 | 指の総握りが全可動域で可能 指伸展位で指外転が可能 指腹つまみ、円柱or球握りが可能 対向、3指つまみなどが可能 |
Stage6 | 指屈曲位で外転可能、ボール投げ、ボタンのはめはずしなど可能、多少の巧緻性にかけてもほぼ正常動作が可能 |
横の分離 | 縦の分離 |
指折りかぞえ 母指のみ伸展 示指のみ伸展 母指橈側外転 母指掌側外転 キツネ、ピストルの形をつくる | MP屈曲、IP屈曲 MP屈曲、IP伸展 |
横の分離とは各指間で相互に影響されないことを指し、縦の分離はMP関節とIP関節の間、母指ではさらにCM関節との間の運動で、相互に影響されないことを指しています。
手指の回復段階と、関連する筋との関連を考えることが評価においては重要になります。
手指の集団屈曲は外在筋の屈筋による働きで、集団伸展は外在筋の伸筋による働きです。
stageⅣからの分離運動では、内在筋が作用することにより可能となります。
例えば、指を完全伸展するためには、総指伸筋だけではなく、背側骨間筋や掌側骨間筋や虫様筋の働きが必要となります。
stageⅤ〜Ⅵの方に徒手筋力テストを行うと、外在屈筋>外在伸筋>内在筋という筋力の関係ができます。
筋力の強い筋肉の方が回復における優位性があり、3つの筋群は同じ回復過程をとらず、筋力の不均衡が生じることになってしまいます。
これは内在筋の筋力低下につながり、巧緻動作や協調運動の低下、道具使用の困難などにつながることがあります。
片麻痺者では、筋緊張異常により手の変形を起こすことがあります。
総指伸筋の緊張が高いと、MP関節伸展、IP関節屈曲位をとるintrinsic minus handとなります。
stageⅤの患者でもintrinsic minus handを示すこともあり、これは普段の手の使用が外在筋中心に働き、内在筋との筋力の不均衡が生じたためだと考えられます。
このような場合には内在筋の筋力増強が必要になります。
手関節の回復段階と評価
手関節の運動には背屈・掌屈、橈屈・尺屈があります。
手の使用における手関節の動きでは、特に背屈、橈屈が重要になります。
共同運動の影響が強い場合には、手関節掌屈に尺屈、手関節背屈に橈屈が同時に起こりやすく、掌屈・背屈が橈・尺屈にどれだけ分離して行えるかをみることが大切になります。
手関節の回復段階では、掌屈が橈・尺側手根屈筋の活動により出現し、次に背屈が橈・尺側手根伸筋の活動により出現します。次に橈側手根屈筋、橈側手根伸筋の組み合わせで橈屈が、尺側手根屈筋、尺側手根伸筋の活動により尺屈が可能になります。
手関節の橈尺運動が行えない場合、肩の外転や内旋などを強める代償運動で動作を行う場合があります。
片麻痺者の上肢の中枢機能と末梢機能の関係
片麻痺者の上肢動作を観察すると、手指のつまみ動作が机上では可能でも、上肢を空間で高い位置に保持しながらではつまみ動作が十分にできなかったり、上肢挙上位では手関節背屈がうまくできなかったりすることがよくあります。
stageⅤの患者が上肢挙上、肘伸展位でのつまみ動作を行うと肘の屈曲がみられ、動作のスムーズさに欠けるというように、上肢の個別の関節運動は良好でも、全体の動作の中では不十分となり、何回も同じ動作を行うとできなくなることもあります。
これらの動きは、筋力の弱く、筋疲労が起こると生じやすい現象です。分離運動が可能であっても、中枢(近位)の筋の筋力が弱いため、肩甲骨や肩甲上腕関節の固定が努力的となり筋緊張が高まりやすくなります。
その結果、末梢(肘以遠)の動きが制限され、分離しつつある動きや分離している動きが行いにくくなります。
このことからも、中枢機能が末梢機能に影響を与えることがわかります。
片麻痺者の筋力評価の必要性
臨床では、片麻痺者が手を使い作業遂行する場合には、中枢(近位筋)の固定力が低下していると、努力性の収縮になり筋緊張が高まり、末梢(肘以遠)の機能が十分に発揮できないことがあります。
これは、中枢(近位筋)の筋力低下の問題があることがわかります。
中枢神経麻痺では質(パターン)の変化を評価することも重要ですが、量(筋力)の変化を評価することも重要になります。stageⅤ前後では単関節での運動も可能になり、徒手筋力測定も可能であり、共同運動の支配下にあるときでも、おおまかに筋力をみておくことも大切な評価になります。
粗大筋力だけでなく、握力、つまみ力をみておくことも、手の使用を促していく上では重要になります。
アクティビティを通した片麻痺への上肢機能アプローチ
共同運動の出現以降、上肢の動きが出ても各関節の動きには差がある状態です。
肩周囲の主観的問題点としては、「手の重み」が考えられます。
これは、正常では感じない上肢の重みを、筋力がないために感じます。この訴えはstageの高い患者でも聞かれ、中枢の固定力が向上すれば「軽くなった」と認識が変わり、易疲労性も感じにくくなります。
また中枢の固定力が向上すれば、麻痺側上肢の使用において、努力的な中枢雨の筋収縮が軽減され、筋緊張が異常に高まらずに末梢の機能が発揮できます。
そのため、徒手的に肩甲骨挙上、外転、肩甲上腕関節の動きを誘発し、筋力強化を行う必要があります。
共同運動の誘発や分離運動の獲得には、サンディングやワイピング、スケートボードを使用し、分離運動が出現して単関節の運動が行えるようになると徒手的な筋力強化も行います。
この際、肩の痛みに注意し、適切な課題を設定していきます。
手指の場合も同様に、分離運動が出現したら徒手的に筋力増強を行います。
手指における骨間筋の筋力低下には、手指伸展位(MP軽度屈曲、IP伸展)での粘土(セラプラスト)伸ばしも利用されます。
このとき、内在筋の筋力が弱いと、手指屈曲に働く外在筋の浅・深指屈筋が働きIP関節屈曲位となってしまいます。
IP関節屈曲位では外在筋の筋力増強となるため、粘土の硬さを適切なものにする必要があります。
肘、前腕、手関節では単独の関節運動を行うことは、筋力増強だけでなく分離運動の獲得も助けます。
手の使用においては、手関節と手指の連動した動きが大切となり、手関節背屈位で手指の使用ができるようにしていく必要があります。
手指の巧緻性や協調性が悪い場合(stageⅤ、Ⅵ)、内在筋の筋力低下と、筋と筋の協調した働きが起きにくいことが原因となることが多くあります。
手指機能がstageⅤ、Ⅵで箸の使用が困難な場合、粘土伸ばしによる内在筋の強化を行います。
また、ペグ操作も行い、1〜3指でペグを回転(反転)させてからボードに挿すようにします。
ペグの回転は逆回転も行い、ボードに挿すときには手関節が背屈位となるようにボードには傾斜をつけておきます。
粘土伸ばし、ペグ操作を十分に行うことができれば、箸の使用は可能となります。
手指の促通の際に手関節背屈が行いにくい場合はコックアップスプリントを使用し、手指の対立位が取りにくい場合には短対立スプリントを使用し、母指外転を補助します。
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上肢運動麻痺に対するリハビリテーションに向けてー到達・把握・操作運動の神経機構ー
到達、把握の神経機構の基礎
上肢の運動制御は、到達運動に関する情報処理系と、把握・操作運動に関する情報処理系の2つによって達成されます。
上肢運動における視覚での制御は頭頂連合野が関与し、到達、把握・操作運動を別々に制御しているという仮説があります。
視覚的制御としては、到達運動では対象物の位置情報が必要で、把握・操作運動では対象物の大きさや傾きの情報が必要になります。
対象物の位置情報から空間の方向について肩関節での運動がプログラムされ、また距離の調整について肘関節での運動がプログラムされます。
対象物の大きさや傾きの情報から、手の構えや前腕、手関節での運動がプログラムされます。
これらは頭頂連合野で処理され、それを基に視覚的な運動制御に関わる運動前野がプログラムを形成すると考えられています。
視覚的な情報により一度対象物の視覚分析が行われて記憶されると、閉眼においても行為は行えます。また視覚では認識できない情報(硬さ、重さなど)でも、実際に触らなくても想起できます。
これは、過去の経験により内部モデルとして蓄積されているためだと考えられています。
このことから、運動の準備段階で期待される運動感覚が脳内で作られているといえます。
これを記憶誘導型の運動制御と呼び、視覚・体性感覚の統合や知覚運動経験により蓄積されてきたものとなります。
到達運動の神経機構
到達運動の達成には、
視覚情報から得られる対象の位置情報を行為に関する運動企画(運動プラン)に変換する過程、次いでその企画に基づく運動プログラムを形成し運動に導く過程、そして企画に基づく行為が実現されているかを監視し、必要に応じて運動の修正を図る過程がそれぞれ必要であると考えられている。
リハビリテーション臨床のための脳科学 P117
とあります。
これらに対する神経機構は、頭頂連合野(下頭頂小葉)と背側運動前野が関与していると考えられています。
到達運動では、対象物を注視するためにサッケードが生じ、頭頂間溝外側領域(LIP野)が関与します。
そこからの位置情報により、対象物が視空間内に存在するかを認識し、到達運動のための運動制御が算出され、これには上頭頂小葉(頭頂連合野)の頭頂間溝内側のMIP野、内側頭頂後頭領域(V6A野)が関与します。
MIP野は到達運動中持続的な活動が見られ、V6A野は視覚・体性感覚両方に反応する感覚領域野となり、また上肢運動制御に関わる背側運動前野との結合があり、対象物の視覚的・体性感覚的な両側面から運動を制御する機能があると考えられています。
視覚誘導型の運動制御は、頭頂連合野と腹側運動前野のネットワークの関与もあります。
一次体性感覚野で処理された情報は頭頂連合野に伝達され、一次視覚野から背側経路で処理されてきた空間情報と統合します。統合された情報は腹側運動前野へと伝わります。
腹側運動前野は、頭頂間溝領域野から多くの投射繊維を受けており、運動の開始や遂行に役割を果たしているとともに、視覚刺激に応答するニューロンが存在している。
この視覚誘導型運動の情報処理過程は、先の述べた内部モデルによって調整されており、腹側運動前野と小脳とのネットワークが運動の滑らかさを生成していると考えられている。
腹側運動前野は小脳からの入力を受けており、小脳における誤差信号が腹側運動前野にフィードバッックされるのであれば、このネットワークによって視覚誘導型運動の学習が行われていると考えられる。
リハビリテーション臨床のための脳科学 P118
補足運動野では過去の知覚経験を基にした記憶誘導型運動制御に関わり、大脳基底核からの入力により内的な情報から運動プログラムを作っていると考えられています。
把握・操作運動の神経機構
手の把握・操作運動では、対象物に対する手の構え(プレシェイピング)が重要になります。
頭頂葉の障害では、プレシェイピングが行なわれないことがあります。
頭頂連合野の頭頂間溝外側部(AIP野、LIP野)の領域を破壊して把握・操作運動を観察したところ、AIP野の破壊でプレシェイピングが出現しないことがわかっています。
LIP野の破壊では、到達運動に障害をきたすことがわかっています。
AIP野は運動そのものよりも、運動前の対象物の知覚・認知とプレシェイピングに関連しています。
AIP領域のニューロンは、視覚優位型(視覚情報から対象物の空間を処理する)、運動優位型(空間に見合った身体図式を取り出す)、視覚運動型(対象の空間情報と身体図式を照合する)の3つに分類されます。
またAIP野は腹側運動前野(F5野)と神経結合があります。
F5野では視覚運動型、運動優位型の神経活動があり、視覚情報を運動情報に変換し、運動指令を運動野へ送っていると考えられています。
AIP野は、CIP野(頭頂間溝外側壁尾側部領域)からの対象物の三次元視覚情報に基づき、その形や傾きを識別・認識するとともに把握・操作に必要な運動情報に変換し、数ある運動レパートリーの中から運動パターンを選択する機能をもっている。
また、F5野においてもAIP野からの情報に基づき、その環境において適切な運動パターンを選択し、運動企画に基づいた運動情報を一次運動野へ送っている。
なお、F5野で企画された運動指令が一次運動野に出力されると同時に、その遠心性コピー情報がAIP野に与えられ、運動後に得られた求心性情報と比較照合され、必要に応じて運動の修正が加えられるシステムが存在することで把握・操作運動が円滑に遂行されている。
リハビリテーション臨床のための脳科学 P121
このことから、把握・操作運動においては、AIP野での対象物の視覚情報とそれに応じた身体図式(頭頂連合野での体性感覚と視覚情報の統合により形成される身体内部表象)を比較照合させ、F5野へ伝達し、運動プログラムを形成することが重要になります。
神経機構から考える到達・把握・操作運動のリハビリテーションに必要な要素
到達運動では、視線の向きと対象物までの距離が指標となり、脳はどの方向にどの程度手を伸ばすかを決定していきます。
そのためリハビリテーションでは、
①対象物へのサッケードに始まり、対象の「位置」や「距離」などといった空間的な視覚情報処理機能、②肩・肘関節の運動覚など体性感覚の情報処理機能、③「①」と「②」を頭頂連合野にて統合させる機能、④「③」の情報をもとに運動前野との神経ネットワークにより運動プログラムを形成させる機能と、記憶をもとに補足運動野により運動プログラムを形成させる機能、⑤運動プログラムを小脳の誤差信号を通じ学習させる機能の獲得が重要になると言える。
リハビリテーション臨床のための脳科学 P118
とあります。
操作・把握運動のリハビリテーションでは、
①形態・素材など対象物の視覚情報処理機能(AIP視覚情報優位型)、②体性感覚の情報処理と身体図式を形成する機能(AIP運動優位型)、③「①」と「②」を統合する機能(AIP視覚運動優位型)、④「③」の情報をもとに腹側運動前野との神経ネットワークにより運動プログラムを形成させる機能、⑤「④」の遠心性コピーを通じ運動プログラムを誤差学習する機能の獲得が重要になると言える。
リハビリテーション臨床のための脳科学 P121
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脳卒中片麻痺者の筋力低下のエビデンス
従来の筋力低下の考え方
脳卒中片麻痺者の主動筋の筋力低下は、従来であれば拮抗筋の痙性(反射亢進)によるものだという考え方がありました。
しかし、現在では下行性運動指令の低下による直接的な結果と、廃用と筋の適応的変化が組み合わさったものだとされています。
上位運動ニューロンの障害による筋力低下
1つ目の原因は上位運動ニューロンの損傷自体によるもので、最終的な運動ニューロンに収束する下行性入力が減少し、活動に参加可能な運動単位数が減少することによるものです。
通常、筋出力はリクルートされた運動単位の数とタイプ、および発火した運動単位と筋自体の大きさと両者の特徴に依存する。筋力は活動運動単位の数と運動単位の発火率と頻度によって増加する。
また、筋の構造的特徴(たとえば、断面積)も出力される潜在性の筋力に関係する。
したがって、筋力は神経筋による現象であり、筋への運動指令を行っている神経の損傷により、筋力低下および麻痺がおこる。
