関節リウマチのQOL評価として使用されるものとして、AIMSやHAQがあります。今回、AIMS日本語版、HAQの概要と評価方法、結果の解釈について、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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これでできる リウマチの作業療法 南江堂 1996
村澤 章「関節リウマチ患者における肩のトラブル」Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10
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関節リウマチは慢性・難治性の疾患であり、日々の生活をいかに満足感や快適さを感じながら送れるかという視点は重要です。
リウマチでは関節痛、発熱や貧血などの全身症状、内臓症状もあり、それらを抑えながら、対象者の生活全体がどのくらいよくなっているのかをリハビリテーションでは示す必要があります。
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AIMS日本語版は、ADL 関連6指標と社会活動、痛み、仕事などの6指標の計12 指標があり、それぞれの指標のスコアの平均値を取ることにより、身体機能面(移動、歩行、手指、上肢、身辺の指標スコアの平均値)、社会生活面(社交、支援の指標スコアの平均値)、症状(痛み)面(痛みの指標スコアの平均値)、職業(仕事)面(職業の指標スコアの平均値)、精神・気分面(緊張・気分の指標スコアの平均値)の5領域の QOL が評価できます。
アンケートによる自己記入により回答してもらいます。
評価項目
あなたは、この1カ月間…に続いて以下の質問がなされます。
移動
Q1 自分一人でバスや電車に乗ることができた
Q2 1 日のうちのある時間内だったら、一人で外出できた
Q3 一人で近所の用足しができた
Q4 家の外に出るときには、だれかに手伝ってもらわないと出れなかった
Q5 1日中、ベッドか椅子から離れられなかった
歩行
Q6 走ったり、重い物を持ち上げたり、スポーツ等の激しい運動をするのが困難だった Q7 数ブロック(4OO-5OOm)歩いたり、2一3階の階段を昇ったりするのが困難だった
Q8 背中を曲げたり、屈みこんだりすることが困難だった
Q9 1ブロック(4O-5Om)歩いたり、階段を1階昇るのが困難だった
Q10 だれかに支えてもらうか、杖・松葉杖・歩行器等を使わないと歩けなかった
手指
Q11 ペンや鉛筆を使って楽に書くことができた
Q12 シャツやブラウスのボタンを楽にかけたりはずしたりできた
Q13 錠の鍵を楽にまわすことができた
Q14 楽にひもを結んだり、結び目を作ることができた
Q15 ジャムや他の食品の入った新しいびんの蓋を楽に開けることができた
上肢
Q16 ナプキンで楽に口を拭くことができた
Q17 頭から被って着るセーターを楽に着ることができた
Q18 髪をとかしたり、ブラシをかけることが楽にできた
Q19 手で背中のあたりを楽にかくことができた
Q20 頭より高い棚にある物を楽にとることができた
身辺
Q21 入浴やシャワーをするのに手助けが必要だった
Q22 服や着物を着るのに手助けが必要だった
Q23 トイレで用を足すのに手助けが必要だった
Q24 ベッドに入ったり出たりするのに手助けが必要だった
家事
Q25 もしスーパーマーケツトに行けたとすれば、一人で買い物ができた
Q26 もし台所設備があるとすれば、一人で自分の食事を作ることができた
Q27 もし家事道具が一式あるとすれば、一人で家事ができた
Q28 もし洗濯設備があるとすれば、自分の洗濯物は一人で洗濯できた
社交
Q29 友人や親戚の人達と時間をともにした
Q30 友人や親戚の人達を自宅に招いた
Q31 友人や親戚の人達の家庭を訪問した
Q32 親しい友人や親戚の人達と電話で話しをした
Q33 クラブや同好会・寄り合いの会合に出席した
支援
Q34 あなたが助けを必要とするとき、力になってくれる家族や友人が周りにいてくれると感じていた
Q35 あなたの家族や友人はあなたの個人的な依頼によく応えてくれると感じていた
Q36 あなたの家族や友人は、あなたが困ったとき、進んで手を貸してくれると感ていた
Q37 あなたの家族や友人は 、あなたの病気をよく理解してくれると感じていた
痛み
Q38 あなたが日頃感じているリウマチの痛みはどの程度ですか
Q39 リウマチによる激痛は、何日くらいありましたか
Q40 同時に2関節またはそれ以上の関節の痛みは何日くらいありましたか
Q41 起床後、朝のこわばりが1 時間以上続いた日は何日くらいありましたか
Q42 眠れないほど痛かった日は何日くらいありましたか
職業
Q43 仕事(勤務・家事・学校)を休まなければならなかった日は?
Q44 仕事(勤務・家事・学校)を早退しなければならなかった日は?
Q45 仕事をしていて、仕事(勤務・家事・学校)が自分で思うほど完全・正確にできなかった日は?
Q46 仕事をしていて、仕事(勤務・家事・学校)がいつものようにできず、やり方を変えなければならなかった日は?
