頚椎症性脊髄症の保存・手術療法におけるリハビリテーションとして、上肢・手指・姿勢、日常生活に対するアプローチについてまとめています。



目次

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頚椎症性脊髄症では何を確認するか(他覚症状)

  • 知覚異常
    ・約9割に何らかの知覚異常がある
    ・麻痺の高度な脊髄横断性症候群やBrown-Sequard syndrome III型では、ほぼ全てに明白な知覚障害がみられる
    ・体幹に比べ、上下肢の末梢部に出やすい
    ・運動障害の程度に比べ、知覚障害の程度は軽度
  • 反射異常
    ・錐体路兆候として反射亢進する
    ・上腕三頭筋腱反射および二頭筋腱反射は50~50%が亢進
    ・膝蓋腱反射は80~90%、アキレス腱反射は60~70%で亢進
  • 病的反射
    ・Wartenberg反射、Trömner反射、Hoffman反射といった手指屈筋腱反射
    ・Hoffman反射が出現しやすく、腱反射の亢進と並行する
    ・下肢ではBabinski 反射、クローヌス(出現率は低い)
    ・逆転性橈骨反射(前腕の屈曲運動は起こらずに指の屈曲運動が起こる)ではC5~6髄節レベルの同側性病変を示す
  • 筋萎縮
    ・筋萎縮は著明ではないが、高度圧迫により、下位髄節の支配領域である手固有筋の萎縮を認める症例場合がある
    ・下肢ではほとんどみられない

頚椎症性脊髄症におけるリハビリテーション評価

  • 関節可動域
    ・単関節運動
    ・複合運動(結帯動作、結髪動作)
  • 筋力評価
    ・四肢体幹のMMT
    ・握力
    ・ピンチ力
  • 感覚評価
    ・Semmes Weinstein Monofilament Test
    ・関節位置覚、関節運動覚
    ・異常知覚(しびれ)⇒VAS、NRS
  • 上肢機能
    ・STEF(簡易上肢機能検査)
  • ADL、iADL
    ・頸部への過度な負荷や術後禁忌肢位をとらないか
    ⇒起き上がりでの頸部の状態
    過度な頸部の前屈
    過度な頸部の前方突出
  • 治療成績・重症度分類
    ・日本整形外科学会頚髄症治療判定基準(JOAスコア)
    ・日本整形外科学会頸部脊髄症評価質問表(JOACMEQ)

myelopathy hand

  • 手指の巧緻運動が障害される
    ・手指の素早い把握動作とその解除の障害
    ・内外転動作の障害
  • 客観的指標
    ・finger escape sign
    ・10秒テスト
  • myelopathy handにしびれが加わり、箸操作や書字、更衣のボタン操作などのADL能力が低下する

finger escape sign

  • 手指を伸展位にそろえる
  • 判定
    ・grade 0:正常手(手指がそろう)
    ・grade 1:手指伸展で小指が離れる
    ・grade 2:伸展位で小指が内転不能
    ・grade 3:環指も内転困難
    ・grade 4:中・環・小指の完全伸展不能

10秒テスト

  • 10秒間に握り開きを素早く繰り返す
  • 判定
    ・20回以下しか手指の把握動作とその解除ができなければ異常

歩行障害

  • 痙性歩行
    ・下肢は伸展し、内反尖足位(つま先立ち)で、つま先を引きずるような歩行
    ・両足が突っ張り、股関節が内転する様相からはさみ足歩行とも呼ばれる
    ・下肢の反射亢進、Babinski反射や足クローヌス陽性
  • 失調歩行
    ・脊髄性の場合、膝を必要以上に高く上げ、前に放り出すようにして歩く
    ・閉眼で上記傾向が悪化
    ・Romberg徴候陽性

ロンベルグ試験

  • 1.被験者は手を体の側面に添え、開眼して足をそろえて立つ
    2.被験者が目を閉じ、そのまま実施者は一分間観察する
  • 体の揺れがあれば、陽性(不規則に揺れたり、転倒したりすることもあるため注意)
  • 基本的特徴は、開眼しているときよりも不安定になること
  • ロンベルグ試験の閉眼課題では、視覚からの情報がない場合に、位置覚が正常であれば姿勢を保つことができる
  • 位置覚が障害されていると、姿勢の崩れが見られる
    →感覚性の失調の特徴