脳卒中の運動療法 エビデンスに基づく機能回復トレーニング P172
筋が目的動作を達成するために必要な力を出力するには、必要な数の筋繊維が同時に収縮し、その行動に関わる様々な筋群の力を調整する必要があります。
脳卒中では下降路が断ち切られ、活動する運動単位数の減少、運動単位の発火率の減少、運動単位の同期化の障害が生じます。これらのことが、運動出力の混乱を生じさせ、ある程度の力を発揮できたとしても、運動制御障害の原因となります。
脳卒中後の筋力低下にパターンはあるのか
脳卒中後の筋力低下には特定の典型的パターンはなく、従来より言われてきた近位より遠位、伸展よりも屈曲に筋力低下がある、上下肢で弱化の重症度が異なるというエビデンスはありません。
体幹筋に関しては、両側性の支配であり、いくつかの研究では体幹筋の筋力低下はわずかだとの報告もあります。
上位運動ニューロン障害と筋収縮の持続、筋活動の開始と終了
上位運動ニューロン損傷では、力の発生や力の出力維持の低下がみられ、筋力低下には力の発生スピードの低下も含まれています。また筋活動の開始や終了の障害もあるとされています。
運動開始時の運動や筋緊張の増加が緩慢だと、ゆっくりとした運動よりも速い運動においてパフォーマンスに影響を与えると言われています。
臨床上、関節の位置や課題にしたがって筋力低下の程度が異なることが指摘されており、これは筋がある長さのときには力を発揮することが可能だが、別の長さにあるときには力を発揮しにくいと考えることができます。
正常筋では、筋力は収縮時の筋の長さによって影響されることが示されている。筋の長さはアクチンとミオシンの重なりに影響を与え、モーメントアームの長さに影響を与える。
筋力とトルクの関係は、通常、中間の長さのときに最大トルクを発生し、最も短い長さで最小となる。
脳卒中の運動療法 エビデンスに基づく機能回復トレーニング P175
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脳卒中上肢機能訓練と回復のためのエビデンスとリハビリテーション指針
脳卒中後の筋力低下
脳卒中後の筋力低下には典型的なパターンはなく、また筋力低下は遠位よりも近位で著明にみられることもなく、屈筋よりも伸筋に著明にみられることもなく、回復が近位から起こるというようなエビデンスはありません。
三角筋の収縮はなぜみられにくいのか
三角筋の収縮がみられにくいことに関して、三角筋と大胸筋への皮質脊髄性の影響に関する研究では、
両側大脳半球からの入力は特に内転筋に著しいことを示し、さらに、三角筋への直接的皮質脊髄投射の根拠を与えた。
脳卒中の運動療法 エビデンスに基づく機能回復トレーニング P139
とあります。
これは、臨床的に肩関節の自動内転運動がみられやすく、三角筋には収縮がみられにくいことを表しています。
皮質脊髄路損傷と運動パフォーマンス
皮質脊髄路が損傷を受けると、上肢筋群の筋活動に参加する運動単位が増加するタイミングがゆっくりになり、筋収縮の保持が困難になるとの報告があります。
このことは、上肢の空間保持や対象物の把持を維持することが困難なことを示しています。
リーチ動作では肩甲上腕関節の外転筋群、屈筋群、外旋筋群、回外筋群の筋力低下がおきく関係しているとされており、リーチ動作中の関節間の協調性の低下があり、視覚に基づく正確でスムーズな運動の持続が困難になります。
手の操作では手関節伸筋群、手指・母指の屈筋群、伸筋群、外転筋群、内転筋群が大きく関係しているとされており、対象物の把持での握力の維持と制御が問題となり、把持力は不規則に変化することがしられています。
対象物の有無によるトレーニング効果の違い
対象物を用いた意味のある具体的課題を用いるほうが、運動パフォーマンスの効果があるとの報告があります。
そのため、コインやコップなど、日常的に使用される対象物を通じた訓練を行うことが重要になります。
痙性とトレーニング
脳卒中上肢機能の回復には、筋力強化と機能的動作の反復が重要とされています。
痙性と運動との関係を考えた場合に、痙性が増加することを恐れて運動の反復が不足していることがありますが、脳卒中後の反射性過活動、連合反応、同時収縮は必ずしも機能を障害するものではないことを知っておくべきです。
積極的な自動的運動によっても反射性過活動や筋のこわばりが増加することはない。
逆に、これらの現象は積極的な課題特異的エクササイズおよびトレーニングに対してポジティブに反応する。
脳卒中の運動療法 エビデンスに基づく機能回復トレーニング P139
上肢機能訓練のエビデンス
種々の負荷に抗して手指と手関節の屈曲・伸展の15分間の反復的練習を1日に2回行った患者群では、握力、手関節伸筋の等張性最大筋力、運動スピード、機能的運動パフォーマンスに改善がみられたが、これとは対照的に、筋に対する直接的エクササイズを行わずに、筋緊張を落とすことに焦点を当てた神経発達学的治療を受けた対照群では、機能的運動に改善がみられなかった。
脳卒中の運動療法 エビデンスに基づく機能回復トレーニング P139
上肢機能トレーニングに必要な要素
リーチング前方:肩甲上腕関節屈曲
側方:肩甲上腕関節外転
後方:肩甲上腕関節伸展に伴う
ー肩甲帯挙上
ー肩甲上腕関節外旋
ー肘関節伸展
ー前腕回内・回外
ー手関節伸展把持
手関節・手指伸展、母指と第5指の手根中手関節の外転と連動した回旋(「対立」)を伴う対象物のまわりでの手指・母指屈曲リリース
手関節伸展
手指中手指節関節伸展
母指手根中手関節外転・伸展手の操作
手関節伸展位での手指中手指節関節屈曲・伸展
母指手根中手関節の掌側外転と連動した回旋(例;カッピング)
独立した手指屈曲・伸展(例;タッピング)
鍵握り、たとえば、母指ー示指;母指ー第5指;第4指、第5指を手掌内へ;母指+手指の中手指節関節屈曲、指節関節伸展(紙を保持するときの握り)脳卒中の運動療法 エビデンスに基づく機能回復トレーニング P142
・対象物の把持やリリースでは、形、大きさ、重さ、手触りの異なるものを用意する。
・対象物を一つの場所から他の場所に移動する。
・対象物を手の中で動かす
・座位、立位でリーチする。
・両手動作:
片手で持ち、もう一方を動かす(瓶のふた開け)。
両手で同じ運動(パン生地を伸ばす)
左右異なった動き(りんごの皮剥き)。
・時間的動作能力の獲得(ボールをキャッチ、ボールを投げる、ボールをつく、ボールを棒で打つなど)。
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Motor Activity Log(MAL)の概要と評価方法
Motor Activity Log(MAL)の概要
Motor Activity Log(MAL)は、脳卒中片麻痺者の上肢が、ADLの中でどの程度(質・量)用いられているかを評価することができます。
対象者の主観的な機能レベルを数値化することが可能です。
14の動作項目があり、一定期間の間にどの程度使用したか(Amount of Use:AOU)、どの程度上手に使用したか(Quality of Movement:QOM)を6段階で評価します。
Motor Activity Log(MAL)はCI療法におけるアウトカム評価としてよく用いられています。
脳卒中における、他の上肢機能評価については以下の記事を参照してください。
簡易上肢機能検査(STEF)を臨床につなげる観察ポイント
Motor Activity Log(MAL)使用の意義
評価自体が患側へのフィードバックとなり、患側への意識の向上や日常生活上の患側使用につながる可能性があります。
効果判定に用いることで、実用的な麻痺側上肢使用へのリハビリテーションにつながります。
使用頻度の主観的評価
使用頻度は順序尺度であるAOU(Amount of Use)を用いて評価します。
0 患側は全く使用していない(不使用:発症前の0%使用)
1 場合により患側を使用するが、極めてまれである(発症前の5%使用)
2 時折患側を使用するが、ほとんどの場合は健側のみを使用(発症前の25%使用)
3 脳卒中発症前の使用頻度の半分程度、患側を使用(発症前の50%使用)
4 脳卒中発症前とほぼ同様の頻度で、患側を使用(発症前の75%使用)
5 脳卒中発症前と同様の頻度で、患側を使用(発症前と同様)
使用程度の主観的評価
使用頻度は順序尺度であるQOM(Quality of Movement)を用いて評価します。
0 動作をするために、患側を全く使用していない(不使用)
1 動作の過程で患側を動かすが、動作の助けにはなっていない(極めて不十分)
2 動作に患側を多少使用しているが、健側による介助が必要、または動作が緩慢か困難(不十分)
3 動作に患側を使用しているが、動きがやや緩慢かつ不十分(やや十分)
4 動作に患側を使用しており、動きもほぼ正常だが、スピードと正確さに劣る(ほぼ正常)
5 脳卒中発症前と同様に、動作に患側を使用(正常)
評価方法
①説明
実際に行っているADLについての質問であることを説明します(予測ではありません)。
②各項目に対する発症前の麻痺側上肢使用についての確認
各動作に対して、発症前の麻痺側上肢の使用について確認し、使用していなかった動作については評価項目から除外します(平均点算出の際も)。その理由についても記載します。
③AOU・QOMの評価
AOUの評価
各動作について、6段階評価で確認していきます。理解しにくい場合、言い回しを変えることも可能です。記入前に最終確認を行います。
QOMの評価
各動作について、6段階評価で確認していきます。理解しにくい場合、言い回しを変えることも可能です。記入前に最終確認を行います。
*初回評価では、必要に応じて最初の6つの項目は実際の動作確認をしても構いません。
*失語や高次脳機能障害があり設問の理解が困難であれば、セラピストが視覚的に提示することも可能です。また0〜5の範囲でどのあたりかを問うようにしても構いません。
④答えの再確認と答えの掘り下げ
両評価ともに、答え(数値)を用いて文章で復唱し、確認します。
「本を持って読むために麻痺している手を3(スケール上の数値)使ったんですね」などと質問します。
被験者の答えた数値が、明らかに観察されたレベルと異なる場合、双方間で答えを一致させるための確認作業が必要になります。
再評価では、前回のスコアと比較して変化を確認しますが、前回の評価結果は見えないようにします。
前回のスコアと異なった場合には、答えを掘り下げて質問していきます。
「前回は◯点で、今回は◯点ですが、実際に変化はありましたか」
「もう一度考えた上で何点だと思いますか」
「◯点でよろしいですね」
と質問していき、了解が得られれば、次の動作項目に移っていきます。
介護者への聞き取り
評価の信頼性を高めるために、介護者や家族からスコアをとることも有用です。
対象者は同席せずに聞き取りをする必要があります。
得点の算出
質問終了後、該当項目のスコアを合計し、該当項目数で割り、平均点を算出します(AOU・QOMのそれぞれ)。
除外項目が1つある場合、14ではなく13で割ります。除外項目となる理由でなく麻痺族上肢の不使用の場合は平均点計算の項目数に含めます。
入院中で鍵を使ってドアを開けることがないような場合、除外項目としますが、退院後に動作を行える状況になった場合には該当項目に加えます。
被験者が全く麻痺側上肢を使用しないと答えたときに、最初の10項目は評価を行い、それら全てが0であったら0が妥当だと判断します。10項目全て0の場合、以下の項目は打ち切ります。
MALの臨床的に意義ある最小変化(MCID)
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JASMIDの概要と評価方法、結果の解釈(片麻痺上肢使用(参加)頻度と質の評価)
JASMIDの概要
JASMID(Jikeiassessment scale for impairment in daily living)は「爪を切る」「洗顔する」「髪を束ねる」などの日常生活上における動作20項目に対して、それぞれ使用頻度6段階(0〜5点)、動作の質(1〜5点)から選択し、採点します。
評価者間の信頼性が高く、妥当性も十分だとされています。
評価方法
質問方法:あなたが生活の中で麻痺側の手をどのくらい使用しているか、またどのくらい困難さを感じているかを調べていきます。
それぞれの項目について、「使用頻度」「動作の質」について数字で答えてください。
趣味、仕事についても記入して、「使用頻度」「動作の質」について答えてください。
以前から行わない動作、麻痺側の手で元々行わない動作については使用頻度「0」として、動作の質は空欄にします。
動作項目 | 使用頻度 | 動作の質 |
1.ペンで字を書く | ||
2.箸で食事をする(おかずをつかむ) | ||
3.歯ブラシで歯を磨く | ||
4.手の爪を切る | ||
5.傘を開き、さす | ||
6.化粧/髭剃りをする | ||
7.顔を洗う | ||
8.髪をくしでとかす | ||
9.シャツのボタンをはめる | ||
10.新聞・雑誌をめくって読む | ||
11.ペットボトルの蓋を閉開する | ||
12.トイレットペーパーをちぎる | ||
13.缶ジュースを開ける | ||
14.ベルトを締める/ブラジャーをつける | ||
15.靴下をはく(両足) | ||
16.雑巾・タオルをしぼる | ||
17.ハンガーに上着をかける | ||
18.財布から小銭を出す | ||
19.靴紐を結ぶ | ||
20.ネクタイを結ぶ/ネックレスをつける | ||
合計 | ||
趣味活動( )を行う | ||
仕事/家事( )を行う |
使用頻度 |
0:全く使わない(使う気がない) |
1:全く使えない(使いたいが使えない) |
2:少し使う(ごくまれにしか使わない) |
3:時々使う(病前の半分くらいしか使わない) |
4:しばしば使う(病前よりは使う頻度が減った) |
5:いつも使う(病前と比べて変わりない) |
動作の質 |
1:(使おうとしても)ほとんどできない |
2:非常に困難さを感じる |
3:中等度の困難さを感じる(病前と比べ半分くらい) |
4:やや困難さを感じる(病前と比べて少し困難) |
5:全く困難さを感じない(病前と同じである) |
*自助具の有無は問いません。
*「ペンで字を書く」「箸で食事をする(おかずをつかむ)」は「支え手」としての動作は対象外です
*「歯ブラシで歯を磨く」「化粧/髭剃りをする」は準備動作は対象外です。
*項目9〜14では「支え手」としての動作も対象です。
結果の解釈
採点方法は、使用頻度=使用頻度の合計÷(「0」の回答以外の動作項目数×5)×100、動作の質=動作の質の合計÷(回答のあった動作項目数×5)×100で算出します。
算出した得点が高いほど、生活上での使用頻度が高いといえます。
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麻痺側上肢の使用を促進するツール:ADOC for Hand、HSAチェックリスト
ADOC for Hand
