ファンクショナルリーチテストで使用される筋肉、平均値や転倒予測との関係についてまとめてみました。
目次
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ファンクショナルリーチテストとは、立位でのバランスや安定性限界を評価の対象とし、前方への最大リーチ距離を測定するものです。
定義としては、「立位において固定された支持基底面の中で、人が上肢長を越えて前方ヘリーチする限界の距離」とされています。
ファンクショナルリーチテストは随意的な姿勢制御における動的バランスの検査法です。
検査は立位保持ができることが条件になります。
原著版では2回練習を行い、3回測定しその平均値を算出することが推奨されています。
天井効果や床効果は報告されていません。
測定が簡単で、測定誤差も小さく、動的立位バランスの経時的変化を把握するのに有用です。
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所要時間約5分。
壁面(ホワイトボードでも可)にメジャーを設定。
練習2回、測定3回。
①壁に対して横向きに立ち、両足を肩幅程度に開いて安定した立位姿勢をとる。
※開始姿勢が崩れやすい場合は、一度その場で足踏みなどをさせる。
②両腕(片腕)を水平な位置まで挙上させる。
*身体がねじれないように注意する。
③壁側の手指の先端をマークし、壁から遠い方の手を下ろす。
④壁側の手指は同じ高さを維持したまま、足を動かさずに出来るだけ前方へ伸ばし、最長地点をマークする。
*この際、かかとを上げて爪先立ちになっても良いが膝は曲げない。
⑤開始の姿勢に戻ってもらう。
出典:住民主体の通いの場」推進を目的とした健康チェック票及び体力測定マニュアル
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引用:Isles RC et al : Normal values of balance tests in women aged 20-80.J AM Geriatr Soc 52(8) : 1367-1372,2004
亜急性期の脳卒中患者の基準値として25.6±7.4cmという標準値が報告されています。
Outermans JC, van Peppen RP, Wittink H,et al: Effects of a high-intensity task-oriented training on gait performance early after stroke: a pilot study. Clinical rehabilitation 24:979-987, 2010.
脳卒中片麻痺者では15.0cmをカットオフ値として転倒を判別できることが報告されています。
Acar M, Karatas GK: The effect of arm sling on balance in patients with hemiplegia. Gait Posture 32:641-4, 2010.
高齢男性では到達距離が15.3cm未満で転倒の危険が高くなることが報告されています。
Duncan, P.W., Studenski, S., Chandler, J., et al:Functional reach: predictive validity in a sample of elderly male veterans. J. Gerontol. Med.Sci. 47: 93-98. 1997.
つまづきなどが生じた場合、まずは足関節戦略による姿勢保持が行われます。
しかし、高齢者の場合、足関節戦略が機能しづらく、代わりに股関節戦略が多く用いられますが、これは足関節ストラテジーと比べると体幹の揺れやふらつきに対応する時間が遅れることが指摘されています。
下腿前傾(足関節背屈)に対しては下腿三頭筋の遠心性収縮で姿勢保持がなされます。
前方リーチでは足関節底屈筋力に加え、前足部や足趾の底屈方向筋力発揮も求められます。
下腿三頭筋や足趾屈筋群の筋力低下は前方への身体重心移動の減少に関与するとされています。
足関節戦略が不十分な高齢者では、側圧中心移動による身体重心の制御が困難になり、身体重心が支持基底面から逸脱し転倒しやすくなることが考えられます。
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ファンクショナルリーチテストは、上肢の移動距離が、重心移動距離と相関するので、重心の可動範囲をみることができます。
リーチ動作は重心が支持基底面の辺縁に移動するため不安定になることから、姿勢制御が求められる課題です。
テストでは随意運動に基づく姿勢制御が求められますが、この場合、運動結果により生じる外乱の乱れを予測する必要があります。