姿勢障害

  • 立位姿勢
    ・前額面での肩の高さの非対称、頚椎側屈
    ・矢状面での円背、頭部前方変位姿勢

頚椎症性脊髄症の保存療法

  • 保存的治療・予防で重要なこと
    ・頸椎の良姿勢を保つ
    ⇒動的障害(とくに後屈)を避ける
    上を見上げない
    首をぐるぐる回さない
    お腹を下にして寝転がり読書やテレビを見ない
    頸部までしっかり固定できる面積の広い枕を使用する
  • 神経症候の悪化をある程度防ぐことが可能になる
  • 頸椎の良姿勢の保持のために頸椎カラーも有効

頚椎症性脊髄症の手術療法の要点

  • 悪化期に手術実施
    ⇒症状改善があっても自然経過の可能性あり
  • 固定期では症状改善が得られにくい
    *後々の悪化を防ぐために手術を行なうことがある
  • 頸椎症の手術療法
    ⇒圧迫解除による今後の悪化を防ぐ
    頸椎症の経過を安定化させる
    神経症候の改善をめざすものではない
  • 手術適応となりやすい例
    ⇒増悪を繰り返して状態が悪くなるパターン
    増悪は動的障害によりおこることが多い(とくに頚椎後屈)
    椎間の後方すべりなどの不安定性がある症例は増悪しやすい
    保存療法でいったん改善しても、すぐに悪化をくりかえす場合増悪しやすい

頚椎症性脊髄症の前方手術

  • 脊髄神経を圧迫している原因が脊髄より前方にある場合に適応
  • 1~2椎間で頚椎後弯変形がある場合は,前方除圧固定術
  • 同時に固定が行われる
    ⇒術後の頚椎可動域減少(首の動きが狭くなる)
  • 将来的に隣接椎間に問題が生じることがある
  • 術後は装具で固定を行い、骨癒合が完成するまで続ける(3ヶ月程度)
  • 術後早期には脊柱の支持性が低下するので、頚椎前方プレート(金属製の内固定材)で固定力を強くする場合

頚椎症性脊髄症の後方手術

  • 椎弓切除術、椎弓形成術
  • 病巣範囲が3ヶ所以上で、頚椎前弯が保持されている場合に適応
    *病巣範囲が1〜2か所でも行われることがある
  • C3~7 まで除圧を行なうことが多い
  • 固定術を併用しない
    ⇒術後の装具使用期間が短い(2週間程度)
    頚椎可動域減少が少ない
  • 術後に創部や頚部の疼痛(軸性疼痛)が生じる

手術で良くなりやすい要因

  • 年齢が若い
  • 罹患期間が短い(ただし急性発症の麻痺を除く)
  • 先天性の著しい脊柱管狭窄がない
  • 筋力低下よりも痙性が主体
  • 筋萎縮がない
  • 両側性よりも片側性
  • 膀胱直腸障害がない
  • MRI上、脊髄萎縮がない
  • 頚椎装具の装着により症状が軽快する
  • 糖尿病、心疾患、肺疾患、認知症などの合併症がない

手術で改善しやすい症状

  • 歩きにくさ、手の使いにくさは一般的によくなりやすい
  • 手足のしびれ感や重だるさや手のこわばり感は軽減しても残りやすい
  • 手のしびれの改善
    ・手のしびれは自覚的な異常知覚であり、術後6ヶ月,1年時でも改善しなかった
    ・術後3ヶ月で一度減少し、その後変化せず、2年、5年かけて徐々に減少する
    ・しびれの改善には少なくとも3ヶ月以上が必要?
  • 握力の回復には時間がかかる
  • つまみ力は除圧により術後早期から人さし指指側の筋力が回復しやすい

術後合併症

  • 軸性疼痛
    ・頸部から肩のみ、肩こりや、重だるさ
  • C5麻痺
    ・除圧された脊髄が後方移動する際、第5頚椎の神経根が引き伸ばされて痛む
    ⇒肘屈曲、上肢挙上の筋力低下
    *時間経過で改善がみられる事がある
  • 硬膜外血腫
    ・除圧した隙間に血腫が貯留する
    ⇒脊髄圧迫による頚髄損傷の可能性
  • 深部感染
    ・術後の感染症(筋膜あるいは筋層以下に及ぶ感染)
    ・糖尿病、肝硬変、腎不全などでリスクが増加する
  • 脊髄・神経根損傷
  • 脳・心筋梗塞
  • 麻酔に伴う合併症(肺炎など)