ADOC for Handは、ADOC(Aid for Decision-making in Occupation Choice:作業選択意思決定支援ソフト)をもとにして開発されたものです。
ADOCはイラストの選択を通した目標設定を行うもので、ADOC for Handは、麻痺族上肢の日常生活での使用を促すためのツールです。
ADOC for HandはADL、IADLの全16カテゴリーの130枚のイラストがあります。
イラストを通すことで、現在の生活状況と照らし合わせながら、麻痺側上肢の使用状況を振り返ることもできます。
イラストは各活動の各工程にまで細分化されています。
「歯磨き」では、「水を出す」「歯磨き粉をつける」「歯を磨く」「口をすすぐ」「口を拭く」。
イラストを通して、麻痺側上肢の使用について対象者とセラピストで一緒に話し合うことが可能になります。
これにより、例えば「歯磨き」の、どの工程で麻痺側上肢を使用すれば良いのかが把握しやすくなることが期待できます。
また、上肢使用について具体的な難易度設定も可能になります。
ADOC for Handでの課題決定の流れ
①対象者の希望や、上肢機能により、イラストを最大10個まで選択します。
対象者の日常生活の流れを把握することでも、イラストの選択に役立ちます。
②上肢の使用頻度、課題の難易度などの設定を行います。
③選択したイラストはプリントして対象者に渡すことができます。
*上肢を使用できた項目の達成度の記録も可能です。
イラストを用いることは、対象者にとって、上肢の使用場面の想起に役立っていることが考えられます。
このことは、認知機能低下がみられる対象者に対する支援においても有用となる可能性があります。
HSAチェックリスト
HSAチェックリストはCI療法のトランスファーパッケージの「ホームスキル」において使用されるチェックリストです。
これにより、対象者は麻痺側上肢を使用する課題を選択することが可能になります。
入浴:
石鹸を利用して洗体
タオルを使用(入浴後)
ラックからタオルを取る、取り替える
その他
トイレ:
便器の水を流す
便器のふたを上げる、閉じる
トイレットペーパーを引いてちぎる
トイレットペーパー・ロールを外す、替える
その他
整容:
身体(顔以外)にローションを塗る
ソープディスペンサーをポンピングする
鼻をかむ、鼻を拭くためにティッシュおよびハンカチを用いる
歯みがき粉のキャップを取り除く
歯ブラシを利用して歯みがき
入れ歯を磨く
その他
バスルーム 入室:
バスルーム・シンクの掃除
スライドガラスドアを開ける、スライドシャワー、クローゼットのドアを開ける
シャワーカーテンの開閉
窓の開閉
キャビネットの開閉
バスルーム・シンク掃除
その他
更衣:
パンツおよび下着をはく
かぶりシャツを着る
フアスナーを引き上げる
ベルトをループに通す
ベルトバックルをとめる
腕時計バンドの着脱
眼鏡をかける
その他
寝室関連:
ハンガーに服をかける(またはハンガーのみ)
クロゼットの靴をとる
引き出しからソックスをとる
ベッドメーキング
汚れた服をバスケットに入れる
1人で立っていられる
スライドガラスドアを開ける、スライドシャワー・クロゼットのドアを開ける
キャビネットの開閉
ベッドルームで家具のちりを払う
ウィンドウ開閉
その他
ベッド動作:
ベッド寝返り
ベッドサイドへ身体を起こす
ベッドカバー装着、脱
その他
皿洗い:
流し台で食器を洗う
スポンジに洗剤をつけて食器を洗う
乾燥棚および食器洗い機の中に食器を入れる
道具を取り出しておく
食器/パンをキャビネットの引き出しに入れる
食器洗い機のボタンとダイヤル操作
その他
食事準備:
野菜および果実をナイフで切る(皮はむかない)
バター、ゼリー、ピーナッツバター、マヨネーズ、そのほかをパンにぬる
食材をかきまぜる
牛乳やジシュースをカップやボウルに注ぐ
皿/プレートのパンを取り出す
そのほか
台所:
電子レンジドア閉開
コーヒーメーカーにコーヒー豆を入れる
牛乳かジュースを冷蔵庫から取り出す
食材を食料品置き場から取る
台所の流しを洗う
キャビネットの閉開
その他
衣服の洗濯と乾燥:
汚れた服を分類する
服を洗濯機に入れる
洗濯機/燥機のダイヤルを回しボタンを押してスタートさせる
液体洗剤のキャップを取る
洗濯機に洗剤を注入して洗う
洗濯機/乾燥機のドア開閉
洗濯機から乾燥機へ服を移す
その他
ユーティリティルームへの出入り:
クロゼット/シャワードア/引き戸を開ける
キャビネットの閉開
その他
ペットフード:
ボウルにペットフードをすくう
ペットフードの缶を開ける
ペットに水をやる
あなたの手でペットにえさをやる
その他
ぺットのケア:
ぺットにブラシをかけて手入れする
頭部から尻尾までなでる
ペットの耳かき
ぺットのためにドアを閉開する
その他
食事のセット:
テーブルの用意
ポップトップ飲料を開ける
瓶詰め飲料の蓋を回して取る
塩とコショウを使用する
プラスチックカップの蓋にストローを入れる
ナプキンを広げる
食品容器のラッピングを取る
ビンの調味料(ケチャップ,マスタード,サラダドレッシング)をかける
その他
そのほかの食事、レストラン関連の活動
ナプキンで口を拭く
メニューを持つ
レストランのドアの開閉
その他
金銭管理:
財布から紙幣を取り出す
ポケットまたは財布からコインを出す
小銭またはクレジットカードの使用
その他
ガーデニング:
屋外にある低木の簡単な刈込みに木ばさみや剪断機を使用する
花壇や鉢植えの雑草を抜く
野菜畑の野菜(トマト,工ンドウ豆)を収穫する
ホース用の蛇口の開閉
ホースを蛇口から外す
その他
郵便箱:
メールボックスを開ける
メールボックスからメールを取り出す
メールボックスにメールを出す
メールボックスフラッグを上げる
その他
その他のホーム課題:
ラジオの電源オン/オフ
ラジオのチューニング
新聞を保持して読む
工アコンとヒーターの調整
植物の水やり
その他
コンピューター課題:
キーボードのタイピング
マウス操作
その他
メール課題:
メールを送る
メールを開く
その他
フアイリング課題:
ファイルキャビネットからフアイルを取り出す
ファイルキャビネットのファイル用紙を取り出す
その他
その他:
電話をダイヤルする
キーパッドボタンを押す
計算機の使用
はさみの使用
その他
ワークショップでの課題:
ツールボックスを準備
その他
食料雑貨ストア課題:
リストに記入
バスケットの中からさまざまな大きさの果実/野菜を選択する
バスケットや食料雑貨棚から商品を選ぶ
フリーザーのドアをあける
食料雑貨カートを押す
購入するためカートから食料雑貨を降ろす
財布から紙幣を取り出す
ポケットや財布からコインを取り出す
小銭またはクレジットカードを使う
その他
コミュニティ課題:
工レベーターボタンを押す
ATM機を使用
その他
郵便:
封筒に切手を貼る
手紙を郵便ポストに入れる
切手販売機のコインロヘコインを投入
切手販売機へ紙幣を入れる
切手を選びボタンを押す
スタンプを取り出す
飲料販売機の使用:
飲料販売機に紙幣を投入
飲料販売機にコイン投入/返却された釣り銭を取り出す
飲料販売機の飲料を選びボタンを押す
選んだ飲料を取り出す
その他
車の乗客としての行動:
カーラジオ/テーププレーヤー/CDプレーヤーの調節
ウインドウ・ボタンの操作
カーシートの調整
サイドミラーの調整
グローブボックスかを引き出す
グローブボックスから品物を取り出す
その他
シートベルトの使用:
シートベルトの装着
シートベルトを外す
自動車の利用:
自動車のドアの閉開
その他
自動車の手入れ:
自動車を洗う
ワックスを塗る
自動車のウインドウを拭く
オイルチェック(冷却水も)
その他
趣味課題
その他の課題
まとめ
ADOC for Hand、HSAチェックリストを使用することにより、対象者は日常生活での麻痺側上肢の使用状況を確認できます。
また、麻痺側上肢の使用を促すための課題の選択に役立ちます。
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WOLF MOTOR FUNCTION TESTの概要と実施上の注意点、結果の解釈
WOLF MOTOR FUNCTION TESTの概要
WOLF MOTOR FUNCTION TESTは主にCI療法の効果判定として世界中で使用されている脳卒中片麻痺者における上肢運動機能評価法のひとつです。
特定のキットは不要で日常物品で評価が行えます。
6つの運動項目と9つの物品操作を行い、それぞれ所要時間(秒)、動作の質(6段階)で評価します。合計秒数、合計点を最終得点として算出します。
STEF(簡易上肢機能検査)は日本のみの検査ですが、WMFTは国際的に使用されているため、共通評価として指標になります。
使用物品
1机(高さ74㎝、幅137㎝、奥行き76㎝)
2椅子(高さ45.7㎝、背もたれあり、アームレストなし)
3ベビーパウダー(摩擦緩和のため机上にふる)
4ストップウォッチ
5箱(高さ25㎝、20㎝、15㎝を用意、被験者の肩の高さに合わせて使用)
6バンド重錘(450g、1kgのもの、固定用のベルクロ)
7缶(開封していない350mlのもの)
8鉛筆(六面体、長さ18㎝程度)
9ペーパークリップ
10ブロック3個:コース立方体のブロック
11トランプ3枚
12鍵
13タオル(65㎝×40㎝程度の大きさのフェイスタオル
14輪投げの輪(1個)
評価方法と実施上の注意点
◯最終所要時間スコアは、すべての動作項目の所要時間の中央値を用います。
◯動作が困難なものに対しては中断しても構いません。
◯机に対して横向き座位:椅子を机に対し横向きに、机の端から10㎝離します。
◯机に対して前向き座位:椅子を机に対し前向きに、椅子の後ろ脚を机の端から60㎝離します。
◯長袖は邪魔になるため袖をまくります。
◯すべての動作をできる限り速く行うように伝えます。
◯説明では2度動作のデモを行います(1回目はゆっくり、2回目は速く)。
◯被験者は動作の練習を行いません。
◯被験者のモチベーションを保つために、「その調子」などと声かけしても構いません。
◯物品が落下した場合、セラピストが拾いすぐ戻し、この際の時間も継続します(備品を用意しておくとよい。)。物品を戻すのに5秒以上かかった場合は最初から計測します。
◯誤った動作で行う場合(理解できていない)、言語指示、デモを各動作につき1度繰り返します。2度目も同じ間違いをする場合は120秒とします。
◯椅子の位置や備品などの大きさがマニュアルと異なる場合、記録しておき、次回評価の際も同じ設定で行うようにします。
機能評価6段階の評価基準
0ー全く動かせない
1ー機能的に動かすことが困難だが、随意的動きは見られる。片手で行う課題でも健側の支持が相当量必要である
2ー課題への参加は可能であるが、動きの調整や肢位の変更には健側による介助が必要である。課題は完結できるが、動作スピードが遅く、120秒以上を要する。両手で行う課題では、健側の動きを補助する程度の動きなら可能である
3ー課題を遂行することは可能だが、痙性の影響が大きい、動作スピードが遅い、あるいは努力性である。
4ーほぼ健常に近い動作が可能だが、動作スピードがやや遅く、巧緻性の低下、動作の拙劣さなどが残存している
5ー健常に近い動きが可能
具体的な観察の視点としては、頭部と体幹のアライメント、体幹での代償、主動作筋以外での代償、把持方法は適切かなどです。
評価項目
横向き座位
1前腕を机へ:肩の外転を用いて前腕を机の上に乗せる
2前腕を箱の上へ:肩外転を用いて前腕を箱の上に乗せる
3肘伸展:肘を伸展させ机の反対側へ手を伸ばす
4肘の伸展・負荷あり:肘の伸展により重錘(450g)を机の反対側に移動させる
前向き座位
5手を机へ:机の上に麻痺手を乗せる
6手を箱の上へ:箱の上に麻痺手を乗せる
7前方の引き寄せ:肘や手首の屈曲を用いて机の反対側から重錘(450kg)を引き寄せる
8缶の把持・挙上:開封していない缶(350ml)を把持(円筒握り)し口元まで挙上する
9鉛筆の把持・挙上:鉛筆を3指つまみでつまみ上げる
10クリップの把持・挙上:クリップを2指つまみでつまみ上げる
11ブロックの積み重ね:ブロックを3つ積み上げる
12:トランプの反転:3枚のトランプを1枚ずつ、つまみ(指せんつまみ)裏返す
13:鍵の操作:鍵穴にさしてある鍵をつまんで、左右に回す
14:タオルの折りたたみ:タオルを四分の一に折りたたむ
机に対して前向き肢位、患側に高さ110㎝の台を設置
15重錘の持ち上げ:机に置かれた重錘(1kg)の輪をつかんで持ち上げ、側方にある台の上に置く
マニュアルでは各項目に対し、詳細な動作方法が記載されてあります。参考文献参考。
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片麻痺上肢のBox and Block testの概要と実施における注意点と結果の解釈
理論と概要
Box and Block test(BBT)は、成人脳性麻痺者の粗大な手指巧緻性を評価するために開発されたものです。
このテストはおおまかな手指巧緻性のテストや身体障害者の職業前訓練のテストとして用いられています。
標準化した手順があり、標準値は神経筋に障害をもつ小児と成人の数値が確立されています。
検査所要時間も短く、理解しやすい内容のため、高齢者や認知障害を持つ方へ実施する際にも導入しやすいという特徴があります。
検査にはブロック移動のための上肢・手指機能が必要で、重症者では天井効果が観察されます。
必要物品
中央に仕切りで区切った、隣り合った2つの同じ大きさの箱(厚さ1㎝のベニヤ板で、外枠横57.3㎝高さ8.5㎝縦25.4㎝。仕切りの高さ15.2㎝)。
一方に2.5㎤のブロックを150個入れておく。
箱の底の内外にブロックが落ちる時の音を出さないようにするもの(フェルトなど)を敷いておく。
実施方法と実施における注意点
対象者に対する指示:
「手で1回につき1個のブロックをできるだけ早く持ち、横の箱に運んでもらいます。指先は必ず仕切り板を超えるようにしてください。まずは私が手本を見せるので見ていてください。」(デモでは3個のブロックを運ぶ)
◯ブロックは同時に2個持ち上げても、1個とカウントされます。
◯仕切りを超えた後に床やテーブルに落としてもカウントされます(拾うために余分な時間を使わないように説明する)。
◯はじめに15秒練習できます。
◯テストでは握り方はどんな方法でも構いません。
◯被験者はテスト中にブロックを混ぜてはいけません。
手順:
1.テストの箱を標準的な高さのテーブルの端に沿って置きます。被験者は標準的な高さの椅子に腰掛けます。
2.15秒の練習を行います。
3.被験者は両手を箱の横に置き、合図で開始します(1分間)。
4.反対側の手で行います。
結果の解釈
採点は1分間に運んだブロック数です。2個以上のブロックを一度に運べば、その数を合計数から引きます。
標準値はMathiowetsら(1985)、Desrosiers(1994)、Smith(1961)が作成しています。
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脳卒中片麻痺で腕を90度以上挙げるために必要な事!筋出力向上を目指して!
