リハビリテーション場面で、私はスタンディングテーブルを使用することがしばしばあります。スタンディングテーブルは、現在(昔から?)では健常者においても使用されており、今回はその効果と使用方法についてまとめていきたいと思います。
目次
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スタンディングテーブルとは、下図のようなものです。
出典:http://ogw-online.jp/products/category.php?category_id=150
このタイプは高さ調節が可能で、またテーブルの角度も変化させることができます。
スタンディングテーブルは、基本的には腰ベルトや膝ベルトにより立位を安定させることで、立位バランスが不良な方においても立位時間を延長させることが可能です。
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リハビリテーションにおいて、スタンディングテーブルを使用する主な目的としては、
・立位保持時間の延長
・立位バランスの安定
・不良姿勢の改善
・(角度のついた足底板を置くことで)下腿三頭筋の伸張
・活動性の確保
・立位保持しながらの上肢課題
などが考えられます。
また、健常者においても、スタンディングテーブルは用いられています。
そして、健常者においては職場等で高さを調節しながら仕事をするようなスタイルも最近は増えてきているようです。
その効果としては、
・腰痛予防(長時間の座位は筋肉を固くする)
・脳への血流の増加による覚醒度の改善→業務効率up
などがあります。
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スタンディングテーブルは、立位バランスが不良の方でも、腰や膝のベルトにより立位を安定させることが可能です。
立位をとるということは座位よりも抗重力伸展活動がさらに要求される課題でもあります。
廃用症候群の方では、全体的に日中の活動性が低くなっており、そのため筋萎縮や筋力低下、また呼吸循環機能の低下が生じていると考えられます。
そのような方に、スタンエィングテーブルを用いることで少しでも活動性の維持を図り、廃用症候群の改善や予防を目的にすることがあります。
不良姿勢の原因にも様々なものがありますが、スタンディングテーブルを用いることで、その改善に役立てることができます。
例えば円背や、股関節屈曲に伴い体感前傾傾向のある方(股関節伸展が出現しにくい)では、通常の立位場面ではなかなかアライメントを自己にて修正しにくいことをしばしば経験します。
そのような場合に、スタンディングテーブルを用いて、安定した中で立位をとってもらうことで、自分が修正すべき関節運動がわかりやすくなったり、安定性が得られていることでその運動を促しやすくなることがあります。
また作業療法場面では、円背の方に対して、スタンディングテーブルで立位をとり、天井方向に伸びた棒にブロックを挿すような課題を通して、体幹筋の抗重力伸展活動を促していくことがあります。
立位バランスの改善を考える際に、重要になるのが動的立位バランスになります。
日常生活の中では、私たちは常に動きながら目的的な活動を遂行しており、そのため動的立位バランスの改善を向上させていくことは非常に大切な要素となります。
立位バランスが不安定な場合に、スタンディングテーブルを背にすることで、後方へのバランスの崩れを予防しながら訓練が行えるというメリットがあります。
対象者はバランスの不安定さから転倒への恐怖感を持つ場合があります。
スタンディングテーブルに、身体部分が接していることで、安定感を感じ、バランス訓練に必要な身体運動、感覚入力が行いやすくなることが考えられます。
バランスについては以下の記事も参照してください。
バランス能力とタンデム肢位!タンデム肢位に必要な姿勢制御やできない原因!
脳卒中片麻痺と立位バランス!非麻痺側(健側)下肢荷重と姿勢アライメントについて!
脳卒中片麻痺者とトイレ動作!ズボン操作時にバランスが保てない原因を考える!
バランス評価の概要と評価方法、結果の解釈、リハビリ方法!
立位をとりながら上肢で活動をするということは、日常生活ではトイレで立ちながらズボンを下ろすというような活動につながります。
バランスが不安定な対象者は、立位をとると上肢は力が入りスムーズな動きとならなかったり、バランス保持のために上肢を使用してしまったりと、目的ある活動につなげていくことが困難になることがあります。
そのような場合、スタンディングテーブルを用いて立位が安定した中で上肢活動を行うことで、バランス保持+上肢課題の前段階の訓練として難易度を下げることができます。
バランスの不安定さに恐怖・不安感を覚える方にとっては、このように難易度を下げることで、後々のレベルアップした課題を導入しやすくなることが考えられます。
立位を保持しながら、認知課題を行うことは、二重課題(デュアルタスク)になります。
認知症者へのアプローチとして、例えばスタンディングテーブルで立位をとりながらパズルを行ってもらうなどすることで、認知機能の維持、向上も目的にアプローチするようなことも考えられます。
立位をとりながら、折り紙で作品を作る、迷路を解く、セラピストとしりとりをする100から順に7を引いてもらうなど、認知課題のバリエーションには様々なものがあります。
認知機能については以下の記事を参照してください。
認知症の評価スケールとアプローチ!対象者に合ったバッテリーを用いた効果測定に向けて!
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脳科学的に、立位をとることはどのような意味を持つのかを考えていきます。
まず、意識レベルについてです。
意識レベルに関与するものとして、”上行性網様体賦活系”があります。
”上行性網様体賦活系”は、中脳から延髄において、脳幹網様体の興奮を視床亜核を中継し、大脳皮質に広く投射することで、意識の保持に関与すると考えられています。
意識障害は大脳皮質の広範な障害による活動低下や、脳幹網様体の障害によって生じるされています。
立位などの抗重力位をとることは、このような障害に対するアプローチとして推奨されています。
そのため、スタンディングテーブルを用いることで立位保持が安定する対象者では、立位をとることでこれらの活動性が向上することが期待できます。
意識レベルは、全ての高次脳機能の出発点でもあるため、意識レベルの改善に、スタンディングテーブルを用いてのアプローチは有効になることが期待できます。
意識については以下の記事を参照してください。
せん妄リスクに対する予防、せん妄改善のための評価とアプローチ方法!
意識障害とリハビリテーション!覚醒を上げるために必要なこと!
意識障害(せん妄含む)のメカニズムと評価方法、リハビリテーションアプローチ!
筋緊張には、錐体路が関係するα運動ニューロンと、錐体外路が関係するγ運動ニューロンが重要な意味をもちます。
なかでも、筋活動の持続に関与するα-γ連関が重要です。
脳卒中片麻痺の方において、例えば抗重力活動として肘伸展運動を要求した際に、持続力がなくすぐ肘が屈曲するような方を多く経験します。
これには、錐体外路に関するγ運動ニューロンの活動が乏しく、筋活動を持続することができないことが原因として挙げられます。
そのため、筋活動を持続して発揮させるためには、γ運動ニューロンを賦活させることが重要になります。
γ運動ニューロンは、錐体外路系の神経細胞であり、これには毛様体脊髄路が関与します。
毛様体脊髄路の回路がスイッチonとなるには、抗重力位をとることが必要とされています。
そのため、筋緊張を改善(γ系を賦活)させたい場合には、ベッドギャッジアップや端座位、立位など抗重力位をとることが重要です。
スタンディングテーブルを用い、立位をとりながら上肢活動を行うことで、γ系がより賦活することを期待しながら筋緊張改善のアプローチを行うことが可能になると考えられます。
筋緊張については以下の記事を参照してください。
筋緊張に関わるγ運動ニューロンの特徴から考える筋緊張の高め方(適切な筋緊張に調整できるか)
脳卒中片麻痺者と排泄動作!ズボン上げ下ろしをするための姿勢筋緊張コントロールに必要なこと!
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