肩関節の可動域制限においては、ただ闇雲に関節を動かしただけでは痛みを増悪させ、防御性収縮などによって筋緊張がさらに高まってしまうなど、悪循環となってしまうことがあります。そのため、制限が起きている理由を探ることで、適切なアプローチへとつなげることができます。今回、肩関節屈曲、外転制限の因子(筋・関節包)を推測する方法について、まとめていきたいと思います。

肩関節屈曲、外転制限の因子(筋・関節包)を推測する方法

肩関節の可動域制限を考えるにおいての原則

肩関節の可動域制限を考えていく際に大事な点がいくつかあります。
肩関節は球関節なので、様々な動きが行えます。
そのため、ある動きにはある筋肉が作用するというように、様々な動きと筋肉の組み合わせが存在します。
可動域制限を考えるには、その動きの組み合わせを材料にしながら犯人探しを行っていくことが大切です。

肩関節の動きは、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の動きによって作られます。
そのため、上腕骨を動かしていく際には、肩甲骨の動きを考慮する必要があります。
上腕骨の純粋な可動範囲を評価したいのであれば、肩甲骨を固定した上で評価を行うことで、肩甲上腕関節の正確な動きをみることが可能になります。

肩関節屈曲、外転の代表的な制限因子

関節可動域を制限する因子は、大きな枠で捉えると以下のようになります。
・骨と骨によるもの
・筋と筋によるもの
・皮膚の伸張によるもの
・靭帯・関節包によるもの(見分けはつかない)
・筋の伸張によるもの
・炎症によるもの
・心理的なもの

今回は、この中でも筋、関節包に焦点を当てています。

ある関節の動きに対して、その制限因子の数をあらかじめ知識や経験として多く知っておくことは、臨床を進める上で有利になります。

肩関節屈曲、外転(2nd・3rd内旋含む)の筋・関節包の制限因子としては、
・肩甲下筋下部、棘下筋下部、小円筋の伸張性低下
・下方(後下方)関節包の伸張性低下
があります。
これに加えて、滑液包の問題やWeitbrecht孔の閉塞、上腕三頭筋長頭や大円筋、広背筋、大胸筋などの問題も考えられます。

肩甲下筋下部、棘下筋下部、小円筋はどのうように区別するか

先ほど代表的なものとして、肩甲下筋下部、棘下筋下部、小円筋を挙げました。
これらの筋は、上腕骨が肩甲骨面で挙上する軸の下を通っている筋肉です。
肩甲骨の前面と後面にそれぞれついているため、同じ制限因子であっても場所としてはかなりの違いがあり、これを区別していくことが重要になります。

区別には、上腕骨の内外旋を利用していきます。例えば屈曲を例にして考えていきます。
上腕骨内旋位での屈曲:棘下筋下部、小円筋が伸張される
上腕骨外旋位での屈曲:肩甲下筋下部が伸張される

そのため、これらの肢位の中で、差がある方が制限する因子となる可能性が高くなります。
なお、背臥位にて他動運動で肩甲上腕関節の動きをみる場合、肩甲骨の動き(肩甲上腕リズム)はセラピストの方でコントロールしているため、考慮しなくてもよいと考えられます。

筋と関節包のどちらが制限しているか

筋肉と関節包ではどちらが制限因子として考えられるかは、他動的に可動域が制限される肢位において、対象となる筋肉を圧迫することで見分けていきます。
筋肉が制限因子であれば、筋肉を圧迫することで腕が押し出される(戻る)現象が起こります。
関節包が制限因子であれば、筋肉を圧迫しても腕は押し出され(戻り)ません。
この際、肩甲骨を介して圧迫するため、肩甲骨を動かさず、筋肉を押すようにします。

治療的なアプローチをしていく中では、筋肉を対象に治療していても、途中で関節包に治療対象が移ることも考えられます。また、途中で筋肉の部位が変わることもあるでしょう。
その都度評価を行いながら筋・関節包の鑑別を進めていきます。