COPDの治療においては、薬物、運動、栄養など、包括的なアプローチによりADLなどの活動を改善していく事が基本戦略になります。今回、COPDと食事、栄養についての知識をまとめていきたいと思います。

COPDと食事、栄養!リハビリテーションで知っておきたい事!

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COPDと栄養障害

COPDの対象者は、栄養障害に陥りやすい事が知られています。
栄養障害により体重が減少すると、呼吸不全が進み、死亡リスクが高まるとの報告もあります。
COPDと低体重をみていく場合、標準体重を参考にすることがあります。
標準体重とは、(現在の体重/BMI22に相当する標準体重)×100で示される指標(%IBW)です。
80%以上90%未満が軽度(体脂肪主体の減少)、70%以上80%未満が中等度、70%未満が高度の低体重になります。
肺気腫病変優位のCOPDの方では、その約7割程度が標準体重の90%未満であるとの報告があります。
また、末梢気道病変優位のCOPDの方では、4割程度で標準体重の80%未満であるとの報告があります。
80%を切ると、筋タンパク量の減少が始まることから、栄養障害に対するアプローチが非常に重要になります。
栄養障害の原因として、
・タンパク質・エネルギー栄養の不足
・代謝の亢進
・摂取エネルギー量の低下
が挙げられます。

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エネルギー消費量の増加とエネルギー摂取量の減少

COPDの方では、栄養障害の主な原因として、代謝亢進(エネルギー消費量の増加)とエネルギー摂取量の減少が挙げられます。

呼吸筋によるエネルギー消費量の増加

COPDでは、呼吸筋のエネルギー消費量が増えてしまいます。

呼吸に伴うエネルギー消費量が大きくなってしまう原因としては、気流制限や肺の過膨張によりそれを補おうと呼吸筋の過活動がみられるためです。

健康な方では、呼吸におけるエネルギー消費量は1日あたり36〜72kcalと言われていますが、COPDではその約10倍である430〜720kcalであるとされています。

また、安静時エネルギー消費量は予測値の120〜140%にもなるとの報告もあります。

なお、安静時エネルギー消費量(REE)は、

REE=(3.941×VO2(ml/分) +1.106×VCO2(ml/分))×1.44

で求められます。呼気ガス分析によって実測した酸素消費量(VO2)と二酸化炭素排出量(VCO2)の数値を当てはめます。

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炎症による代謝亢進

COPDは全身性の炎症性疾患でもあり、そのことが代謝亢進状態をつくり、エネルギー消費量を増大させます。

COPDの方は、血中の炎症性サイトカインが増加していることが知られています。

これは代謝の亢進につながります。

代謝の亢進は、異化の亢進を増大させます。

酸素消費量の増大,糖新生増大と耐糖能の低下,脂肪分解促進と遊離脂肪酸の増加,蛋白分解の亢進といった異化亢進状態となる。

http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/1027.htm

異化については異化の記事も参照してください。
THEタンパク質!筋トレに必要なタンパク質の知識、摂取と効果!

腹部膨満によるエネルギー摂取量の低下

COPDの方では、肺過膨張により横隔膜が腹部臓器を押し下げ腹満を感じやすいことがエネルギー摂取量の低下の要因の一つとして挙げられています。

また肺気腫病変優位型の方では、腹部膨満により平坦化した横隔膜の運動が更に制限され、呼吸困難が強くなります。

食事中に呼吸困難が強くなると、食事に対する意欲も失われますので、ますます食事摂取が行いにくくなることにもつながります。

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嚥下や咀嚼に伴う呼吸困難感の増強による摂取エネルギーの低下

COPDの方では、食事中の咀嚼や嚥下に伴い呼吸リズムが乱れ、食事の動脈血酸素飽和度(SpO2)が低下することがしられています。

ちなみに、食事中は安静時に比べてSpO2は2〜3%低下すると言われています。

食事動作により呼吸困難感が増強し、摂取エネルギーが低下する

食事動作は、上肢を空間内で繰り返し使用する動作です。

呼吸困難を増強させる上肢の動きとして、まさに繰り返し動作が挙げられており、食事動作は呼吸困難感を増強させやすいといえます。

動作の繰り返しにより呼吸困難感が強まると、食事摂取が行いやすくなります。

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COPDにおける栄養評価の注意点

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血液データの見方に注意する

COPDの方の栄養評価では、注意しておきたいことがあります。

体重、脂肪、筋肉量の減少がみられていくのですが、血液データとしてアルブミン値の変化に乏しいという特徴があります。

そのため、血液データを見るだけではその病態を捉えるには不十分であることがわかります。

栄養障害がかなり進行してくると、血液データの値としても変化が現れてきます。

COPDの方で一番わかりやすい栄養障害の指標は、やはり体重です。

体重減少を主な指標としながら、対象者の主観的な食欲や客観的なADL観察による動作の状態などを把握しながら、栄養障害が影響を与えていないかを判断していきます。

なぜ血液データに反映されにくいか

COPDの方の栄養状態が血液データに現れにくい理由としては、栄養障害の進行がマラスムス型栄養障害に当てはまるためです。

マラスムス型栄養障害は、主としてエネルギー・タンパク質欠乏で起こる栄養障害です。

摂取エネルギーの不足が長期間にわたると、エネルギーを作り出すためにタンパク質を分解し、タンパク質栄養障害に陥ります。

対比として、クワシオルコル型栄養障害があります。

クワシオルコル型栄養障害は、タンパク質の欠乏障害で起こる栄養障害です。

COPDにおいて急性増悪がみられるときにはクワシオルコル型が当てはまることがあるとされています。

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栄養障害の指標は?

