パーキンソン病では、振戦、固縮、寡動・無動、などの影響により、ADLや上肢機能の低下を招くことがあります。今回、パーキンソン病の上肢機能障害とリハビリテーションの視点について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 パーキンソン病の上肢機能障害とリハビリテーションの視点

参考文献

中島 雪彦ら「パーキンソン病に対する上肢機能へのアプローチ」OTジャーナル Vol.43 No.9 2009年8月

振戦と上肢機能

4〜7Hzの規則的なもので、安静時振戦が特徴的です。
一定姿勢の保持で出現する姿勢時振戦や動作時に起こる動作時振戦もあります。
動作時に消失する場合、ADLへの影響は少ないですが、姿勢・動作時振戦はADLへの影響があります。

 

固縮と上肢機能

固縮は筋の伸張反射の持続的な亢進状態をさします。
他動関節運動で筋の抵抗があり(鉛管現象)、運動開始から終了まで同じような抵抗を示します。
固縮の亢進では上肢のすばやい反復運動や巧緻動作が困難になります。

寡動・無動と上肢機能

寡動は運動の緩慢さや動作開始の遅延です。
無動は運動の開始困難です。
臨床場面では、運動開始反応時間の遅れ、運動遂行時間の遅れ、反復運動による疲労などが観察されます。
書字では小字症がみられ、文末に行くほど字が小さくなります。
すくみ現象は上肢でもみられ、四つ這い移動で腕を前に出せない、出せても途中で止まってしまうことがあります。
すくみ現象は大脳基底核と補足運動野との相互作用による運動制御の障害が考えられています。
歩行では腕振りの減少、下肢と上肢のリズムが合わないことがあります。
車椅子駆動ではハンドリム操作が小刻みになることもあります。

ジスキネジアと上肢機能

L-ドーパの長期服用による非律動性(規則正しくない)の不随意運動です。
四肢や体幹に起こり、上肢機能に影響があります。

wearing-off現象と上肢機能

L-ドーパの長期服用で薬効時間が次第に短くなり、頻回にoff状態になります。
off状態では次第に動きが止まっていったり、動作中に突然動きが止まる場合もあります。

パーキンソン姿勢と上肢機能

立位での前傾前屈姿勢がみられます。
直立姿勢の保持が困難になり、上肢挙上におけるリーチ範囲が制限されます。

姿勢反射障害と上肢機能

パーキンソン病では、外乱など刺激などで立ち直り反射や平行反応が起きずに転倒する危険性があります。
上肢の保護伸展反応の反応速度は保たれていますが、伸展の速度減弱により支えることが難しくなります。

上肢機能の陥りやすい反応

パーキンソン病患者では、健常者と比較して移動時間と反応時間が有意に遅延しているとの報告があります。
また、刺激の変化に対する上肢の運動修正に時間がかかるとの報告があります。

固縮とリハビリテーションの視点

上肢の固縮は、寡動などの症状とともに関節拘縮を引き起こす可能性があります。
前腕回内外や手関節、手指の固縮はゆっくりとした関節可動域訓練を行い、維持していけるようにします。

すくみ現象とリハビリテーションの視点

四つ這い時の上肢すくみ現象では、視覚刺激、聴覚刺激、言語指示などの手がかりを用います。
歩行時の腕振りの減少には聴覚刺激が有効になる可能性があります。
車椅子駆動では、駆動時に体幹の動きを利用しながら、ハンドリムの最上部を握るようにさせます。
また、ハンドリムに視覚刺激となる目印のテープを巻くなどの方法もあります。

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食事動作とリハビリテーションの視点

食事動作では、パーキンソン病患者では健常者に比べて手の握りの径が小さく、柄の握りに多くの指が関与しているとの報告があります。
そのため、パーキンソン病患者では、スプーンの柄は小さい方が手関節など協調性が促されやすいと考えられます。
食事は比較的自立度の高い動作とされています。
前腕回内外や手関節掌背屈が重要となるため、関節可動域の維持に努めます。
体幹前屈姿勢は先行期に影響を及ぼすことがあるため、良姿勢を保持できる環境設定も重要です。

小字症とリハビリテーションの視点

薬物コントロールをしていないパーキンソン病患者の、閉眼時と開眼時の書字を比較した実験があります。
結果は、閉眼時の分の長さが開眼時に比べて有意に長かったとの報告となっています。
これは、単に運動状態の低下ではなく、歩行のような高次に学習される運動課題の障害に関係しているのではないかとの考えがあります。
また、視覚的手がかりが即時効果があることが示されています。
具体的には、平行線の間に字を書くことで、改善がみられます。
小字症は、パーキンソン患者では直前や直後の運筆を視覚的手がかりとして次の運筆を進めるため、徐々に字が小さくなるのではないかと考えられています。
描画では小字症の影響は出ないことも特徴です。

更衣動作とリハビリテーションの視点

更衣動作では肩関節可動域と手指巧緻動作が問題となります。
衣服の選択に注意し、上下肢を通しやすいもの、伸縮性のあるもの、ボタンが大きめのもの、衣服の改良、滑りやすい素材などにします。
更衣時間をonの時間に合わせることも必要になります。

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