パーキンソン病のリハビリテーションでは、伝統的に機能維持の観点から筋力増強やストレッチが中心に行われてきています。近年では、脳科学の観点からもリハビリテーションが行われており、パーキンソン病のリハビリテーションも変化がみてとれます。今回、パーキンソン病の病態理解と脳科学の視点を基にした評価からリハビリテーションをまとめていきたいと思います。

目次

パーキンソン病の病態理解と脳科学!評価からリハビリテーション!

パーキンソン病について

パーキンソン病(パーキンソンびょう、英: Parkinson's disease)は、手の震え・動作や歩行の困難など、運動障害を示す、進行性の神経変性疾患である。

進行すると自力歩行も困難となり、車椅子や寝たきりになる場合がある。40歳以上の中高年の発症が多く、特に65歳以上の割合が高い。

肉眼的には中脳の黒質・青斑核の色素脱失がみられ、組織学的には、黒質や青斑、迷走神経背側核、視床下部、交感神経節などの神経細胞脱落が生じていて、典型的には残存神経細胞やその突起の一部にレビー小体(Lewy body)という特徴的な封入体が認められる。

中脳黒質のドパミン神経細胞減少により、これが投射する線条体(被殻と尾状核)においてドパミン不足と相対的なアセチルコリンの増加がおこり、機能がアンバランスとなることが原因と考えられている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%E7%97%85

キーワードは、

・進行性の神経変性疾患
・中脳黒質緻密質のドパミン分泌細胞の変性が起こる
・ドパミンの不足と相対的なアセチルコリンの増加

がパーキンソン病の主な病態を表しているといえます。

パーキンソン病と大脳基底核の関係性

大脳基底核

大脳基底核は左右の大脳半球の深くに位置する神経核群(灰白質)をさします。

大脳基底核は、淡蒼球、被核、尾状核からなります。
広義の捉え方として、中脳黒質や間脳の視床下部を含める場合があります。

被核と淡蒼球はレンズ核として、まとめられます。
被核と尾状核は合わせて線状体といいます。

 

運動の調節と実行に関する大脳基底核の役割

随意運動が正確でスムーズに実行されるためには、一次運動野からの指令に加えて、大脳基底核や小脳の調節が重要になります。

一次運動野:
随意運動の実行を命令する。

大脳基底核:
運動の開始や停止をスムーズにする
運動が滑らかになるように調節する

小脳:
運動方向、タイミング、強さ、平衡感覚などを調節する。

大脳基底核の運動調節とその障害

大脳基底核は、大脳皮質−大脳基底核−視床−大脳皮質でループを形成して、運動調節をしています。

大脳基底核は視床を介し、大脳皮質にブレーキをかけて(抑制性)います。
ブレーキの調整により、スムーズな運動が行われます。

基底核の障害には主に2つあります。
・基底核からの抑制が強くなりすぎる:パーキンソン病が代表
・基底核からの抑制が低下する:ハンチントン病が代表

大脳基底核内での直接路と間接路

大脳皮質から大脳基底核に、運動に関する情報が伝えられると、基底核内の直接路、間接路の2つの経路に伝達されます。

2つの経路がバランスをとりながら調節することで、必要な運動のみを選択して実行し、正しいタイミングで運動の開始・停止が行えます。

直接路ではブレーキを緩めることで、必要な運動を必要な時間行えるようにします。
間接路ではブレーキを強めことで、必要でない運動を抑えます。

パーキンソン病では、黒質緻密部のドーパミンニューロンが変性・脱落しますが、ドーパミンの減少は、直接路の活動低下と間接路の亢進を誘発します。
このようなことにより、パーキンソン病における各症状が出現します。

パーキンソン病と脳科学

パーキンソン病と補足運動野(記憶誘導性の運動)の関係!ADLへの影響

補足運動野とは、

補足運動野(supplementary motor area, SMA)とは大脳皮質前頭葉のうちBrodmann脳地図の6野内側部を占める皮質運動領野である。

〜中略〜

補足運動野は運動制御において一次運動野とは異なる固有の役割(例、自発的な運動の開始、異なる複数の運動を特定の順序に従って実行する、両手の協調動作など)を果たしていることが明らかにされている。

https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%A3%9C%E8%B6%B3%E9%81%8B%E5%8B%95%E9%87%8E