0〜90度における上肢挙上と90度〜180度における挙上機能の違い
0〜90度における上肢挙上と、90〜180度における上肢挙上では、主に働く筋肉に違いがあります。
0〜90度では、主に肩甲上腕関節の屈曲や外転、伸展に関与する筋(三角筋)で動きとしては「持ち上げる」動作になります。
一方、90〜180度では、肩甲骨の上方回旋と体幹の動き(伸展・側屈・回旋)なども加わる「突き出す」動作となります。
これに加えて、特に90度以降の挙上では回旋筋腱板の働きも重要になってきます。
主に働く筋肉については以下の表を参照してください。
肩関節屈曲 | 肩甲骨周囲筋 | 肩甲上腕関節 |
90°まで | 前鋸筋と僧帽筋下部繊維 | 棘上筋と三角筋 |
90°以降 | 僧帽筋中部・下部繊維 | 棘下筋と三角筋 |
肩関節外転 | 肩甲骨周囲筋 | 肩甲上腕関節 |
90°まで | 僧帽筋中部繊維 | 棘上筋と棘下筋と三角筋 |
90°以降 | 僧帽筋下部繊維 | 棘上筋と棘下筋と三角筋 |
筋出力向上の考え方
麻痺側上肢の筋は、筋の出力量と筋力が低下しています。そのため、麻痺側上肢に対して挙上動作を求めた場合、病前と同量の出力のセットとなってしましい、挙上が困難となります。
筋の出力量の不足や、収縮に参加する筋繊維の数が不足、強縮に至らない筋繊維や強縮の持続時間が短いことなどから、上肢挙上機能がうまく発揮できていない状態にあります。
そこで、抵抗(間欠的に)を加えることで、筋出力の向上を図っていきます。
上肢挙上動作への抵抗に対して、より大きな力を発揮しようとすると出力の設定値と実際の出力が向上します。
関節の動きを出現させるためには出力を最初に集中させて、関節運動を加速させていくことも重要です。
そのためにも、抵抗を一気に短時間加えることで、筋収縮に参加する筋繊維数を増やして、筋収縮を高めていく必要があります。
このような間欠的抵抗を、可能な関節運動範囲の全ての角度で行い、筋収縮を行っていきます。
その角度ごとの、筋収縮量の実行値と筋紡錘を介して脳にフィードバックされた感覚値が、その関節角度の動きを可能にする脳の出力値、すなわち必要設定値(必要設定値は、感覚と前の実行の差を今行った実行値に加えて、次の実行の目標として設定する値)として、短期記憶されると考えられます。
片麻痺 能力回復と自立達成の技術 現在の限界を超えて P122
また、
拡大した設定値は短期的に記憶されているので、ある時間の経過後には元に戻ります。この設定値を中期的な記憶にするには、一定以上の回数の繰り返しが必要となります。
患者では運動範囲の設定は痛みの生じない範囲となっているので、少し痛いがしばらくするといたくなくなる範囲に自動介助で動かし、その角度でしばらく止めるようにします。
すると設定値が少しずつ広がります。この広がった範囲を自動運動で繰り返すと、中期的な設定範囲の拡大につながると、筆者は経験上で理解しています。
片麻痺 能力回復と自立達成の技術 現在の限界を超えて P121
とあります。
筋力強化は麻痺側機能を悪化させるのか
よく麻痺側の筋力トレーニングを行うと、麻痺側の筋緊張が過度に高緊張になってしまったりすることで、運動麻痺の回復を阻害してしまうのではないかということが議論になります。
結論から言うと、筋力トレーニングが筋緊張を過度に高めてしまったり、運動麻痺の回復を阻害するというエビデンスはありません。
麻痺側の機能強化の必要性
麻痺側の機能強化をするには理由があります。麻痺側を強化し最大の力を発揮するのではなく、余裕がある範囲で力を出すことで、麻痺側は緊張せず比較的自由な運動が可能になります。
そのため、余裕の範囲で力を出すために力を最大に強化する必要があります。
様々な動作において、痙性が出現しないようにするためには、余力を持って動作する必要があるた、強い筋出力・筋力が発揮出来る機能を有することが大切になります。
筋出力強化と筋力強化
麻痺側の筋への出力を強化することは、単に筋力を強化することではありません。筋が強く収縮して強い出力を出すためには、中枢神経の出力が空間的・時間的に収束し、その状態を持続する必要があります。
片麻痺 能力回復と自立達成の技術 現在の限界を超えて P111
筋出力となっているのは、中枢神経系の損傷では、中枢の運動出力の空間的・時間的な量の変化が筋力となって現れているためです。
筋出力の強化には量的な増加だけでなく、神経活動の調整という質的な改善を含んでいます。
動作法の選択
ある目的をなすための理にかなった動作方法を選択し、動作方法を指導していきます。
動作方法の指導は、最適な動作の遂行を出力の空間的広がり(活動に参加する筋・筋繊維の選択と広がり、その筋の活動・抑制をつくる運動神経の活動の広がり、運動神経への出力プログラムをつくる制御に関する中枢神経の活動の選択と広がり、制御系に送る記憶・感覚の信号の選択と強化の広がり過程など)を時間的変化として表すことです。
片麻痺 能力回復と自立達成の技術 現在の限界を超えて P111
抵抗の加え方
筋出力の強化には、抵抗を用います。ある動作に抵抗を加えることで、動作の出力を高めて記憶を強めることが重要です。
動作を実用レベルにしていくには、抵抗により動作を再生させ、その動作にさらに抵抗を加えていくことで強化していきます。徒手抵抗では正しい動作方向の反対側に抵抗を加え、筋出力の強さを時間とともに作っていきます。
抵抗は間欠的・断続的に繰り返していきます。動作が確実になれば、スムーズな動作にしていくため、抵抗を一定持続や瞬時、そして抵抗なしへと進めていきます。
抵抗を加える際には、変化する動作を予測、追随しながら常に正しい動作の反対側に抵抗を加える必要があります。動作の状態に合わせて、間欠的、断続的、一定、瞬時の抵抗、抵抗なしを組み合わせて、最終的に抵抗なく動作できるようにしていきます。
抵抗を加える場合のリスク管理
骨粗鬆症が進行している場合、抵抗の調整が必要です。この場合には持続抵抗にし、抵抗の力も低く調整する必要があります。また、関節運動を起こす際に、関節の近位部に抵抗を加えることで加える抵抗の強さ、量の調整が可能になります。
目標の抵抗力に上げるまでの時間を長めに設定し(変化量を調整)、段階的に少しずつ上げていくなどの配慮も必要です。関節保護も重要で、関節が動揺しないように保護しながら抵抗を加えていきます。
高齢者の場合、まず全身的な耐久性を向上させることから始める必要があるかもしれません。この場合、脈拍・血圧の変化などを指標にし、途中休憩を入れながら、翌日に疲労が残らないようにします。
また、週3〜4回の頻度で動作ができるかを評価し、その適正量が訓練を行う際の許容範囲と考えます。
肺の換気機能の低下や、末梢循環障害の方にも、抵抗と収縮時間、休憩の取り方などを調整する必要があります。
休憩の取り方
休息をうまく取ると、動作の記憶が定着し、動作が強化されていきます。しかし、休息を取らないでいると、疲労が現れ、動作は失敗しやすくなります。
疲労した状態で休息をとると、ノイズの多いプログラムの記憶が残ってしまいます。
できなかったことが少しでもできたら賞賛を与え休憩をとります。
休憩後、疲労が取れたと判断したら(わずかな表情の変化など)、動作を再開し、力強さを増した「できる」を増やしていきます。
ある程度動作を行っていると、明らかな失敗が動作の一部に現れるようになります。
この時がこの回の目一杯で行える許容範囲の限界であり、その後は疲労により動作は悪化していきます。
この時は失敗だけが記憶されることになるため、休息が必要になります。
疲労の兆候を知ることで、疲労前に休憩が行え、適切な機能へ導くことが可能になります。
出力を鍛えることが筋力強化となる
出力を強化することで、筋力強化となり、身体機能が向上していきます。
筋力を強化するには、10回繰り返すことができる最大筋力の一定割合以上(2割以上、確実は6割)を必要とする運動を行います。
1日に10回の繰り返し運動を3セット以上行い、週2日以上行うと強化できると言われています。
患者の状態に合わせ、量のコントロールを行うことも必要です。
上肢挙上機能強化方法の実際(90度までの挙上を目指して)
①肩前方屈曲方向に抗する抵抗を加えます。
*肩関節を痛めないよう、肩関節の後方下より包むように支えます。
*抵抗は一気に短時間に加え、一定時間ごと(間欠的に)に行っていきます。
1セット10回とし、数セット程度行います。
初めの目標としては、間欠的抵抗により関節運動開始時の出力が増し、力強く加速した関節運動が得られることです。
次の目標は、関節運動が持続的で維持されることです。
より強く動かすよう、短く力強い声かけを行い(「思い切り」、「もっと」など)、持続的な抵抗に変化させていきます。
次の段階では、声かけのみで目標とする関節角度での挙上を、適切で持続された出力により筋収縮を持続し、運動が遂行できるようにします。
1セットの間では、間欠的な抵抗の強さ、頻度、休憩時間を組み合わせながら、内容を考え実行していきます。
決まりきった答えはないため、どのような姿勢(座位、立位、背臥位、側臥位)をとって肩前方挙上を行うかによっても違いがあるかもしれません。
とにかく、患者の筋出力が向上する、有効だと思われる行い方を試しながら行うことが必要になります。
腕を90度以上挙げるための条件(肩甲骨の安定性)
上肢を90度以上挙上するためには、肩甲骨が安定した土台として機能する事が重要になります。
上肢外転運動における肩甲骨の動きと関連する筋の働きを見ていきます。
・僧帽筋上部線維の挙上、上方回旋と僧帽筋下部線維の下制、上方回旋が同時に生じ、挙上下制すが相殺され純粋な上方回旋が生じる
・僧帽筋中部線維の内転、上方回旋と前鋸筋の外転、上方回旋が同時に生じ、内転と外転が相殺され純粋な上方回旋が生じる
・棘上筋→三角筋の順で活動
・骨頭の上方変位を防ぐために、前面の肩甲下筋と後面の小円筋、棘下筋が骨頭を下方に引き安定させる
上記のような肩甲骨運動で見られる筋の相互作用を肩甲骨のフォースカップルといいます。
このような肩甲骨の純粋な上方回旋を行うためには、肩甲骨前方突出の動きが重要になります。
肩甲骨の前方突出がうまく行えない原因としては①主動作筋である前鋸筋の機能不全、②肩甲骨を胸郭上に安定させる僧帽筋中部、③下部繊維の機能不全、菱形筋や広背筋の過剰収縮などが考えられます。
肩甲骨が前方に動く際には、前鋸筋が肩甲骨前方突出をさせている間に、僧帽筋中部繊が前鋸筋よりもわずかに弱く同時収縮します。
また肩甲骨の上方回旋の角度に応じて僧帽筋下部繊維も活動を強めます。
菱形筋が優位の場合、1STポジション外旋で菱形筋の外形が明確になり、外旋の代償として肩甲骨内転と下方回旋が生じます。
また代償を防ぐために、他動的に肩甲骨の内転を抑制すると、外旋可動域と筋力は低下します。この場合、前鋸筋の筋力低下も示唆していることになります。
肩甲骨前方突出としての突き出す動作
上肢挙上を可能にする要素の一つである肩甲骨前方突出は、動作レベルに変換すると「突き出す動作」となります。
これは、上腕骨長軸方向で体幹に向かって加わる力に対して筋出力を発揮する動作といえます。
前鋸筋の機能不全などにより突き出す動作ができないと、肩を90度以上挙上しようとすると肩を後方に引き込んで動作しようとします(菱形筋が優位となっている場合もあり)。
この肩を後方に引き込む動作は肩甲骨上部の内転で行われるのですが、これでは肩甲骨の内面や前方で肩甲骨を動かす筋(前鋸筋、僧帽筋中部・下部繊維など)の活動は抑制されるようになります。
この場合肩甲骨の内面は浮いた状態で、肩甲骨の体幹への固定力は不十分となり、上肢の挙上動作は不安定なものとなります。
このような動作方法では肩甲骨、上腕骨間の位置関係はタイトになり、肩関節を痛める可能性があります。
肩甲骨内転を伴う上肢の挙上は、「やめてっ!」と身を引きながら逃げる時の動作と同じ形となります。
本来の突き出す動作は、
胸郭の前後にあって肩甲骨を動かす筋である僧帽筋や、前鋸筋や大胸筋などを働かせて、手を出す方向へ肩甲骨を突き出すように動かしながら、同時に前後から肩甲骨を体幹に固定します。
そして、その動作と同時に手を出す方向へ、まず体幹を回旋させ、そして手を出す方向へ肩関節の位置を決めながら肘関節を伸展させて体位をつくり、その全身位置を両足で支持するとともに、肩と手を抵抗に対して突き、押し出すことによって移動してくる体幹を押し戻す動作になります。
片麻痺 能力回復と自立達成の技術 現在の限界を超えて P126
とあります。
突き出す動作を通しての肩甲骨前方突出の強化方法
①端座位、肩関節屈曲90度、肘関節伸展0度で正面に突き出す形を作ります。
②手根部から前腕長軸・中枢の方向に抵抗を加え、それを押し返すように力を入れてもらいます。
*手根部に抵抗を加えることで、手関節に痛みが痛みが生じることを予防しています。
*肩関節の角度を90度以上に保ちたい場合は、アームスリングや、セラピストの大腿を土台として支えるようにしてください。
動画でさらに詳しい解説を確認
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脳卒中片麻痺者のリーチ動作における運動学習の考え方
運動学習の目標設定
脳卒中片麻痺者の運動学習の目標を設定する上で、重要な視点が2つあります。
①運動モーメントを出力する支点の力量とタイミングの再構築
②目標とする運動スキルの習得によって二次的障害の発生を予防をできること
「運動モーメントを出力する支点の力量とタイミングの再構築」では、脳卒中片麻痺者の異常運動について、
運動に関与している外力(重力など)を内力(筋出力)によって処理しきれずに、そのひずみを代償することで生じる。
運動学習理論に基づくリハビリテーションの実践 P54
とあります。
リーチ動作においては、三角筋前部線維の筋出力低下により、抗重力活動が行えず、その代償として肩甲帯挙上や体幹前傾による代償運動が起こっていると考えることができます。
治療的な運動学習の達成には、運動学・神経生理学の知識を動員しながら適切な課題設定を行う必要があります。
代償運動に起因する異常運動の治療は、代償運動を適応せざるを得なくなった運動出力の不全を、再構築するための課題に基づいて行われるべきである。
運動学習理論に基づくリハビリテーションの実践 P54
機能障害に対する機能障害指向型訓練は、その程度に応じて調整された難易度の課題を組み合わせ、運動麻痺の改善を目指していくものです。
機能回復により、対象者自身が運動スキルの最適化を模索し、動作の安全性や効率性が高められていきます。
「目標とする運動スキルの習得によって二次的障害の発生を予防をできること」については、治療目標の設定により、それが達成することで関節変形や痛み、転倒リスクの軽減が図れるようにすることが大切です。
リーチ動作における課題設定と運動学習
治療的な運動学習の達成には、課題再現のために必要な代償手段の適用も含めた運動学・神経生理学的側面からのリハビリテーションアプローチを検討していきます。
リーチ動作における課題設定において、管理されるべきエラーとしては肩屈曲・肘伸展の筋出力の不足、屈筋群の筋緊張亢進、体幹・肩甲帯による代償、手関節・手指伸展保持困難などがあります。
運動学的側面で「運動モーメントを出力する支点の力量とタイミングの再構築」を考えた場合、体幹による代償運動の制御を行うことで、肩・肘関節の屈曲・伸展筋出力、協調運動の改善を図る方法があります。
外的代償の側面からは、スプリングバランサーを使用することで上肢の免荷を図ることが可能で、手関節伸展保持装具(カックアップスプリント)を使用することで手関節屈曲位とならなずにリーチ動作を学習することができます。
機能回復を促す手法として、手関節伸筋に電気刺激を入力し、筋活動との同期を図ったり、具体的なリーチ目標を設定することも有効です。
神経生理学的側面では、観察学習を行うことでエラー情報の管理を行い、メトロノームを用いてリズムに合わせたリーチ動作を行うことで、関節運動の軌道を滑らかにするような自動化への手続きがあります。
