肩関節痛があるときに「痛みがどこにありますか」と尋ねることがよくあると思います。そのような場合に、対象者の痛みの部位の指し示し方によって、考えられる原因が異なる場合があります。今回、肩関節痛の問診と痛みを指し示す場所、考えられる原因の推測についてまとめていきたいと思います。

肩関節痛の問診:痛みを指し示す場所と、考えられる原因の推測

肩関節の評価に関する書籍

 

問診から得られる情報は多い

肩関節痛がある際に、問診を行うことで、おおよその病態を把握することに役立ちます。
その後(または同時並行的に)、視診、触診などを行っていくことで、さらに病態の把握に努めるようにします。

例えば、夜間時痛がある場合に、「夜寝ている時に痛いか」もしくは「寝たら(臥床姿勢をとったら)痛いか」と聞き分け、得られる答えによってその原因は異なるものが考えられます。
夜寝ている時に痛い場合:睡眠時に副交感神経優位となり抹消組織が阻血状態となっているのか
寝たら(臥床姿勢をとったら)痛い場合:臥床姿勢をとることで、烏口肩峰アーチと上腕骨のスペースが狭くなっているのか
などと推測することができます。

このようなことから、問診では質問のポイントを知ってくことで、病態把握に有利な情報を得ることが可能になります。

痛みがある部位の指し示し方による原因の推測

問診において、「どの辺りに痛みがありますか」と聞くことがあります。
その際に、
・指一本で痛みの部位を指し示す
・手のひら全体で痛みの場所を指し示す
というような、2パターンによる回答を得られることがあります。

指一本で痛みの部位を指し示す場合:
この場合考えられるのは、痛みの原因がその部位によることが多いパターンとなります。
手のひら全体で痛みの場所を指し示す場合:
この場合考えられるのは、痛みの原因がその部位に限らないことが多いパターンとなります。このパターンでは、関連痛について考えていくことになります。

関連痛について

肩関節の関連痛について、

肩関節は、第5・6頚椎神経により支配されている。肩関節周囲の軟部組織は、基本的にこれら神経レベルの受容器で侵害刺激を感受することになる。
デルマトームを用いると、このレベルは肩関節の高さに一致した前・後胸部から、上腕・前腕・手の外側までが支配されることになる。

肩関節拘縮の評価と運動療法

とあります。
肩周囲の組織が原因で、前腕や手指にも痛みが生じることがあるということを知っておく必要があります。

関連痛は、トリガーポイントというコンセプトにおいても出てくる考え方です。
トリガーポイントに関しては、以下の書籍を参考にすると大変わかりやすいです。
誰でもできるトリカ゛ーホ゜イントの探し方・治し方

痛みの原因が筋なのか、関節包なのか

痛みの原因が筋肉なのか、関節包なのかを知るのには、以下の情報が役立ちます。
筋肉が引き伸ばされた時に生じる伸張痛や、筋攣縮(筋スパズム)の状態にある時には、筋肉の部位を指し示します。
一方、関節包が原因の痛みであれば、支配神経の知覚領域の痛みを訴えることがあります。

関節包は、部位によって支配される神経が異なります。
関節包前方:肩甲下神経
関節包後下方:腋窩神経
関節包上後方:肩甲上神経
例えば肩関節を挙上すると、下方関節包が伸張されます。上記に従えば、下方関節包は腋窩神経支配ですから、腋窩神経の支配領域(知覚領域)の痛みが出現します。腋窩神経の主な神経支配筋は三角筋ですから、三角筋周辺の痛みを訴えることになります。

関節包の伸張肢位と各神経の支配筋は以下のようになります。

運動方向

伸張部位

伸展

前方(やや上方)

伸展+内転

前上方(上方が強く)

水平外転(内外旋中間位)

前方(やや下方)

浅い屈曲+内転

後上方

90°屈曲+内転

後方

深い屈曲+内転

後下方

下垂外旋

前上方(前方が強く)

90°外転+外旋

前下方

90°外転+内旋

後方

90°屈曲+内旋

後方

 

神経

腋窩神経

三角筋(小円筋)

肩甲上神経

棘上筋、棘下筋

肩甲下神経

肩甲下筋、大円筋

QLSという、小円筋、大円筋、上腕三頭筋長頭、上腕骨で構成されるスペースでは、高緊張などによるスペースの狭小化により腋窩神経領域の痛み(三角筋)が出現します。