脳卒中などで利き手が麻痺した場合には、その障害程度に応じて利き手交換が必要になります。その際、本人の希望や心理状態を把握しながら、しっかりとしたオリエンテーションが必要になります。書字訓練を行う際の作業療法アプローチは様々なものがあり、患者の状態像に合わせた訓練内容が必要になります。今回、利き手交換としての書字訓練における作業療法アプローチについて、文献を参考にしながらまとめてきたいと思います。

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利き手交換としての書字訓練における作業療法の工夫

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参考文献

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利き手交換の拒否に対しての対応

脳卒中片麻痺者の利き手交換における問題

脳卒中片麻痺者に利き手交換を進めていく場合には、脳卒中の機序や発症後の経過と回復の関係性、予後予測、訓練との関係性などを詳しく説明し、対象者の同意を得た上で利き手交換訓練に取り組んでいくことになります。

しかしながら、説明を行っても拒否をされる方もいるのが現状です。

医療側としては、麻痺側上肢機能の回復を待つよりも、非麻痺側での動作を中心に行う方が合理的で、生活という視点で考えると充実したものになることも考えられます。

障害受容を促し、機能訓練に固執するのではなく、活動・参加面の視点で訓練を行っていくように促していく必要があります。

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セラピストの対応に問題はないか

訓練中、対象者から「この手は良くなりますか」と聞かれることがあると思います。

その際、セラピストが返答を曖昧にしたり、「頑張って動かしていたら良くなりますよ」などというように言う事があるかもしれません。

きちんとした予後予測に基づいて答える場合は構わないですが、明確な見通しがないなかでもそのように答えるということは避けなければなりません。

例えば、川平は「貴方の希望がかなうように、精一杯治療しますが、私の経験では◯◯くらいに止まることが多いのが実情です」と予後予測についてはできるだけ正確に告げるようにし、「麻痺が残った場合も困らないように、片手でなんでもできるように麻痺のない手の訓練も同時にしてください」と伝えることが大切だと述べています。

曖昧な表現は相手の都合の良い解釈となりやすい

対象者は、自分に関する情報を受け取る際には、できるだけ良い方に解釈する傾向があります。

「動くようになる」が「使えるようになる」と解釈することもあります。

また、セラピストの経験上の予後予測と、医者の画像判断からの予後予測が異なる場合もあり、注意が必要です。

急性期の場合、上肢について予測がつきにくい場合には、「もう少し経過をみてみないとはっきりしたことは言えない」とぼかして言うことも必要です。

また、「リハビリ専門病院に移り訓練することで良くなる」というようなことも避けるべきです。

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具体的表現の重要性

対象者への説明には、具体的表現を用いて説明することが重要です。

「左腕は買い物かごを引っ掛けることはできますが、茶碗を持ち食事することはできないと思います」

「右手はシャツを脱いだりすることには使えますが、書字や箸操作として使用するのは難しいと思います」

「右手は書字で使えますが、全体のバランスや上手さ、スピードは元通りになるというわけにはいきません」

「書字は両手で練習してみて、最終的に上手く書ける方で行いましょう」

などのような具体性が必要です。

利き手交換の方針が決まれば、利き手交換の訓練のみ行った方が進歩が早くなることが言われています(脳内利き手中枢の切り替えの問題?)。

ただし、廃用が予測される場合においても、「その手は使えない」など対象者の意欲をそぐ言動は避けなければなりません。

目標設定の重要性

対象者と予後予測の結果から、目標設定について話し合い、目標を設定することは重要な取り組みになります。

対象者とともに目標に達成に向けての行動やプランを立てる中で、利き手交換の必要性を自ら自覚する場合もあるかもしれません。

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利き手交換と書字動作

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書字練習の順序

私たちが教育課程で文字を習う順序としては、ひらがな、カタカナ、漢字の順で練習を進めていきます。
この順序が利き手交換における最適な順序とはいいきれません。

文字全体のバランスから考えると、ひらがな、カタカナは字画が少なく、一本の線の歪みや長さのバランスが異なると、字全体のバランスに影響を与え、字が下手に見えてしまう特性があります。

一方漢字の場合は、字の構成が縦と横の線から成っており、そのうちの一本が歪んだり、長さのバランスが異なっても、字全体の印象としてはそれほど影響を与えることはありません。

