中枢神経障害や、末梢神経障害により、私たちは感覚障害が生じます。その際、リハビリにおける感覚検査をどのように行い、解釈し、アプローチする必要があるでしょうか。今回、感覚障害の評価とリハビリテーションアプローチについてまとめていきたいと思います。
目次
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知覚情報を捉えるには、自分の手を動かすことで、違いを評価して、把握していきます。
いかに自分の手で探索していくかということが大切になるわけです。
そのため、手の動きに困難さがあるかたは、知覚情報を捉えることが苦手になる傾向にあります。
物によって知覚を捉える方法は異なり、平らなもの、柔らかいものなどにより、こする、押し付けるというような使い分けが行われます。
これは無意識で行われているこ手の動きになります。
必要となる知覚情報を選択的に作り出すために、
当間・中島(1994)は、「指が物体に接触すると、多数の皮膚感覚受容器が同時に刺激される。随意的に指をそれぞれの受容器特性に応じるように動かすことによって、特定の受容器の感受性を選択的に上げ、識別力を高めている」
手を診る力をきたえる P101
とあります。
自分からさらに手を動かしていくことで、様々な情報を得られるといえます。
①柔軟性、圧縮性、緻密性、反発性、肉厚感:押し込む
スポンジを押し込むと、どれくらい縮むことができるのか、押す力を緩めたときにどのくらい反発力があるのかなどを知ることができます。
②摩擦性、平滑性:触れて水平方向にこする
指と指の間に対象物を挟み、こすることで、どの程度ザラザラしているか、滑りやすいかを確認することができます。
③圧縮性、反発性、形態:握って確かめる
対象物を握ることで縮みやすさや跳ね返りを確認することができます。
④伸展性、反発性:引っ張って伸びを感じる
ゴムを引っ張ると、その伸びやすさを感じることができます。
⑤重量感:手に乗せて上下に動かす
2つの物のどちらが重い、もしくは軽いかを調べるときには必ず行う動作です。
機械により正確に測定することもできますが。
静的触覚は、対象物を触ったときの、刺激の強弱や持続を判断する遅順応型の受容器です。
例えば、物に対して押すように圧をかけると、指の皮膚には垂直方向の変形によって触刺激が起き、押し続けている間はインパルスが発射し、加圧をやめるとインパルスは止みます。
このようなことにより、皮膚に対する触刺激の持続時間を知ることができます。
また刺激の強さに応じてインパルスの発射頻度も変化します。
これにより、物を握った時に、物からの反発する力を受け、その力を知覚することで、握っている力の強さを感じています。
一定の力で物を把握したり、状態によって把握力のコントロールするのに必要なメカニズムです。
動的触覚は、振動刺激によく応答する速順応型の受容器です。
速順応型の受容器は皮膚表面に対して水平に動くもの、あるいは手が物体に対して水平方向に動くときに生じる振動によって強く興奮する。
手には5〜40cps(cycles per second)の振動と60〜300cpsの振動に敏感に反応する受容器がそなわっている。
手は動くもの、つまり振動を敏感に感知するのである。
たとえば、眼でも見てもわからないような物体表面のわずかな傷であっても、指でさっとなでることでそれを感じ取ることができる。
また直接触れなくても把握している道具を介して振動を感知することで、その先端が接触している表面の凸凹などを感じ取ることができるのである。
手を診る力をきたえる P102
一方の手で何か集中して作業しながら、他方の手で必要物品を選び出すときがあったとします。
フライパンで調理をしながら、他の手で引き出しから違う調理器具を取り出すような場面です。
この時、引き出しの中には様々な調理器具が置かれていますが、必要な物品を探し出し、その形態や材質を識別することが必要になります。
さらに、その物品がどこに、どのような向きで置かれていることがわかることで物品をつまみ上げることができます。
これは、安全に物を取り出すときに必要な探索行動です。
物品を探せても、下に敷かれている布との区別ができなければ物品と一緒につまみあげてしまうこともあります。
重度の感覚(触覚)障害では、物の特徴を知ろうとする際に、物品の上から手掌などを押しつけるような動作になることがあります。
通常では、自分の知りたい情報に合った手の使い方により情報を得ることができます。
小さく薄いものでは触覚障害があるとつまみ上げることは困難になりますが、固有感覚が残存していれば、ある程度の大きさのものであれば、ものをつかんだときに感じる手の指の筋肉の抵抗感により何かがあることはわかります。
しかし力が入りすぎてしまい、動作がぎこちなく、スムーズではないように見えます。
この辺りは臨床における観察ポイントとなります。
物体をしかりと持つためには、触覚による対象物の位置確認、物体の形状、材質などを感じ取り、それに応じた把握のフォームがしっかりとしていないといけません。
物体の特徴がわからないと、物体の形状や特徴に応じたつかみやすい手の形(フォーム)を作ることができず、歪んだり不安定なものとなります。
このような不安定なフォームのまま道具を操作したいすると、操作ミスや非効率的な道具の扱いとなってしまいます。
このことから、フォームの観察を通して、知覚が正しく行われているかを推測することが可能です。
物品を持ち、空中で保持、移動するためには、手で表面の特徴や重量を感じ取り、把持力の調整と物品を落とさないように必要最小限の把持力を加えることが必要になります。
柔らかい、デリケートな物であれば、把持力が強すぎると潰れてしまいますし、ツルツルしたものであれば、しっかりと指の腹で対象物を捉えていないと落としてしまうこともあります。
静的触覚の障害では、把持力がコントロールできず、物を落としたり逆に過度に力をいれ過ぎてしまったりすることがあります。
巧緻性の要求される繊細な作業においては、力をいれ過ぎると、物体が潰れてしまうことなどがあります。
その結果ぎこちなく、スムーズでない動作として観察されます。
このことから、静的触覚の機能の推測には、物をもちあげている時や空中で把持している時の、力のいれ具合いや筋緊張の状態を観察することが重要です。
知覚機能の正常な働きがあることで、物を把持しながら手の向きを変えたり、他の関節を動かしたりしても物を落とすことはありません。
知覚に障害があると、関節の動きによる筋緊張の変化で物体に加えていた力が変わり、物を落としたり過度に握りこんでしまうことがあります。
よく作業療法で行うSTEFの検査では、物体の移動をメインにしている検査です。
STEFにおいて物品を落とすことが多いのであれば、関節運動を伴う際の把持力の調整に難があるのかもしれません。
このことから、静的触覚の機能の推測には、物を掴んだまま空中を移動する手が、他の関節の動きによりフォームを変えたり、把持する力に変化があるというようなことがないかを観察することが重要です。
リーチ(手の到達)には、固有感覚による自分の四肢の位置の把握が重要になります。
