CI療法では、対象者に課題を提供する際にシェイピングという訓練方法を用います。今回、CI療法のシェイピング的な考え方を元に作業療法の課題を設定する方法についてまとめていきたいと思います。

CI療法のシェイピング的な考え方を元に作業療法の課題を設定する!

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今までの作業療法においてもシェイピング的な考えを用いていた?

シェイピングはCI療法に特有の訓練方法かと思われる方もいるかもしれません。

しかしながら、シェイピング的な考え方は従来の作業療法においても行われていたと思います。

作業療法は、その名の通り、作業を用いる事に長けています。

シェイピングも様々な作業を用いながら、詳細に段階付けを行うことで機能面行動面の改善を目指していく訓練方法になっています。

このことからも、従来の作業療法ではCI療法におけるシェイピング的な考え方に基づい行われていたと推測できます。

ただし、シェイピングでは、動作や道具の設定、難易度調整や課題の得点付け、動作遂行の質に対する観察の仕方、行っている動作の対象となる関節はどこかなどが示されていることが特徴ともいえます。

難易度設定はや段階付けはどうするのか

これも、従来の作業療法の考え方でも通用するものがあります。

例えば、上肢運動の難易度とし、肘関節伸展時の肩関節や手指の動作の難易度を考えていきましょう。

肘関節伸展位での動作の場合、

肩関節肢位は、屈曲位、外転・外旋位になるほど難しくなります。

また、手指に関しては、握りよりもつまみ動作になるほど難しくなります。

さらに、対象物の素材を考えると、重く、滑りやすい物体ほど難しくなります。

このように、角度や距離、方向、素材(硬さ、重さ、摩擦)を対象者の状態に合わせたり、目標とする動きや肢位を促すために適宜変化させていけることが作業療法の専門性を発揮することでもあります。

CI療法のシェイピングを参考にした課題難易度と段階付けの設定方法

対象者にとって、最適な難易度の課題を設定できるということは、よりよい報酬を得ることができ、それが運動学習をさらに促すことにつながります。

そのため、課題難易度または段階付けは細かく設定される必要があります。

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脳の可塑性を促すには、手の使用頻度ということも重要になります。

麻痺側四肢を動かす回数は、適切に設定された課題難易度にも影響を受けることが考えられます。

心理学者のマクレランドが行った輪投げ実験で「被験者は成功する確率が5割程度のときに最も意欲的に輪投げを行った」

このようなことも言われているようです。

もちろん、対象者が意欲的に取り組めるにはセラピストからの外的なフィードバック(賞賛)などの報酬も必要になるかもしれません。

課題の難易度設定と段階付け、内的・外的な報酬を組み合わせながら、麻痺側四肢の使用を多く促していくようなアプローチが脳の可塑性を促すためには必要になるでしょう。

 

以下に、CI療法などを参考にした課題難易度の設定基準を考えていきたいと思います。

基準1(疲れの見え始め)

課題の段階付けや変更に直接関係することではありませんが、回数設定に関わるようなことです。
訓練を行っていると、筋肉が疲労することにより、明らかに運動パフォーマンスが低下することがあると思います。
このような状態で訓練を続けていると、無駄なノイズがある状態で動作が記憶されることにつながります。

短期の学習効果は休憩によって残り、休んでいる間に学習の選択が行われて中期の学習が残るようです。
その後さらに動作することにより選択された学習の効果が現れ、動作の変化になると理解しています。
〜中略〜
練習が過多で疲労が出ると、動作のノイズが増え、よい動作の記憶を傷つけると考えられます。

片麻痺 能力回復と自立達成の技術 現在の限界を超えて

疲労は運動パフォーマンスの低下として現れますが、その前兆を評価できることが大切になります。
表情(眉間にシワがよる、口がいがんでくるなど)、呼吸、姿勢が崩れてくるなどの反応を観察により把握することが大切になります。
回数をこなすことももちろん大切なのですが、疲労と向き合いながら取り組めるように、観察ポイント知っておくことが大切になります。

基準2(課題遂行の様子)

ここからは、段階付けや課題変更にける基準の考え方です。
課題設定においては、「少し難しそうだが、なんとかできるレベル」を設定していくことが必要と言われています。
対象者にとって簡単すぎるレベルでは回復が起こりにくいと考えられます。

課題遂行時の観察ポイントとして、まず正常動作の要素を考えていきたいと思います。
正常な動作では、道具操作は流れるように、協調的な動きになります。
また、スピードも正確性も高いことが挙げられます。
このことから、協調性、スピード、正確性、(安全性)は正常を考えた場合に重要な要素になります。

脳卒中片麻痺者では、上記に加えて分離運動が適切に行われているかも加える必要があります。
分離運動が適切に行われていないということは、共同運動の要素が含まれているということです。
共同運動の要素が強ければ、それを代償するために様々な運動が行われます。
例えば、頭や体幹、反対側の上肢に代償運動が生じます。

分離運動が部分的に可能になれば、今度は動きのスピードや協調性、正確性に目を向けることになります。
また手指では、独立した運動が行えずに把握のパターンが残っていることが考えられます。

ある課題を行ったときに、代償運動が強すぎる場合、その運動を行い続けるとノイズが入った運動を記憶することにつながってしまいます。
分離運動障害や筋力低下があると、代償運動は起こってしまうものですが、それが強すぎる場合には、課題の難易度をワンランク低いものにする必要があります。

基準3(数値の利用)

