薬剤の効果を得るには、正しい容量、用法を守ることが必要です。また薬剤の副作用により、身体機能低下や意欲低下を引き起こし、家族介護に大きな負担をかけてしまうこともあります。今回、薬剤とリハビリテーションについて、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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薬剤は正しい使用により効果が発揮され、副作用を未然に防ぐことができます。
医師はその効果や副作用をチェックしながら投与量を調整しています。
そのため、適切な治療のためには、正しい容量、用法を守って服用することが必要になります。
患者や利用者の中には、様々な理由から自分で判断し服用をやめてしまうことがありますが、治療のためには服用の継続が必要な場合が多くあります。
それを防ぐためには、医療・介護職が薬剤使用の目的、どのような効果と副作用があるのかを把握し、それを利用者・患者に伝え、理解してもらうことも必要になります。
薬剤は決められた時間に正確に飲む必要があります。間違えた飲み方では効果が十分に発揮されず、副作用が強く出てしまうこともあります。
食事を基準に服用する薬剤では、
食直前:食事を始めるとき
食前:食事をとる約30分前
食直後:食事後すぐ後
食後:食事をとった約30分後
食間:食後2時間くらい
となっており、時間に関しては多少ずれても構いませんが、飲み忘れないことが大切になります。
食事とは無関係に服用する薬剤では、
時間ごと:食事に関係なく一定の間隔で
頓服:症状があるとき。医師の指示に従って
起床時:起きたらすぐ
就寝前:就寝する30分前
となっています。
指定された時間に合わせた薬剤の配置または携帯が必要です。
薬剤は基本的に水、ぬるま湯で飲みます。
薬剤は水に溶けることで腸粘膜から吸収されやすくなります。
水なしで薬剤を飲むと、のどや食道に引っかかり、種類によっては潰瘍を作ることもあります。
アルコールと一緒に飲むことは絶対に避け、医師や薬剤師の指示なく噛み砕いて飲んだり、牛乳やジュースなどで飲むと効果が変わる薬剤もあるため注意します。
逆に水なしで服用する薬剤もあるため、あらかじめ薬剤師に確認しておく必要があります。
湿気、日光、高温を避けて保管します。
薬の効果が弱くなったり、変色してしまう可能性があるためです。
なかには冷蔵庫に保管するものもあります。保存場所が指定される薬剤では、薬袋に指定場所が記載されているので確認します。
処方薬は、そのときの病状に合わせて処方されています。
そのため医師の指示がない限り、処方された日数が使用期間となります。
使い残しの薬剤を使用することは避けるよう利用者・患者に理解してもらいます。
飲み忘れがある場合、原則すぐ服用します。
ただし、次の服用時間が近い場合、飲み忘れた分は服用せずに次回分から飲みます。
対処方法は薬剤により異なるため、事前に薬剤師に確認しておくことが必要です。
2回量を一度で飲んでしまったときは、状態を観察して異変があれば医療スタッフと連携するようにします。
利用者・患者の生活リズムでは、1日2回の食事(遅い朝食と昼食を兼ねる)の場合もあり、医師がそれを把握せず処方している場合もあるため、実際の生活リズムを把握して、必要であれば医師と連携をとります。
高齢者は複数の病気を抱えていることも多く、服用する薬が多くなりがちです。
また加齢により肝臓や腎臓で薬剤を処理する機能が低下するため、体外への排泄が遅くなり、副作用も出現しやすくなります。そのため、普段からの状態変化を観察しておく必要があります。
認知機能低下がある場合、飲み忘れや飲みすぎの可能性もあるため、環境設定が大切になります。
高齢者の服薬では、TPT包装のまま飲み込まないように注意が必要となります。
一包化しているのか、1回に服薬する薬剤数をチェックしたりすることも必要です。
お薬手帳には、処方薬の内容を、薬剤使用履歴として毎回内容を記載またはラベルを貼りまとめているものです。
これには薬剤名称や用法、容量の記載だけでなく、複数の医療機関などを受診している場合の薬剤の重複防止や相互作用のチェックのためでもあります。
薬剤相互作用は、複数の薬剤使用において、それぞれの薬剤では出現しない作用が出たり、作用が強く出すぎたり、逆に効果が弱まるなど、期待した効果でない作用が出てしまうことをいいます。
相互作用は薬剤だけでなく、摂取している食品や健康食品との組み合わせでも起こることがあります。
薬の組み合わせに関しては基本的に薬剤師が確認して調剤を行っていますが、日頃からの体調チェックが大切になります。
食品との組み合わせに関しては、禁忌事項を確認しておくことが必要になります。
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薬剤服用による副作用は、すべての人、またいつも起こるわけではありません。
医師の指示通り服用しても起こる可能性はあり、具体的な症状には例えば下痢、発疹、眠気、胃潰瘍、咳などがあります。
ほとんど問題にならない副作用もありますが、重篤な症状を起こし、薬剤変更や中止が必要になる場合もあります。
そのため、服薬によりいつもと違う様子、症状が見られた場合には医療職と連携をとる必要があります。
新しい薬を使用する場合には、どのような薬で、どのような目的で使用するか、また可能性のある副作用を確認しておくことが必要になります。
