手のアーチは指の細かな運動をする上で非常に重要な要素になります。今回は、手のアーチの種類とその構成要素、アーチができるメカニズムなどと、アーチの乱れに繋がる浮腫について、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

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手のアーチの解剖・運動学的特徴と浮腫について

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引用・参考文献

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手のアーチの解剖・運動学的特徴と浮腫について

横アーチ

手根骨遠位列が構成する近位横アーチ、中手骨骨頭部(MP関節レベル)が構成する遠位横アーチの2つがあります。

近位横アーチは手根骨間の関節のわずかな生理的動揺がありますが、基本的に動きがないと捉え(静的アーチ)、解剖学的アーチとなります。

遠位横アーチ(MP関節レベル)は、CMC関節(中手骨と手根骨で構成)の可動性によって、手の動きにより動的な変化をみせます。

アーチの動的変化は、アーチのカーブの度合い(彎曲度)だけでなく、MP関節間(各中手骨頭間)の幅も変化させます。

外傷や末梢神経麻痺によって内在筋の機能低下や筋萎縮などが見られると、アーチの平坦化が起こり、また中手骨間の幅が狭くなります。

時には深横中手骨間靭帯の短縮を引き起こすことがあります。

これによりCMC関節の動きが少なくなり、手や指の機能、使用で大きな問題となることがあります。

遠位横アーチは解剖学的アーチで、動的アーチでもあります。

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縦アーチ

縦アーチは解剖学的なものを指すものではありません。

手の動きの中で変化する機能的アーチで、手根骨、中手骨、基節骨、中節骨、末節骨からなる動的なアーチでもあります。

縦アーチは手の使用の際、機能的にきれいな弧を描く必要があります。

末梢神経麻痺ではイントリンシックマイナス型の変形(骨間筋、虫様筋よりも相対的に指伸筋の緊張が高い:MP関節伸展、PIP・DIP関節屈曲位)となりますが(中枢神経麻痺でもイントリンシックマイナス型となりやすい)、場合によってはイントリンシックプラス型の変形(指伸筋よりも相対的に骨間筋、虫様筋の緊張が高い:MP関節屈曲、PIP・DIP関節伸展位)となることもあり、縦アーチが崩れる原因となります。

対立アーチ

対立アーチは解剖学的なものを指すものではありません。

手の動きの中で変化する機能的アーチで、常に変化していきます。

対立アーチは、握りやつまみ動作において特に重要な役割を果たしています。

対立アーチが一時的に平坦化することにより、立ち上がる際の支持手としての役割を果たせる様に、目的動作に合わせて動的な変化がみられます。

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手指屈曲時のアーチの形成

屈筋(浅指屈筋(FDS)、深指屈筋(FDP))が収縮することにより運動が始まる。

いわゆる屈筋腱の張力が屈筋腱鞘に伝わり、その張力が腱鞘を介して掌側板に伝わる。

掌側板に張力が伝達されれば、深横中手靭帯が緊張し、隣接するM-Pjtの位置関係を整えることにより中手骨頭横アーチが形成され屈曲が完成する。

屈曲が作用している間、側方支持のため、側副靭帯は緊張し左右方向への制動効果をもたらしている。

深屈曲可動域には虫様筋の収縮力が必要となる。

上肢運動器疾患の診かた・考え方 P245

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手指伸展時のアーチの形成

総指伸筋(ED)が収縮することにより運動が始まる。

いわゆる伸筋の張力が中央索に伝わることにより手内筋の活動が得られ、伸展運動が惹起される。

伸展運動時は、伸筋の張力が指背腱膜から側副靭帯を介して掌側板に伝わることにより深横中手靭帯の緊張を惹起し、隣接するM-Pjtの位置関係を整えることにより中手骨頭横アーチが形成され、伸展運動が完成する。

伸展運動時は、側副靭帯、背側関節包は緩んだ状態になるため、支持性としては期待できないが、虫様筋・骨間筋による動的支持作用により保護されている。

上肢運動器疾患の診かた・考え方 P246

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浮腫発生のメカニズム

膠質浸透圧による毛細血管内での体液の移動

手のアーチの乱れにつながる浮腫の、発生メカニズムについて説明していきます。

毛細血管で内では、血液が内皮細胞の隙間と細胞膜を通して循環しています。

毛細血管では半透膜で、ほとんどの物質を透過させることができますが、比較的大きなタンパク質(アルブミンなど)は透過が困難です。このようなタンパク質を膠質といい、体内にとって重要な物質です。

