手首の親指側が痛いときに考えられるのが、ドケルバン(de Quervain)病です。ドケルバン病の基本は、装具を用いて安静を保つことにあるのですが、炎症が治まってきたらストレッチを行うことで、症状の改善を図るようにすることが大切になります。今回、ドケルバン病(腱鞘炎)に対するリハビリ、ストレッチについてまとめていきたいと思います。
目次
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私たちの指には、筋肉と骨を結びつける「腱」というものがあります。
この腱の働きによって、筋肉の収縮が腱を伝わり、関節運動を起こしているのです。
また腱は「腱鞘」と呼ばれる、滑液を含んだ袋に包まれています。
腱鞘は、指についている腱が浮き上がらないように押さえる働きがあります。
この腱鞘は手首の親指側にもついているのですが、その部分に摩擦によるストレスが加わることで「腱鞘炎」の状態になっているものをドケルバン(de Quervain)病と言います。
ドケルバン病の症状について、
腱鞘は指だけでなく手首の親指側にもあり、ここで起こる腱鞘炎を「ドケルバン病」といいます。
ドケルバン病の症状は、手首の「痛み」や「腫れ」です。特に親指を広げたり、反らしたり、動かしたりすると、強い痛みがでるのが特徴です。
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_289.html
とあります。
ドケルバン病を含めた腱鞘炎の治療の基本は、
・安静
・薬物療法
・手術
と言われています。
しかしながら、腱鞘炎になった理由を確かめていくことで、これ以上悪くならないように、また、改善できるようにアプローチしていくことも考えていくことが大切になります。
今回、ドケルバン病に対するリハビリテーションについて、「自分でできる」ことをを中心に考えていきたいと思います。
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ドケルバン病は、前途した通り腱鞘に炎症が起こる、いわゆる腱鞘炎の状態です。
ドケルバン病に関わる腱鞘は、長母指外転筋と、短母指伸筋にあります。
長母指外転筋は、CM関節と言われる部分において、親指を橈側外転、掌側外転します。
短母指伸筋は、CM関節と言われる部分において、親指を橈側外転します
そして、これらの腱は同じ場所を通ります。
各筋肉の特徴を理解すると、痛みの原因が考えやすくなります。
これらの筋肉は、手首の親指側を通ります。
そのため、この位置にある筋肉は、尺屈や母指の握り込みで伸ばされるため、この部分にはストレスが加わることになります。
ドライバーや電動工具、編み物、パソコンのキーボード操作、グリップを伴うスポーツ(テニス、ゴルフ)のような母指の「握り」を伴う動作では、これらの筋は常に摩擦・伸張ストレスを受けているといえる。
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ドケルバン病は、前途した筋肉を伸張する肢位をとることで確認することが可能です。
長母指外転筋と短母指伸筋を同時に伸ばしていくことで、手首の親指側の腱鞘部分にストレスが加わります。
親指を握りこみ、小指側に手首を横に倒します。
この時に痛みが生じると、ドケルバン病の疑いがあります。
診断は医師が下すものなので、上記確認法で疑いがある場合は医師の診察を受けてください。
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先ほど、ドケルバン病が起こる可能性の高い動作を述べました。
ここで、ドケルバン病が起こりやすい方の特徴を考えていきます。
パソコン操作もそうですが、前腕(肘から手首まで)や親指の筋肉を頻繁に使用する方においては、前腕部の筋肉が過緊張状態になり、その結果筋肉の伸びやすさが低下(伸張性低下)します。
この状態では、前腕を回す動作(回内:手首を下に向ける動作、回外:手首を上に向ける動作)が制限されることがあります。
このような前腕を回す動作が制限されると、他の部位でそれを代償するように動かすことになります。
その動きが、下図のような手首を横に倒す(橈屈、尺屈)運動や、親指を内側に入れる運動で補おうとします。
この動きは、前途したように腱鞘部分にストレスをかける動きにつながってしまいます。
前途した長母指外転筋は、手首を親指側に倒す動き(橈屈)にも作用する筋肉です。
この筋肉が筋力低下を起こすと、手首を小指側に倒す動き(尺屈)に対してブレーキをかけることができないため、手首の親指側の腱鞘部分が伸ばされすぎてしまい、ストレスがかかりすぎる状態になることが考えられます。
そのため、長母指外転筋の筋力をUPさせる必要があります。
親指を内側に動かす筋肉(母指内転筋)が短くなると、前途した長母指外転筋は力を発揮しずらくなります。
また、ドケルバン病の原因筋である短母指伸筋は、長母指外転筋と同様に手首を小指側に倒す動き(尺屈)に対してブレーキをかける働きを持つ筋肉です。
そのため、母指内転筋が短くなると長母指外転筋や短母指伸筋にはストレスがかかりやすい状況が生まれていまします。
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ドケルバン病は、炎症がある時期にはリハビリテーションは行えません。
まず選択されるのは安静です。
安静により炎症が落ち着いてからは、前途したストレスをかける部分に対しての処置を行っていきます。
サポーターは、親指の動きをできるだけ少なくできるようなものを選ぶ必要があります。
私が知っているものとして、以下のものがあるので紹介していきます。
このサポーターは、装着したまま水仕事ができることがポイントです。
整形外科医が開発しているという点も、信頼できるポイントです。
このような方は、前腕を回す動き(回内外)に制限がみられる方です。
この動きを制限している筋肉はいくつかあるのですが、今回は前腕の筋肉を全体的にストレッチできる方法を紹介します。
手のひら側の前腕筋群のストレッチと手の甲側の前腕筋群のストレッチを行います。
親指の筋肉の力が不足している場合、以下のようにトレーニングを行います。
親指の先端の関節を曲げたまま、付け根の関節に抵抗をかけ、親指を外に開く運動を行います。
母指内転筋をストレッチするには、以下のように行います。
右の母指内転筋の場合
①右の親指を内転(人差し指の付け根に対して親指を押しつける)させます。
②母指内転筋に押さえ、手の中心側に引き寄せ保持します。
③右の親指を外転(外に開く)させます。
ドケルバン病の痛みを改善させ、また親指の動きをスムーズにさせるには、長母指外転筋と短母指伸筋のストレッチを行うことも重要です。
くれぐれも、痛みには注意して行ってください。
長母指外転筋のストレッチ
開始肢位:肘を曲げる、前腕を内側に回す(回内)、手首を小指側に倒す(尺屈)
ストレッチ肢位:母指の付け根を内側曲げストレッチしていく
短母指伸筋のストレッチ
開始肢位:前腕を内外の真ん中の位置、手首を小指側に倒す(尺屈)、親指を人差し指の前に(対立位)
ストレッチ肢位:親指を曲げていく