データを見る際には、以下の指標が栄養障害の有無をみていく場合に参考になります。

・窒素出納(N-Balance):負の値が1週間以上継続
・%標準体重:80%以下
・アルブミン:3.0g/dl以下
・トランスフェリン:200mg/dl以下
・総リンパ球数:1,000/μl以下
ツベルクリン(PPD)皮内反応:直径5mm以下

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呼吸困難感を引き起こさないための食事の工夫

まずは、息切れによる呼吸困難感に対しての工夫です。

食事の前から疲労感があると、食事動作の遂行において呼吸困難が増強してしまう可能性があります。

そのため、食事前には十分な休息をとる必要があります。

食事前のリハビリテーションは、症例によっては控えておいた方がよいこともあります。

食事前に排痰を促したり、食事中にも口すぼめ呼吸を取り入れることも有効です。

口すぼめ呼吸では、口をすぼめてゆっくり息を吐くことで 圧を高めて、空気の通り道(気道)を奥の細いところまで開いた状態に保ち、空気の出入り(換気) を し やすくし ます。これによって「はき残し」を減らすことができます。
1、2で吸って、お腹を膨らまし、3、4、5、6で口笛を吹くように口をすぼめながら吐きます。

他にも食事における工夫としては、

・机に肘をついて動作を行い、腕の運動を少なくする
・1口量の調整をする
・1回の食事量を少なく、回数を多くする

などがあります。

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エネルギー摂取量を確保するための食事の工夫

エネルギー摂取量を確保するためには、満腹感を覚えやすいことに対する対処が必要です。

息切れが増強すると、空気嚥下になります。

空気嚥下は空気を大量に飲み込んでしまうことによって、げっぷやおならがたくさん出たり、腹部膨満感を覚えてしまうので、食事量が減少してしまいます。

便秘も腹部膨満感を高めてしまいますので、適切な活動量の確保や食物繊維が多く含まれている食材をとる、薬剤によるコントロールなどを行いながら調整します。

歯の噛み合わせなどの歯科口腔の問題も食欲低下などにつながることがあるため、口腔内の状態も確認することが大切になります。

COPDの方は高エネルギー、高タンパクな食材による食事摂取が必要になります。

まずは対象者自身、または家族に対して、エネルギー消費量が健常者に比べて大きいこと、エネルギー摂取量が低下しやすいことなど、知識面での指導も必要になります。

その上で、体重減少があまり目立っていないときから、栄養に対するアプローチを行っていくことが大切になります。

間食も行いながら、洋菓子、アイスクリーム、チーズ、ピーナッツバターなどの高カロリーなものを摂取することも推奨されています。

脂質は炭水化物、タンパク質に比べて高カロリー食なので、積極的に摂取することが求められます。

脂質優位の栄養補給は腹部膨満につながりにくいだけではなく、呼吸換気系への負担も軽くなる。

脂質の呼吸商が0.7なのに対し、 蛋白質は0.8、炭水化物は1.0と、脂質が最も有利なのである。

http://www.kkr-ta-hp.gr.jp/information/nmedical/pdf/care03.pdf

なお、呼吸商というのは、以下のような意味があります。

ある時間において生体内で栄養素が分解されてエネルギーに変換するまでの酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の体積比のことである。

Wikipedia

COPDの方では、二酸化炭素が蓄積されやすいので、呼吸商が低いので、脂質の方が理にかなっているということになります。

経口摂取をしていても、摂取エネルギーが追いつかない場合、経腸栄養での胃瘻造設も行われることがあります。

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栄養状態に合わせた運動が必要

BMIが22以上ある場合、体重減少の進行がなければ運動療法を行い、体重減少の進行があれば運動療法に加えて、標準体重を目標に栄養指導を行います。

BMIが19以上22未満の場合、体重減少の進行がなければ高負荷も含めた運動療法と、体重維持を目標とした運動療法を行います。
また、体重減少の進行がある場合、体重増加を目標とした栄養指導と、低負荷での運動療法を行います。
BMIが19未満の場合、体重減少の進行がなければ高負荷を含めた運動療法を行い、体重維持を目標とした栄養指導を行います。
また、体重減少の進行があれば栄養療法を行い、補助栄養食品の利用も考え、運動療法は低負荷で行います。

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