机の上のリモコンをとる、ペットボトルに手を伸ばすなど、人は何かとリーチすることが多くあります。
そして、手を自由に使用するためには、手の位置を認識できていることが重要です。
これが障害されていると、目的地に手を正確に到達させたり、その位置を維持することが難しくなります。
感覚が障害されていると、目で確認することで代償できますが、夜電気を消しているときに、携帯電話をとろうとするがなかなか取りにいけないなどということになるかもしれません。
手の操作には動的触覚が必要になります。
ナットをボルトにはめ込む作業では、手で回転させたナットの振動を感じることで必要となり、振動がなくなることでナットの締まりを認識できます。
また、確実に締め終わることを認識するには、これ以上動かないことを抵抗感として感じる必要があります。
動的触覚に問題があると、確実に締め終わった事を指の動きの抵抗感として感じ取る事で把握しようとします。
手に持った道具(箸、包丁、はさみ)などを介して物体の特徴を感じるためには、摩擦点から道具を介して手の感覚器へ伝わる振動が判断基準となります。
よくアクティブタッチなどといいます。
こちらに向けて投げられたお手玉をラケットでキャッチする場合、ラケットの面から伝わるお手玉の重さが手に伝わることで、その重さに応じた手の力を調整して手からラケットが落ちないようにコントロールされています。
この振動を適切に手の感覚器に伝えるには、まず物体の適切な把持が必要となります。これは物体の形状に適した手のフォームと最適な把持力で把握するということです。
脳卒中片麻痺の方では、小指側の指の筋出力が発揮できず、握り動作がうまくいかないことがあります。そのような手では、アクティブタッチが有効にはなりません。
握りが不適切で道具が手の中で動いてしまうと、手は動いている箇所(手と道具の接触面)を感じ取ってしまい、十分な知覚ができません。
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人間が、物を操作するには、物が何であるかの認知が必要になります。
そして、認知のためには、知覚が必要になります。
知覚するためには、皮膚受容器の働きが必要になります。
皮膚受容器には様々な種類があり、それぞれの受容器には特徴があります。
まず、各受容器の特徴について整理していきます。
マイスネル | メニケル | パチニ | ルフィニ | |
深さ | 浅い | 浅い | 深い | 深い |
発火面積 | 点 | 点 | 面 | 面 |
順応 | 強く短い | 持続的 | 強く短い | 持続的 |
刺激のいれ方 | 軽いタッチ
エッジの検出 振動(30cps) |
圧
皮膚の変形 |
振動(60〜300cpsで感度良好)
表面素材の検出とその位置 |
皮膚の軽い引っ張りや摩擦 |
分布箇所 | 無毛部 | 無毛部 | 有毛部
無毛部 |
四肢・口唇
外陰部 |
ヘアピン、クリップ、紐ーマイスネル:角から引っかかりを検出するなど
コイン、ビー玉、カードーメニケル:コインを押しながら動かすなど
軽石、スポンジーパチニ:タオルでおこするなど
布、フィルムールフィニ:皮膚を引っ張るなど
となります。
検査物品:日常使用物品10個、容器、ストップウォッチ
検査方法:開眼、閉眼両方で実施。麻痺側、非麻痺側それぞれ2回以上実施し、平均値を算出する。できるだけ早く物品を容器の中に入れるよう指示し、時間を計測する。記録には困難物品と状況を記載する。
評価基準:障害程度=「麻痺側(閉眼時−開眼時)」−「非麻痺側の(閉眼時−開眼時」
正常値(閉眼時−開眼時)は物品10個で5〜8秒
*開眼時は運動機能を、閉眼時は知覚機能を見ている。
院内の勉強会で、経験年数分の手袋をして検査を行う課題がありました。
そのときは6年目くらいだったので、6枚程手袋を重ねましたが、手袋に包まれているとなかなか物品をつまむことが大変だったことを覚えています。
◯手の到達機能
目的の位置に正確に手を到達できるかを観察します。問題がある場合、母指探し試験を実施します。
◯物体の探索、識別機能
物体の置かれている位置や方向を認識できるか、どのような手の動きで探索しているのか、探索困難な物品の状況を観察します。これに問題がある場合、静的・動的触覚検査を行います。
◯手のフォーム形成
対象物を把握する際の手のフォームや形成されたフォームが対象物を把握するのに効率的で適切なものかを観察します。これに問題がある場合、静的触覚の検査を行います。
◯把持力の調整と維持
対象物を把握する時の力は適切か、過剰に力が入っていないか、把持力を維持できているかを観察します。これに問題がある場合、静的触覚の検査を実施します。
◯物体の移動
物体の移動のため、近位の関節を動かした時に、その動きに影響されず把持力を維持できているかを観察します。これに問題がある場合、静的触覚、母指探し試験を行います。
これらは、どのれも手の機能に不可欠な要素です。
Mobergピックアップ検査はあくまでもスクリーニング検査なので、検査の際に問題が生じた場合、詳しく検査していくことで、どのような感覚障害がみられるのかを詳細に把握し、それに応じたリハビリを行うことができます。
固有感覚障害のスクリーニング検査や触覚障害のリハビリテーションに関しては、以下の記事を参照してください。
記録のポイント
◯「やりにくそうな物」の項目に、時間がかかっていたり、つまみにくそうな物を記入する。
◯「特徴的な物」として、時間はそうかかっていないが通常なら出さないような反応や動き(例:スポンジを強くつまみつぶれている、滑るので爪先を使おうとするなど)が見られた場合に記入する
◯振り返りとして、被験者に実施中、やりにくさや掴みにくさを感じていたのか確認します。そのため、被験者は麻痺側でやりにくかったり、掴みにくかったりしたものは、何が分かりにくいのか、非麻痺側ではどういうふうにやっているのか内観してもらうようにします。
主観的な状態を訪ねておくことで、再度検査を行ったときの変化を比較できたり、訓練効果を確認することができます。
点数としては数値化できませんが、言葉として、記録を残しておくのです。
広島大学の宮口先生は「言葉が変わっているのは、脳が変わっていることだ」と言っていたのを思い出しました。
脳卒中による感覚障害では、感覚訓練により脳の状態に変化が起きることを期待しますが、その変化は言葉に現れるというようなニュアンスだと解釈しています。
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母指探し試験は、空間での手(主に母指など)の位置の認識が可能かどうかを調べる検査です。
手を使用するには、母指の位置の認識が重要で、それができなければ手を自由に使用することは困難となります。
母指探し試験の検査が悪い場合(固有感覚の障害)には、視覚に頼った到達運動を行うと、固有感覚を用いて手の位置を認識することを妨げてしまうことにつながってしまいます。
母指探し試験での母指の位置の認識は、自分の体の部分が空間内のどこにあるのかということを知覚することが必要です。
そのためには、肩・肘・腕・指からの固有感覚情報が統合されることで初めて正確な位置を特定することが可能です。
