小脳梗塞や脊髄小脳変性症など、小脳性運動失調がある方に対して、その軽減を目的に重錘や弾性緊縛帯を用いることがあります。今回、小脳性運動失調に対する重鐘や弾性緊縛帯を用いたリハビリテーションについてまとめていきたいと思います。

小脳性運動失調に対する重錘や弾性緊縛帯を用いたリハビリテーション

小脳性運動失調では時間的・空間的な要素をコントロールできない

小脳性運動失調を考える上で整理しておきたいことが、「協調運動障害」と「運動失調」になります。

私たちは、例えば目の前にあるペットボトルに手を伸ばして取ろうとしたとき、どのような要素が必要になるでしょう

ペットボトルが置かれている位置の高さや方向に合わせて、タイミングよく筋肉を収縮させながら、関節運動を行っていく必要があります。

これは運動を行うために時間的、空間的な要素をコントロールできる能力がないと達成されません。

このことから、協調運動障害とは、「関節や筋などの調整能力がうまく行えず、目的の運動が達成されない」ということになります。

運動失調とは、協調運動障害の要素であり、「自分で運動をコントロールできないために、運動の方向と程度(タイミング)がうまく行かない」状態といえます。

また、「姿勢を保持するために必要な意識的(随意的)/無意識的(反射的/意識できない深部感覚)な筋収縮がうまく行えない」状態といえます。

小脳が障害されると、前もって予測した(フィードフォワード制御)時間的(タイミング、速度)な要素の運動パターンが作られないために、その都度情報を取り入れながら(フィードバック制御)運動を行うために、スムーズな運動にならないと解釈できます。

測定異常、反復拮抗運動不能、運動分解、振戦、時間測定異常、協働収縮不能は時間的(速さ、タイミング)要素のパターンが作られないことによる時間測定異常として考えることが可能です。

目標物に手を伸ばす際に、主動作筋と拮抗筋の筋活動をうまく切り替えることができないと、測定過大/過少、リズムの乱れが生じてしまいます。

また主動作筋での筋活動の調整がうまくいかないと、軌道に乱れが生じたり、それを補うために運動を分解することで軌道修正を行おうとします。

 

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小脳性運動失調に対するリハビリテーションの考え方(脳科学的視点を元に)

小脳の運動制御回路

小脳はよくフィードバックを用いた誤差学習に関与していることが知られています。

このフィードバック誤差学習ですが、小脳の他にも背外側前頭前野(DLPFC)や運動前野、頭頂連合野、一次感覚運動野も関与するとされています。

背外側前頭前野(DLPFC)は、運動前野と小脳の回路を認知的に監視する役割があるとされており、学習場面の際に意識を集中するようなときにonになるシステムだと考えられています。

それにより、小脳ではある変数(例えば線引き課題で線からの距離など)に対して誤差を修正するための監視と内部モデルを更新していきます。

左DLPFCは小脳に対して、取り扱う変数が何であるかを指示し、注意を集中させて、課題に必要なワーキングメモリーを駆動させ、課題制度を高めるための指令的役割を担うものと考えられる。

酒井浩「小脳研究の進歩と作業療法」OTジャーナル vol.45 no.7

これらの回路をonにさせるためには、リハビリテーション実施時の注意点として、

・誤差の発生に気付かせる
・行動の目標を提示する(速く、遅くなど)

が必要だと考えられています。

 

重錘や弾性緊縛帯を用いたリハビリテーションの効果

小脳性運動失調に対しては、重錘や弾性緊縛帯を用いることがよくあります。これらの効果として、

・四肢の拮抗筋間の活動量に変化をもたらす
・α、γ運動繊維の発射の増加により、筋紡錘からの求心性発射を介して中枢への固有感覚入力を増加させる
・負荷が障害部位に対する被験者の認識を高め集中力を高める
・持続的に筋紡錘を伸張することにより、 筋紡錘からの求心性発射を増加させる

などが考えられています。

田平ら(1998)によると、重錘は250gの負荷量が上肢機能の改善に効果的であることが示唆されたとなっています。

また、酒井ら(2000,2005)によると、運動失調が認められる者に対して、弾性包帯・重錘の装着部位別条件、スプリント装着においての、線引き課題(平面的)とスプーン操作(空間的)効果比較(面積値)では、弾性包帯前腕装着、スプリントの順で効果があり、空間課題では有意差がなかったとしています。

さらに、弾性包帯は筋緊張低下が認められる対象者に、スプリントは筋緊張低下がなく振戦が主となる方に効果的だとされています。

これらの装具療法では、効果が減少する時期は課題によって異なり(運動制御の難易度の低いものから効果がなくなる)、効果がなくなった時期以降は、装具除去でも課題の成績は向上するとされています。

 

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酒井は、

弾性包帯を含む装具療法の即時的な制動作用が、上肢の動揺を軽減し、結果として課題の難易度を下げることに役立ち、患者は正確な制御というスキーマに集中することができる。

このことは、無装着時に「制動」と「正確な制御」というdual taskを強いられていたDLPFCの過負荷を、「正確な制御」というsingle taskに軽減させることに役立つのではないかと考える。

と述べており、このような環境調整が、運動学習を促進させる要因になるのではないかと考えているようです。

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