とあります。

補足運動野は、大脳基底核、頭頂葉との機能的な連結があります。

この機能的な連結により、補足運動野は頭頂葉の身体情報を用いて、大脳基底核に蓄えられている手続き記憶を用いての運動プログラムの形成に関わります。

前途しましたが、記憶や予測情報から運動をシミュレーションし、必要な運動の選択と不必要な運動の抑制をおこなうものが補足運動野になります。

これは、よく「記憶誘導性の運動」と呼ばれています。

補足運動野が障害されると、

・自発的な運動の開始ができない
*指示があれば運動を開始できる
・両手動作(特に左右で異なる動作)の協調性が低下する
・運動時の姿勢調節が不十分になる
・連続動作が不得意
・複数動作(粉末コーヒーの蓋を開けてコップにコーヒーの粉を入れ、湯を入れるなど)を適切な順序で実行できない

ということが生じる可能性があります。

パーキンソン病では、大脳基底核の機能不全が起こることから、上記のような症状がADL動作の阻害要因になることが予測されます。

 

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パーキンソン病の無動やすくみ足が起きるメカニズム

先ほど、パーキンソン病では、大脳基底核からの抑制が強くなりすぎると説明しました。
これが、無動やすくみ足の原因となります。

PDでは中脳黒質緻密部のドーパミン神経が脱落変性した結果,大脳基底核からの抑制性出力が強まり,視床を介して大脳基底核と神経ネットワークを形成している補足運動野の機能が 低下している。
補足運動野は内発的に運動を行う際の運動の準備状態や運動プログラムの生成に関与している。
PD 患者では, 補足運動野の機能が低下し,内発的に随意運動を行う際の運動プログラムの生成が障害されることにより無動が生じると考えられる。

岡田洋平「パーキンソン病の理学療法 Up to date」理学療法学 第 42 巻第 8 号 755 ~ 756 頁(2015年)

すくみ足を、両下肢の協調運動障害として捉えて考える場合もあるようです。
パーキンソン病では、リズム障害が認められますが、

歩行に関する脊髄の中枢を制御する大脳基底核には固有のリズムがあることが知られており,歩行障害を有する患者では,リズムの形成障害が存在し,すくみ足の発症機序に関与している可能性がある

阿部 和夫「パーキンソン病におけるすくみ足と両下肢協調運動障害」リハビリテーション医学 2006 ;  43 : 315―321

 としています。

パーキンソン病と上肢機能

振戦と上肢機能

4〜7Hzの規則的なもので、安静時振戦が特徴的です。
一定姿勢の保持で出現する姿勢時振戦や動作時に起こる動作時振戦もあります。
動作時に消失する場合、ADLへの影響は少ないですが、姿勢・動作時振戦はADLへの影響があります。

 

固縮と上肢機能

固縮は筋の伸張反射の持続的な亢進状態をさします。
他動関節運動で筋の抵抗があり(鉛管現象)、運動開始から終了まで同じような抵抗を示します。
固縮の亢進では上肢のすばやい反復運動や巧緻動作が困難になります。

寡動・無動と上肢機能

寡動は運動の緩慢さや動作開始の遅延です。
無動は運動の開始困難です。
臨床場面では、運動開始反応時間の遅れ、運動遂行時間の遅れ、反復運動による疲労などが観察されます。
書字では小字症がみられ、文末に行くほど字が小さくなります。
すくみ現象は上肢でもみられ、四つ這い移動で腕を前に出せない、出せても途中で止まってしまうことがあります。
すくみ現象は大脳基底核と補足運動野との相互作用による運動制御の障害が考えられています。
歩行では腕振りの減少、下肢と上肢のリズムが合わないことがあります。
車椅子駆動ではハンドリム操作が小刻みになることもあります。

