コアスタビリティートレーニングは、リハビリの現場だけでなく、スポーツ分野、今や一般の方々もメディアを通して知っている人が多いと思います。今回、文献レビューを通して、重度運動失調者とコアスタビリティトレーニングの関係性を考えていきます。

コアトレと重度運動失調におけるリハビリテーションの可能性

文献

阪本 誠ら「Core stability training により運動失調および バランス障害が改善した重度小脳性および 感覚性運動失調の1症例」理学療法科学  32(3): 459–464,2017

文献の概要

要旨: 〔目的〕 Core   stability    training ( CST )が運動失調とバランス能力に及ぼす影響について検討した. 〔対象と方 法〕発症から 3 年経過した橋出血後の50歳代男性. 運動麻痺はなく四肢体幹に重度運動失調, バランス障害, 歩行 障害を呈していた. 週1回 60分, 理学療法士が自宅訪問し介入した. 介入開始から4週間( A 期)は, 筋力増強練 習, 寝返り, 移乗の練習を行った. その後の 4 週間( B 期)は, それらに CST を付加した. 〔結果〕 B 期においてのみ, scale for the assessment and rating of ataxia のスコアが 3.5 点, Ber g balance scale のスコアが 2 点改善した. 〔結語〕 CST は重度運動失調症例の運動失調とバランス能力を改善する可能性がある.

阪本 誠ら「Core stability training により運動失調および バランス障害が改善した重度小脳性および 感覚性運動失調の1症例」理学療法科学  32(3): 459–464,2017

 

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用語の確認:Core   stability    training (CST)

人間の体は、四肢の働きにより様々な活動を行うことができますが、その土台となる体幹(骨盤含む)の安定性が保証されていないと、力強く、スムーズで協調的な動きは行えません。
その土台を作っているのがコアと呼ばれる部分で、インナーマッスルなどと呼ばれることもあります。
体幹部のインナーマッスルとしては、内腹斜筋、腹横筋などが知られています。
コアがしっかりと働いていることで、人は何か物事を行う前から体の準備を行うことができ、これを予測的姿勢制御と呼んでいます。
腕を伸ばす前や足を振り出す前には前もって体幹の深部にあるコアが働くことで、私たちの体は安定して動作の遂行ができるようになっています。
コアスタビリティトレーニングは、そのような体幹部の安定性を向上させるトレーニングを行い、動きの安定やしなやかさを作るトレーニングになります。

用語の確認:scale for the assessment and rating of ataxia (SARA)

SARAは小脳性運動失調や脊髄小脳変性症の評価ツールのひとつです
SARAは8つの評価項目(歩行,立位,坐位,言語障害,指追い試験,鼻指試験,手の回内回外運動,踵すね試験)から構成され、施行時間は4分と短く、簡便に評価が可能で、日常的に使用できる半定量的なものです。
SARAでは四肢、体幹の検査だけではなく、歩行、立位では点数の配分が高く重み付けされています。
同一評価者内および評価者間での評価のばらつきが少ないと言われ、失調症をスコア化できることに意義があります。
精髄小脳変性症の病期とよく相関し、重症度評価としては優れているとされています。

 

体幹部の安定と失調改善の関係性

私も失調症の方に対して、体幹筋を安定させるようなトレーニングを行ったことで、バランス能力や歩行、失調症の改善が得られたことを経験しています。
なぜ体幹を鍛えることで、失調症状が改善するのでしょうか。
先ほど体幹筋の安定性は、四肢の安定した運動を保証することを説明しました。
バランス維持や歩行では、体幹から下肢の協調的な筋活動が要求されます。体幹筋のスタビリティが低下しているような対象者にとっては、体幹筋の安定性が保証されることで、体幹と下肢が連動した中での協調的な筋活動が向上することで、バランスや歩行能力の改善が見られる可能性があるのだと考えられます。

コアスタビリティトレーニングでは、バランス維持や歩行などの実際の動作練習と比較すると、動き自体がゆっくりなものとなっています。
素早い動きが要求される運動は、協調的・瞬発的な筋活動がかなり必要ですが、ゆっくりとした運動であれば課題の難易度は下がり、筋活動の学習も行いやすくなります。
文献のなかでも、重度失調症者では課題の難易度が高い(エラーが大きい)よりも、課題の難易度が低い(エラーが小さい)方が運動学習が行われやすいとの先行研究があると紹介されています。
小脳障害では、内部モデルの形成が大切だとされています。
ある運動を行うときに、最初は感覚に頼ることによって運動をコントロールしようとしますが(フィードバック)、練習を繰り返していくことでその情報を誤差信号として内部モデルを作っていきます。
内部モデルが作られることにより、フィードフォワード(予測)に基づいた運動が行えるようになり、早くて正確、スムーズな運動が可能になっていきます。
運動学習や内部モデル形成を促すためにも、エラーの少ない課題を通じてリハビリを行うことが重要になるのかもしれません。
実際の動作練習をすることも大切ですが、このような考え方を知っておくのも必要だと感じます。

 

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コアスタビリティートレーニングの実際

文献では背臥位での骨盤後傾させた状態でのブリッジ動作や、手すりにつかまりながらの膝屈伸運動をゆっくり、姿勢を保持するような形で行われていました。

私は、臨床においては腹斜筋の活動を高めるために座位での体幹回旋や側方リーチ動作をよく行います。
体幹を回旋する際には、例えば左回旋では右の外腹斜筋と左の内腹斜筋が働きます。
また、体幹屈筋と伸筋が両側でしっかりと収縮している必要があります。
このように様々な筋が協調して働く必要がある運動になります。

側方リーチでは、リーチした側と反対側の体幹筋の筋活動が高まります。


このような動作を通じて体幹の安定性を高め、バランス能力や失調症の改善を図るために利用しています。

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