そのため、ひとつでも関節の固有感覚の情報が不十分であれば、この検査の成績は低下することが考えられます。
固定肢:
セラピストは一方の手で患者の手指を包むように持ち(母指は外しておく)、他方の手で患者の肘関節付近を持ち、空間内に患者の上肢を固定します。
運動肢:
患者が固定肢の母指の先を反対側の母指と示指でつかむ時の上肢です。
①検査前に、運動肢の鼻指試験、耳指試験を行い、問題なく行えるかを確認しておきます。
これにより、運動機能に問題がないことを確認できます。
②開眼にて母指をつかめるかどうかを確認します。
これにより、視覚による代償では問題がないことを確認できます。
③閉眼させ、セラピストが固定肢を動かし固定し直した後、母指をつかめるか確認します。
*固定肢はリラックスさせておきます。
④固定肢の位置を一回の動作毎に行い、数回以上の結果を総合的に判断します。
同じ位置では、検査の妥当性や信頼性が低下してしまいます。
⑤固定肢と運動肢を変えて上記と同様に検査します。
触覚の検査では10回中何回間違えたかなどで検査を行いますが、この検査でも最低5回は行うのがよのではないでしょうか。
スクリーニング検査であるために、この検査で問題があれば、後に固有感覚の詳細な検査を行います。そのため、あくまで問題がありそうということを認識するための検査と考えます。
正常の場合、正確に、スムーズに、迅速に母指を探すことが可能です。
障害度
軽度:数㎝のずれ。すぐに修正可能。
中等度:数㎝以上のずれ。固定肢の母指周辺を探り、運動肢が固定肢の一部に触れるとそれを伝うように母指に到達する。
重度:10㎝以上のずれ。運動肢は空間を探り、容易には固定肢には到達しない。運動肢が偶然固定肢に触れなければ、諦めてしまう。
ここでの判定は、あくまでスクリーニング検査の結果です。
この検査により、固有感覚の障害が、どのような日常場面で困難さを引き起こしているかの予測に役立ちます。
予測から、対象者に具体的な困難さを聞き出すことで、その課題を観察するようなトップダウン評価にもつながります。
大切なのは、後に詳細な検査と、日常生活場面でどのような影響が出ているかを確認することです。
それにより、リハビリテーション計画を立てることができます。
患者は固定肢を能動的に固定した場合は母指探し障害は現れないため、固定肢からの固有感覚情報不全による関節定位覚の障害であると言われています。
また特定の関節による母指探し障害には関与しないとされており、母指探し試験は身体内空間知覚による、体軸に対する母指の位置の認知が必要になります。
運動肢の運動機能(運動麻痺:検査方法②で確認)や運動肢の固有感覚(反対側の頭頂葉、小脳、錐体外路系:事前検査で確認)は原因として除外されます。
考えられる原因として、
他動的に固定された上肢からの感覚情報で、固定位置覚すなわち関節定位覚と称しているものである。
これは、固定肢の末梢神経から頸髄、脳幹、視床を経て反対側の大脳頭頂葉に達し、そこで統合されるものと考えられる。
両側の頭頂葉機能をせしめる交連繊維である。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P53
固定位置覚(関節定位覚)は意識に上らない感覚で、検査などの一連の動作を通じてはじめて知ることが可能になります。
母指探し試験での成績低下があれば、各関節の固有感覚(位置覚、運動覚)を検査していくことになります。
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局在能を調べる意義としては、末梢神経損傷の場合、神経が再生する過程において、再生軸索が損傷前に支配していた終末器官へ到達できず、他の部位への終末器官に到達してしまうことがあります(過誤神経支配)。
そのため触覚の局在を調べておく必要があります。
中枢神経障害の場合、局在検査は第1体性感覚野(S1)の3b野における体部位再現の機能を調べることになります。
4.31番のフィラメントや音叉による振動が感知できるようになれば、回復した受容器や神経繊維の局在が正しいか調べることが必要になります。
閉眼でも触られた部位を定位するには、末梢の細かな各身体部位が、大脳皮質における局在的な対応関係として描かれていること(皮質において身体部位が再現されている)が必要になります。
第1体性感覚野(S1)の3b野は皮膚からの情報を受けますが、ここには身体部位の機能局在再現地図があります。ここでは外から内側に向い、母指→小指の順序だった配列がみられます。
3b野について、
ニューロンの受容野が小さく、指の部分ごとに指の順序だった再現がある。
これは、単に末梢の受容器の受容野がそのまま投射しているためではなく、皮質下あるいは皮質レベルで積極的な抑制プロセスが働いているためである。
そのため、閉眼でも触られた部位がどこであるかを特定することができ、その部位を正確に定位することができる。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P31
とあります。
物体の把持や操作においては、触刺激の感知に加えて、刺激部位の正確な定位が必要になります。
使用物品:
セメスワインスタインモノフィラメント(4.31番)、または鉛筆の先についた消しゴム
静的触覚の局在
①被検者は閉眼。ランダムに各検査部位を刺激し、被検者はサインペンなどで刺激点をポイントします。
②結果を検査用紙に写し、局在が不良の場合、刺激点から被検者のポイントした箇所まで矢印で結び、記録していきます。
動的触覚
①各検査部位に近位から遠位方向に1㎝動かした刺激を1回ずつ加え、被検者にそれを再現させます。検者が加えた刺激線と被検者が示した線とのずれや傾きを記録します。
*各検査とも刺激を与えてから、できるだけ早く刺激を感じた部位を示させます。
静的触覚の局在では、指腹では3㎜以内の誤差で刺激部位の同定が可能です。
動的触覚の局在では、指では刺激線と平行で、かつ3㎜以内の誤差、手掌では刺激線に対して45°以内の傾きで、かつ15㎜以内の誤差で再現可能です。
末梢神経損傷では、神経が再生する過程で過誤神経支配が生じることがある。
神経が再生し、受容器の再支配が起こったとしても、過誤神経支配が生じていると患者は混乱を生じ、その機能を十分に活用することができない。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P64
また中枢神経疾患では、刺激の感受は可能だが部位の定位が行えない場合や、不正確な定位となることがあります。
この場合、第1体性感覚野3b野の体部位再現機能が低下している可能性があります。
どちらの疾患においても、局在が悪い場合には、局在の再教育が必要になります。
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触覚の状態を調べるにあたり、筆などで触覚を検査し、鈍麻、脱失というレベルでの検査結果では、具体的な治療方針を立てていくことはできません。
触覚の状態を定量的に調べることができれば、回復状態の判断や治療プログラムを立てる事が可能になります。
