今回は、ふくらはぎ(主にアキレス腱部)の痛みに関わり、足関節捻挫の治療ポイントにもなる後脛骨筋のほぐし方、緩め方について紹介していきたいと思います。
目次
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後脛骨筋はヒラメ筋の下に位置し脛骨・腓骨、その間にある骨間膜に付着しています。
なお、ヒラメ筋は下半分は皮膚のすぐ下にあり、上半分は腓腹筋に覆われています。
後脛骨筋腱は内果の後方を走行しており、足中央の幾つかの骨(舟状骨、全楔状骨、立法骨、第二~第五中足骨)に付着しています。
後脛骨筋は足関節の底屈を補助し、足のアーチの維持や足の体重の圧を外側に適正にかける働きもあります。
出典:痛みの臨床に役立つ手技療法 ASTR
単独収縮で後脛骨筋を触れることは困難です。それはどのように動かしてもふくらはぎの筋肉は同時に収縮が起こるためです。
そのため、後脛骨筋の筋硬結部(トリガーポイント)を探すには腓腹筋の2つの筋頭の間の縦のライン沿いに、圧痛がないかを調べていきます。
このとき、脛骨の後面の内側からアプローチするとこの後のストレッチが行いやすくなります。
後脛骨筋にトリガーポイントがあると、主にアキレス腱の痛みを生じさせます。
この痛みは特に歩行や走行時に強く見られ、痛みがふくらはぎや踵、足底にまで生じることもあります。
後脛骨筋のトリガーポイントは、アキレス腱炎と誤診されることがありますが、まずはそのトリガーポイントを緩めることにより痛みが消失するかを見ることが大切になります。
トリガーポイントが原因で後脛骨筋の筋力低下が起こると、膝が内側に入り、アーチの部分が落ちたように見えることがあります。
後脛骨筋が緊張する原因として、凸凹道の歩行や走行で大きな負荷がかかることがあります。
靴が足に合わないことも後脛骨筋を緊張させることにつながることがあります。
足関節の内返しを伴う捻挫を繰り返していると、後脛骨筋にトリガーポイントを生じさせることがあります。
内がえし捻挫の治療では、前距腓靭帯を中心とした外果周囲に関心が向きがちであるが、受傷時には後脛骨筋は急激に収縮し、受傷後は外果への負荷を軽減するために後脛骨筋を収縮させて歩くことが多い。後脛骨筋の短縮がそのまま残ると、回復後も足関節外がえし動作が制限を受け、捻挫の起こりやすい足関節となってしまう。
痛みの臨床に役立つ手技療法 ASTR P168
①足関節が軽く底屈した状態にします。
②後脛骨筋に押圧を加え、頭側へ引いて保持します。
自分で押圧をしやすい手の用い方を色々と試してみてください。
③足関節を背屈させます。
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ヒラメ筋は下腿後面を覆う筋肉で、下方は皮膚のすぐ下にあり、上方は腓腹筋の下にあります。
脛骨と腓骨の上方から始まり、2つの骨をつなぐ骨間膜にも走行し、下方では腓腹筋や足底筋と共同のアキレス腱として踵骨に停止します。
その主な作用は足関節の底屈(足首をしたに向ける)で、足で地面を踏み込む際に強く働きます。
膝関節屈曲時には、腓腹筋は筋力を発揮されにくいですが、ヒラメ筋はしっかりと筋力を発揮できます。
そのため膝関節屈曲時には、足関節底屈は、ヒラメ筋が主な力源になります。
出典:痛みの臨床に役立つ手技療法 ASTR
ヒラメ筋の大部分は腓腹筋に覆われています。
膝関節屈曲位ではヒラメ筋が優位に働くため、触診には膝関節屈曲位で行います。
膝屈曲位にて足関節を底屈(下に向ける)させると、腓腹筋の奥でヒラメ筋が収縮するのを感じることができます。
下腿の側方から指を差し入れることでより収縮が感じやすくなります。
ヒラメ筋に過緊張あるいは筋の硬さがあると、かかと、ふくらはぎ、足首の後面にかけて痛みが生じます。
また仙腸関節周辺への深部痛、顎への関連痛や腰のこわばり感にもヒラメ筋の関与があると言われています。
脛骨後面に付着しているヒラメ筋に筋硬結があると、足関節の内果に痛みを生じさせることもあります。
ヒラメ筋の筋硬結と類似の症状をきたす疾患には、血栓症、静脈炎、疲労骨折、腱断裂等があり、鑑別が必要になります。
踵やアキレス腱周辺の痛みはほとんどの場合、ヒラメ筋、後脛骨筋、足底方形筋の筋硬結が原因であることが多くなります。
ヒラメ筋は第2の心臓とも呼ばれており、脚から血液を心臓に戻す作用があります。
しかしヒラメ筋に筋硬結があるとその機能は低下し、血行が阻害されることでふくらはぎの痙攣の原因となったり、低血圧や失神の原因にもなることが考えられます。
立ち仕事でふくらはぎ周辺に重だるさを感じている場合、重心がつま先側にあるために下腿三頭筋が反射的に高緊張となっていることが考えられます。
ヒラメ筋に負担がかかる原因としては、歩く際にバランスを崩して滑ったり、不安定な地面を走ったりすることで過緊張状態が生じやすくなります。
ハイヒールはヒラメ筋を常に短縮させ、足首の運動を不安定にさせるためヒラメ筋は過剰に負担がかかります。
①椅子に座り足を組み、足関節を底屈(地面に対し踵を上げる方向)させます。
②ヒラメ筋に両方の親指をそろえて押圧を加え、頭側に引いて保持します。