そのためこれらを血管内に残すために膠質浸透圧(細胞間液から血管にかかる圧)が常に25㎜Hgで存在しています。

毛細血管内での水や物質のやりとりは膠質浸透圧、毛細血管内の血圧(動脈、静脈)の関係により血液と間質液、細胞内液は常に一定の濃度に保たれています。

動脈の毛細血管では、動脈壁に約35㎜Hgの圧力(心臓のポンプ作用による)がかかっています。

これは血管側の血漿の膠質浸透圧25㎜Hgより大きく、血漿中の水や電解質などが細胞側の間質液中にその差の10㎜Hg移動します。

静脈の毛細血管では、静脈壁に約15㎜hgの圧力(血液を流す役割のため心臓のポンプ作用はない)となっています。

これは血管側の血漿の膠質浸透圧25㎜Hgより小さく、細胞側の間質液中の水や電解質を血管側の血漿内にその差の10㎜Hg引き込みます。

このように動脈、静脈で浸透圧10㎜Hg差を補っており、この状態では浮腫は発生することはありません。

炎症が起こると毛細血管透過性が上昇し、膠質浸透圧が低下します。そのため大量の液が組織間隙にたまり、浮腫が発生します。この炎症期にはリハビリテーションでの対応はできません。

炎症期以降の浮腫:静脈還流の低下

静脈は皮下組織のすぐ下の走行しています。

手術などで皮膚が損傷を受けると、皮膚が硬化することがありますが、これによりその近くを走行する静脈も影響を受けることになります。

静脈は動脈と比較し血管が伸びにくいため、硬化により循環不良が起こると、還流量が低下してしまいます。

炎症期以降の浮腫:動脈圧の低下

動脈は深部に存在し、深部組織に血液を供給しています。

深部組織には単関節筋や知覚受容器が多く存在するのですが、骨折などで深部組織が損傷を受けると、近くを走行する細かい動脈も圧迫や牽引を受けることになります。

過度な伸張訓練を行うと疼痛を引き起こし、それが交感神経反射を起こすことにつながります。

それが動脈を収縮させ、動脈圧が低下することになります。

外傷や骨折による浮腫へリハビリテーションの方針

上記説明から、浮腫への治療方針がわかります。

・皮膚を含めた皮下組織の柔軟性を改善し、静脈還流量を増大する・深部組織(単関節筋など)の柔軟性を改善し、疼痛を伴う血管の収縮を抑制させる
ことが挙げられます。

取り掛かりやすいものは表層へのアプローチのため、まずは静脈還流の増大を図っていきます。

また痛みを伴う皮膚への無理な伸張を避けながら、関節可動域訓練を行います。

良肢位を保持することも重要になります。

深部組織では筋のポンプ作用を利用し筋の柔軟性を確保しながら、徐々に筋の伸張を行っていくことが必要になります。

手のアーチの確保という点で考えると、手内筋のリラクゼーションや収縮運動を行います。また手指に紐(アクリル毛糸)を巻きつけ、外部より圧迫を加える方法もあります。

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手の浮腫の評価、リハビリテーションと自分でできる軽減法

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浮腫の原因と、浮腫が続く事で起こる弊害

浮腫は組織液やリンパ液が組織や組織の間隙に異常にたまっている状態をいいます。

浮腫が改善されずに長時間放置されていると、その部位に繊維性結合組織が増殖します。

すると組織が硬化し、関節可動域制限を引き起こす事も考えられ、使いやすい手の状態を保つためにも、できる限り早期に浮腫を取り除くことが必要となります。

浮腫の評価方法

・周径の測定
周径を測定する場合、常に一定の測定部位で測定する必要があります。

浮腫は、その出現により皮膚温を変化させるため、その増減を記録することも一つの方法です。

皮膚表面温度を把握することは炎症や血行状態の予測に役立ち、手の管理のための情報として有用です。

通常、指の正常温度は30〜35℃の間であり、30℃未満は血行不良状態となります。

その時の気温や室温の影響を考慮するため、健側との比較が重要です。

表面温度がm周囲の皮膚温よりも局所的に1℃以上高ければ注意が必要で、6〜8℃高ければ外傷や炎症の疑いがあります。再接着(切断された組織をつなげること)などでは皮膚温低下もあります。

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浮腫のリハビリテーションと自分でできる軽減法の考え方

浮腫は創傷の治癒を遅延させ、感染のリスクも高まります。また運動範囲や運動頻度も低下させることにつながり、筋が短縮した肢位のまま膠原繊維の再形成を招き、運動障害につながります。

