呼吸器疾患では、その症状がADLにおいてどの程度影響を及ぼしているかを評価し、リハビリによってどの程度改善されたかを数値化することは重要です。今回、呼吸器疾患で用いられるADL評価バッテリーの概要と評価方法、結果の解釈について、まとめていきたいと思います。
目次
呼吸器疾患で用いられるADL評価バッテリーの概要と評価方法、結果の解釈
スポンサードサーチ
呼吸器疾患に用いられるADL評価の種類
ADL評価には、主に包括的評価と特異的評価の2種類があります。
包括的評価には有名なものとして、Barthel index(BI)とFunctional independent measure(FIM)があります。
最近の傾向として、アウトカム評価としてはFIMが用いられることが多くなっています。
FIMの評価方法については以下の記事が参考になります。
全部網羅!FIM点数のつけ方マニュアル!各運動・認知項目の採点時に注意すること!
特異的評価とは、簡単に言うと、ある面にのみ対して有効である評価とでも言うことができるかと思います。
例えば呼吸器疾患限定で用いられる評価法などです。
呼吸器疾患におけるADLの特異的評価としては、
・Nagasaki university respiratory activities of daily living questionnaire(NRADL)
・Pulmonary ADL(P-ADL)
・Pulmonary function st atus and dyspea questionnaire modified(PFSDQ-M)
・The London chest acti vity of daily living scale(LCADL)
などがあります。
今回は、この特異的ADL評価尺度について解説していきます。
スポンサードサーチ
Nagasaki university respiratory activities of daily living questionnaire(NRADL)の概要と評価方法、結果の解釈
NRADLの概要
NRADLは食事、排泄などの日常生活における動作を10項目に分類し、それぞれの達成度を動作速度、息切れ、酸素流量から4段階付けしており、それに連続歩行距離の得点を加えた100 点を総得点としています。
NRADLの評価方法
評価項目
食事
排泄
整容
入浴
更衣
病室内移動
病棟内移動
院内移動
階段
外出・買物
評価指標
動作速度
0:できないか、かなり休みをとらないとできない(できないは,以下すべて0点とする)
1:途中で一休みしないとできない
2:ゆっくりであれば休まずにできる
3:スムーズにできる
息切れ(Borg)
0:非常にきつい、これ以上は耐えられない
1:きつい
2:楽である
3:まったく何も感じない
酸素流量
0:2ℓ/min以上
1:1~2ℓ/min
2:1ℓ/min以下
3:酸素を必要でない
連続歩行距離
0:50m以内
2:50~200m
4:200~500m
5:500~1km
10:1km以上
NRADLの結果の解釈
各動作項目(10項目)に対するそれぞれの指標(動作速度、息切れ、酸素流量)を合計すると30点×3で90点となります。
連続歩行距離は満点が10点です。
合計点は100点となっており、合計スコアが低いほど、呼吸器症状がADLの阻害因子となっていると解釈できます。
リハビリテーション実施前にスコアを把握することで、リハビリテーション介入後の効果判定に利用することが可能になります。
スポンサードサーチ
Pulmonary ADL(P-ADL)の概要と評価方法、結果の解釈
Pulmonary ADL(P-ADL)の概要
P-ADLは、食事・排泄・入浴・洗髪・整容・更衣・屋内歩行・階段・屋外歩行と、日常生活動作の9つを、達成方法・距離・頻度・速度・息切れ・酸素量の6つの指標を用いて評価します。
評価用紙には会話の項目もありますが、それはスコアからは除外されることになっています。
各項目は5件法で評価されます。
総得点は208点で、それを%に換算して結果を出していきます。
Pulmonary ADL(P-ADL)の評価方法
評価するカテゴリー
食事
排泄
入浴
洗髪
整容
更衣
屋内歩行
階段
屋外歩行
会話(採点には含めず)
評価する指標
達成方法
距離
頻度
速度
息切れ
酸素量
評価用紙については、こちらを参照してください。
慢性閉塞性肺疾患患者のための新しいADL評価尺度の検討
Pulmonary ADL(P-ADL)の結果の解釈
Pulmonary ADL(P-ADL)は、カテゴリー別、または指標別にスコア(%)を算出することが可能です。
Pulmonary ADL(P-ADL)を用いることで、ADLの中で、呼吸器症状がどのように動作に影響を与えているかという情報を得ることが可能です。
吸リハにおいて患者教育は非常に重要である.
ADL 指導では,息切れを軽減するために動作速度の調整,休憩を入れる等の指導をおこなう.
その結果,呼吸リハ前後で息切れのスコアは改善した反面,動作速度のスコアが低下することで全体的な ADLスコアの変化が乏しくなり, 呼吸リハの効果が示されず患者のモチベーションに 繋がらないことが危惧される.