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脳卒中上肢運動麻痺における電気刺激療法の考え方
電気刺激療法が可能性を広げる
- 上肢の電気刺激は慢性期脳卒中患者の上肢機能を改善させる強いエビデンスがある
- 随意運動と電気刺激は運動皮質の興奮性をより高める
- 随意運動と電気刺激は内部モデルと感覚フィードバックをより合致させる
介入例
- 最低30分は行う(理想は60分)
- 肩関節に亜脱臼がある場合
棘上筋と三角筋後部線維 - 肩関節屈曲or外転、強度は30−50度
- 手関節背屈、フルレンジ
- 手指屈曲わずかor中等度の痙縮
橈側手根伸筋、総指伸筋 - 手指完全麻痺
上記+手指屈筋群
時間に関しては筋疲労との関係もあるため、対象者の状態をその都度評価しながら 行っていく必要があります。
周波数と筋収縮の関係
- 持続的な筋収縮を生じさせたい場合
20㎐以上 - 筋力増強では最低でも20㎐以上
- 20−30㎐:疲労は軽度で長時間の実施が可能
- 80−120㎐:疲労が強い
- 低周波治療器
たたく、もむ、おすで、持続的な筋収縮が得られるのは「おす」
電極の距離について
- 電極を近づけるほど、電流は浅い層を流れる
- あまりに近づけると電極のみに電流が流れる場合あり
- 電極を離せば、刺激はより深部に到達する
- 刺激効果が最も強い所は電極の真下
刺激強度の設定
- 運動麻痺、筋力増強
耐えうる最大強度
痛みに応じて調整
感覚障害に注意 - 感覚入力、痙縮抑制
感覚閾値以上、運動閾値以下
高電圧パルス電流
- 周波数:50㎐、パルス幅:50μsec
- 刺激強度:全可動域の50%を実現できる強度
- 刺激方法:外部スイッチにより自動運動に同期
促通反復療法との併用
- 周波数:20㎐
- パルス幅:250μsec
- 刺激強度:運動閾値レベル
(筋収縮がわずかに出る程度の電流量) - 刺激方法:持続的に刺激
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脳卒中片麻痺の手の運動麻痺に対する低周波治療器の使い方
手の運動麻痺の回復について
一般的に、脳卒中を発症された場合、初期に運動麻痺が重度であるとその回復は最小限にとどめられると言われています。
また発症後1ヶ月程度で握力測定が不可能な場合も回復がおこりにくいという報告もあるようです。
軽度から中等度の運動麻痺の方場合、腕や手を何度も動かす反復的エクササイズや、具体的に獲得したい動きの練習を行う課題指向的エクササイズが有効であるという報告があります。
運動麻痺がある手を積極的に日常生活の中で使用できる方では、機能回復もより長い機関でみられる印象があります。
このような回復過程には、腕の使用に反応する神経系の再組織化がみられていることを表しているのだと思われます。
手の運動麻痺の回復に関しては様々な報告がありますが、重要な点は実施されるトレーニングの量とそのタイプ、強制的にでも運動麻痺の手を使用できるかということになります。
また運動麻痺がない手が「自分の唯一使える手」として脳に再組織化されるのを防ぐことも重要です。
腕と手の使用に関する運動要素
脳卒中片麻痺では筋出力の低下、運動のタイミングや協調性の低下などの問題があり、日常生活では使いづらい腕、手になっています。
また肩の痛みや動かしやすい方の手(非麻痺側)の日常的使用により、さらに麻痺側の手の機能低下を招いてしまいます。
リーチ動作(例えば目の前にあるコップに手を伸ばしていくような動き)において重要な運動要素は肩の屈曲(前に肩を挙げる)、外転(外に肩を挙げる)、外旋(腕を外に回旋させる)、肘関節伸展(肘を伸ばす)になります。
また手の操作に関しては手関節の伸展(手首を反る)、指の屈曲、伸展(指の曲げ伸ばし)、内外転(内、外への開閉)が重要な要素になります。
このうち、市販の低周波治療器を用いて運動の反復練習が行いやすいのは肩の屈曲、伸展、肘の伸展、手関節の伸展になります。
脳卒中片麻痺者の肩の痛みと亜脱臼について
脳卒中片麻痺者のトレーニングにおいて、肩の痛みについては注意して行っていく必要があります。
肩の痛みに関しては、はきりとした原因は特定されていませんが、様々な要素が重なり合い痛みが出現すると言われています。
また、肩関節の亜脱臼を放置すると、周辺組織が牽引され、炎症を起こしやすくなり痛みにつながってしまうという考えもあるようです。
低周波治療器の使い方、パッドの当て方
低周波治療器のメリットは発症して早期の段階で自分の意思で腕を動かすことができない方でも電気刺激により反復して運動が行えることです。
低周波治療器の禁忌事項として、心臓ペースメーカーを使用されている方は使用しないでください。
またけいれん発作をおこした方、妊娠中の方、皮膚疾患がある方、悪性腫瘍がある方は医師と相談の上使用するようにしてください。
皮膚の傷や瘢痕、感覚が全くない部位への使用も控えてください。
1セット15分を2セット、1日午前と午後で使用してください。
低周波での筋肉の動きに合わせて、自分でも動かそうと意識しながら力を入れることが大切になります。
必要以上の強さや回数を行うと電気火傷を引き起こす場合があるため注意が必要です。
手首、指の伸展
①手のひらを下に向けテーブルに乗せます。肘の端にパッドを1枚、指1本分あけてもう一枚パッドを貼り付けます。
強さは手首と指か軽く伸びる程度にしてください。
肘の伸展
①テーブルに腕を乗せ、肘の裏面の端と脇の腕の境目(上腕三頭筋)にパッドを貼ります。
強さは肘が軽く伸びる程度にしてください。
肩の屈曲
①肩の骨(肩峰)のやや下の部分の前後にパッドを貼り付けます。
強さは軽く肩が前に上がる程度にしてください。
肩の外転
①肘を曲げて肩に手を回し、指先が肩にふれる部分にパッドを貼ります。
②肩の骨(肩峰)の下にパッドを貼ります。強さは軽く肩が横に上がる程度にしてください。
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重度運動麻痺にも適応!ミラーセラピーの概要と実施方法、エビデンス
ミラーセラピーの概要
ミラーセラピーは対象者の矢状面に鏡を置き、麻痺側であるかのように非麻痺側を鏡に映し、非麻痺側を動かすことで麻痺側が正常に動いているような視覚的錯覚を作り出すリハビリ方法の一つです。
ミラーセラピーは元々、切断者の幻肢痛治療として考案されたもので、その後上肢麻痺の治療への応用が報告されました。
メリットはその簡便さにあり、高い機器を必要とせず、どの施設(環境)でも導入しやすく、自主トレーニングとしても行えることにあります。
ミラーセラピーの機序
ミラーセラピーではミラーニューロンシステム(模倣を行う神経メカニズム)が関与している可能性があるとされています。
ミラーニューロンと呼ばれる腹側運動前野の神経細胞は自分で作業しているときのみならず、他者が同じ作業をしているのを見ているだけでも活動する。
他者の運動を観察してミラーニューロンが運動プログラムを作り出すことが模倣動作の発現につながっていると考えられている。
岡崎 英人ら「上肢麻痺の改善手技-ミラーセラピーを中心に」CLINICAL NEUROSCIENCE Vol.35 no.5 2017.5
必要物品
ミラーボックスと呼ばれるものを使用します。
既製品もありますが、鏡や板、ダンボールを使用して自作もできます。
設定は非麻痺側が映るように鏡を設置し、麻痺側は鏡の裏に置いて見えないようにします。
実施方法
非麻痺側を運動させ、その鏡像を観察させます。
その際麻痺側も同様に動かそうと努力をさせます。
非麻痺側の運動方法に決められたものはありませんが、手指屈曲・伸展、手関節掌屈・背屈など様々な動きを行います。
非麻痺側運動中に麻痺側の他動運動を加えることや、神経電気刺激を併用する方法もあります。
訓練時間・頻度は、1日30分としているところが多く、2〜6週間の介入となっていますが、4週間の介入で研究を行っていることが多いです。
自主トレーニングとして用い、その他リハビリテーションの方法を組み合わせて実施していくことが良いと思われます。
ミラーセラピーの適応
適応範囲は広く、CI療法や促通反復療法(川平法)では麻痺側に一定以上の自発運動が行える必要がありますが、ミラーセラピーでは完全麻痺者も対象とすることができます。
ミラーセラピーの効果とエビデンス
ミラーセラピーの効果は急性期から慢性期まで確認されています。
急性期から亜急性期にかけて発症8週間以内中大脳動脈領域の初発脳梗塞者にミラーセラピーを 6週間行ったところ、コントロール群と比較し、Fugl-Meyer assessment scale(FMA)の手指機能改善があったとの報告があります。
発症約1ヶ月の脳卒中片麻痺者で、12段階片麻痺スケールの手指が6以下の患者では、ミラーセラピー介入で有意にFMAの点数が改善したとの報告があります。
また、神経筋電気刺激とミラーセラピーを同時に行うと、それぞれを行ったときよりも最も効果があったとの報告があります。
慢性期では、発症数年以上経過した慢性期脳卒中片麻痺者にミラーセラピーを行ったところ、上肢機能の改善が見られたとの報告があります。
ミラーセラピー訓練後の保持効果については、発症約6ヶ月の脳卒中者をミラーセラピー群、コントロール群に分け、ミラーセラピー群がWolf motor function test、motor activity logがコントロール群と比較し有意に改善し、訓練後6ヶ月の時点でもミラーセラピー群が有意に良い結果であったとの報告があります。
しかし、発症4年を経過した脳卒中者をミラーセラピー群、コントロール群に分け、ミラーセラピー群ではFMAガコントロール群よりも有意に改善しましたが、6ヶ月後では有意差がなかったとの報告もあり、訓練効果の保持については明確なエビデンスがありません。
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促通反復療法(川平法)における治療プログラムの組み立て方(上肢)
促通反復療法(川平法)の概要
重要な概念や紹介は様々な所で情報が得られるため、大雑把ですが重要な点を挙げていく事にします。
・再建・強化したい神経路にのみ興奮を繰り返し伝えることが重要。
・目的の運動を獲得するには患者の自動運動の反復が必要。
・運動前野や運動野の興奮性を高める:
タッピング、患肢注視(視覚)、聴覚、意志、意図、伸張反射、集中反復(100回)
回復目標
- 罹病1ヶ月の場合、3ヶ月までの目標は
上肢:Ⅰ-Ⅱ→Ⅲ-Ⅳ、Ⅳ-Ⅴ→Ⅴ-Ⅵ、Ⅴ→Ⅵ
手指:Ⅰ-Ⅱ→Ⅲ-Ⅳ、Ⅳ-Ⅴ→Ⅵ、Ⅵ→それ以上 - 罹病3ヶ月以上の場合、数ヶ月後の目標は
上肢:Ⅰ-Ⅱ→Ⅱ-Ⅲ、Ⅲ-Ⅳ→Ⅳ-Ⅴ、Ⅴ→Ⅵ
手指:Ⅰ-Ⅱ→Ⅱ-Ⅲ、Ⅲ→Ⅳ、Ⅳ-Ⅴ→Ⅴ-Ⅵ - 個々の指の動きの回復は遅くても手指屈筋群の痙縮が強くならない場合回復の可能性あり
- 急速に痙縮が強まる例は回復悪い
治療プログラム(肩)
◯肩屈曲パターン5種類
①肩屈曲、外転
②側臥位での肩屈曲伸展
③肩屈曲
④肩屈曲・内転
⑤肩屈曲・外旋と肘屈曲と前腕回外の組み合わせ
◯stage別治療プログラム
Brs-stage 目標 パターン
Ⅰ・Ⅱ 共同運動誘発→分離運動 ①②
Ⅲ 分離運動(単純な関節運動) ③④
Ⅳ・Ⅴ 分離運動(共同運動とは逆の筋) ③④⑤
Ⅵ 分離運動(抗重力位での獲得) ②④⑤
◯その他の重要な要素
- 肩甲帯の随意性向上
- 屈曲(抵抗付き):筋力
- 実用的にするために
①屈曲、内転、外旋で麻痺手が対側の耳・頭頂部へ
②①+肘も顔の前まで挙上
③屈曲、外転、外旋、肘伸展で腕が耳に当たるくらいまでの伸展挙上
④肩90度で肩内旋の場合③を重点的に
治療プログラム(肘)
・初めは肩の動きを伴って良い(前鋸筋、三角筋後部)→肩の動きなしで
・肩90度保持で肘伸展不可の場合、肩外転、伸展位で実施
治療プログラム(前腕)
・誘発困難な場合
回外:肩外転、屈曲
回内:肩内転、内旋、伸展
と組み合わせて行う(共同運動の利用)
・座位での回内困難な場合
臥位で顔の前で促通する(伸筋群の緊張が高まる)
治療プログラム(手指)
- 重度麻痺(指の屈曲なしorわずかに出る)
個々の手指屈曲(座位) - 総指握り可能だが指伸展不可
個々の手指伸展(臥位)
特に母指、示指、中指 - 手指屈曲と伸展がある程度可能
個々の手指屈曲・伸展 - 促通直後の同時収縮(グーパー)は避ける
- 集団屈曲からの各指伸展は個々の指の屈曲より容易
動きの促通と実際の作業活動の併用が重要
川平法の書籍でも紹介されているのですが、川平法と作業療法(実際の物品操作等の練習)を併用することによりより効果的なリハビリが行えることがわかっています。
川平法によって自由に上肢が動かせるようになってくれば、自分が重要かつ目標としている動作の練習を行うことが必要になります。
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日常生活動作に着目した促通反復療法(川平法)のプログラム設定
目標課題1:更衣動作(上着の着脱)
上着の着脱を困難にする要因
脳卒中による運動麻痺があると、更衣動作を困難にします。その要因として、着る際には
①袖口から前腕→上腕と通していく際に、肘が伸びづらいために途中で袖がつかえてしまう
②上腕→肩まで引き上げる際に脇が開きにくいために、袖を最後まで引き上げられない
が挙げられます。
また脱ぐ際には
①肩→上腕と袖を下ろしていく際に脇が開きにくいために、袖を下ろすことが困難
②上腕→前腕と袖を下ろしていく際に、肘が伸びにくいために袖を下ろすことが困難
が挙げられます。
そのため、上着の着脱を行いやすくするためには
①肘が伸びやすくなる(肘伸展)
②脇が開きやすくなる(肩外転)
の促通が必要になります。また、肩関節や肘関節の運動をスムーズに行うためには、その土台となる肩甲骨の運動も大切な要素になります。そのため、肩甲骨の内外転(上方回旋)の動きも重要になります。
プログラムの組み立て方
①肩甲骨内外転
②肩関節屈曲、外転
③肘伸展
目標課題2:顔を拭く
顔を拭く動作を困難にする要因
顔を拭く動作を困難にする要因として、
①手を上げていく際に努力的になると肩に力が入り肩が後方に引き込まれ、腕が外側に上がる
②手を顔に近づける際に腕が斜め前方に上がらず体の前に落ちてしまう
が挙げられます。
そのため、顔を拭く動作を上手く行うようにするためには
①肩が前方に出て、腕が体の斜め前に上がる
ことが必要になります。肩を前方に出すのは肩甲骨の動きが重要で、腕を斜め前にあげるには肩甲骨、肩関節、肘関節屈曲の複合的な動きが必要になります。
プログラムの組み立て方
①肩甲骨内外転
②肩関節屈曲・内転
③肩関節屈曲・内転、肘屈曲⇄伸展・外転、肘伸展
目標課題3:コップをつかむ
コップをつかむ動作を困難にする要因
コップをつかむ動作を困難にする要因として、
①手関節、手指を屈曲させる筋肉の筋緊張が強く、手首が反らず指も伸びにくい
が挙げられます。
そのため、コップをつかむ動作を上手く行うようにするためには、
①手首が曲がり指が伸びるようになりコップをつかむ
②手首が反り指が伸びるようになりコップをつかむ
が挙げられます。理想的な動作は②になります。
プログラムの組み立て方
①手指屈曲を伴う手関節掌屈(自他動運動)⇄手指伸展を伴う手関節背屈(自他動運動)
②前腕の回内を伴う手関節背屈
③手指伸展位での手関節背屈
目標課題4:薬袋を持つ
薬服を持つ動作を阻害する要因としては、
①親指が伸びず人差し指の側面との間に隙間を作れない
が挙げられます。
そのため、薬袋を持つ動作を上手く行えるようにするためには、
①親指が外側に水平に動く
が挙げられます。
プログラムの組み立て方
①母指掌側外転
②母指橈側外転
動作分析、評価からプログラムの立案を!