術後の注意点

  • 転倒しないように注意
  • 後方手術では、日常生活動作での制限は特にない
  • デスクワークなどの軽作業の復帰は手術後約1ヶ月以降(目安)
  • スポーツや立ち仕事への復帰は手術後 2 ヵ月以降(目安)
  • 前方手術では、装具での固定期間(約3ヶ月)の間は制限あり
  • 装具除去後は制限なし
  • スポーツや立ち仕事の復帰は骨癒合後

術後軸性疼痛

  • 脊椎由来の頚部から肩関節に及ぶ痛み
    ⇒神経根や脊髄に由来しない
  • 頚椎の後方手術に関連した術後頚部痛として認識されている
  • 術後3〜6 ヵ月経過しても軽減せず持続する事がある
  • 術後1年での有病率は約3割程度
  • 術後の日常生活を制限する
  • 健康関連QOL(健康が日常生活機能に与える影響や本人が感じる健康度)を低下させる

術後軸性疼痛はなぜ起こる?

  • 傍脊柱筋損傷
  • 項靭帯・棘間靭帯不全
  • C2またはC7 棘突起付着筋剥離による筋機能不全
  • 椎間関節損傷
  • 術後後弯変形
  • 術後頚椎可動域制限
  • 長期間の外固定
  • 頸椎(C2-7)矢状面(横から見る)アライメント(関節の位置関係)

頭部前方偏位姿勢と軸性疼痛

  • 頭部前方偏位(突出)姿勢とは、顎を前に突き出し、頭を後ろにそらした姿勢
  • 頚椎全体の前方偏移と環椎後頭関節部の過伸展位
  • この頭部前方変位(突出)姿勢と肩こりは密接な関係性があり、ある筋肉は過緊張状態にあり、ある筋肉は筋力低下を起こし、その結果肩こり症状を感じてしまうようになる
  • 頸部後面の局所ストレス増加により頸部痛が出現する
  • 頸部深層屈筋群の機能不全が影響

軸性疼痛への対応

  • 脊椎の生理的弯曲を維持するポジショニング
    ⇒頸部までしっかり固定できる面積の広い枕を使用
  • 車いすや椅子座位での良姿勢
  • 術後早期からの運動(指導を受けた上で)
  • 頚椎の可動性を高める
  • 頚部だけでなく胸腰椎の位置関係を修正するよりC7slopeを減少させる
  • 頚部伸展筋群の筋力強化

頸椎(C2-7)矢状面のアライメント計測

頚椎症性脊髄症のリハビリテーション(姿勢障害)

  • 頭部前方変位姿勢改善を図る
    ・頚椎前弯増強を防ぐ
    ⇒臥床時に高めの枕を使用する
    顎を引く事を意識させる

・僧帽筋上部線維、肩甲挙筋の筋緊張緩和

・頚部深部屈筋群の収縮を促す

頚椎症性脊髄症のリハビリテーション(上肢筋力低下)

  • 脊髄の髄節障害で上肢の髄節性の筋力低下や筋萎縮を認める
  • 筋萎縮は神経根症でみられるような限局性の場合と多椎間障害による広範囲に出現する場合がある

頸椎症性筋萎縮

  • 脊髄の髄節障害で上肢の髄節性の筋力低下、筋萎縮を主症候として、感覚障害がないか軽微
    ⇒Keegan 型頸椎症
  • C5 および C6 髄節の頸椎症性筋萎縮が多い
  • 棘上筋、棘下筋、三角筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋、回外筋の筋力低下
  • C8 髄節では第一背側骨間筋の萎縮、母指内転筋,小指外転筋,総指伸筋の筋力低下がおこりやすい
  • 短母指外転筋は保持される(T1髄節のため)

頚椎症性脊髄症における上肢のリハビリテーション

  • 頚椎症性脊髄症に対する手術治療後、臨床症状改善を目的としたリハビリテーションの効果に関するエビデンスは乏しい
  • 拘縮予防が重要(Passive ROM制限予防)
  • 筋力強化として重要となるのは三角筋と上腕二頭筋
  • まずは肩関節の安定化が必要
    ⇒肩腱板の機能向上
  • 電気刺激療法(低周波)も考慮