ジスキネジアと上肢機能

L-ドーパの長期服用による非律動性(規則正しくない)の不随意運動です。
四肢や体幹に起こり、上肢機能に影響があります。

wearing-off現象と上肢機能

L-ドーパの長期服用で薬効時間が次第に短くなり、頻回にoff状態になります。
off状態では次第に動きが止まっていったり、動作中に突然動きが止まる場合もあります。

パーキンソン姿勢と上肢機能

立位での前傾前屈姿勢がみられます。
直立姿勢の保持が困難になり、上肢挙上におけるリーチ範囲が制限されます。

姿勢反射障害と上肢機能

パーキンソン病では、外乱など刺激などで立ち直り反射や平行反応が起きずに転倒する危険性があります。
上肢の保護伸展反応の反応速度は保たれていますが、伸展の速度減弱により支えることが難しくなります。

上肢機能の陥りやすい反応

パーキンソン病患者では、健常者と比較して移動時間と反応時間が有意に遅延しているとの報告があります。
また、刺激の変化に対する上肢の運動修正に時間がかかるとの報告があります。

 

パーキンソン病と薬物療法!リハビリテーションにおいて考慮したいこと!

パーキンソン病の薬物療法で問題になりやすいこと

パーキンソン病の薬物療法において、問題となりやすいことには以下のようなことがあります。

・Wearing-Off現象
・On and Off現象
・Delayed On現象
・悪性症候群

これらの現象は、パーキンソン病の薬物療法が長期になることで付随しやすいものとなっています。

そのため、リハビリテーション従事者は、このような現象がどのようなものなのかを理解しておくことが大切になります。

パーキンソン病の治療薬

日本神経学会は、パーキンソン病治療ガイドラインを発行しており、そのなかに薬物療法のことが書かれています。

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson.html

Wearing-Off現象とは

Wearing-Off現象とは、L-DOPAによる長期治療に伴う問題点としてよく取り上げられる現象です。

パーキンソン病の治療初期では、薬物療法の効果が保持されやすいのですが、病気が進行していくと、その効果が急に切れることがあります。

これをWearing-Off現象と呼んでいます。

On and Off現象とは

On and Off現象とは、服薬した時間に関係なく急に症状が軽快したり、増悪したりする現象です。

On and Off現象の原因ははっきりとは解明されていません。

Delayed On現象とは

Delayed On現象とは、特に高齢者において薬の吸収が遅くなり、その効果が出てくるのが遅くなる現象です。

例えば、この現象があると、午前中に薬を飲んでも全く効かず、午後からは薬が効き動きがよくなるなどということが見られます。

悪性症候群とは

悪性症候群とは、
・40度を超える高熱
・症状の悪化(振戦、固縮など)
・意識障害
・血圧変動、頻脈、発汗過多
・高CPK(クレアチンキナーゼ)血症
などが見られる症候群です。