何よりも大事なのは目標とする動作の分析と、その動作を阻害している要因を見つけることです。
そこが把握できると、動作を行うために必要な動きがわかるため、プログラムが立案しやすくなります。
患者様が目標であったり重要に感じている動作は様々です。
そのため、どんな動作でも分析できる視点が必要であると感じています。
また川平法だけでは不十分なところもあるため、筋肉レベルでも評価を行い、単独収縮を促したり、複合的な動きを促す必要も感じています。
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CI療法のシェイピング的な考え方を元に作業療法の課題を設定する!
今までの作業療法においてもシェイピング的な考えを用いていた?
シェイピングはCI療法に特有の訓練方法かと思われる方もいるかもしれません。
しかしながら、シェイピング的な考え方は従来の作業療法においても行われていたと思います。
作業療法は、その名の通り、作業を用いる事に長けています。
シェイピングも様々な作業を用いながら、詳細に段階付けを行うことで機能面行動面の改善を目指していく訓練方法になっています。
このことからも、従来の作業療法ではCI療法におけるシェイピング的な考え方に基づい行われていたと推測できます。
ただし、シェイピングでは、動作や道具の設定、難易度調整や課題の得点付け、動作遂行の質に対する観察の仕方、行っている動作の対象となる関節はどこかなどが示されていることが特徴ともいえます。
難易度設定はや段階付けはどうするのか
これも、従来の作業療法の考え方でも通用するものがあります。
例えば、上肢運動の難易度とし、肘関節伸展時の肩関節や手指の動作の難易度を考えていきましょう。
肘関節伸展位での動作の場合、
肩関節肢位は、屈曲位、外転・外旋位になるほど難しくなります。
また、手指に関しては、握りよりもつまみ動作になるほど難しくなります。
さらに、対象物の素材を考えると、重く、滑りやすい物体ほど難しくなります。
このように、角度や距離、方向、素材(硬さ、重さ、摩擦)を対象者の状態に合わせたり、目標とする動きや肢位を促すために適宜変化させていけることが作業療法の専門性を発揮することでもあります。
CI療法のシェイピングを参考にした課題難易度と段階付けの設定方法
対象者にとって、最適な難易度の課題を設定できるということは、よりよい報酬を得ることができ、それが運動学習をさらに促すことにつながります。
そのため、課題難易度または段階付けは細かく設定される必要があります。
脳の可塑性を促すには、手の使用頻度ということも重要になります。
麻痺側四肢を動かす回数は、適切に設定された課題難易度にも影響を受けることが考えられます。
心理学者のマクレランドが行った輪投げ実験で「被験者は成功する確率が5割程度のときに最も意欲的に輪投げを行った」
このようなことも言われているようです。
もちろん、対象者が意欲的に取り組めるにはセラピストからの外的なフィードバック(賞賛)などの報酬も必要になるかもしれません。
課題の難易度設定と段階付け、内的・外的な報酬を組み合わせながら、麻痺側四肢の使用を多く促していくようなアプローチが脳の可塑性を促すためには必要になるでしょう。
以下に、CI療法などを参考にした課題難易度の設定基準を考えていきたいと思います。
基準1(疲れの見え始め)
課題の段階付けや変更に直接関係することではありませんが、回数設定に関わるようなことです。
訓練を行っていると、筋肉が疲労することにより、明らかに運動パフォーマンスが低下することがあると思います。
このような状態で訓練を続けていると、無駄なノイズがある状態で動作が記憶されることにつながります。
短期の学習効果は休憩によって残り、休んでいる間に学習の選択が行われて中期の学習が残るようです。
その後さらに動作することにより選択された学習の効果が現れ、動作の変化になると理解しています。
〜中略〜
練習が過多で疲労が出ると、動作のノイズが増え、よい動作の記憶を傷つけると考えられます。片麻痺 能力回復と自立達成の技術 現在の限界を超えて
疲労は運動パフォーマンスの低下として現れますが、その前兆を評価できることが大切になります。
表情(眉間にシワがよる、口がいがんでくるなど)、呼吸、姿勢が崩れてくるなどの反応を観察により把握することが大切になります。
回数をこなすことももちろん大切なのですが、疲労と向き合いながら取り組めるように、観察ポイント知っておくことが大切になります。
基準2(課題遂行の様子)
ここからは、段階付けや課題変更にける基準の考え方です。
課題設定においては、「少し難しそうだが、なんとかできるレベル」を設定していくことが必要と言われています。
対象者にとって簡単すぎるレベルでは回復が起こりにくいと考えられます。
課題遂行時の観察ポイントとして、まず正常動作の要素を考えていきたいと思います。
正常な動作では、道具操作は流れるように、協調的な動きになります。
また、スピードも正確性も高いことが挙げられます。
このことから、協調性、スピード、正確性、(安全性)は正常を考えた場合に重要な要素になります。
脳卒中片麻痺者では、上記に加えて分離運動が適切に行われているかも加える必要があります。
分離運動が適切に行われていないということは、共同運動の要素が含まれているということです。
共同運動の要素が強ければ、それを代償するために様々な運動が行われます。
例えば、頭や体幹、反対側の上肢に代償運動が生じます。
分離運動が部分的に可能になれば、今度は動きのスピードや協調性、正確性に目を向けることになります。
また手指では、独立した運動が行えずに把握のパターンが残っていることが考えられます。
ある課題を行ったときに、代償運動が強すぎる場合、その運動を行い続けるとノイズが入った運動を記憶することにつながってしまいます。
分離運動障害や筋力低下があると、代償運動は起こってしまうものですが、それが強すぎる場合には、課題の難易度をワンランク低いものにする必要があります。
基準3(数値の利用)
前途しましたが、数値は明確な基準になります。
数値をもとに課題の設定や変更を行うこともひとつの方法です。
終了時間
終了するまでの時間により、課題の難易度を決定します。
ひとつの課題が◯秒で終わるように設定し、◯秒以上かかる課題は行わないようにするなどです。
これにより、時間を基準として、遂行のスピードに焦点を当てて課題設定が行えます。
平均時間の比較
例えば、前日に行った課題の平均時間と、当日に行った平均時間を比較し、時間が短くなっていたら、課題の難易度を上げていきます。
平均時間2
この平均時間では、例えば10回行うのであれば、後半5回中4回の平均が、前半5回の平均を超える場合に課題の難易度を上げていきます。
個数
ある秒数までにできた個数の平均が、前日の個数の平均を超えた場合に、課題の難易度を上げていきます。
これ以上の改善が見られない
課題を行っていて、個数や平均時間などの改善がこれ以上見られない場合、課題の難易度を上げていきます。
訓練における注意点
上記のような基準を設定し、段階付けや課題設定・変更をおこなっていきます。
それに加えて、対象者が行っている遂行状態をフィードバックすることが大切になります。
個数や平均時間の向上が目に見えるように書面やグラフにして提示することは、対象者の意欲向上につながります。
自主トレでは個数や平均時間でフィードバックが行えますが、セラピストがついていることのメリットは、遂行の質を評価し、フィードバックできることです。
「手を伸ばしたときに、体の傾きが大きかった」などと、対象者自らでは気づけないような体の状態に対して助言を送ることは大変意義があることです。
遂行の様子をビデオ撮影することは、後で遂行状態を振り返ることにつながり、改善できる・すべきポイントを共に確認することができます。
このようなことを通じ、訓練を進めていくことで、対象者にとってよりよい訓練になるのではないでしょうか。
CI療法におけるシェイピング項目と対象者への適応の考え方
粗大操作:
1 前腕を机上のタオルにのせる
2 机上のタオルに前腕をのせた状態で円を描くように肘を伸ばす
3 肘で時計回り・反時計回りに直径10㎝・20cmの円をなぞる
4 手を膝上から机上のタオルにのせる
5 手を机上のタオルにのせた状態で前方に肘を伸ばす
6 患側横に置いた椅子の上に掌か拳を置き、肘を伸ばして体重をかける
7 机上のボールに手を伸ばす−戻す
8 A4大クリップボードを立てて机上で支える
9 手を腰に回して叩く
10 反対側の肩の埃を掌で払う
11 反対側の肩をリズミカルに叩く
12 穴あけパンチで紙に穴をあける
13 お手玉を口元まで持ってくる−机上に置く
14 机上のボールをつかみ、患側横の箱に入れる
15 机上と机縁をタオルで拭く
16 輪投げの輪をさまざまな方向にセットした棒に通す
17 ブロック2つ以上を積み上げる
18 食器洗いのスポンジを(洗剤を泡立てるイメージで)5回握りしめる
19 引き出しを開ける・閉める
20 頰杖をつく
21 盆上でボールを時計回り・反時計回りに回す
22 紙を手前から2つに折る
23 クリップをつまみ箱に入れる巧緻動作:
24 人差し指で時計回り・反時計回りに直径10㎝・20㎝の円をなぞる
25 計算機のキーを人差し指で順に押す
26 机縁と平行に置いた定規の目盛を5㎝刻みで指腹で弾く
27 ペンをつまんでペン立てに立てる
28 軽い木片をはじく
29 頭をかく
30 うちわで手前や前方に向かってあおぐ
31 食べ物に塩をふる動作
32 洗濯バサミをさまざまな角度で板にはさむ
33 紙を握りつぶす
34 握りつぶした紙のしわを伸ばす
35 クリップをつまみ紙を挟む
36 雑誌のページを1枚ずつめくる
37 スティック糊のねじキャップを開閉する
38 直径5㎝程度のボトルねじ蓋を開閉する
39 そろばんをはじく
40 小銭をつまむ
41 ティッシュでこよりをつくる
42 複数枚のトランプを持ち1枚ずつ机上に置く
43 野球ボールの縫い目を親指でなぞる
44 机に貼ったセロテープを爪を立ててはがす
45 書字(名前、計算、迷路等、障害や必要度に応じて)
46 お手玉を投げる−受ける両手動作:
47 (男性)ネクタイを締める・(女性)エプロンの紐を結ぶ
48 袖口や襟元のボタンをかける・はずす
49 タオルを絞る
50 ちょうちょ結びをする
51 はさみで紙を切る
52 紙で箱を包む
53 両手でタオルを握りピンと張る
54 立って足踏みをするとき、手を前後に振りリズムをとる
55 10㎝の段差を昇降する(両手でバランスを取る)
56 両手を対称に広げて深呼吸をする
57 お手玉を前方のかごに投げ入れる
58 輪投げ
59 上手投げでボールを持ったままゆっくり壁に当てる
60 傘をさして歩く佐野 恭子「CI療法」作業療法ジャーナル Vol.45 No.7 2011
この項目は参考にできるものではありますが、大切なことは、これらの項目が、
どの関節運動をターゲットにしているかということでしょう。
ある課題が、肩関節、肘関節、前腕、手関節、手指関節を単関節レベルで動かすのか、もしくは複数の関節の組み合わせで行われるのかという視点での分析が必要になります。
もちろん、参加する関節の数が多くて、かつ空間で行う運動の方が難易度は高くなります。
また、運動方向によっても筋活動には違いが生じます。
さらに、シェイピング項目の中には日常物品が多く使用されています。
私たちは日常生活の中で様々な物品を使用していることからすると、それはとても理にかなっていると言えます。
Transfer packageの概要
Transfer packageは、CI療法をの構成要素のひとつであり、日常生活での麻痺側の使用を促す(訓練での麻痺側の使用を実生活へ反映させる)ための介入手段です。
Transfer packageはその言葉から、いくつかの構成要素があります。
①行動契約
②モニタリング
③問題解決
④自宅技能課題
⑤活動スケジュール
⑥自宅訓練
などがあります。
麻痺側の日常生活での使用のための心理学的側面として、「自己効力感」「認知された障害」が挙げられます。
①行動契約
行動契約では、麻痺側上肢を医療施設以外においても出来る限り使用するということをセラピストと対象者の間で契約をかわすことです。
本人、状況によっては家族や介助者なども含まれます。
麻痺側上肢を使用する具体的な日常生活上の課題を挙げたのち、それらを文書化し、対象者・セラピストが署名します。
麻痺側上肢使用の契約書を作成するため、これらの手続きは通常訓練初日に完了しておく必要があります。
・麻痺側上肢を良くして何がしたいか
・麻痺側上肢の回復には、麻痺側を日常生活でしようしなければならないことの説明
・資料や動画などから、過去の対象者の長期的な回復を確認してもらう
などを行う必要があります。
②モニタリング
対象者自ら麻痺側上肢の使用に注意・関心を向け、麻痺側上肢での活動を観察するように誘導する手順、すなわちセルフモニタリングのことをさします。
麻痺側上肢使用についての日記の記載(毎日)や、日常生活課題での麻痺側上肢の使用頻度と使用感についての記載を行います。
モニタリングにより麻痺側上肢使用への認識を高め、実生活への使用・参加を定着できるように促していきます。
③問題解決
モニタリングの内容についてセラピストと対象者で話し合い、成功体験や、麻痺側上肢の使用がうまくいかなかったことのエピソードの共有を行います。
そこから、セラピストは具体的な解決策(自助具、環境調整、麻痺側上肢の役割の修正など)を提案し、問題を解決していきます。
セラピストが当たり前だと思っていても、対象者からすると「はっ」とするようなこともあるため、常にアドバイスを心がけるようにする姿勢が大事です。
④自宅技能課題
まず、対象者が日常的に自宅で行っていることを把握します。
対象者の1日の生活スケジュールや生活の流れを把握し、その中で、対象者が自宅で麻痺側上肢を使用する課題を1日ごとに10個決めていきます。
決定した課題は用紙に記載し、訓練終了後に対象者に渡されます。
課題選定では、対象者が比較的易しいと感じる課題5個、残り5個は挑戦的(少し難しい)な課題を選定します。