頚椎症性脊髄症における上肢のリハビリテーション(肩甲帯)

  • 肩甲骨周囲筋の機能能低下は腱板機能低下に繋がる
  • 甲胸郭関節機能の改善重要
  • 肩甲骨上方回旋位での肩挙上に繋げる
  • C5・6レベルの障害は僧帽筋や前鋸筋の筋力低下につながる
    ⇒僧帽筋(特に中・下部)や前鋸筋の機能向上を図る

頚椎症性脊髄症における上肢のリハビリテーション(関節可動域)

  • 背臥位で実施
    ・肩甲骨固定し1st・2nd・3rd肢位での他動内外旋運動
    ・屈曲・外転・伸展方向への他動運動
  • 他動内外旋運動
    ・outer・inner muscleの伸張性を維持する
    ・1st外旋
    ⇒鳥ロ上腕靱帯や上・中関節上腕靱帯と前方関節包の伸長
    ・ 1st内旋
    ⇒後方関節包の伸長
    ・2nd外旋
    ⇒前下関節上腕靱帯、前下方関節包の伸長
    ・3rd内旋
    ⇒後下関節上腕靱帯、後下方関節包の伸長

頚椎症性脊髄症における上肢のリハビリテーション(運動例)

・除重力肢位(肘および前腕を支える)で肩内外旋運動

・肩外転運動(壁に対して垂直に立ち近い距離から始め徐々に伸ばして手背で壁を押す)

・肩甲帯前方突出運動(テーブル上に上肢を乗せて前方にスライディングをする)

・肩水平内外転運動(テーブル上でタオルワイピング).

・肩屈筋の遠心性収縮運動(立位or座位、自動介助運動で肩屈曲し保持した後ゆっくり戻す
⇒数回保持可能となれば
・屈曲30→45→60 →180 →90° と段階的に進めsる
・180° からは肩外転運動を実施
・屈曲 60° 保持可能
⇒背臥位で上肢全体の屈伸運動(目標物にリーチ)

・除重力肢位(テーブル上に上肢を乗せる)肘関節屈伸運動

・重力下での肘関節屈曲運動を肩関節内旋位⇒中間位⇒外旋位で実施

  • 斜面台を用いた遠心性収縮による筋力練習
    (松本 正知他「頸椎症性筋萎縮症〔Keegan型頸椎症)に対する運動療法の試み」理学療法学 第36巻 第2号 62-69頁(2009年))
  • 実施方法
    ①斜面台で背臥位、台の角度を徐々に挙げ、健側上肢で患側上肢を可能な限り挙上させる
    ②両手を離しても健側と同程度に挙上位保持が可能な角度を設定する
    ③この斜面台の角度で大結節がpostero lateral passを通るように、挙上した上肢を肩関節外転・外旋位とし、前腕回外・肘関節を軽度屈曲にて目的とする筋が遠心性収縮するように10秒 程度の時間をかけてゆっくりと下制させる
    ④20回程度健側と同程度の肩甲上腕リズムで行えるようになった時点で、斜面台の角度を増していき新たに挙上位保持の限界となる角度を設定する
    ⑤斜面台の角度が80°に達したら同様の練習を立位にて行う
    *斜面台の角度が40°以下では、鏡で腕や肩の動きを確認させ、下制時の肩甲上腕リズムに左右差が生じないようにする

頚椎症性脊髄症における手指のリハビリテーション

  • 手指機能低下の進み方
    ・発症初期からしびれ感や小指の内転維持困難が出現し
    ・徐々に尺側手内筋群の筋力低下が出現
    ・次に手指の使いにくさを覚える
    ・進行により握力低下の自覚や手指伸展機能低下や前腕屈筋群の筋緊張亢進、手のすばやい反復運動が難しくなる
  • 手術により除圧されることで、可逆的な部分は改善される
    *圧迫期間が長いほど不可逆的な部分が増す
  • 握力の回復には時間がかかる(筋線推の肥大によって筋力の改善が起こるため)
  • ピンチ力は除圧により術後早期から示指側の筋出力が回復しやすい
  • 手内筋,外来筋を含む筋力と総合的な手指運動機能については術後3ケ月時点においてはプラトーの判断が困難であり,術後6ケ月以上にわたる追跡調査が必要であると考えられた。
  • 加えて,訓練期間に関しても3ケ月を経過しても機能的な改善が期待できることから,上肢および手指の総合的機能を訓練対象とする作業療法においては,術後3ケ月以上のフォローアップが必要であることが推察された。