静的触覚は力を適切にコントロールして物体を落とさず、効率良く、スムーズに物体を操作するために必要です。
すなわち、静的触覚には物体を把持するための物体の性状(柔らかさ、硬さ、重さ)に応じた把持力の調節機能があります。
静的触覚検査ではこの機能について調べることになります。
末梢神経損傷の場合、閾値を調べ、その結果を検査用紙にマッピングし、末梢神経の支配領域との比較によりどの神経がどのレベルで損傷されているかの予測を立てる事が可能です。
使用物品:
セメスワインスタインモノフィラメント
*臨床では2.83番(緑)3.61番(青)4.31番(紫)、4.56番(赤)、6.65番(赤)を使用します。
①2.83番を使用し、手掌、指、手背と調べ、正常・異常の領域を大まかな範囲でつかみます。
②2.83番で指尖から始め、近位部へと進んでいきます。セラピストは患者の手から2.5㎝の高さから、検査部位に1.5秒かけてフィラメントがたわむまで力を加え(皮膚上で滑らないように)、1.5秒かけて元の位置に戻します。
2.83番、3.61番では同じ場所に3回刺激し、そのうち1回でも応答が得られたら感知できたとみなします。4.56番、6.65番では1回の刺激のみで感知できなければより太いフィラメントに進みます。
*刺激のタイミングを変化させて、患者に予測させないようにします。
③患者が感じる事が可能なフィラメントの番号に応じて、検査用紙に指定された色を使いマッピングしていきます。6.65番が感知できない場合は、赤斜線で示します。
*高齢者、中枢性の障害がある患者で、検査が困難な場合、刺激を加える・加えないをランダムに行い、刺激が加えられたのはどちらかを選択させる方法(二者択一)もあります。
*中枢性障害では、刺激が加えられた後でもその刺激が残る場合があります(刺激残像)。このような時は刺激を加えるまでのインターバルを長くします。
この現象は、皮質損傷によりニューロンの抑制が変化したことによるといわれています。
末梢神経損傷では、4.31番が感じられると、その箇所の受容器、神経繊維が温存されている事を示唆しています。
神経縫合術後では、再生軸索が触覚受容器に到達したことを示唆しています(4.56番、6.65番では再生軸索は回復途上)。
2.83番がわかるようになって、ほぼ正常に回復したとみなされます。
中枢性障害では4.31番がわかれば触刺激に対する末梢受容器の興奮と中枢への伝達が行われているといえます。
番号 | 色 | 判定 | 解釈 |
2.83 | 緑 | 触覚正常 | 触覚と圧覚は正常範囲 |
3,61 | 青 | 触覚低下 | 物体の識別、防御知覚、2点識別覚は良好。知覚障害に気づかない事が多い。 |
4.31 | 紫 | 防御知覚低下 | 手をあまり使用しないようになる。物体操作困難。2
点識別7〜14㎜、知覚再教育開始する。 |
4.56 | 赤 | 防御知覚脱失 | ほとんど手を使用しない。視覚の届かない範囲での物体操作不可。外傷予防の指導を開始。 |
6.65+ | 赤斜線 | 測定不能 | 識別性知覚喪失。痛覚脱失または残存、必ず外傷予防の指導行う。 |
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外界から来る刺激は、身体表面(皮膚)あるいは身体深部(筋・関節)にある受容器によって感受され、求心性神経繊維(感覚神経)によって大脳の第1体性感覚野(中心後回3a野、3b野、1野、2野)に運ばれる。
したがって、知覚情報は、受容器、伝導路、中継核、大脳皮質のどの部分が損傷されても起こり得る。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P80
感覚の中枢神経には、脊髄神経説節以降の二次・三次ニューロンと、皮膚の感覚中枢(第1体性感覚野、感覚連合野)があります。
また伝導路には脊髄視床路と後索・内側毛帯路があります。
脊髄視床路は防御知覚(温度覚、痛覚)の伝導路です。
防御知覚は脊髄に入った後、後覚でニューロンを乗り換え(二次ニューロン)、同一脊髄の反対側の前側索に移り、そのまま視床まで上行する。
視床で三次ニューロンに乗り換え、皮質の第1体性感覚野に信号を伝える。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P88
大事なポイントは脊髄視床路は脊髄の前側索に位置していることです。
なお、前索には圧・粗触覚繊維が位置し、側索には温痛覚繊維が集中しています。
後索、毛帯路は識別知覚、固有感覚(運動・位置覚)、振動覚の伝導路です。
脊髄神経節から始まり、後根、後索(内側部が薄束、外側部が楔状束で体部位対応配列がある)を通り、延髄薄束核・楔状束核で二次ニューロンに乗り換えて正中部で交叉し、内側毛帯路を形成する。
そして、視床後外側腹側核(VPL)に終止し、三次ニューロンが大脳皮質の第1体性感覚野へ至る。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P88
脊髄視床路、内側毛帯路とも、視床では視床外側腹側核(VPL)に終止します。
VPLには前庭感覚や小脳からの入力繊維も入ります。
そのため視床の損傷では重度の知覚障害を呈することになります。
この部位の病変は病変部の反対側の顔面、四肢体幹に知覚障害が必発し、固有感覚の障害が目立ちます。
VPLの病変では、視床症候群と呼ばれる不快感を伴う激痛を生じさせます。
また視床痛と呼ばれる持続的、発作的な自発痛もあり、音や光でも増悪することが特徴です。
大脳、脳幹部では伝導路の交叉があり、知覚障害は身体の半側に出現することが多くなります。
しかし、左右の感覚繊維は身体中心線上で2〜5㎝重なっているため、身体の中心部に近づくと知覚障害の程度が軽くなる傾向があります。
内包後脚(被核、淡蒼球、尾状核、視床に囲まれた白質帯)では顔面、上肢、下肢の運動神経と、感覚神経が同じ走行をしているため、重度の知覚障害でけでなく、片麻痺も重く出ることになります。
第1体性感覚野(中心後回3a野、3b野、1野、2野、感覚連合野)は対象物の特徴を識別する感覚中枢であり、識別知覚(立体覚、2点識別覚、局在覚、重量や材質)、固有感覚(運動・位置覚)が障害を受けます(物体の識別や道具使用の拙劣さ)。
温度覚の障害はみられない、または軽度になります。
ワレンベルグ症候群は延髄外側が侵される解離性知覚障害です。
後下小脳動脈閉塞によって起こり、障害側の顔面、反対側の体幹、上下肢の温度・痛覚障害が生じます。
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探索、識別機能に障害があると、襟元のボタンが閉められないなど、視覚的に確認できないところの対象物の位置や方向がわかりにくくなります。
また対象物の材質、形状、大きさ、重量が識別しにくくなります。
感覚障害があっても、目で確認できている範囲ではなんとか動作をおこなえますが、目の見えない範囲や、薄暗い、電気が消えているなかで物品を探索・操作するというのは難しいものです。