これは、パーキンソン病治療薬を自己判断で突然服用を中止したときにもみられることがあります。

そのため、服薬指導をしっかりと行っていくことが大切だとされています。

パーキンソン病治療薬の副作用として、嘔気嘔吐などもあり、これをきっかけに服薬を行いたくないという方もいます。

しっかりと薬の効能や副作用などの特徴を理解した上で服薬治療に臨むことが大切になります。

パーキンソン病の評価

ホーエンヤールの重症度分類と生活機能障害度分類

ホーエンヤールの重症度分類の概要

ホーエンヤールの重症度分類は、ⅠからⅤ度に分かれています。

それぞれのステージの特徴は以下の通りです。

Ⅰ度

体の片側(一側性)の振戦、固縮がみられます。

Ⅱ度

両側性の障害になり、姿勢の変化もみられます。

振戦、固縮、無動などによる日常生活に多少の支障があります。

Ⅲ度

歩行障害や方向転換の際の姿勢反射障害、突進現象もみられます。

日常生活はある程度制限されます。

Ⅳ度

立ち上がりや立位、歩行などの動作能力が低下します。

自立した日常生活は困難になります。

Ⅴ度

廃用状態で、介助による車椅子移動や寝たきり状態になります。

生活機能障害度分類の概要

生活機能障害度分類は、Ⅰ〜Ⅲ度に分けられます。

Ⅰ度

日常生活や通院にほとんど介助を要さない状態です。

Ⅱ度

日常生活や通院に介助を要す状態です。

Ⅲ度

日常生活に全面的な介助を必要とし、歩行や起立が不可能になります。

パーキンソン病統一スケール改訂版(MDS-UPDRS)

パーキンソン病統一スケール改訂版(MDS-UPDRS)の概要

パーキンソン病統一スケール改訂版(MDS-UPDRS)は、パーキンソン病統一スケールに、いくつかの変更点を加えた改訂版になります。
MDS-UPDRSは4パートから構成されます。
PartⅠは「日常生活における非運動症状( Nonmotor Experiences of Daily Living )」について13 項目の質問からなります。
Part IIは「日常生活における運動症状( Motor Experiences of Daily Living )」について13項目の質問からなります。
Part IIIは18項目の「運動能力検査( Motor Examination )」からなります。一部項目において身体の左右などの複数スコアが評価されるので、スコアの数は33となります。
Part IVはmotor fluctuation およびジスキネジアに関する 6 項目の質問からなります。

すべての質問に対して同じ臨床評価尺度を用います。
0=正常、1=非常に軽度、2=軽度、3=中等度、4=高度を使用します。

Part Iの複雑行動(complex behavior)を扱う 6 項目の質問と、 PartIVの fluctuationおよびジスキネジアを扱う全ての質問は、患者や介護者と面談した評価者が回答します。

Part IおよびPart IIに含まれる残りの 20 項目の質問は、患者、介護者が回答し、評価者は直接回答しません。

Part IIIでは全項目について評価者が検査を行います。

マニュアルおよび評価用紙は以下を参照してください。

http://www.movementdisorders.org/MDS-Files1/PDFs/MDS-UPDRS_Japanese_Official_Translation_FINAL.pdf

Part Iでは興奮、薬物依存、病的賭博、 性欲亢進などの職業・社会生活に支障を来たすドパミン調節異常症候群(Dopamine Dysregulation Syndrome:DDS)や睡眠関連障害、排尿・排便障害、疲労感が追加されています。

Part IIでは趣味や娯楽、移乗動作の評価が追加されています。

Part IIIではつま先タッピング、安静時振戦の恒常性が追加されています。

Part IVでは運動症状変動時の身体機能への影響が追加されています。

パーキンソン病統一スケール改訂版(MDS-UPDRS)は、重症度や治療効果の判定に使用されます。
カットオフや基準値は設定されていません。

パーキンソン病の疲労の評価:PFS-16 ( Parkinson Fatigue Scale )

PFS-16(Parkinson  Fatigue Scale)の概要

PFS-16(Parkinson  Fatigue Scale)は、パーキンソン病の方の、「疲労」に対する特異的な評価尺度です。
PFS-16は、疲労に関する16項目の質問から構成されています。
対象者は、「1:全く当てはまらない」〜「5:強く当てはまる」の5件法で、回答を選択します。

PFS-16(Parkinson  Fatigue Scale)の評価方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

パーキンソン病のQOL評価:PDQ39

PDQ39の概要

PDQ39(Parkinson ’ s Disease Questionnaire-39)は、パーキンソン病に特異的なQOL評価法です。
この評価では、対象者への質問または自己記入にて行います。
評価項目のカテゴリーは8つに分かれており、可動性(運動能力)が10項目、日常生活活動(ADL)が6項目、精神的な健康観(情緒的健康)が6項目、病気であることによる精神的負い目(スティグマ:恥辱)が4項目、社会的支援が3項目、認知が4項目、コミュニケーションが3項目、身体的不快感が3項目の計39項目から構成されています。

