透析患者においては、近年では透析中に運動を行うことも多くなるなど、一昔前の考え方とは違う考え方になってきています。今回、透析とリハビリテーションにおける運動と腎臓の関係性についてまとめて行きたいと思います。
目次
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透析患者においては、
・腎性貧血
・尿毒症性低栄養
・骨格筋減少・筋力低下
・骨格筋機能異常
・運動耐容量の低下
・易疲労感
・活動量減少
・QOL低下
などが生じます。
透析患者に対する運動(リハビリテーション)は、上記の事を改善することが近年わかってきました。
定期的な運動習慣のある透析患者は,非運動透析患者に比較して生命予後が明らかによいこと,
週あたりの運動回数が多いほど生命予後がよいこと,
定期的な運動習慣のある透析患者の割合が多い施設ほど,施設あたりの患者死亡率が低いことが明らかにされている.上月 正博「CKDにおけるリハビリテーション」日内会誌 105:1296~1302,2016
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透析患者の栄養状態は、生命予後や合併症併発率と関連し栄養状態不良の透析患者の予後が悪いことが指摘されています。
栄養不良では、易感染性により感染症発症や骨格筋の消耗により廃用症候群に繋がってしまいます。
透析患者に対する低栄養状態の呼称として、protein-energy wasting(PEW)があります。
protein-energywastingの診断基準としては、以下のようになっています。
下記四つのクライテリアのうち三つ該当すればPEWと診断する.
1.血液生化学(下記のうちどれか1項目)
・血清アルブミン<3.8g/dL
・血清トランスサイレチン<30mg/dL
・血清総コレステロール<100mg/dL
2.body mass(下記のうちどれか1項目)
・BMI<18.5kg/m2(ただし,欧米人では<23)
・非意図的体重減少
3カ月間に5%,6カ月間に10%以上
・体脂肪率<10%
3.筋肉量(下記のうちどれか1項目)
・筋肉消耗度2カ月間で5%,6カ月間で10%以上
・クレアチニン産生率2カ月間で5%,6カ月間で10%以上
・上腕筋囲面積
健常人の平均より10%以上低値
4.食事摂取量(下記のうちどれか1項目)
・非意図的低たんぱく質摂取
少なくても2カ月間0.8g/kg/day未満
・非意図的低エネルギー摂取
少なくても2カ月間25kcal/kg/day未満金澤 良枝他「透析患者におけるprotein-energywasting(PEW)の評価―第57回日本透析医学会シンポジウムより―」透析会誌461):101〜102,2013
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ACSM’s Guidelines for Exercise Testing and Prescription(9th Ed).2014.より
有酸素運動3~5日/週
レジスタンス運動:2~3日/週
中等度強度の有酸素運動
[すなわち酸素摂取予備能の40~60%,ボルグ指数(RPE)6~20点(15点法)の11~13点]
レジスタンス運動は1-RMの70~75%
有酸素運動:持続的な有酸素運動で20~60分/日,しかしこの時間が耐えられないのであれば,
3~5分間の間欠的運動曝露で計20~60分/日
レジスタンストレーニング:10~15回反復で1セット.
患者の耐容能と時間に応じて,何セット行ってもよい.
大筋群を動かすための8~10種類の異なる運動を選ぶ
柔軟体操:健常成人と同様の内容が勧められる
ウォーキング,サイクリング,水泳のような有酸素運動
レジスタンス運動のためには,マシーンあるいはフリーウエイトを使用する
・トレーニングを非透析日に行ってよいが,透析直後に行ってはならない
・トレーニングを透析中に行うのであれば,低血圧反応を避けるために,透析時間の前半に行う
・心拍数は運動強度の指標としての信頼性は低いので,RPEを重視する
・ 患者の動静脈シャントに直接体重をかけない限りは,動静脈接合部のある腕で運動を行ってよい.
・血圧測定は動静脈シャントのない側で行う
・ 持続的携帯型腹膜透析中の患者は,腹腔内に透析液があるうちに運動を試みるかもしれないが,
この結果が思わしくない場合には,患者は体液を除去することが勧められる
・拒絶の期間中は,運動の強度と時間は減少されるべきであるが,運動は継続して実施してよい
運動負荷が高まると筋肉に必要な酸素量が増加し、心臓は筋肉へ酸素を含んだ血液を送り出すために、さらに心拍数を増やすように働く必要があります。
この時の心肺能力を最大酸素摂取予備能(%VO2max)といいます。
%VO2max
6 30%
7 非常に楽
8 40%
9 かなり楽
10 50%
11 楽
12 60%
13 ややきつい
14 70%
15 きつい
16 80%
17 かなりきつい
18 90%
19 非常にきつい
20 100%
適切なフォームで1回だけ挙げることができる最大重量のことです。
1-RMの70~75%は10〜12回繰り返せる運動負荷となります。
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透析中の運動について、
透析中に運動を行うと蛋白同化が促進され,また,リンなどの老廃物の透析除去効率が高まり,1回の透析時間を4時間から5時間にしたのと同程度の効果があるとされる.
また,週3回の透析中に運動療法を行ってしまうことで,透析以外の時間帯に改めて長い運動時間を設定しなくてよい.上月 正博「CKDにおけるリハビリテーション」日内会誌 105:1296~1302,2016
とされています。
透析中の運動療法について下肢エルゴメーターが用いられています。
運動(リハビリテーション)により、透析効率が改善します。(血液透析によりどれだけの体液
またサルコペニア・フレイル・Protein-Energy Wasting(PEW)予防に有効はADLの維持や改善に役立ちます。
腎臓機能低下は心臓機能低下にも繋がりますが、運動(リハビリテーション)により心血管疾患の予防に役立ち、降圧薬・心不全治療費の減少も期待できます。