③足関節を背屈(地面に対しつま先を上げる方向)させます。
前途した立ち仕事でふくらはぎ周辺に重だるさを感じる場合、下腿三頭筋に負荷のかからない姿勢を獲得することも大切になります。
具体的には、立位で下腿三頭筋を触り、重心を前後に移動させて、筋が最も緩む位置を探ります。
このとき、筋が緩んだ位置が必ずしも本人にとって楽な位置とは限りません。
そのため、ある程度楽に保ちながらも筋が緩む姿勢を基準として考えて姿勢指導を行う必要があります。
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腓腹筋は大腿骨の下端から始まり、下腿の後面半分ほどからアキレス腱となり、踵骨に付着します。
腓腹筋は2つに分かれており、その筋繊維は縦に走行しているため、体の重みに対して持ち上げる力を発揮することが可能です。
また外側頭は主に瞬発力を発揮する白筋、内側頭には持久力を発揮する赤筋を多く含みます。
そのため、長時間立位姿勢をとる仕事ではでは内側頭が過緊張になりやすいです。
その作用は足関節の底屈、膝関節の屈曲です。
ジャンプ、階段を上る、下り坂や階段を調整しながら下りる際に重要になる筋肉です。
また足関節、膝関節を安定させたり、バランス保持のために足関節をコントロールする際に働きます。
膝関節が伸展していると腓腹筋は筋力を十分に出せますが、膝関節が屈曲していると、腓腹筋は十分に筋力を発揮させることができません。
(出典:痛みの臨床に役立つ手技療法ASTR)
下腿上部にある腓腹筋の位置はわかりやすく、つま先を伸ばす(つま先立ち)ことで腓腹筋が隆起するため触知することが可能です。
腓腹筋は座位でつま先を立てるよりも立位でつま先を立てるほうがより力強い収縮力を発揮します。
腓腹筋が過緊張状態、あるいは筋に硬さがあると、足の踵から縦アーチにかけての部分や、大腿、膝の後面、足首にまで痛みを生じる場合があります。
腓腹筋の短縮は、踵を床につけた状態での膝の伸展動作を困難にすることがあります。
腓腹筋の中央部にある筋の硬さは、ふくらはぎの夜間の痙攣(こむら返り)を引き起こす傾向が強いです。
ふくらはぎの痙攣には、ビタミン欠乏、薬の副作用、循環不良などが関与していますが、腓腹筋の過緊張状態が原因となることが多いです。
運動中の痙攣も、腓腹筋が短縮することにより血液循環が低下することで発生することがあります。
①椅子に座り膝を曲げ、足関節を底屈(下に曲げる)させます。
②腓腹筋に押圧を加え、膝の方向に引き寄せ保持します。
③膝を伸ばし、足関節を背屈(上に反らす)させます。
筋の硬さが近位(膝側)にあれば膝を主に動かしてストレッチを行い、筋の硬さが遠位(足首側)にあれば足関節を主に動かします。
足の外返しに制限が生じている場合には、内側頭を外方向へ引き寄せ保持しながら、足関節を背屈させると効果的です。
繰り返し足関節捻挫を起こす方では、腓腹筋の特に内側頭を伸張しておくと予防となります。
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足底方形筋は踵骨の内側面、下面から起始し、 長趾屈筋腱の内側縁に停止します。
足底方形筋は短趾屈筋の付着する部位のすぐそばにつき、短趾屈筋の下に隠れています。
その作用は第2〜4趾PIP関節の屈曲で、長趾屈筋の作用を補助する役割があります。
出典:誰でもできるトリガーポイントの探し方、治し方
足底方形筋は短趾屈筋に完全に覆われているため、単独収縮により直接的に触知はできませんが、趾を屈曲させたときの足底方形筋の緊張を確かめます。
足底方形筋と短趾屈筋のトリガーポイントはほぼ同位置にあります。
異なる点は、足底方形筋のトリガーポイントがかかとに近く、より深部にあることです。
足底方形筋にトリガーポイントがあると、主にかかとの底面に痛みを生じさせます。
かかとに石を踏みつけたような痛みを感じ、階段の下り動作で鋭い痛みを感じることがあります。
そのため立位、歩行などでかかとに荷重することが困難となり、仕方なくつま先で歩かなければならないこともあります。
足底筋膜炎と誤診されやすく、踵骨棘が原因だと間違われることもある。
踵骨棘はあっても、それが痛みの直接の原因ではないことがある。マッサージで痛みが治れば、踵骨棘が原因ではないという決定的な証拠になる。
もちろん、踵骨棘と筋膜トリガーポイントが同時に発生することもあるだろう。
誰でもできるトリガーポイントの探し方、治し方 P223
足底方形筋にトリガーポイントがある場合、連続して下腿三頭筋の筋緊張が亢進していることがあります。
よって、下腿三頭筋の処置後にまだかかとの痛みが続いている場合、足底方形筋の状態を評価することが大切になります。
路面が凸凹などで安定しないところを歩く場合、足趾の屈筋とともに足底方形筋にも負荷がかかることがあります。
凸足(土踏まずが通常よりも高い位置にある)となっている場合、足底方形筋は短縮していることがあります。
①足趾を屈曲させ、足底方形筋の起始と停止を近づけます。
②足底方形筋に押圧を加え、かかと側に引き寄せ保持します。
③足趾を伸展します。
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