緊張
Q47 何回くらい、気が張り詰めたり、精神的緊張状態に陥りましたか
Q48 何回くらい、神経質になったり、神経過敏になって困ったことがありましたか
Q49 何回くらい、楽にリラックスすることができましたか
Q50 何回くらい、精神的緊張感から開放されて、のびのびした精神状態になりま したか Q51 何回くらい、静かで落ち着いた、平和な気分になりましたか
気分
Q52 何回くらい、物事を楽しくやれましたか
Q53 何回くらい、沈滞した、憂欝な気分になりましたか
Q54 何一つ思うようにうまくいかない、と感ずることが何回くらいありましたか
Q55 あなたが死んでくれたほうがましだ、と人から思われていると感ずることが何回くらいありましたか
Q56 何一つ楽しいにとがない、 と気持ちが沈み、ふさぎ込むことが何回くらいありましたか
満足度、起因度、改善優先度
Q57 QOL12項目それぞれでの、あなた自身の身体的・精神的機能に、どの程度満足していましたか
Q58 QOL12項目それぞれの問題のうち、どこまでがリウマチが原因になっているとお考えですか
Q59 QOL12項目中、今あなたが最もよくなって欲しいと希望する項目を3つあげて下さい
尺度
Q1-20/29-33/39-47:毎日、ほとんど毎日、何日か、たまに、1日もない
Q21-28/34-37/48-57:いつも、たびたび、時々、ほとんどない、ない
Q38:激烈、中くらい、軽い、非常に軽い、まったくない
Q58:非常に満足している、ある程度満足している、 満足でも不満足でもない、 少々不満足、まったく不満足
Q59:まったく他のことが原因だ、ほとんど他のことが原因だ、病気と他の原因が半々、大部分は病気が原因だ、全部病気が原因だ
*重症度、障害度が高いほど、満足度が低いほど得点が大きくなるように、1-4、1-5の点数となります。
前途したように、それぞれの指標の平均値をとることで、身体機能面、社会生活面、症状面、職業面、精神・気分面のQOLを把握できます。
リハビリテーションアプローチにより、QOLがどのように変化したかを捉えていきます。そのためにも、リハビリテーション開始前に評価を行っておくことが大切です。
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HAQ(Health Assessment Questionnaire)は、慢性関節リウマチ患者のQOL評価として開発されました。
アンケートにより対象者自体が行います。
内容は社会的、精神的、経済的要素ではなく、主に身体的な機能障害を反映しています。
HAQは5つのカテゴリーに関する20項目の質問からなり、それぞれについて「簡単にひとりでできる」「何とかひとりでできる」「人に手伝ってもらえばできる」「全くできない」の4段階で回答し、ADlの障害度からQOLを評価します。
回答の結果から、機能障害の程度を表わす機能障害指数(Functional Disability Index; HAQ-DI)を算出します。
RA患者における成績から、HAQ-DIは再現性が高く、従来から用いられている重症度や疾患活動性を表す指標とよく相関することが明らかにされています。
そのため、HAQ-DIは単にQOLの指標としてだけではなく、疾患活動性の評価や治療効果の判定に広く用いられています。
各項目に対する回答は、
簡単にひとりでできる:0点
何とかひとりでできる:1点
人に手伝ってもらえばできる:2点
全くできない:3点
となります。
評価項目
着衣と身繕い
1. 服を着たり、ボタンをする
2. 髪を洗う起立
3. 肘掛けのない椅子から立ち上げる
4. 寝床に入ったり、寝床から起きあがる食事
5. 箸で食べ物をつかむ
6. 飲み物のいっぱい入ったコップを口までもっていく
7. 缶ジュースのふたをあける歩行
8. 平地を 3 分間位、自分のペースで歩く
9. 階段を 5 段のぼる衛生
10. 入浴時に全身を洗い、タオルでふく
11. 浴槽にはいる
12. 洋式便座に座り、立ち上がる動作
13. 棚の上の 2kg 程度の物に手を伸ばして、 降ろす
14. 前かがみになって、床の上の物を拾いあげる握力
15. 自動車のドアをあける
16. ガラスびんのふたを回してあける
17. 水道の蛇口の開け閉めその他
18. 近所の商店街に買い物へ行く
19. 自動車の乗り降り
20. 洗濯や掃除などの家事をする
*各カテゴリーにおいて、最高値となるものを指数とします。例えば、「着衣と身繕い」のカテゴリーで、1. 服を着たり、ボタンをするが1点、2. 髪を洗うが2点の場合、そのカテゴリーの指数は2点となります。
各カテゴリーの指数を合計し、それらの平均値をHAQ-DIとします。
平均値が高いほど、機能障害も重度でQOLも低下している可能性が高くなります。
リハビリテーションなどの治療により、経時的な変化をとらえていきます。
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