最終的には、麻痺側上肢を参加させた活動を毎日30分程度行えるようにすることで、セラピストからのモニタリングと問題解決策の提案が毎回なされます。
以下の記事をご覧いただくと、課題選択のためのツールの事が書いてあります。
⑤活動スケジュール
医療施設での活動内容の記録を対象者に提供します。
情報提供により、改善を訓練内容の変化・経過から実感することが可能となります。
モチベーションアップは、より訓練に積極的に参加してもらうことにつながります。
⑥自宅訓練
自宅での自主トレーニング(15〜30分)をさします。
集中訓練期間中では、自宅技能課題の代わりに導入されることが多いようです。
自主トレと自宅技能課題を同時に行うことは対象者への負担を強め、心理的な負荷もかけやすいことも考えられるためです。
自宅にある物品を使用することで、自主トレをうまく導入できると、集中訓練後に自主トレをスムーズに導入できるメリットがあります。
セラピストが10課題程度選定し、その中から対象者が1〜2課題を選び、1日30分程度訓練を行います。
心理的側面:自己効力感
自己効力感は、「ある活動を自分で行うことができる、と自分の遂行可能性を認識していること」です。
日常生活のなかで麻痺側上肢が「使えている」という達成感から自己効力感は向上すると考えられます。
麻痺側上肢の積極的な使用がどのようなリハビリ効果が出るのかという認識を持ってもらうこうが大切です。
自己効力感の向上は、さらに積極的な麻痺側上肢の使用につながります。
心理的側面:認知された障害
認知された障害とは、「ある活動を行う上で、対象者が物質的、あるいは心理的に困難を強く認識すると、その活動を行わずに現在の行動を変えようとしない」という考え方です。
そのためセラピストは、ある活動を行うことは、対象者にとって利益があるという認識を持ってもらうようにすることが大切です。
また、物質的な困難に対しては、環境調整や課題の難易度調整を行い、心理的障害には正のフィードバックや問題解決方法の提案、誤った情報の訂正などを行います。
アウトカムの評価
評価ではmotor activity iogが使用されています。
Transfer packageは短期間での変化だけでなく、長期効果も得られることが報告されています。
また、CI療法終了後からもさらなる機能改善がみられるため、Transfer packageが重要な役割を担っていることが考えられます。
また、脳の変化としては、Transfer packageを含むCI療法と含まないCI療法の比較では、Transfer packageを含むCI療法では感覚運動野における上肢領域と海馬において組織密度の観点から有意に増大がみられたとの報告があります。
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脳卒中片麻痺者の書字動作の特徴と分析、リハビリテーション
片麻痺者の書字動作の特徴
書字動作には、様々なバリエーションがあります。
例えば、上肢全体の動きによるもの、指先のみの動きによるもの、筆記具の把持ではそれを深く把持したり、指先で摘むように把持するなどがあります。
片麻痺者の書字動作の特徴としては、
・動作中筆記具の握りこみが強くなり、紙に対するペン先の角度を一定に保つことが困難
・指は握りで固定され、手関節と肘関節は一定角度で維持され、主に肩関節の動き(肩甲帯挙上を伴う)で書字する
・字を書く位置へのリーチに努力がいり、意図した箇所に線を引けなかったり、線の揺れ幅が大きくなる
などがあります。
これは、努力性のリーチング動作が指・手関節部の握りこみを強くし、筆記具の把持は可能ですが指・手関節での分離した動作を妨げている結果です。
また、肘関節では肩関節の動作に対して肘屈伸筋が同時収縮的に働き、スムーズな関節運動が行えていないことにもよります。
その結果、肩関節の運動はさらに大きくなり、肩の過使用が目立つようになります。
そして、肩関節の細かな動きのコントロールが困難な状態となっています。
感覚障害がある場合、前腕・手関節・指関節を一塊にして書字動作を行うことが多くみられます。
書字動作のリハビリテーションにおける学習課題
前途したように、片麻痺者の書字動作では近位関節は努力性のため、様々な方向へのリーチングと、意図した位置での肘関節のスムーズな動きを、肩甲帯の挙上を抑制しながら行うということを学習していく必要があります。
目標とする運動スキルは、
・麻痺手で筆記具を把持する
・肘関節の分離した動きで字を書く
・字を連続して書くために麻痺手が移動できる
・非麻痺手(紙を押さえる)と麻痺手の協調した動きが行える
となります。
協調性、正確さ、書字スピード、適応性が向上するためには、「よいフォーム」が必要であり、よいフォームは課題遂行に必要なエネルギーを減少させることができます。
フォーム修正には、その情報提示と課題遂行後のフィードバックが重要であり、エラーを起こさないように管理されるべき部位と動きについての情報を具体的に提示していきます。
書字における運動学習とリハビリテーション
書字動作の運動学習について、
皮質脊髄路の障害による片麻痺者の書字では、書字の特性は維持される。つまり書字の基本的概念は保たれているため、ふるえなどの書字における運動のノイズをどのように減少させるかが学習のポイントになる。
運動学習理論に基づくリハビリテーションの実践 P145
とあります。
段階付けとしてはなぞり書き(線引き)からカタカナ、画数の少ない漢字、ひらがなというように運動の自由度を調整して中枢神経系の機能的適応を促進させていきます。
また筆記具や用紙、姿勢、スピード、字体、字量に変化を加えて、日常的に行えるようにしていきます。
感覚障害がある場合、要素の連結や曲線の組み立てなどが困難になるため、視覚的フィードックや言語的フィードバックにより軌道修正を図り、運動制御の学習を促します。
書字動作を促すリーチング課題
書字におけるリーチングでは、肩関節の様々な方向へのコントロールと肘の動きを意識したリーチにより、肩の過剰で努力的な代償を軽減させることが重要になります。
リーチングを促すアクティビティとしてはワイピングを用いることが有用で、様々な段階付けが可能です。
ワイピング:
平面上で行うリーチ動作で、関節可動域拡大や運動の促通などに用いられます。
机上にて肩屈曲して肘伸展しながら前方へ手を伸ばし、その中で肩甲帯挙上を抑えて肘関節屈伸を行うことで、フォームの修正を行います。その際、体幹前後屈や肩甲帯の動きは抑制します。
書字動作と同じように前腕中間位・手関節背屈位で把持できるため、タオルの上に把持しやすい筒を立てて「筒でタオルを滑らす」ように動かしていきます。
段階付け①単純動作
肩内転位から屈曲・外転方向へ半円を描くように動かします。
段階付け②複雑動作
机上で円を描いたりカタカナ、ひらがなを書きます。
段階付け③目標物の設定
目標物にとどくようにリーチさせます。
*フォームに関する情報提示と課題遂行後のフィードバックでは、「前に行くときは肩をすくめないで」「戻すときは肩を後ろに引かないで」「肘の動きを意識して」などと部位と動きを明確にしていきます。
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脳卒中片麻痺者の包丁操作に必要な機能
文献による検討
高見らは、脳卒中右片麻痺者の麻痺側手による包丁操作の実用群と非実用群をMFT(Manual Function Test)、握力、上肢能力テスト(上田式)、箸操作能力で比較検討しています。
その結果、包丁操作が実用的になるには、MFS(MFTのスコア)81%、握力約10kg、上肢能力テストが実用手AまたはB、また食事動作での箸操作自立が必要条件としています。
患者のデータ(分析症例の条件)は、①右片麻痺者、右利き②包丁操作の評価が可能③握力測定可能④検査に支障をきたすような認知障害がない⑤感覚障害はない、もしくは軽度⑥最終的に包丁操作が可能の6項目で、女性、ADLは自立レベルとなっています。
上肢能力テストの概要と包丁操作の関係
文献によると、上肢能力テスト(上田式)のサブテストは①封筒を切るときの封筒の固定②財布からコインを出すときの財布の空間での保持③傘をさす④爪をきる⑤袖口のボタンを留めるとなっており、各項目の可能、不可能で点数化し、
廃用手:可能項目なし
補助手C:可能項目1つ
補助手B:可能項目2つ
補助手C:可能項目3つ
実用手B:可能項目4つ
実用手A:可能項目5つ
としています。
報告によると、包丁操作可能群は上肢能力テストでほとんどが実用手Aであったとあります。
ここからは私見ですが、各項目の共通要素を考えると、肩関節屈曲、肘屈曲位にて上肢を空間保持し、手関節の固定により対象物をしっかりと把持するような機能が必要と考えています。
包丁操作と箸操作の関係
報告によると、
箸操作能力では、包丁実用群の箸実用が20例、箸非実用はいなかった。包丁非実用群では箸実用が2例、箸非実用が4例で包丁操作と箸操作の可否はほぼ一致しており、包丁操作と箸操作の難易度は同程度であることが推測された。
とあります。
箸操作に必要な要素は手内在筋の機能と、手関節背屈位での手指の操作が必要で、具体的な指標としては、傾斜をつけたペグボードで、1〜3指を用いてペグを回転させてからボードに挿すような操作が十分にできると包丁操作の獲得が期待できるとしています。
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脳卒中片麻痺者の箸操作獲得に必要な要素とリハビリ法
箸操作練習
脳卒中片麻痺者が、箸の操作練習を行うのは、かなり機能が向上している段階だと思われます。
箸操作獲得までの大まかな段階としては、スプーン操作→自助箸による操作→普通箸による操作というように3つの段階に分かれると思います。
スプーンや自助箸においては、様々な種類があり、対象者に合わせた物を選定することが重要になります。
このような段階を経て普通箸の操作を獲得していくことになります。
この記事では箸操作獲得に必要な肩、肘、前腕、手首、手指の運動の分析と、練習方法やコツについてまとめていきます。
箸操作における肩、肘、前腕、手首、手指に必要な機能
前提として、主に運動麻痺がある対象者を想定しており、感覚障害があることは考えていません。
感覚障害があると、箸の動きがぎこちなくなったり、箸で食べ物をつまむ力の調整が行いにくくなるなどの症状が現れます。
箸操作における肩の機能は、肘関節の運動とのコンビネーションで行われます。
箸でつまんだものを口に運ぶには、肩関節を上げる(屈曲)動きと肘を大きく曲げる(屈曲)により行われます。
再度おかずをつまむ時には肘が伸び(伸展)ていきますが、これは上腕二頭筋という肘を曲げる筋肉がブレーキをかけながら伸ばしています(上腕二頭筋の遠心性収縮という)。
上腕二頭筋が遠心性収縮できるためには、上腕二頭筋の求心性収縮(肘を曲げる動き)がしっかりと力を発揮できていることが条件です。
重力に負けないように肘関節が曲がる必要があります。
これらのことから、肩・肘に必要な要素としては、肩を上げる動作に伴う肘を曲げる動作(肩屈曲+肘屈曲)になります。
肩を上げる動作はわずかと思いますが、肘を曲げる動作は重力に抗して大きく曲げなければならないことから、かなりの筋収縮力を必要とします。
肘を曲げて行く際に、前腕が重力に負けてしまうと、肩は図のようなポジションをとってしまいます(肩関節内旋位という)。
これは、肩関節の動きを安定させる腱板筋(特に外旋筋)の働きが十分に機能していない場合に見られます。
このような状態では、箸を口に運ぼうとする際に、肩関節が外側に上がる(外転)運動により代償しようとします。
以上のことから、肩屈曲+肘屈曲+肩外旋という要素が必要になります。
前腕の運動には回内(親指を内側に向けて手の平が下に向く)と回外(親指を外側に向けて手のひらが上に向く)があります。
箸操作には、前腕回内外中間位(親指が天井を向く位置)から45°程度回外位が最も多く使われます。
肘を伸ばす時には前腕回内外中間位で、肘を曲げて口に運ぶ際には前腕45°回外位となります。
箸操作に必要な手首の運動は、主に背屈(手首を反る運動)と橈屈(親指側に傾ける運動)になります。
手首が重力に負けてしまうと、手首が屈曲(曲がる運動)、尺屈(小指側に傾ける運動)してしまい、箸操作や口に運ぶ動きが難しくなってしまいます。
指の動きを考えていきます。
お箸の操作には「固定箸」と「操作箸」という考え方があります。
「固定箸」は親指と人差し指の間で挟んでいる下側の箸で、「操作箸」は人差し指や中指で操作する上側の箸です。
固定箸は、親指が他の指と向き合う形になる対立運動が必要になります。
また、薬指と小指はしっかりと曲げておくことで親指・人差し指、中指の安定した箸操作を保証します。
操作箸では人差し指や中指が独立して曲げ伸ばしができる自由度が必要です。
また全体として、手が機能を発揮できるためのアーチが必要で、そのためには手の内在筋の働きが必要になります。
固定箸と操作箸の固定とつまみ動作
先ほど固定箸と操作箸のことを言いましたが、さらに詳しく見ていきます。
固定箸は、人差し指の付け根(MP関節)、親指の付け根(MP関節)から第一関節(IP関節)にかけて、中指の第一関節(DIP関節)で固定が行われます。
箸操作をしている間、固定に関わる筋肉は収縮を維持しなければなりません。
固定力は、小指と薬指の曲がる力がしっかりと発揮されることによるものです。
操作箸は、親指の第一関節(IP関節)から先端にかけて、人差し指の付け根(MP関節)から第二関節(PIP関節)、第一関節(DIP関節)、先端にかけて、中指の先端にかけて固定されます。
つまみ動作は、人差し指と中指の第二関節(PIP関節)の曲げる動きにより起こり、離す動作は伸ばす動きにより起こります。
箸操作練習とリハビリのポイント
先ほど、肩、肘、前腕、手首、手指の動作分析をして、箸操作に必要な要素がわかりました。
まずは、肩のわずかな屈曲と肘の大きな屈曲、重力に負けない肩関節の外旋となります。
これらを組み合わせた運動を行えるようになる必要があります。
詳しくは、以下の記事を見てもらうと理解しやすくなります。
脳卒中片麻痺の上肢のリハビリ、自主トレ方法!肩を挙げた時に肘が伸びにくい場合!