探索、識別に関する知覚が障害されると、その都度視覚で確認しなければならず、作業スピードや正確性が低下してしまいます。
仕事などで正確性やスピードが要求されるのであれば、感覚障害の方はかなり不自由さを感じることが予想されます。
対象物の特徴を知覚するためには、対象物を実際に手にとってはじめて識別できます。
そのためには自分の手指を積極的に動かし、「こする」「のばす」「押す」といった探るような動きが必要となります。この動きを探索行動とも呼びます。
また容器の中から物体を取り出すには容器と物体の識別が必要で、いくつかの物体の中から目的物をとりだすような、複雑な識別を行うこともあります。
フライパンで調理をしながら、引き出しから違う調理器具を取り出す場合、このような複雑な識別能力が要求されます。
物体の持つ性質を識別するためには、手で自ら積極的に触れて物体の特徴を確認するということを再学習していくことが必要になります。
まず日常使用する物品がもつ物理的な性質(硬さ、摩擦、重さなど)に着目し、識別が簡単なものから識別が困難なものへと順次識別させます。
物品の識別ではなく、物品のどのような性質を識別させようとしているのかという視点が大切になります。
そのため「これは◯◯だ」という物品の名前よりも「これはどのくらい硬い」「こっちの方が重いな」というような性質に着目してもらいます。
手指の動かし方により識別しやすい性質も異なるため、どのような手指の動かし方をすればどの性質が識別できるのかという事を再学習してもらいます。
例えば、硬さを確認するなら「押し込む」などです。
指を押し付ける強さや指を動かすスピードが適切に調節されたものでないと識別力は低下してしまいます。そのため、運動麻痺がある上肢、手指では識別に対する動作を獲得していく必要があります。
早く行うよりも、まずはゆっくりでもいいのでしっかりとした指や手の動きを要求しながら、性質の識別ができるようにしていくことが大切です。
ざらざらやすべすべ(紙やすりなど)している性質の検出には、速順応型の感覚受容器が関与しているため、手指を物体の表面に対してすべらせるように動かす事が必要になります。
柔らかさ、べとべとなどの性質の検出には、遅順応型の感覚受容器が関与しているため、物体の面に対して手指を垂直に押し付けたり離したりすることで縮み具合や跳ね返りを識別します。
物体の形状や圧縮性は物体を把握し、圧縮することで識別することができます。
伸展性や重量は物体を引っ張ったり、手に持って垂直方向に動かすことで識別することができます。
物体の性質の識別が可能になったら、日常物品を使用しての識別を行っていきます。
まず、識別しているものが何かを答えさせます。
それが可能になれば、より複雑な刺激の中(豆の入った容器など)でも物品が識別できるようにしていきます。
物の名前を言えるのも大切ですが、「素材や性質がこうだから◯◯だ」といえるくらい識別していくことが大切になります。
同時に複雑な識別が要求される課題としては、容器の中に類似の物品を入れておき、その中から特定の物品を取り出すといったものもあります。
閉眼で様々な性質を識別させていきます。
手をどのように動かすことで識別したい知覚情報が作れるのかを再学習してもらうことが目的となります。
自ら能動的に指を受容器特性に応じるように動かすことによって、特定の受容器の感受性を選択的に高め、認知力を向上させることができると言われています。
柔軟性(しなやかな、硬い)、圧縮性(柔らかい、硬い、押しやすい、押しにくい)、伸展性(伸びやすい、伸びにくい)、緻密性(目のつまった、目の粗い)、摩擦性(ざらざらした、滑りやすい)、反発性(弾力のある、ぐにゃっとした)、平滑性(滑らかな、粗い)、冷温性(冷たい、温かい)、肉厚感(厚い、薄い)、重量感(思い、軽い)、形態(球、角のある、エッジのある)などの性質を識別していきます。
このように、対象物には様々な特性や性質があります。
片麻痺者などでは、運動麻痺もありこのような能動的に探索していくことが難しくなっていることがあり、それぞれの性質を探るための手の動きを学んでいきます。
①材質の識別
静的触覚:
スポンジなどの弾力性、圧縮性の異なる物体(2組)に対して、上から手指を押し付けたり、握り込むことで垂直に力を加え同じものを特定させたり圧縮性、反発性、伸展性の程度を識別していきます。
動的触覚:
手触りの異なる材質を用意して指でこすり、平滑性、摩擦性の識別を行っていきます。
サンドペーパーや、布、タオルなどが利用できます。
*指を強く押し付けるように識別する場合があるため、力が入りすぎないように指導していきます。
動的触覚では、指を動かす速度と垂直方向の力のコントロール(押し付けない)を学んでいくことが重要です。
②形態の識別
患者の手指運動機能に合わせて物体の大きさを選択し、数種類の形態を2組ずつ用意します。形態を特定させたり、同じ形態の物品を選んでもらいます。
③日常物品の識別
物の性質や形態の差が大きい物品→同じ性質で形態が異なる物(全て金属で形態に違いがある)→同じ性質で形態の似ているものへと進めていきます。
次に複数の刺激を組み合わせた状況での物品の識別を行います。段階付けとしては、容器の中の物品を取り出す→容器に米、小豆などを入れ、その中に物品を複数個入れ取り出す→その中から指定された物品を取り出すなどと進めていきます。
注意点:
1日3〜4回、1回約15分程度で、集中できる環境で行います。
視覚を使わせず行います。
日常生活場面では視覚の代償はしょうがないですが、訓練場面では視覚に頼らないようにすることで、訓練効果を期待していきます。
過剰な負荷は避けます。
強い筋収縮を起こさせないようにします。強い筋収縮を起こすと、わずかな刺激が感じ取り難くなるばかりか、固有感覚による代償の訓練となってしまうためです。
スピードの速い探索を行わないようにします。
健側を使用し対象物を固定しないようにします(健側の感覚により答えがわかってしまいます)。
*触覚の回復が困難な場合、固有感覚などの利用による探索・識別機能の獲得を目指します。
固有感覚を使う例としては、物を移動する際、落とさずに力を調整するときに、やや押し付けることにより、指の筋にの曲がり具合の変化を感じることで把持力を調整するようなことです。
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手を使い物を操作する場合、物の特徴とその用途・目的により手のフォームを変えます。
またそのフォームを維持して、物の性質や形状に合わせて手を当てることもできます。
手のフォームの決定には第1体性感覚ニューロンの中の、握り方の認識に関わるニューロンが関与しています。
中心後回の後半部分、1野と2野では、個別の指ではなく、手指の特定の面を刺激すると興奮を起こすニューロンがあり、何本かの指に対応する部分の組み合わせ、たとえば指先だけの組み合わせ、指背面だけの組み合わせといったように、機能面に意味のある複合的な情報を受けているニューロンが多くなる。
これらのニューロンでは、細かい手の場所の情報は失われるが、代わりに広い部分に接触した対象の性質を検出できるようになる。