酒井 浩他「頸髄症における上肢運動機能の経時的変化 -術前・術後3ヶ月までの変化-」京都大学医学部保健学科紀要: 健康科学 (2005), 1: 19-24

頚椎症性脊髄症における手指のリハビリテーション(分離運動例)

  • ペグボード
    ・抜き挿し(挿す方が難しい)
    ・母指と示指・中指・環指・小指
    ・空間反転(指腹での細やかな調整が必要)
    ・太さを細くする(指腹つまみ→指尖つまみへ)
  • ビー玉つまみ
    ・母指と示指・中指・環指・小指
    ・手指内転でつまむ

頚椎症性脊髄症における手指のリハビリテーション(筋力運動例)

  • セラパテ(治療用粘土)
    ・つまんで平らにする・つまんでちぎる
    ・握って細くする
    ・内転させて細くする(骨間筋)
  • 洗濯ばさみ
    ・指を曲げてつまむ(外在筋)
    ・指を伸ばしてつまむ(内在筋)

頚椎症性脊髄症における手指の自主トレーニング

  • 指折り運動
    ・親指から
    ・小指から
  • 対立運動
    ・母指と示指、中指、環指、小指
  • 母指運動
    ・第一関節、第二関節
    ・内転*指の伸展動作も意識して行なう少量頻回で行なう(指は疲れやすいため)
  • 洗濯ばさみ(主に手指屈曲)
    ・指を曲げてつまむ(外在筋)
    ・指を伸ばしてつまむ(内在筋)
  • 輪ゴム(主に手指伸展)
    ・つまみと離し*指の伸展動作も意識して行なう少量頻回で行なう(指は疲れやすいため)

頚椎症性脊髄症と感覚障害

  • 上肢感覚障害の範囲が広範囲に及ぶ傾向にある
    ⇒多椎間の障害が少なくない
    C3−4椎間:C5領域のみでなく上肢全体
    C4-5椎間:C6髄節のみでなく手全体
    C5-6椎間:母指を除く4指 の感覚障害が多い
  • C3-4椎間障害
    ⇒後索障害で両手指の深部感覚障害の可能性
    (母指探し私見でのエラー、閉眼で手指を前方に伸展させると手指が揃わず、ゆっくりとした不規則な不随意運動)
  • 進行により体幹下肢の感覚障害
  • 表在感覚障害は下肢末梢から始まる事が多い
  • 体幹部の感覚障害は最も高くても乳頭付近

圧迫性頚髄症の知覚障害や異常知覚の病態

  • 脊髄の後索内側毛帯系が責任病巣と考えられている
  • 病理変化は後索の腹外側部に現れる
    ⇒後索の楔状束(触覚の伝導路)と一致していると考えられ、脊髄体部位局在では手指領域に該当
  • 自発的な異常知覚や触覚機能の低下をもたらす
  • 慢性疼痛を対象とした報告では,触覚機能低下と異常知覚・疼痛が生じる
  • 触覚機能の改善に伴い異常知覚が軽減する可能性あり
  • 術後1年時で運動・感覚障害の部位に応答する一次体性感覚野・一次運動野の神経機能が低下との報告あり
  • 大脳皮質の可塑的変化による運動と知覚の統合の不一致が関連

感覚評価の意義

  • ADLで物体を落としてしまう群は、閉眼状態で物体の把持力が過剰になり、その把持力は静的触覚閾値と相関を認めた
    ⇒静的触覚閾値上昇が把持力のコントロールを障害する

静的触覚の役割

  • 対象物を触ったときの、刺激の強弱や持続を判断する遅順応型の受容器
  • 物に対して押すように圧をかける
    →指の皮膚には垂直方向の変形により触刺激が起き、押し続けている間はインパルスが発射し、加圧をやめるとインパルスは止む
    →皮膚に対する触刺激の持続時間を知る
  • 刺激の強さに応じてインパルスの発
    →物を握った時に、物からの反発する力を受け、その力を知覚し、握る力の強さを感じる
  • 一定の力で物を把握したり、状態により把握力をコントロールするのに必要なメカニズム