各質問に対し、「0:まったくなかった」〜「4:いつもあった」の5件法で評価を行っていきます。

PDQ39の評価項目と結果の解釈

こちらをご覧ください。

 

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パーキンソン病とリハビリテーション

パーキンソン病のリハビリテーションでは機能維持のための筋ストレッチや筋力トレーニングは必須項目になります。
それに加えて、パーキンソン病により生じうる様々な生活障害に対してアプローチしていくことが求められます。

上肢機能とリハビリテーション

固縮とリハビリテーションの視点

上肢の固縮は、寡動などの症状とともに関節拘縮を引き起こす可能性があります。
前腕回内外や手関節、手指の固縮はゆっくりとした関節可動域訓練を行い、維持していけるようにします。

すくみ現象とリハビリテーションの視点

四つ這い時の上肢すくみ現象では、視覚刺激、聴覚刺激、言語指示などの手がかりを用います。
歩行時の腕振りの減少には聴覚刺激が有効になる可能性があります。
車椅子駆動では、駆動時に体幹の動きを利用しながら、ハンドリムの最上部を握るようにさせます。
また、ハンドリムに視覚刺激となる目印のテープを巻くなどの方法もあります。

食事動作とリハビリテーションの視点

食事動作では、パーキンソン病患者では健常者に比べて手の握りの径が小さく、柄の握りに多くの指が関与しているとの報告があります。
そのため、パーキンソン病患者では、スプーンの柄は小さい方が手関節など協調性が促されやすいと考えられます。
食事は比較的自立度の高い動作とされています。
前腕回内外や手関節掌背屈が重要となるため、関節可動域の維持に努めます。
体幹前屈姿勢は先行期に影響を及ぼすことがあるため、良姿勢を保持できる環境設定も重要です。

小字症とリハビリテーションの視点

薬物コントロールをしていないパーキンソン病患者の、閉眼時と開眼時の書字を比較した実験があります。
結果は、閉眼時の分の長さが開眼時に比べて有意に長かったとの報告となっています。
これは、単に運動状態の低下ではなく、歩行のような高次に学習される運動課題の障害に関係しているのではないかとの考えがあります。
また、視覚的手がかりが即時効果があることが示されています。
具体的には、平行線の間に字を書くことで、改善がみられます。
小字症は、パーキンソン患者では直前や直後の運筆を視覚的手がかりとして次の運筆を進めるため、徐々に字が小さくなるのではないかと考えられています。
描画では小字症の影響は出ないことも特徴です。

更衣動作とリハビリテーションの視点

更衣動作では肩関節可動域と手指巧緻動作が問題となります。
衣服の選択に注意し、上下肢を通しやすいもの、伸縮性のあるもの、ボタンが大きめのもの、衣服の改良、滑りやすい素材などにします。
更衣時間をonの時間に合わせることも必要になります。

また、記憶誘導性の運動が行いにくい(目の届きにくい場所など)場合には、鏡を見ながら動作するなどが有効になることがあります。

すくみ足に対する対処法とリハビリテーション

①逆説的歩行の誘発
逆説的歩行を利用するには、
・足元にテープを貼り、またがせる(視覚的)
・「1、2」と声をかける(聴覚的)
・メトロノームの利用(聴覚的)
があります。
しかし、これらの方法では個人差があり、効果がある場合や効果が認められないこともあります。

②両下肢協調運動の改善
すくみ足を両下肢の協調運動障害と考えた場合、両下肢の協調性を改善させるようにアプローチが試みられます。
・ペダル運動

③左右差の確認

歩行開始時の振り出 し開始側の下肢が一定しないことが報告されている。また,疾患の優位側と利き側が一致することが多いことについても報告されている。

岡田洋平「パーキンソン病の理学療法 Up to date」理学療法学 第 42 巻第 8 号 755 ~ 756 頁(2015年)

意識しないかもしれませんが、健康な方の場合、歩き始めの第1歩は一定していることがほとんどのようです。
その時、利き足(ボールを蹴る側の下肢)にて一歩を踏み出すのですが、パーキンソン病の方では、疾患における優位側(症状を左右差で見た場合の、より障害が現れている側)が利き足の場合、すくみ足が見られる可能性が高いようです。