これらの面は何らかの機能、すなわち対象の保持、対象のもつ特徴の分析などに関係している。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P38
対象物の形や大きさ、材質などにより握り方、持ち方が決まっており、その物に適した手の形が決まり、対象物に接触する皮膚の部分が決まります。
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尺側握り検査:
小指中手骨骨頭部に細い棒を置き、小指を屈曲させ5秒間把持します。
運動麻痺がなく知覚障害がある患者では開眼時と比較し閉眼時では成績が低下し、閉眼では保持出来なくなることがあります。
把握の型:
様々な把握の型(様々な大きさ、形状の物品や道具による違い)に対して、困難あるいは安定しない把握パターンを評価します。
・把握握力(標準型)
手掌上斜めに置かれた棒状物体を、曲げた全部の指と母指と手掌でしっかり固定する型。
手を診る力をきたえる P25
日常生活の中では、包丁や金槌、片手鍋の柄を持つ、雨傘をさすなどの際に見られます。
・握力把握(鉤型)
手掌上ほぼ真横(前腕長軸に対して垂直)に置かれた棒状物体を、曲げた全部の指と手掌で均一に巻き込んで固定する型。
手を診る力をきたえる P25
日常生活の中では、カバンの把手を吊り下げて持つ、ビールジョッキの把手を持つ、うちわを持つなどがあります。
・握力把握(示指伸展型)
手掌上斜めに置かれた細い棒状の物体を拘束する時に現れる型。
手を診る力をきたえる P25
日常生活の中では、編棒やフォークを使うなどの際に見られます。
・握力把握(伸展型)
手よりも大きな扁平物体をしっかり拘束する時に現れる型。
手を診る力をきたえる P25
日常生活の中では、重みのある皿を平らに持つ、重い本を平らに持つ、ボウル(容器)を持つなどで用いられます。
・握力把握(遠位型)
指の使われかたが標準型に似ているが、手掌が関与しない型。
手を診る力をきたえる P25
日常生活の中では、爪切りを使う、裁ちばさみをつかう、爪楊枝を使うなどで用いられます。
・側面把握
小さな扁平体の拘束に使われることがある型。
手を診る力をきたえる P25
日常生活の中では、鍵を鍵穴に差し込む、メジャーテープを左右の手で引っ張る動作などで用いられます。
・三面把握(標準型)
細長い道具(例:筆記具)の拘束に使われることがある型。
手を診る力をきたえる P25
日常生活の中では、チョーク、鉛筆、印鑑、リップスティックなどを使う際に用いられます。
・三面把握(亜型Ⅰ)
細長い道具の拘束に使われることがある型。三面把握ー標準型に似ているが、母指がこれより内転位にある。
手を診る力をきたえる P26
テーブルスプーンを使うなどの際に用いられます。
・三面把握(亜型Ⅱ)
同じく細長い道具の拘束に使われることがある型。三面把握ー標準型に比べ、環指などの尺側指が拘束に加わる点が異なる。
手を診る力をきたえる P26
日常生活の中では、箸を使用する際に用いられます。場合によっては、耳掛き棒や筆を使う際にも現れます。
・並列軽度屈曲把握
筒型、角型その他の物体を、並列させて軽く曲げた指とこれに向き合う母指との間で拘束する型
手を診る力をきたえる P26
日常生活の中では、グラスを持つ、猪口を持つなどで用いられます。
・包囲軽屈曲把握
円板、球、直方体などを多方向から指で囲んで拘束する型。
手を診る力をきたえる P26
日常生活の中では、茶筒の蓋を引き抜く、大口瓶の蓋を上から持つ、ボールを取り上げるなどで用いられます。
・指尖把握
非常に小さい物または薄い物を拘束する際に現れる型のひとつ。
手を診る力をきたえる P26
日常生活の中では、針やクリップをつまみ上げるなどの際に用いられます。
・並列伸展把握
平たく大きい物体を拘束する際に現れる型のひとつ。
手を診る力をきたえる P26
日常生活の中では、折りたたんんだトイレットペーパーを持つ、サンドペーパーを持つなどの際に用いられます。
・内転把握
母指以外の隣合う2本の指の間に物を拘束する型。
手を診る力をきたえる P26
日常生活の中では、タバコを指に挟むなどの際に用いられます。
図は健常手の把握様式-分類の試み-より引用
上記の手のフォームを分析し、それによってフォームのどこをどのように変えるべきかを患者に指導していきます。
分析では、「◯◯(道具)を把握握力(標準型)に近いフォームで掴んだが、尺側指列の屈曲が不十分で安定した把握とはならなかった」というような記述となり、運動麻痺や失行の患者への分析としても適応可能です。
知覚障害が主となっている場合は、安定しない把握パターンに対して、閉眼で動作学習を行います。
触覚障害の改善が期待できない場合には、物体の表面や柄に識別しやすい性質の生地(ザラザラ感)を巻くなどで、手が接触する面を識別しやすいようにします。
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ある対象物を把持する場合、私たちは物体の重量や表面の材質などの特徴に応じて把持力を調整し、対象物を落とさないように適度な力を加えています。
知覚障害がある場合、把持力の調整や維持が困難となり、物体を落としたり、逆に落とさないように力を入れすぎてしまうことがあります。
私たちは材質に合わせて把持力をコントロールしますが、滑りやすいものほど力を込めて把握しています。
加圧のコントロールは、物体を落とさないようにしているだけでなく、運動・動作を最大限に生かすようにも調節されている。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P10
ともあり、手が物体の操作を円滑に行うためには、物体を落とさない程度の最小限の力を加えるような加圧のコントロールが行われています。
必要以上の力で物体を把持すると、物体に操作をくわえる事は困難となってしまいます。
手指の知覚障害があり固有感覚が残存している例では、上肢全体に常に力が入っているような状態になります。固有感覚は筋緊張を高めた方が感受性が高まり、筋の抵抗感が認識しやすくなるためです。
固有感覚優位の動作では、動作はスムーズさを欠き拙劣になってしまいます。
物体の把持力の調整を可能にするメカニズムについて説明します。
物体に適切な力を加えたり、力を一定に維持するためには、動的な刺激に対する反応が大きいか小さいかという、刺激の強弱を知る事が必要です。刺激の強弱を知るための受容器は、遅順応型のメルケル細胞やルフィ二終末です。
機械受容器のうち遅順応型(SA)の受容器は、触刺激を加えるとその間中インパルスを発射し、刺激を取り除くとインパルスの放電は止まる。
つまり遅順応型の受容器は、触刺激に対してオンーオフの情報を正確に伝える。
さらに刺激を強くすると、それに応じてインパルスの放電頻度をを増加する。
このような遅順応型受容器が障害されると、物体を把持し続けたり、把持力をコントロールするのが困難となる。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P32