薬の作用、副作用、服用の目的を対象者に理解してもらうことは、服用方法の遵守につながると考えられます。
薬剤の副作用により、下記のような生活上の問題が生じます。
排泄機能(排便・排尿)、食事摂取、運動機能(衣服の着脱、移動など)、感覚機能(視力・聴力)、精神機能(不安・妄想・幻覚・認知機能低下、徘徊など)。
視覚障害では歩行時の不安定性につながり転倒、骨折のリスクが高まります。
振戦などを含むパーキンソニズムは運動・動作機能の低下を招きます。
味覚障害が起きると食欲不振につながり、体重減少を引き起こす可能性があります。
精神機能麺への影響では思考力低下や注意機能低下があると移動におけるふらつきにつながり、転倒・骨折のリスクを高めます。
薬剤における視覚障害では、視力、視野異常、色覚異常が中心で、目がかすむ、ちらつく、物が黄色に見えるなどがあります。
薬剤による視覚障害では、歩行や衣服のボタンかけはずしなどに影響を与えますが、加齢によるものとされてしまうことがあり注意が必要です。
薬剤による味覚障害では、食事の味気なさ、おいしくない、好みの変化、変な味がする、口内に食物がなくても苦味があるなどの症状があります。
味覚障害は食事摂取量の低下や低栄養、口内炎などを招く可能性があります。
薬剤性パーキンソニズムの症状は、振戦、すくみ足、小刻み歩行、姿勢異常、動作緩慢、流涎、抑うつ状態などがあります。
日常生活への影響としては、嚥下、食事摂取、歩行、姿勢保持、入浴、衣服着脱などに影響が出ます。
パーキンソン病と薬剤性パーキンソニズムの比較は下図を参照してください。
パーキンソン病 | 薬剤性パーキンソニズム | |
原因薬剤 | なし | あり |
症状の進行 | 非常に緩徐 | 比較的早い |
初期症状 | 振戦多い | 歩行、運動障害多い |
振戦の性質 | 静止時に目立つ | 姿勢、動作で誘発増強 |
筋固縮 | 歯車様 | 歯車様 |
運動障害 | 無動、突進、すくみ | 動作の遅さ、少なさ |
左右差 | 初期、片側 | 通常、両側性 |
薬剤での下痢・軟便には、それに伴う食欲不振や腹痛、腹部不快感、腹部膨満感などがあります。
睡眠障害や食欲低下、肛門周囲のただれ、褥瘡の悪化などにつながる可能性があります。
注意力低下を引き起こす可能性の高い薬剤として、ベンゾジアゼピン系(眠剤、安定剤)があります。
これには筋弛緩作用の強いものもあり、転倒に注意する必要があります。
また高齢者では眠剤の影響が翌日まで持ち越すこともあります。
他には向精神薬、バルビツール酸、抗ヒスタミン剤(風邪薬)などがあります。
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薬の処方箋やカルテに記載されている薬の処方内容には、
Rp.
①コントミン(50)3T
ピレチア(5) 3T 3×n.d.E
②ベゲタミンA 1T
プルゼニド 2T 1×v.d.S.
などと記載されています。
薬の名前は予測できますが、他の数字やローマ字部分からは、一見しただけではどんな意味を含んでいるのかがわかりません。
まず「Rp.」とはラテン語でいうと「recipe」の省略形であり、「処方」を意味しています。
「コントミン(50)」はコントミン50mg錠のことで、1錠の中にコントミン50mgを含有している錠剤を意味しています。
コントミンは他の含有量のものもあるため、(50)という数字を記載していないと、どれを処方しているかわからなくなるため省略することはできません。
ベゲタミンA、プルゼニドは、1種類しか存在しないため、(50)のようなmg数を記載する必要はありません。
「T」は「tablet」の省略形で錠剤を指します。
処方箋には1日で飲む量を記載する必要があり、「3T」であれば1日合わせて3錠服用することになります。
「3×」「1×」はそれぞれ3回、1回に分けて服用することを意味しています。
「n.d.E」はドイツ語で「nach dem Essen(食後)」を意味し、「v.d.S.」はで「vor dem Schlaf(眠前)」を意味しています。
他にも、「v.d.E」は「vor dem Essen(食前)」、「s.v.E」は「sofort vor dem Essen(食直前)」「z.d.E」は「zwischen dem Essen(食間)」、を意味します。
上記の処方内容では、毎食後コントミン50mg錠とピレチア5mg錠を各1錠の計2錠、ベゲタミンA1錠とプルゼニド2錠の計3錠を就寝前に服用します。
食後3回の服用内容が異なる場合の処方記載例には、
Rp.
コントミン(25) 4T(2-1-1)
ピレチア(5) 3T 3×n.d.E
のようなものがあります。
この場合、コントミン25mg錠を朝食後2錠、昼食後1錠、夜食後1錠の、1日合わせて4錠服用することになります。
ピレチアに関しては、毎食後1錠ずつ服用します。
他にも、
Rp.
コントミン(50) 1T 1×M
という処方の記載では、コントミン50mg錠を朝のみ服用します。
「M」は「Morgen(朝)」、「T」は「Tag(昼)」、「A」は「Arbent(夕)」となります。
これらの記載方法は医師によって様々であり、その都度確認することが正確に処方内容を把握するために必要になります。
Rp.do.
という記載では、「do.」は「ditto」の省略形で、前回と同じ処方内容という意味になります。