すなわち、運動実行前に運動プログラムに基づき姿勢制御を行うことは必要になります。
ファンクショナルリーチテストでは指示基底面に変化は伴わないことから、姿勢制御の戦略としては足関節ストラテジー、または股関節ストラテジーが使用されます。
ファンクショナルリーチテストでは、より遠くにリーチするために股関節戦略の使用が重要になります。
通常、リーチ動作では重心が支持基底面の辺縁に移動するほど、姿勢筋にはお大きな筋活動が要求されます。
ファンクショナルリーチテストでは、身体重心が前方に移動するため、その制動には下肢後方禁軍の活動が必要になります。
股関節戦略を大きくとる場合、骨盤部を後方に引くことでバランス保持しますが、この場合は下肢前方筋群が後方制動に参加することがあります。
リーチ動作開始後は体幹前傾に対し、ヒラメ筋の作用で足関節が底屈することで足圧中心は後方化し膝関節は反張位で固定されます。
初期から中期相(リーチ距離の1/3-2/3)にかけては、重心前方移動に伴い足圧中心が前方化するので、ヒラメ筋から短母趾屈筋内側頭(内在筋)の活動が高まります。
リーチ距離増大につれ、股関節ストラテジーをとる際に、骨盤の前傾をハムストリングが調節します。
この際大臀筋も活動しますが、大臀筋とハムストリングでは後者の方が筋長があるので、姿勢制御には優位となります。
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ファンクショナルリーチテストでは、3つの戦略をとることが考えられます。
出典:下肢の運動戦略とFunctional Reach Test 足 · 股 · 踵上げ運動戦略の違いがFunctional Reach距離,重心の前後移動、重心動揺面積に及ぼす影響
上図を見てもらうと、
①足関節戦略
②股関節戦略
③踵上げ戦略
をとることがわかります。
これらのうち、リーチ距離としては①<②<③の順で大きくなります。
足関節戦略では足関節の運動のみで姿勢制御をします。
股関節戦略では股間節を屈曲することにより重心を後方に止めながら上部体幹を伸ばしていくことが可能です。
また足関節底屈により、体幹の前傾が十分に可能になっています。
踵上げ戦略では踵上げにより、より重心を前方移動し、足関節をテコにしてより大きく前方にリーチします。
①→③の順で前方重心移動や重心動揺が大きくなるので、よりバランス保持のための姿勢制御能力が要求されます。
臨床では、ファンクショナルリーチテストにおいて、どの姿勢制御戦略を用いているのかを観察することも必要になります。
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ファンクショナルリーチテストでは、股関節戦略を用いるとリーチ距離は体感前傾角度に依存するため、真の身体移動と重心移動を反映しているとは言い切れなくなります。
ファンクショナルリーチテストを用いるときには、前方リーチに伴う身体重心の前後移動を制御する足圧中心の変位との関係性や、支持基底面内での足圧中心の移動可能範囲を反映させることが求められます。
そのためには、測定方法として壁にメジャーを設置しそれに添わせてリーチさせることで、股関節屈曲と足関節底屈をできる限り排除したリーチ距離を測定することができます。
この場合、リーチ距離増大には足関節背屈を戦略とする必要が生じるため、より立位バランスの詳細な評価につながります。
ファンクショナルリーチテストで足関節戦略を用いる場合、前方リーチにより重心線が足関節前方に落ちると足関節は背屈(下腿前傾)します。
この時、姿勢保持には足関節底屈の遠心性収縮が必要になります。
また、この時脊柱起立筋は体感前傾に対して遠心性に収縮し姿勢保持を行なっています。
このような要素は歩行においても一部同様の要素が含まれています(側圧中心と身体重心の関係性とそれ必要とされる筋群の協調的な働き)。
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転倒については、前後方向のバランスに加えて左右方向のバランス保持も重要になります。
このことからも、リーチテストは前方に加えて側方にも実施することが大切です。
側方動揺の制御には、足関節の内返し、外返し運動(内側側副(三角)靱帯と外側側副靱帯を主とする後足部靱帯系連鎖による受動的な制御)や体幹運動では脊柱起立筋と外腹斜筋の活動が重要です。
また、股関節では外転筋群と内転筋群が働き、足趾では母趾外転筋活動も必要になります。
このようなことから、側方リーチテストでは、体幹・下肢・足部内在筋の協調的な活動による側方のバランス機能・姿勢制御機能の評価が可能になります。
バランスに関しては以下の記事も参考にしてください。
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