患者の必要な、または困難と感じている動作に対して実際に観察を行います。
また、触覚障害のスクリーニング検査として、Mobergのピックアップ検査があります。
把持力の維持、調整に深く関連する検査として、静的触覚(閾値)検査があります。
把持力のコントロールを学習する場合、最終目標は閉眼にて把持力の調整が行える事です。
静的触覚の障害により把持力が調整できない場合、個々の筋の筋力強化、握力やピンチ力を増強するようなトレーニングは行ってはいけません。
逆に力を過剰に入れてしまう事を助長してしまいます。
そのため過度な力を抜きながら、適切な加圧を維持させること、物体の性質に合わせて把持力をコントロールできるように進めていきます。
具体的には、加圧センサーを使用し加圧の状態をフィードバックさせたり、弱い力でパテ(セラプラスト)を握らせて、把握の結果を確認させる方法があります。
加圧のコントロールが不良だと、球形にすることが難しくなります。
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感覚障害による物体移動困難さの観察される特徴として、
①把持した物体を落としてしまう
②手の向きを変えたときに把持した物体を落としてしまう
といったことが挙げられます。
通常であれば、手に物体を把持した状態で、手の向きを変えたり周辺の関節を動かしても、物体を落としてしまうことはありません。
物体を落とさないために、「皮膚からの知覚情報」により筋緊張を維持することができるからです。
感覚障害があると、「皮膚からの知覚情報」が捉えられず、手を移動させたり、周辺の関節を動かすことにより筋緊張が変化すると、物体に加えていた力が変化し物体を落としてしまうのです。
動作観察では、物体を把持しながら近位筋の求心性収縮、遠心性収縮を行わせます。
物体を把持したままで手関節の屈曲と伸展、前腕の回内、回外、肘関節の屈曲、伸展などを組み合わせていきます。
患者がどの作業に意味があり、重要で必要性のある動作に焦点を当て、その動作を観察することが重要です。
スクリーニング検査としては、Mobergのピックアップ検査(閉眼)があります。
閉眼で行うことにより、感覚の側面からの評価が可能です。
この検査を実施することは、移動の困難さだけでなく、手の到達、物体の探索・識別、手のフォーム、把持力のコントロールとその維持についても評価できることが特徴です。
物体の移動に困難さがある場合、さらに詳しい検査を行っていきます。
関連する検査として、固有感覚のスクリーニング検査である母指探し試験→運動覚、位置覚検査、静的触覚検査が挙げられます。
静的触覚には物体を把持するための物体の性状(柔らかさ、硬さ、重さ)に応じた把持力の調節機能があります。
物体移動の改善に向けたリハビリテーションの基本指針は、閉眼にて物体を把握しながら、物体を移動させる距離を長くしたり、近位関節を大きく動かすなかで把持が維持できるように動作学習を図っていきます。
物体を把持したままで手関節の屈曲と伸展、前腕の回内、回外、肘関節の屈曲、伸展などを組み合わせていき、適切な把握動作が維持できるようにしていきます。
空間内での上下、前後、左右様々な方向に物体を移動させることが必要になります。
関節運動を行わせるときには、求心性収縮だけでなく、遠心性収縮も行わせます(例:口に持っていったコップを机の上に置く(上腕二頭筋の遠心性収縮)など)。
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防御知覚である痛覚や温度覚が障害されると、手などに熱傷、擦過傷、外傷を受けたり、創傷の回復が遅れてしまうことがよく観察されます。
このような場合に、患者は自覚していないことが多いという特徴もあります。
組織が損傷を受けていても気づかずに放置していると感染を引き起こし炎症を起こすこともあります。
このようなことが繰り返されることで、潰瘍の形成、骨壊死や骨吸収、深部組織の侵蝕から重度の変形や切断という場合もあります。
また治療のため安静肢位をとりたいが、痛覚が鈍磨しているために患部を動かしてしまい、回復が遅れてしまう場合もあります。
このような障害はほとんど意識されていない場合が多く、重度の熱傷や外傷を負うことで防御知覚の障害に気づくことが多いです。
弱い力や圧迫でも、それが長時間に渡ったり、繰り返されたりすると組織にダメージを与えてしまう可能性があることもあります。
毛細血管の血液はきわめてわずかな圧迫で阻害され、それが持続すると阻血による圧迫創が発生する。
また、摩擦によるストレスは、たとえ弱くても水疱や血腫を形成し、圧迫性潰瘍にまで発展することもある。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P18
知覚が正しく働いていれば、圧迫などによる痛みや不快感を感じ取り、肢位を変えたり、道具の持ち方を変えたり、使う部位を変えたりすることが可能ですが、防御知覚の障害があると困難になります。
痛覚を起こす刺激を侵害刺激と呼び、痛覚に関連する感覚受容器を侵害受容器と呼びます。
侵害受容器は皮膚、皮下組織、筋肉、関節、骨膜、血管周囲に分布する自由神経終末だと言われています。
侵害受容器の繊維には複数の種類があります。Aδ繊維(グループⅢ)は有髄で直径1〜5μm、伝導速度4〜30m/s、C繊維(グループⅣ)は無髄で直径0.3〜1.5μm、伝導速度0.4〜2m/sなどがあります。
Aδ繊維は、強い圧迫などの機械的な侵害刺激に応じる繊維で、機械的侵害受容繊維と呼ばれています。
C繊維は機械的のみならず化学的や熱による侵害刺激に応じ、多様式侵害受容繊維と呼ばれています。
機械的侵害受容繊維は強い機械的刺激に反応しますが、皮膚が傷ついている場合や長時間加温された場合は46℃以上の熱刺激にも反応することもあります。
温度覚は温覚と冷覚に分かれます。
四肢体幹の温・冷受容器はAδ繊維とC繊維の自由神経終末によって伝えられます。
皮膚の上には温点(温覚のみを引き起こす)や冷点(冷覚のみを引き起こす)と呼ばれる直径1㎜以下の小領域があります。
一般的には温点よりも冷点の方が分布密度が高く、そのため温度覚の障害では温覚が冷覚よりも先に、広範囲で障害されます。
防御知覚の回復が期待できない場合や、知覚が回復してくるまでの期間では、熱傷や外傷を防ぎ、手を安全に使用するための防御知覚の再教育が必要です。
知覚障害があると把握動作において過剰に力を入れてしまうことがあり、擦過傷や皮下組織の損傷を招く恐れがあります。また温度覚の障害では患者の自覚がないことも多く、熱傷などのリスクが大きくなります。
患者指導では、患者の皮膚上に知覚検査の結果を書くことが有効です。
どの領域にどのような知覚が障害されているか説明し、注意を促していきます。また残存している部位も示し、それを温度の確認部位として利用します。
紙面でマップを作り意識してもらうことも有効となるかもしれません。
患者それぞれで生活様式が異なるため、仕事や日常生活活動、趣味などの作業分析を行い、どのような時に、どこで、どのような危険があるのかを共に確認していくことで、危険への回避方法や手段を検討、実践の中で指導していきます。