触覚検査(閾値)の意義

  • 触覚検査では筆などで検査し、鈍麻、脱失というレベルでの検査結果では、具体的な治療方針を立てていくことはできない
  • 触覚の状態を定量的に調べることができれば、回復状態の判断や治療プログラムを立てる事が可能になる
  • 静的触覚は力を適切にコントロールして物体を落とさず、効率良く、スムーズに物体を操作するために必要
    →静的触覚には物体を把持するための物体の性状(柔らかさ、硬さ、重さ)に応じた把持力の調節機能がある
  • 静的触覚検査ではこの機能について調べることになる
  • 末梢神経損傷の場合、閾値を調べ、その結果を検査用紙にマッピングし、末梢神経の支配領域との比較によりどの神経がどのレベルで損傷されているかの予測を立てる

触覚検査(閾値)の検査方法

使用物品:
セメスワインスタインモノフィラメント
*2.83番(緑)3.61番(青)4.31番(紫)、4.56番(赤)、6.65番(赤)

①2.83番を使用し、手掌、指、手背と調べ、正常・異常の領域を大まかな範囲でつかむ

②2.83番で指尖から始め、近位部へと進む。セラピストは患者の手から2.5㎝の高さから、検査部位に1.5秒かけてフィラメントがたわむまで力を加え(皮膚上で滑らないように)、1.5秒かけて元の位置に戻す2.83番、3.61番は同じ場所に3回刺激し、そのうち1回でも応答が得られたら感知できたとみなす
4.56番、6.65番では1回の刺激のみで感知できなければより太いフィラメントに進む
*刺激のタイミングを変化させて、患者に予測させないようする

③知覚可能なフィラメント番号に応じ、検査用紙に指定された色を使いマッピングする
6.65番が感知できない場合は、赤斜線で示す

*高齢者、中枢性の障害がある患者で、検査が困難な場合、刺激を加える・加えないをランダムに行い、刺激が加えられたのはどちらかを選択させる方法(二者択一)もある

*中枢性障害では、刺激が加えられた後でもその刺激が残る場合がある(刺激残像)
このような時は刺激を加えるまでのインターバルを長くするこの現象は、皮質損傷によりニューロンの抑制が変化したことによる

触覚検査(閾値)の記録方法

結果の解釈(Bell-krotoskiによる)

探索、識別機能に対するリハビリテーションの方法

材質の識別
静的触覚:
スポンジなどの弾力性、圧縮性の異なる物体(2組)に対して、上から手指を押し付けたり、握り込むことで垂直に力を加え同じものを特定させたり圧縮性、反
発性、伸展性の程度を識別する

動的触覚:
手触りの異なる材質を用意して指でこすり、平滑性、摩擦性を識別するサンドペーパーや、布、タオルなどを利用
*指を強く押し付けるように識別する場合があるため、力が入りすぎないように指導する
*動的触覚では、指を動かす速度と垂直方向の力のコントロール(押し付けない)を再学習する事が大切

感覚障害は改善するか

  • 静的触覚閾値の改善
    ・術後6ヶ月、1年時と長期的に改善
  • 手のしびれの改善
    ・手のしびれは自覚的な異常知覚であり、術後6ヶ月,1年時でも改善しなかった
    ・術後3ヶ月で一度減少し、その後変化せず、2年、5年かけて徐々に減少する
    ・しびれの改善には少なくとも3ヶ月以上が必要?

末梢神経電気刺激

  • 神経筋電気刺激や機能的電気刺激
    ・電気刺激により運動神経を脱分極させ、標的筋を収縮させ、機能的運動を再学習させる
  • 神経筋・機能的電気刺激は運動閾値以上の刺激による痛みや筋疲労の問題がある
  • 末梢神経電気刺激(peripheral nerve stimulation:PNS)

*SES(sensory electrical stimulation)
TENS(transcutaneous electrical nerve stimulation)とも言う