浮腫軽減の大原則はできる限り早期に対応することです。手だけでなく上肢全体を見ることが必要となります。

浮腫があると確認できる時には、間質液の容量は30〜50%増大しているため、外見上浮腫がなくなったと判断しても、浮腫の管理は続けていくことが重要です。

上肢挙上と自動運動

上肢を心臓のある位置以上に挙上すると、動脈の圧を減少させることにつながり、またリンパ液や静脈血の排出を助けます。

できる限りリラックスした状態で挙上する必要があり、手関節は中間位から軽度伸展位、手指・手関節を肘より高くし、肘は心臓のある位置よりも高く保持します。

頻度は特に問いませんが、自己管理を進めていく上では意識を高めていく必要もあり、頻度を高く指導することも大切です。

挙上位での自動運動も浮腫軽減に効果的です。

自動運動の効果は脈管内・外の平衡を維持することにより、リンパの流れを増加させたり、毛細血管の圧を低くすることによって心臓へ静脈血を戻すことである。

また、個々の腱グライディングの維持、改善と内在筋のポンプ作用にも効果がある。

上肢の全関節について、可能な範囲を十分に自動的に動かす。筋の等尺性収縮によっても同様の効果が得られる。

作業療法士のためのハンドセラピー入門 P40

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圧迫

求心性マッサージによる圧迫、間欠的・持続的な圧迫など様々な方法があります。

求心性マッサージでは間質組織の圧迫により、静脈やリンパの流れを促していきます。

上肢を挙上させた状態で行い、5〜10分行います。

間欠的圧迫では、圧迫と除去との割合を3:1もしくは4:1に設定し、最低限60〜90秒間圧迫を行います。

一般的に上肢では30〜40㎜Hgで行います。

圧迫を用いる際の注意を要する疾患は心臓病の方です。

また不安定骨折、外固定装置の装着、急性・全身的な感染がある場合は禁忌となります。

持続的な圧迫は弾性包帯などによって行います。

巻き方は常に8の字を描くように遠位から近位に巻くことがポイントです。

1時間程度の装着により、その後の運動が行いやすくなります。

紐巻き方

間欠的圧迫法の一つであり、アクリル毛糸などを一本もしくは複数の指や、手全体から手関節にかけて行います。

上肢を挙上させた状態で行い、末梢から近位に巻き上げていきます。

5分間維持しながら、求心性のマッサージを加えていくとさらに効果的です。紐を除去した後、運動を行います。

1日3〜4回行うことを推奨します。

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温熱

ホットパック、パラフィンなどは、軟部組織を温め、組織の損傷のリスクを抑えながら結合組織の伸長性を高めることに有効です。

氷の利用

寒冷刺激が加えられると、その部位の血流が減少し、体液の量が減少します。また組織を収縮させることに役立ちます。

アルコール氷

①1と1/2カップの水と1/2カップの消毒用アルコールを混ぜます。
②ドロドロするまで凍らせます。
③口の締められる袋に移します。
④個体になるまで凍らせます。
⑤凍ったら、冷蔵庫から出し、氷を押しつぶして患部に均等に当たるようにします。
⑥直接皮膚に当てずに、たたんだハンカチや枕カバーなどの布の上から氷パックを当てます。
⑦5分間患部に当てます。
⑧5分以上は当てないようにします。それ以上当てると凍傷を起こします。

作業療法士のためのハンドセラピー入門 P153

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ホットパック

①水の中にハンドタオルを浸し、絞ってから口が締まる袋の中に入れます。
②袋の口は完全に閉じずに、わずかに開けておき、3分間ほど温めます。
③タオルか調理用手袋を使って電子レンジからタオルを取り出します。
④乾いたタオルで包み痛みのある関節に当てます。
⑤袋がさめてきたら、タオルを取り出して直接当てます。

作業療法士のためのハンドセラピー入門 P153

交代浴

1.2つの容器が必要です。これは治療したい部分、通常肘まで浸せるように水を入れる物です。容器の一つは、流しあるいは浴槽を利用することができます。
2.快適な高さに容器を置きます。
3.最初の容器には約38〜41℃の温水を入れ、別の容器には約13〜18℃の水を入れます。
4.4分間腕を肘まで温水に浸し、その間、指を開いたり、閉じたりさせます。抵抗を加えるためにスポンジを使うこともできます。同じことを1分間水の中で行います。温水と水を交互に4分間、1分間行い、全部で14〜19分行い、温水で終わります。

作業療法士のためのハンドセラピー入門 P154

温水4分→冷水1分→温水4分→冷水1分→温水4分→(冷水1分)→(温水4分)となります。

手を浸した後に手が熱を持ったり、浮腫がひどくなった場合、指が冷たくて蒼白になった場合、痛みがひどくなった場合などは、交代浴を続けるべきではありません。

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