脳卒中片麻痺の上肢(肩・腕)のリハビリ・自主トレ方法(重度〜中等度運動麻痺の場合)
脳卒中片麻痺の上肢(肩・腕)のリハビリ、自主トレ方法(中〜軽度運動麻痺の場合)
前腕の運動では回内外中間位から45度回外位を、肩や肘の運動を伴いながらコントロールできる必要があります。
前腕のリハビリ法については、以下の記事を見てもらうと理解しやすくなります。
脳卒中片麻痺の前腕の運動(回内、回外)のリハビリ、自主トレ方法
手首の運動では、重力に負けて掌屈、尺屈位とならないように、背屈、橈屈位をとれるように筋出力を発揮できるようにしなければなりません。
手首の運動については、以下の記事を見てもらうと理解しやすくなります。
脳卒中片麻痺の手関節(手首)のリハビリ、自主トレ方法
手指では、母指と他の指の対立運動、指の個別の曲げ伸ばし、手のアーチの働きが必要になります。
手指の運動については、以下の記事を見てもらうと理解しやすくなります。
脳卒中片麻痺者の手指のリハビリ・自主トレ方法(重度〜中等度運動麻痺の場合)
ここからは箸操作そのものに向けての練習について考えていきます。
回復過程において、よほどの軽度運動麻痺でない限り、普通箸を用いての練習というわけにはいきません。
まずはスプーンから始まる方もいるでしょう。その場合、太柄にすることで握りが安定しやすく、食べ物をすくう動作の最にもブレにくくなるためお勧めです。
次の難易度としては「箸ぞうくん」です。箸ぞうくんは、図のように握る面が大きく作られており、手にフィットしやすく、握る位置のガイドもある自助箸です。
この箸にはバネがついており、親指または人差し指/中指でつまみ、離すのはその力を緩めるだけで行えます。
途中で指の間からずれてきてしまう場合、指サックをつけることで摩擦力を上げ、滑りにくくすることができます。
次の難易度では、ピンセット/クリップタイプの自助箸です。
だんだんと普通箸に近づいており、持ち手の安定性を得るために小指・中指を曲げるのを保持しておく筋収縮力も必要度が上がります。
より普通箸に近いつまみ動作の様式でつまみ、離すのは力を緩めることで行われます。
箸と箸の先が合わないというのは箸操作練習でもよく見られますが、この自助箸では先と先が合うためにつまみやすくなっています。
なお、商品によっては、箸先がワイドになっており、麺をつまむのに適しているものもあります。
子供が箸の持ち方を学習していく場合に、エジソン箸が使用されることがあります。
エジソン箸は大人用もあり、これを練習に取り入れることができます。
箸にリングがついていることで、箸の正しい持ち方を自然に誘導しながら学習が行えます。
つまみ、離し動作も自分の力により行われます。
実際に使用してみると、赤丸のついた部分がフックの役割となり、固定箸の固定が行いやすくなるため、操作箸がかなりスムーズに動かせる印象です。
固定箸はしっかり固定できるようになったけど、操作箸の動きを伴うとぎこちなくなる場合や、操作箸を正しいフォームでスムーズに動かしたい場合などには最適な道具だと考えられます。
次に、自助箸ではなく、普通箸を使っていきますが、これには2種類あります。
割り箸と塗り箸です。
割り箸は角があり、箸の先と先が塗り箸よりも合わせやすいという特徴があります。
そのため、難易度としては割り箸→塗り箸で進めます。
普通箸の練習では、まず固定箸と操作箸が、各指の力によって固定できる筋収縮力を発揮し続ける力を鍛えていく必要があります。
固定箸のみを握り、あらゆる方向に力を加えてもそれを保持できるようにします。
また、固定箸をテーブルに押し付けてもブレないくらいの力を発揮できる必要があります。
操作箸においても、握った箸があらゆる方向かに力を加えてもブレないように保持できる力を発揮できるようにします。
そして、固定箸、操作箸とも、テーブルから口に運ぶまでの間じゅうずっと固定できる筋収縮力を発揮できるために、セラピストの抵抗に打ち勝つ必要があります。
もし、指の対立位が取りにくいのであれば、テープで母指球から小指球の間を巻くことで対立位を促すことがあります。
また小指・薬指の曲げる力が弱くて箸が安定して固定・操作しにくい場合には、指の間にスポンジなどを入れ込むことで、ガイドの役割により握りこみを意識、アシストすることができます。
箸操作の練習では、操作が不十分なままつまみ動作を練習しても、不十分な状態のまま学習が行われてしまうため、操作のコントロールができてからつまみ練習を行う事がベストだと考えられます。
①箸先を合わせて保持する
②①の状態から、机上で箸を動かす(腕の動きで)
③①の状態から、手首を動かす
④①の状態から、「8の字」を描く
⑤①の状態から、前腕の回内外を行う
⑥①の状態から、机上に箸を立て、上下に動かす(箸の固定を維持する)
⑦操作箸を上下に動かす
⑧固定箸を上下に動かす(これは難易度が高い)
⑨固定箸を指で止め、操作箸を上下に動かす
⑩操作箸を指で止め、固定箸を上に動かす
⑪固定箸と操作箸を持ち、箸先が合うように開閉する
これらの動きが、様々な腕の角度で行えるようになれば、つまみ動作練習を導入できる状態だと思われます。
つまむ練習では、軽く柔らかいものから(スポンジ、木片など)、小さいものから大きいもの、滑りやすいもの(大豆、小豆など)でつまみ練習を行います。他の物としては、マカロニ、爪楊枝なども利用できます。
ただつまむだけでなく、つまんだものを移動する、口まで運ぶ練習を行うことが大切です。
その際に、先ほどから説明している箸操作の要素のどれかが獲得できていない場合、代償運動が見られることがあります。
それにより、難易度の調整を行わなければなりません。
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脳卒中片麻痺者の自主トレと家族の役割を考える
文献
原田 朋美ら 「家族参加型の上肢集中練習により希望であった麻痺手での作業を達成できた一症例」作業療法Vol.36 No.4 2017
文献の内容
回復期の重度運動麻痺者(脳卒中)に対し、CI療法に準じた訓練を行い、対象者の妻が自主練習の管理者になることで、麻痺側上肢の訓練量を確保し、日常生活動作における麻痺側上肢の使用につながった。
脳卒中片麻痺と訓練量
脳卒中を発症すると、運動麻痺が生じることがあります。
運動麻痺が生じると、自分の思い通りに腕や指を動かすことができなくなります。
運動麻痺の回復には、早期からの訓練を実施し、いかに訓練量を確保するかにも依存します。
1日は24時間であり、病院でのリハビリは多くても3時間ほどです。睡眠時間など、他にも活動することはありますが、その他の時間をいかに腕を動かす機会として捉えていくかは、対象者のみでなく、家族も重要性を知っておく必要があります。
脳卒中になったとき、家族の混乱は
一般の方にとって、「脳卒中」という言葉は知っているかもしれませんが、具体的に、どのような症状が出て、回復のためにはどのようなことをしていけばよいかなどという知識はあまりないと思います。
そんな状態で、家族の方がいきなり脳卒中になったとなれば、混乱するのは当たり前です。
そして、知識がないということは、何をやってよいかがわからないことになります。
「リハビリ以外の時間は腕を動かさなくてもいい」「私たちが体を触って、もし何かあったらどうしよう」などという認識や不安もあるかもしれません。
そんな時に病棟の看護師や、リハビリスタッフがいかに家族に対して、脳卒中に対する知識、リハビリに対する知識を知ってもらえるかということは、とても重要なことだと思います。
知識や方法を知ることができれば、最初は見よう見まねから始まっても、経験をすればかなり優れた身近なコーチになれると思うのです。
家族=コーチ
家族は心の支えであり、時には叱咤激励をしてくれる仲間でもあり、リハビリの優秀なコーチにもなりえます。
もし、家族の方が、作業療法士や理学療法士が行うプログラムの内容をしっかりと理解して、注意点や実施方法を知っているとしたらどうなるでしょう。
通常のリハビリの時間に加えて、家族の方が行ってくれるリハビリ、本人が自主的に行うリハビリなど、訓練量が明らかに増えていきます。
脳卒中のリハビリにおいては、訓練量の確保がキーポイントになりますから、家族をいかに巻き込めるかは、重要な要素になります。
セラピストから家族にどんな指導を行うか
家族を優秀なコーチに育て上げるには、まず家族の理解を得なければなりません。
家族も対象者につきっきりというわけにはいきませんから、忙しい間にでも、対象者のリハビリに関わる時間を作ってもらわなければなりません。
そのためにも、
①脳卒中の回復のメカニズムに対する正しい知識
②治療プログラムの内容の理解
③適切な実施方法と介助方法の理解
などをセラピストから家族に伝える必要があります。
全てを理解する必要はありませんし、理解しながら行ってくれればという感じでもあります。
文献では、セラピストが考案した自主練習内容の資料(写真付き)を元に、家族(妻)が課題を設定して行うというものでした。
その際に、注意点(肩が上がる代償運動が起こらない、体が横に傾かない、◯◯がみられたときには休憩して)などを理解してもらっておくことで、家族が対象者をモニタリングすることが可能になります。
家族の中には、過介助になる場合も予測されます。
過介助になれば、せっかく自分で行えることも、機会がなくなってしまうなどのデモリットも生じます。
そのため、過介助な様子が観察されたら、対象者がどこまでできるかを説明するなどの対応が必要です。
自主訓練の中では、不適切な動作がみられたら、それを対象者にフィードバックできるように、異常な運動を知ってもらうようにしておく必要もあります。
対象者によっては、家族が関わりすぎると逆に良くない場合もあるので、そこは対象者の置かれている環境や性格を評価しながら、どこまで家族が介入できるかを考えていくことが大切になります。
川平法と家族による訓練
私が知っている方は、退院後に家族(妻)が川平法を毎日行っていました。
DVDを見ながら見よう見まねでおこなっていたと言っていました。
川平法では、家族向けの本も出ているなど、家族参加型のリハビリを推奨しているものと思われます。
川平法自体が、一つの運動自体に100回は行うようにしているくらい、練習量の確保が大切だとしています。
川平法を取り入れているセラピストであれば、家族に対して具体的方法も指導できると思います。
このような取り組みが、対象者の回復を左右することを、セラピスト、対象者、家族が理解しておくことは非常に意義があることだと思います。
今はこのように専門的な内容を、家族向けの内容にしてくれているので助かります。
改めて家族参加型のリハビリについて考える
ここまでで家族参加の意義を述べてきましたが、実際にはなかなか家族が参加できるような状況は少ないかもしれません。
家族にもそれぞれ用事がありますし、それぞれの想いもあります。
セラピストは積極的に家族と関わり、話をし、その中で家族がどのように考えているか、不安が多いのか、リハビリにどんな期待があるのかなど、様々なことを知るべきです。
こちらから「ぜひ見学していってください」と誘えるようにしていくことも大切かもしれません。
家族は対象者の取り組む姿勢を見ることで、回復の姿がよりよく見えます。
そのことが、家族に参加してもらうきっかけになるかもしれません。
関係ないかもしれませんが、ダイエットでは友達と行った方が、一人で行うよりも長続きするといったことがよく聞かれます。
リハビリも一人で行うのではなく、誰かと行った方が愚痴も言えるし、喜びも一緒に共感できます。
家族がリハビリに参加できるような、スタッフの環境設定も、今後学んでいかなければなりません。
脳卒中では損傷部位別の評価とアプローチを行うことが必要ですよね?
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そういった意味でも、紹介してもらった病院や施設のリハビリ科がどのような現状で、どのような人材が欲しいのかといった情報が、自分の持つ強みを活かせるかといった視点で転職活動を進めていくことが大切になります。
転職サイトは複数登録することも必要
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せっかく転職サイトを利用するのであれば、できるだけ数多くの求人情報の中から自分の条件にあった求人情報を探せる方が良いはずです。
その分複数のコーディネーターの方と話をする必要がありますが、自分のこれからのキャリアや人生を形作っていく上では必要なことになります。
また、コーディネーターの方も人間ですから、それぞれ特性があります。
自分に合う合わないと言うこともありますから、そういった意味でも複数サイトの登録は大切かもしれません。
とにかく行動(登録)!管理人も登録経験あり!転職サイトのご紹介!
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各病院や施設は、全ての求人情報サイトに登録する訳ではないので、複数登録する事で より多くの求人情報に触れる事ができます。
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