うつ病において、意欲の低下は症状のひとつとして重要であり、アパシーの概念も一部含まれていると考えることができます。今回、うつ病とアパシー(意欲障害)について、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
スポンサードサーチ
スポンサードサーチ
スポンサードサーチ
大うつ病の診断基準は、DSM-Ⅳによると、「抑うつ気分」もしくは「興味・喜びの減退」のいずれかを含み、9項目の症状(抑うつ気分、興味・喜びの著しい減退、体重減少あるいは体重増加、不眠または睡眠過多、精神運動性の焦燥または制止、易疲労性または気力の減退、無価値観または不適切な罪責感、思考力や集中力の減退または決断困難、自殺念慮・自殺企画)のうち5項目以上の抑うつ症状があることを基準としていて、これらが他覚的に認められることが必要条件です。
「抑うつ気分」もしくは「興味・喜びの減退」は必須症状で、「抑うつ気分」は普段であれば反応しない刺激に憂うつや悲しさが引き起こされる陽性症状で、「興味・喜びの減退」は普段であれば興味・喜びを感じていた刺激に反応しなくなる陰性症状です。
アパシーの概念に近いものは、「興味・喜びの減退」といえます。
「興味・喜びの減退」はこれまで楽しめていた作業や活動に対してモチベーションが失われている状態であり、これはアパシー(意欲低下)と考えることができます。
「易疲労性・気力の減退」「思考力や集中力の減退または決断困難」も一部アパシーの要素があると考えられます。
スポンサードサーチ
精神疾患の治療過程において、不安や焦燥感などは比較的早期に改善し、次に気分状態の改善がみられ、意欲低下などの症状が最後まで残りやすいと言われています。
このことから意欲の障害は治療に反応しづらいことを示しています。
精神科においてうつ病では、意欲の障害は基底的な症状であり、意欲障害だけを単独で捉えることが少ないといえます。
スポンサードサーチ
脳血管性うつ病は、脳卒中後にうつ病を発症するタイプと、うつ病患者でMRIにて脳梗塞が発見されるタイプに分かれます。
脳血管性うつの臨床症状として、
Krishnanらは精神症状を伴わないタイプであること、性欲低下、活動力低下が存在することを指摘し、Alexopoulosらは認知機能障害、無力感、流暢性、呼称、病識欠如の障害が強く、罪業感が少ないと述べている。
脳疾患によるアパシー(意欲障害)の臨床 P89
とあります。
脳血管性うつ病において、アパシー(意欲障害)はよく見られる症状のひとつとしてある程度の意見の一致はあるようです。
脳血管性うつ病の治療に対する反応や予後は脳血管障害を伴わない中年期のうつ病と比較して不良だと言われています。
アパシーの存在は、脳卒中後の機能回復に悪影響を及ぼすが、抑うつ気分は影響を与えなかったとの報告もあり、うつ病の治療においてはアパシーの存在に注意する必要があるといえます。
スポンサードサーチ
DSM-Ⅳの診断基準に従うと、「抑うつ気分」もしくは「興味・喜びの減退」のどちらかが存在すればうつ病であると診断されます。診断基準の上では、「抑うつ気分」が存在せず、「興味・喜びの減退」のみが存在するうつ病の診断がありえるということになります。
アパシーがあると、診断項目の中で「興味・喜びの減退」に加え、「易疲労性または気力の減退」「思考力や集中力の減退」の3つに当てはまる可能性があります。他にも睡眠障害や食欲の障害の存在により5項目となり、アパシーのみを示す脳器質性意欲障害も大うつ病の診断基準に当てはまることになります。
抑うつ気分とアパシーにはそれぞれ別の神経学的なメカニズムがあると考えられています。
スポンサードサーチ
チャンネル登録よろしくお願いします⇨https://bit.ly/37QHaWc