このことからも、字のバランスが取りやすい漢字から始めると、患者の意欲も保ちながら行いやすいといえます。

具体的には、輪郭だけの文字の塗りつぶし、線引き、文字の基礎練習、ひらがな、漢字かな混じりの文、ボールペンの使用、数字や英文字といった順序になります。

文字の塗りつぶしでは筆圧を強く一定とするために、白抜きの文字を塗りつぶしていきます。その際はみ出さず、同じ濃さで塗るようにします。

線引きでは、縦、横、斜め、曲線の練習を行います。

文字の練習ではマスを利用し、始めは「三、川、止、目、曲、星」などの直線的で等間隔の文字から行います。

次に基本画(一、イ、ノ、宀、シなど)の練習を行い、これらを含む漢字を書いていきます。

ひらがな、カタカナも行いながら、単語、短文、長文へと進めていきます。最終的にはマスから紙を用います。

非利き手での書字の特性

健常者が非利き手で字を書いた場合、遂行時間が長く、バランスの良いまとまった字とはなりずらく、通常とは異なる部位に過剰に力が入ったりし、疲労も早くなります。

このような状態は患者も同様に感じ、なかなかうまくいかないことによる焦燥感や、意欲低下を引き起こす可能性もあります。

そのため、書字訓練開始時には、利き手交換にはかなりの時間と努力が必要になることを説明する必要があります。

一つの方法としては、健常者が非利き手で字を書き、時間がかかったり、字が乱れることを示すことによって視覚的に書字訓練の特性を知ってもらうことも有用です。

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右手と左手における横線の違い

右手で横線を書いた場合、右手では引いて書いた字になりますが、左手で横線を書いた場合、押して書いた字となります。

漢字では左から右に引く線が多くあり、左手での書字においては右に横線を引くことが大切になります。

書字の習熟と訓練時間

健常学生を対象とした調査では、1日30分、週5日、1ヶ月の練習により、全体の1/3が実用レベルに達したとの報告があります。

小学生用の8マスノートを用い、ひらがなから始めて、15マスノートに書き、小学校3年生程度の漢字を加え、幅7㎜の紙に書き、1日1回15分、週5回を7ヶ月続けたところ、手がみなどを書くことに困らない程度になったとの報告があります。

輪郭だけの文字の塗りつぶしから始め、単一線、文字の基礎、ひらがな、漢字かな混じりの文の練習をしていき、1日6時間の練習で4〜5ヶ月必要との報告があります。

非利き手での書字では、適切な順序を踏み毎日練習すれば、60歳以上の人でも3ヶ月で実用的になるとの報告があります。

これらのことからも、書字の習熟には時間を要することがわかります。

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手本、課題の内容

手本には、筆記体である市販のペン習字やボールペン習字などの教本を手本にし、始めは縦書きから始めるのがよいと言われています(活字体は「日」も「国」も同じ大きさとして図案化されている)。

手本には患者が興味のある内容の文章にすることで、受け入れられやすいという利点があります。

筆記用具

シャープペンやボールペンでは、線が細くボールが滑りやすいこともあり、サインペンやマジックペンでは筆圧をあまり必要とせず、はっきりと字は書けるが細かく複雑な字は潰れてしまうことがあります。

鉛筆は消しゴムで消すことができ、利き手交換に導入しやすい筆記用具といえます。

Bでは柔らかすぎ、Hは硬すぎることもあり、HBが適切といえ、上達がみれれてからボールペンに移行していくことが望ましいといえます。

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練習用紙

一般的に3㎝以上の文字を書く機会はないことから、2㎝角のマスを用いられやすく、上達するにつれて1.5㎝角、1㎝の線紙へと進めていきます。

訓練開始時には紙の固定として、マスを印刷した紙を紙挟みではさんだり、滑り止めシートを敷いたり、文鎮で固定するなどの方穂があります。

筆記用具の把持

筆記用具の把持方法は利き手と同じになります。

利き手とは対称の持ち方にならないこともあります。

右片麻痺者での書字の調査において、健常者の非利き手での書字とは異なり、縦線・横線とも書く際に手関節尺屈位になるとの報告もあります。

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きれいな字の獲得に向けて

非利き手での書字では、字が大きく、右下がりや筆圧の低下などの特徴があります。

これらの特徴を考慮し、筆圧の強化や文字のサイズ調整を進めていくことが必要になります。

文字のバランスから考えると、漢字は大きく、ひらがなは小さく書くこともきれいに見せるコツになります。

字の高さと字の基底線を揃えることで字の大きさが揃い、その結果文章全体のバランスがとれます。

また横書きでは横線、縦書きでは縦線がしっかりとしていることで多少の線の歪みはカバーできるとも言われています。

書字訓練に加えての訓練

非利き手での書字の獲得には、直接的な訓練に加えて、間接的な訓練も有効になることがあります。

手関節固定のための掌圧や、PIP関節の運動性の獲得に向けた訓練を行う必要があるかもしれません。

掌圧の向上に向けて、ワイピング(テーブル拭き)動作を用いることもあります。

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