  • 上下肢の末梢神経から感覚刺激や運動閾値程度の電気刺激を長時間行い、大脳皮質の可塑性変化を期待する
  • 促通反復療法(川平法)
    ⇒TENSにて標的とする末梢の神経筋をあらかじめ軽度興奮させ、中枢からの興奮伝達がたとえ弱くても標的筋を駆動しやすくする
  • PNSは痛みや疲労が少なく、課題指向型練習等に併用しやすい

末梢神経電気刺激の効果

  • PNSによる皮質脊髄路の興奮性の増大
    ⇒運動パフォーマンスの向上につながる
  • 脳卒中者で、PNSと課題指向型練習を組み合わせた研究
    ⇨PNSなし群と比較し上肢機能が優位に改善
  • 脳卒中者の軽度〜中等度の運動麻痺における
    ・皮質脊髄路の興奮性向上
    ・上肢操作等の運動学習を高める 目的で使用する
  • 頚椎症性脊髄症での報告は少ないが、脊髄脊椎疾患でも同様に皮質脊髄路の興奮性が増大する可能性は考えられる

末梢神経電気刺激療法の例

  • 禁忌や合併症等のリスク要因になるものはないかを確認
  • 刺激部位:正中神経、尺骨神経
  • 刺激電極:5cm×5cm
    陰極は近位に配置
  • パルス幅:1ms
  • 周波数:10Hz
  • デューティーサイクル:1Hz
  • 刺激強度:感覚閾値以上、運動閾値以下
  • 電気刺激と同時に課題指向型練習を実施


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転職サイト利用のメリット

何らかの理由で転職をお考えの方に、管理人の経験を元に転職サイトの利用のメリットを説明します。

転職活動をする上で、大変なこととして、、、

仕事をしながら転職活動(求人情報)を探すのは手間がかかる

この一点に集約されるのではないでしょうか?(他にもあるかもしれませんが)

管理人は転職サイトを利用して現在の職場に転職しました。

コーディネーターの方とは主に電話やLINEを通してのコミュニケーションを中心として自分の求める条件に合う求人情報を探してもらいました。

日々臨床業務をこなしながら、パソコンやスマホで求人情報を探すというのは手間ですし、疲れます。

そういう意味では、転職サイト利用のメリットは大きいと考えています。

転職サイト利用のデメリット

デメリットとしては、転職サイトを通して転職すると、転職先の病院や施設は紹介料(転職者の年収の20-30%)を支払うことです。

これがなぜデメリットかというと、転職時の給与交渉において、給与を上げにくいということに繋がります。

それでも、病院や施設側が欲しいと思える人材である場合、給与交渉は行いやすくなるはずです。

そういった意味でも、紹介してもらった病院や施設のリハビリ科がどのような現状で、どのような人材が欲しいのかといった情報が、自分の持つ強みを活かせるかといった視点で転職活動を進めていくことが大切になります。

転職サイトは複数登録することも必要

転職サイトは複数登録しておくことが重要になるかもしれません。

それは、転職サイトによって求人情報の数に違いが生じることがあるからです。

せっかく転職サイトを利用するのであれば、できるだけ数多くの求人情報の中から自分の条件にあった求人情報を探せる方が良いはずです。

その分複数のコーディネーターの方と話をする必要がありますが、自分のこれからのキャリアや人生を形作っていく上では必要なことになります。

また、コーディネーターの方も人間ですから、それぞれ特性があります。

自分に合う合わないと言うこともありますから、そういった意味でも複数サイトの登録は大切かもしれません。

とにかく行動(登録)!管理人も登録経験あり!転職サイトのご紹介!

ネット検索にある転職サイトの求人情報は表面上の情報です。

最新のものもあれば古い情報もあり、非公開情報もあります。

各病院や施設は、全ての求人情報サイトに登録する訳ではないので、複数登録する事で より多くの求人情報に触れる事ができます。

管理人の経験上ですが、まずは興味本位で登録するのもありかなと思います。

行動力が足りない方も、話を聞いているうちに動く勇気と行動力が湧いてくることもあります。

転職理由は人それぞれですが、満足できる転職になるように願っています。

管理人の転職経験については以下の記事を参照してください。

「作業療法士になるには」「なった後のキャリア形成」、「働きがい、給与、転職、仕事の本音」まるわかり辞典

転職サイト一覧(求人情報(非公開情報を含む)を見るには各転職サイトに移動し、無料登録する必要があります)

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