特に調理動作では手や前腕の尺側に熱傷のリスクが高いため、注意が必要です。
低温でも長時間接触していると低温熱傷が起こったり、軽い圧迫の長時間の持続でも組織損傷が起こる可能性があることを指導する必要があります。
長時間の道具の使用では、適宜休憩をとったり、道具の握り方を変えるなどの工夫が必要となります。
環境を設定することも重要で、道具の選定、自助具の使用、手の保護のための手袋や指サックなどを用いることも有効になります。
発赤、浮腫、熱感はストレスサインであるため、兆候が出現したら局所を安静させます。
皮膚温度計を用いることで熱感の把握が可能になり、周囲より1℃以上高い場合は注意が必要で、周囲より6〜8℃以上高い場合は外傷や炎症を起こしていることを疑います。
健康な人の指は2℃以上の温度差の識別が可能であるため、自己にて皮膚温を確認することも重要です。
末梢神経損傷では、知覚障害と同時に自律神経障害も受けており、そのため発汗異常や皮膚の栄養障害、皮膚の乾燥が起こりやすくなります。
このような状態に対してソーキングにて自己管理をすることが大切です。
1日2回以上、約20分間手をぬるま湯の中に浸し、その後クリーム(植物性オイルやワセリン)などを塗ることで水分の蒸発を防ぐものです。
これはタオルで軽く水分をとり行いますが、完全に手が乾いてしまってからでは効果がありません。
また、マッサージとして、親指と人差し指で、指の付け根から指先までつかみながらマッサージしていきます。
これを全ての指で行っていきます。
手の甲に対しても、手首から指先へとこするようにマッサージしていきます。
夜間はビニール袋や手袋をはめて寝ることも乾燥を防ぐのに有効です。
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異常知覚とは、日本神経学会によると、「自発的に生ずる異常な自覚的感覚」とされ、しびれ感や痛み、痒みなどに近い異様な感覚で、人により様々な感じ方や表現をすることに特徴があります。
脳卒中などの中枢性疾患における異常感覚の機序は、
障害を受けた神経線維の異常な感受性の亢進、新しい受容体の形成、神経インパルスの中枢パターンの変化、疼痛抑制系の変化、多シナプス性経路の活性化などが想定される。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P133
などが挙げられています。
視床後外側腹側核( VPL)が侵されると、視床症候群といわれる不快感を伴う激痛が現れることがあります。また持続性、発作性の自発痛を訴えることもあります。
視床痛では、必ずしも痛みではなく、じんじん、びりびりなどのしびれであることも多いです。
視床では触覚系(VPL核)が頑痛系(髄板内諸核)を通常抑制しているが、視床の出血や梗塞はVPL核を中心に発生しやすいので、最初は周辺部の浮腫の影響で運動麻痺が起こると同時に、頑痛系の核群も機能停止する。
浮腫の消退とともに運動麻痺が回復する一方、頑痛系が「脱抑制」による永続的な「自発痛」、もしくは「ジンジン・ビリビリ」というしびれを発生する。
これを「脱抑制説」と呼んでいる(植村 1987)。
知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P133
異常知覚に近いものとしては、知覚過敏、錯感覚があります。
知覚過敏は閾値の低下により刺激に対する感受性が高まっている状態をいいます。
錯感覚は外部から与えられた刺激と異なって感じる他覚的感覚をいい、風や水が皮膚に触れると痛みとして感じますが、その機序は不明です。
①薬物療法
視床痛などの中枢性疼痛(ジンジン、ビリビリというしびれを含む)には、一般の鎮痛薬は無効である。主に、抗うつ薬(トフラニール、アナフラニール、テトラミド、レスリンなど)や抗てんかん薬(テグレトール、アレビアチンなど)、抗不安薬(セルシン、メイラックス、デパスなど)のもつ除痛効果に期待するしかないが、その効果は人によりまちまちである(多賀須 2000)。
②星状神経節ブロック(SGB)
早期治療が望ましく、発病半年以内が有効といわれている。麻痺側の末梢領域への直接的交感神経ブロック効果を期待するものである。
星状神経節ブロックが脳血管に及ぼす効果については、未解明の部分が多い(若杉 1998)
③理学療法
温熱療法および寒冷療法により、除痛効果が人により期待できる。④作業療法
減感法(desenstitzation)により刺激に対する閾値を高め、並行して、服の素材を検討したり、生活の中での手の使用法を具体的に確認していく。知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P134
減感法は、異常知覚に対するリハビリテーションのひとつの方法ですが、その効果は神経生理学的には十分解明されていません。
方法として有効になる可能性も、逆に異常知覚を増強させてしまうことも念頭に置いておく必要があります。
方法
①綿、米、とうもろこし、豆、マカロニ、布などの物品から、目で見て恐れを抱かない物品を選択します。
②選んだ物品をボールに入れ、まずはその中に手を入れることから始め、徐々に手を動かす、握る、ものを探すなど段階的に行っていきます。
③異常知覚が減少してきたら、手の不使用に対して、接触面が丸みを帯びた物品(ペグなど)を用いて、動作学習を行っていきます。
④具体的な日常物品を用い、動作学習を行います。
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肌着は直接皮膚に触れる衣服であり、その快適性や着心地のよさは活動を行う上で大切です。
手術では術創部に肌着が触れることで違和感や痛みを感じることもあります。また感覚障害により感覚過敏状態があると、少しの他の刺激が入力されるだけでも嫌な感じを受けてしまうこともあります。
年齢を重ねるにつれて、生理的な肌の変化もあります。
肌着はその差材により、ピリピリ、チクチク感を受けやすく、縫い目や洗濯表示、ブランドタグが皮膚に触れることも刺激になり肌トラブルを起こしやすくなります。
ワイヤーやゴムの締め付けによってもストレスを感じることもあります。
完全無縫製®インナーは、縫い目が一切なく、袖がついている商品でも糸を使用しない接着仕様になっており、安全性に優れた特殊な接着剤で生地をつなぎ合わせています。
縫い目がないため着心地がよく快適で、チクチクやピリピリ感といった刺激が起こりにくいという特徴があります。
また素材はほつれにくいため肌に当たって気になる部分は自分好みにはさみでカットでき、アレンジすることが可能です。
他の市販品では、衿ぐりや袖ぐりをテープ状の布で包んで縫い代を処理しているため、その縫い代で肌に負担をかけダメージを与えてしまうことがあります。
完全無縫製®インナーでは、縫い目がなく肌への負担が少ないこと、洗濯表示をプリントすることでチクチク、ピリピリ、かゆみの原因を軽減しています。
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