映画「潜水服は蝶の夢を見る」を見ました。たまたまアマゾンプライムビデオのサイトを閲覧している時で、映画の説明文の中に”閉じ込め症候群”というキーワードがあったのがきっかけです。今回、閉じ込め症候群について調べたことをまとめていこうと思います。
目次
閉じ込め症候群は、Plum and Posnerが提唱した名称で、意識が保たれ開眼していて外界を認識できるが、完全四肢麻痺と球麻痺のため、手足の動きや発話での意思表出能が失われた状態を指す。
患者は寝たきりで四肢は全く動かせず、緘黙状態を呈する。
多くは橋底部の両側性の梗塞で生じるが、その他に、中脳腹側の両側性梗塞、橋の腫瘍、橋出血も原因となる。
この場合、随意運動として残るのは垂直眼球運動と瞬目のみである。
英語では、ロックト・インシンドロームと呼ばれています。
意識はあり、認知機能も保たれていますが、コミュニケーションが取れないために相当のストレスがかかることが予想できます。
ジャン=ドミニクは「ELLE」誌の編集長として、幸せで華やかな人生を送っていた。ところがある日、脳梗塞で倒れ、「ロックト・インシンドローム(閉じ込め症候群)」になってしまう。身体的自由を奪われ、唯一動くのは、左目だけ。そんな彼に、言語療法士アンリエットは、瞬きでコミュニケーションをとる方法を考え出す。ある日彼は、瞬きのみで自伝を綴り始める
この映画では言語聴覚士と理学療法士が出てきます。
作業療法士は残念ながら出てきません。
言語聴覚士は、コミュニケーション方法として、まずはクローズドな質問の中で、「YES」が瞬き1回、「NO」が瞬き2回としました。
伝えたい言葉に対しては、単語を構成する頻度の高いアルファベッドを順番に読み上げていき、伝えたい文字になれば瞬きをして、単語を作っていきます。
初めは文字の読み上げ速度が速すぎる、遅すぎるなどの問題で上手くいきませんが、次第に伝達スピードが上がっていきます。
実に気が遠くなるようなアプローチですが、対象者の能力を適切に捉えたアプローチだと感じました。
主人公の意思、支援する人の粘り強い根気、周囲の人の理解がないと成立しないコミュニケーション方法です。
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主人公は「自分には想像力の豊かさと確かな記憶力がある」と自分の強みを認識し、自伝を綴ることを決意します。
出版社から、主人公とコミュニケーションをとる人との協力で、書き上げていくのですが、なんと20万回に及ぶ瞬きにより完成しているそうです。
実際に出版されている本です。
四肢麻痺がありながらも、想像力・記憶力という強みや、周囲の人の協力を受けながらのコミュニケーション方法の確立により、社会的に参加していくという意味で、本当にすごい事だと思います。
主人公の強い意思と、リハビリテーション職種の知恵と知識、想像力も噛み合った、とても良いアプローチだなと感じました。
もちろん、これに至るまでの心理描写もあり、混乱や怒り、拒否などの経過を経ながら障害受容へと至っています。
ぜひ一度見ていただきたい映画です。
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