前途しましたが、数値は明確な基準になります。
数値をもとに課題の設定や変更を行うこともひとつの方法です。

終了時間
終了するまでの時間により、課題の難易度を決定します。
ひとつの課題が◯秒で終わるように設定し、◯秒以上かかる課題は行わないようにするなどです。
これにより、時間を基準として、遂行のスピードに焦点を当てて課題設定が行えます。

平均時間の比較
例えば、前日に行った課題の平均時間と、当日に行った平均時間を比較し、時間が短くなっていたら、課題の難易度を上げていきます。

平均時間2
この平均時間では、例えば10回行うのであれば、後半5回中4回の平均が、前半5回の平均を超える場合に課題の難易度を上げていきます。

個数
ある秒数までにできた個数の平均が、前日の個数の平均を超えた場合に、課題の難易度を上げていきます。

これ以上の改善が見られない
課題を行っていて、個数や平均時間などの改善がこれ以上見られない場合、課題の難易度を上げていきます。

 

訓練における注意点

上記のような基準を設定し、段階付けや課題設定・変更をおこなっていきます。
それに加えて、対象者が行っている遂行状態をフィードバックすることが大切になります。
個数や平均時間の向上が目に見えるように書面やグラフにして提示することは、対象者の意欲向上につながります。
自主トレでは個数や平均時間でフィードバックが行えますが、セラピストがついていることのメリットは、遂行の質を評価し、フィードバックできることです。
「手を伸ばしたときに、体の傾きが大きかった」などと、対象者自らでは気づけないような体の状態に対して助言を送ることは大変意義があることです。
遂行の様子をビデオ撮影することは、後で遂行状態を振り返ることにつながり、改善できる・すべきポイントを共に確認することができます。
このようなことを通じ、訓練を進めていくことで、対象者にとってよりよい訓練になるのではないでしょうか。

 

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CI療法におけるシェイピング項目と対象者への適応の考え方

粗大操作:
1 前腕を机上のタオルにのせる
2 机上のタオルに前腕をのせた状態で円を描くように肘を伸ばす
3 肘で時計回り・反時計回りに直径10㎝・20cmの円をなぞる
4 手を膝上から机上のタオルにのせる
5 手を机上のタオルにのせた状態で前方に肘を伸ばす
6 患側横に置いた椅子の上に掌か拳を置き、肘を伸ばして体重をかける
7 机上のボールに手を伸ばす−戻す
8 A4大クリップボードを立てて机上で支える
9 手を腰に回して叩く
10 反対側の肩の埃を掌で払う
11 反対側の肩をリズミカルに叩く
12 穴あけパンチで紙に穴をあける
13 お手玉を口元まで持ってくる−机上に置く
14 机上のボールをつかみ、患側横の箱に入れる
15 机上と机縁をタオルで拭く
16 輪投げの輪をさまざまな方向にセットした棒に通す
17 ブロック2つ以上を積み上げる
18 食器洗いのスポンジを(洗剤を泡立てるイメージで)5回握りしめる
19 引き出しを開ける・閉める
20 頰杖をつく
21 盆上でボールを時計回り・反時計回りに回す
22 紙を手前から2つに折る
23 クリップをつまみ箱に入れる

巧緻動作:
24 人差し指で時計回り・反時計回りに直径10㎝・20㎝の円をなぞる
25 計算機のキーを人差し指で順に押す
26 机縁と平行に置いた定規の目盛を5㎝刻みで指腹で弾く
27 ペンをつまんでペン立てに立てる
28 軽い木片をはじく
29 頭をかく
30 うちわで手前や前方に向かってあおぐ
31 食べ物に塩をふる動作
32 洗濯バサミをさまざまな角度で板にはさむ
33 紙を握りつぶす
34 握りつぶした紙のしわを伸ばす
35 クリップをつまみ紙を挟む
36 雑誌のページを1枚ずつめくる
37 スティック糊のねじキャップを開閉する
38 直径5㎝程度のボトルねじ蓋を開閉する
39 そろばんをはじく
40 小銭をつまむ
41 ティッシュでこよりをつくる
42 複数枚のトランプを持ち1枚ずつ机上に置く
43 野球ボールの縫い目を親指でなぞる
44 机に貼ったセロテープを爪を立ててはがす
45 書字(名前、計算、迷路等、障害や必要度に応じて)
46 お手玉を投げる−受ける

両手動作:
47 (男性)ネクタイを締める・(女性)エプロンの紐を結ぶ
48 袖口や襟元のボタンをかける・はずす
49 タオルを絞る
50 ちょうちょ結びをする
51 はさみで紙を切る
52 紙で箱を包む
53 両手でタオルを握りピンと張る
54 立って足踏みをするとき、手を前後に振りリズムをとる
55 10㎝の段差を昇降する(両手でバランスを取る)
56 両手を対称に広げて深呼吸をする
57 お手玉を前方のかごに投げ入れる
58 輪投げ
59 上手投げでボールを持ったままゆっくり壁に当てる
60 傘をさして歩く

佐野 恭子「CI療法」作業療法ジャーナル Vol.45 No.7 2011

この項目は参考にできるものではありますが、大切なことは、これらの項目が、

どの関節運動をターゲットにしているかということでしょう。

ある課題が、肩関節、肘関節、前腕、手関節、手指関節を単関節レベルで動かすのか、もしくは複数の関節の組み合わせで行われるのかという視点での分析が必要になります。

もちろん、参加する関節の数が多くて、かつ空間で行う運動の方が難易度は高くなります。

また、運動方向によっても筋活動には違いが生じます。

さらに、シェイピング項目の中には日常物品が多く使用されています。

私たちは日常生活の中で様々な物品を使用していることからすると、それはとても理にかなっていると言えます。

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