アルコール依存症において、禁酒と断酒の違いについて文献を参考にまとめることにします。アルコール依存症の回復段階を考えたときに、こういった言葉の違いを知識としてもっておくこと、説明できることが大切だと感じたためです。
目次
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アルコール依存症においてはやめることが目標になります。
「禁酒」はその言葉の通りになりますが、自分自身に禁じることです。
「禁酒」は以下のような事を指します。
一定期間(数日から、 検診や願掛けなど目的のための期間まで、あるいは当面というあいまいな期間まで) 自分自身に禁じることを指します。行為という よりも、禁止を自ら課すという心理的な命令とそれに従おうとする行動です。
対人援助職のためのアディクションアプローチ P231
アルコール依存症の方は飲むのをやめたいという心理の葛藤がある病気で、たいていの依存症の方は病院などに通院する前から自分なりの節酒に対する願望を持っています。 そして何かしらの行動により禁酒を試みています。それが継続した行動につながらなかったりすると、 「やっぱりやめられない」というような自分自身をコントロールすることへの喪失感が高まります。また周囲も本人の意思の弱さや性格上の問題と見るなど、周囲の対応も含めて自己不全感が高まり、再度アルコールに手をつけるという悪循環がみられます。
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断酒とは、やめて生きる決意と責任であり、行動については以下のようなことを指します。
臨床上の「断酒」は、自己コントロールができないことを認め、 心理教育を受けて、それが意志や性格の問題ではなく疾患であることを 学び、飲んできたことでどのようなことを失い、周囲を傷つけてきたかを振り返り、やめて生きる決意と責任をもって行動に移すことをいいます。
対人援助職のためのアディクションアプローチ P231
そのための具体的な行動としては、自助グループへの参加になります。
断酒生活は、飲酒社会の日本では少数派であり、だからこそ一人で断酒を継続していくことは大変で難しいことを知り、断酒仲間とつながっていく必要があります。
断酒を始めていくと「自身の力ででなんとかできるんではないか」という思いが出てきますが、その間はステージの回復はありません。
依存行動への無力を語り続ける必要があり、そのためには、断酒仲間に素直な気持ちででいること、自身への鏡となる仲間の言葉を聞き、自分も同じように断酒を継続できていることを強く信じるようになる必要があります。
依存行動の修正の先には、それを継続するために行ってきた自分のなかの仕組み(認知の歪みや防衛のパターン)が対人関係や生活パターンの社会生活のなかで表出します。 この不快さが再発の引き金となることがありますが、自分で認めていき、パターンを手放していくことを目指す必要があります。
このような取り組みは、自分の頭の中で考えていてもなかなか実践できないものです。n仲間との中で自ら素直に語り、そのなかで気づき、自身が変われるように望むことがなにより大切になります。
自助グループは、ただ仲間同士で愚痴を言い合ったり、昔の思い出を語っているわけではなく、ナラティブ・行動療法的・認知の変容・など回復のための統合的なものになります。