そのため左右差を考えたアプローチでは、
・歩き始めにはどちらの側から歩き始めればよいかを考える(試す)
・どちら側から方向転換したらよいかを考える(試す)
のように試み、場面に応じた動作指導を行う必要があります。

ホーエンヤールの重症度分類、生活機能障害分類によるリハビリテーションのポイント

ホーエンヤールの重症度分類Ⅰ度、Ⅱ度、生活機能障害度分類Ⅰ度におけるリハビリテーションのポイント

この時期は、日常生活に介助を要さない時期で、姿勢反射障害もないため、積極的に運動を行い、廃用症候群の防止を行なっていきます。

若い方では仕事も続けながら、生活リズムを整えた生活をしていくことも重要です。

パーキンソン病は緩徐進行性の疾患であるため、この時期から運動習慣をつけておくことが大切になります。

運動機能面に加えて、精神機能面における廃用にも留意します。

人と交流する場面をとることで、精神機能は賦活されます。

ホーエンヤールの重症度分類Ⅲ度、Ⅳ度=生活機能障害度分類Ⅱ度におけるリハビリテーションのポイント

この時期では、姿勢反射障害も出現する時期で、日常生活に困難さが出てくる時期です。

姿勢反射障害があると転倒のリスクが高まります。

転倒防止に向けた環境設定(床の障害物をなくす、動線を明るくする、絨毯を除去する、靴の踵を踏まない、手すりの設置)に加えて、転倒リスクが高い人ではヒッププロテクターの利用も検討します。

リハビリテーションでは、日常生活上に困難さがある動作や活動に対してアプローチを行います。

起き上がりがしにくい方でも、少し手をつく位置を変えるだけでも自立した動きになることがあります。

対象者の状態に合わせた動作方法や、介助が必要であればできるだけ対象者の能力を引き出せる介助方法を専門家とともに検討します。

見逃されがちなのが巧緻動作能力の低下です。

細かい手の動きも障害されるため、ボタンの止め外しなどにも影響があります。

私の経験上、病気になってからも趣味で手芸などの細かい作業をしている方は、巧緻動作能力が保たれやすいです。

趣味活動は巧緻動作能力に加え、精神機能の賦活や認知症予防にもなりますので、積極的に行うようにしてください。

ホーエンヤールの重症度分類度Ⅴ度、生活機能障害度分類Ⅲ度におけるリハビリテーションのポイント

この時期では、運動機能障害が顕著で、日常生活に全面的な介助を要し、寝たきりにもなっていく時期です。

この状態では、動きが極端になくなってくるので、関節可動域制限や拘縮が生じやすくなります。

また、動きが少ないと血流が悪くなり、痛みにもつながっていきやすくなります。

そのため、関節可動域を保つために動かしたり、関節の固さを作らないために良姿勢を保てるように工夫する必要があります。

褥瘡予防としてマットなどの環境設定や、体位変換なども重要になります。

パーキンソン病と運動イメージ

運動イメージは、例えば椅子に座っていいて、机の上に置いてある目の前のコップを手にとる動きを頭の中で思い浮かべてください。

このとき、運動に伴う筋肉や皮膚の変化を感じることが「運動イメージ」です。

私たちは、これまでの経験からこれから行う目的的な運動を予測して、その準備を行っています。

他人からコップを渡されてつかむ場合に、水がいっぱい入ったコップをつかむ場合と、空のコップでは把持に用いる筋収縮の程度は異なるが、これはあらかじめ経験を通じて記憶している筋収縮のイメージから予測して把握を行う準備をしている。

それゆえ、予測がつかない、すなわちイメージができないと動作が行えない場合がある。

宮口 英樹 他「運動イメージの臨床応用」作業療法ジャーナル Vol.45 No7 2011

パーキンソン病の方などにおいても、動作のイメージを用いることで動作がスムーズになることを経験しますが、運動イメージは日常生活を送る上でも役立っていることが伺えます。

運動イメージでは、運動に関する脳部位が活性化されます。

また、それは前途した視覚イメージと運動イメージにより活動部位に若干の違いがあるともされています。

よく言われているのは、運動イメージには運動前野や補足運動野の関わりがあるということです。

補足運動野は随意運動のプログラミングにおいて重要な役割を果たしており、運動イメージという随意運動の準備段階においても活動することがわかった。

梁 楠 「運動イメージのリハビリテーションへの応用」作業療法ジャーナル Vol.45 No7 2011

イメージの応用としては、

・寝返りでスムーズな動きをイメージしてから動作を開始する
・服を着る順序を意識しながら着ていく
・入浴で足をまたぐ順番、手すりを持つ位置などの手順や動作場所をイメージする

などが考えられます。

パーキンソン病と動作学習

パーキンソン病の方と動作学習については、

動作継続の重要性と動作再学習の可能性を示している。
そして、過去に頻度多く繰り返した動作ほど、維持あるいは再学習の可能性が高いことも示唆される。
さらに、必要な運動を、一つひとつ(まるで運動分析のように)確認し、頻度多く繰り返すことが効果的であることも示唆される。

高畑進一「パーキンソン病当事者の日常生活動作困難とイメージの重要性」作業療法ジャーナル Vol.45 No7 2011

とあります。

このことから、パーキンソン病の方が苦手、あるいは困難に感じている動作を把握し、動作学習を促す機会を繰り返し設けることは大切だと思われます。

パーキンソン病とリスク管理能力?!

パーキンソン病の方では、ネガティブな感情の認知に問題が見られることがあります。

ネガティブな情動とは、恐怖、嫌悪、怒り、悲しみなどの情動を指します。

ネガティブな情動認知の障害があるということは、恐怖、嫌悪、怒り、悲しみなどの情動に対する反応が低いということになります。

ネガティブな情動認知に問題があるとどのような不利益が起こるのでしょうか。

例えば、私たちが道を歩いているときに、滑りやすい(凍っている)道路があるとします。

このとき、通常であれば転倒すると危ないという恐怖心や警戒心から、その道を避けて通ったり、その道をゆっくりと通ったりすると思います。

これは、ネガティブな情動の認知が適切に働いていることによる危険回避行動となります。

しかし、ネガティブな情動の認知に問題があると、恐怖心や警戒心なくそのまま歩いてしまい、転倒してしまうおそれがあると思います。

ネガティブな情動認知や意思決定の評価については以下の記事を参照してください。
パーキンソン病の情動と意思決定!リスク管理能力との関係性!

 

ネガティブな情動認知や意思決定に問題がある場合、以下のようなことが問題になります。

病的賭博,買い物依存症,性行動亢進,過食症などに代表されるような行動制御障害(impulse control disorders:ICDs)が挙げられる.

さらに,PDにおけるICDsに特徴的なものとして,特定の行為を繰り返す反復常同運動(punding)や通常のPD症状を緩和するのに必要な用量をはるかに超えた量の服薬を求め,服用するドパミン調整異常症候群(dopamine dys regulation syndrome:DDS)などが知られている.

谷口 さやか他「Parkinson病の新しい理解 ―非運動症状を含めて―」日内会誌 104:1546~1551,2015

 

 

日常生活場面においては前途としましたが、リスクが高いにも関わらず、慎重な行動を取らなかったり、リスクがあり一度失敗しているにも関わらず、何度もリスク行動を取ってしまうということもあるかもしれません。
 
このような場合、リスク行動を取ることをあらかじめ援助者側が予測しておいて、環境整備を行う必要性があります。
 
また、調子の良いときに運動やリハビリを頑張りすぎてしまい、後々疲れてしんどくなるというような事も考えられますから、セラピストは普段の様子をチェックしながら、疲労度とも折り合いをつけて行動してもらえるように指導していく必要もあるでしょう。
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