しかし,P-ADL(Ver. 2)のように指標別スコアを提示することで,たとえ総スコアでは変化がなくても,息切れの改善が示されることで呼吸リハ効果が実証できれば,患者教育にも有効であると考える.
後藤 葉子ら「慢性閉塞性肺疾患患者のための新しいADL評価尺度の検討」日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2015年 第25巻 第3号 423-428
スポンサードサーチ
PFSDQ-M(The Modified version of the Pulmonary Functional Status and Dyspnea Questionnaire)の概要と評価方法、結果の解釈
PFSDQ-Mの概要
PFSDQ-Mは、整容、更衣、洗髪、シャワー、上肢挙上、食事の準備、3.5m歩行、坂道歩行、悪路の歩行、階段3段の10項目を0-10点の11段階で活動に伴う呼吸困難、活動に伴う倦怠感、活動に伴う患者の変化の指標を用いて評価します。
活動に伴う患者の変化の「一度もしたことがない」では、スコア化されません。
PFSDQ-Mの評価方法
評価項目
髪にブラシをかける、髪をとく,
シャツを着る
髪を洗う
シャワーを浴びる
両手を頭の上に挙げる
軽食の準備
3.5m歩く
坂道を歩く
でこぼこ道を歩く
階段を3段上る
評価指標と評価段階
呼吸困難
0(なし)
1~3(軽度)
4~6(中等度)
7~9(強い)
10(非常に強い)
活動に伴う倦怠感
0(なし)
1~3(軽度)
4~6(中等度)
7~9(強い)
10(非常に強い)
活動に伴う患者の変化
スコアなし(一度もしたことが無い)
0(以前と変わらない)
1~3(少し変化した)
4~6(中等度の変化)
7~9(大きく変化した)
10(全くできない)
PFSDQ-Mの結果の解釈
スコアが高いほど呼吸困難及び機能障害が強いと評価されます。
スポンサードサーチ
呼吸器疾患に関する関連記事
- 呼吸困難(息切れ)に用いられる評価バッテリーの概要と評価方法、結果の解釈
- 呼吸リハビリとADL指導のための知識と実践法!
- 呼吸器疾患におけるリハビリテーションのリスク管理の考え方!
- COPDの重症度、生命予後評価!BODE indexの概要と評価方法、結果の解釈
- COPDと食事、栄養!リハビリテーションで知っておきたい事!
- 呼吸調節の仕組みと呼吸苦-COPDでの高炭酸ガス血症を中心に-
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)と高炭酸ガス血症
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)ではなぜ気流閉塞が生じるか
- リスク管理に役立つ血ガス分析の見方-PaCO2を中心に-
- リハビリテーションと胸水-呼吸苦について-
- リハビリテーションと低栄養の原因-咳のエネルギー消費を考える-
- リハビリテーションとリスク管理-呼吸に異常がある時の症状-
- リハビリテーションと呼吸-排痰の基本:咳の介助-
- リハビリテーションと呼吸-排痰の基本:ハフィング-
- リハビリテーションと呼吸-仰向け姿勢(背臥位)と呼吸の関係性-
- リハビリテーションと呼吸-痰に対するリスク管理-
- 慢性閉塞性肺疾患と高脂肪食-栄養代謝によるエネルギー産生と呼吸の関係性-
スポンサードサーチ
呼吸器疾患の勉強にオススメの記事
呼吸療法認定士の資格を取りたい方は必見
呼吸療法認定士の資格勉強は隙間時間にするのがコツです。呼吸療法認定士 eラーニング講座
スキマ時間勉強ならリハノメ
PTOTSTのためのセミナー動画が見られます。各分野のスペシャリストが登壇しているので、最新の知見を学びながら臨床に即活かす事が可能です。
セミナーあるあるですが、、、メモ取りに夢中になり聞き逃してしまった。
なんてことはなくなります。何度でも見返す事が可能だからです。
高額なセミナー料+交通費、昼食代を支払うよりも、スキマ時間を見つけて勉強できる「リハノメ」を試してみるのも良いのではないかと思います。
臨床で差をつける人は皆隠れて努力していますよ。
長い期間で契約したほうが、月額が安くなります。
PT.OT.STのための総合オンラインセミナー『リハノメ』
PTOTSTが今より給料を上げる具体的方法
転職サイト利用のメリット
何らかの理由で転職をお考えの方に、管理人の経験を元に転職サイトの利用のメリットを説明します。転職活動をする上で、大変なこととして、、、
仕事をしながら転職活動(求人情報)を探すのは手間がかかる
この一点に集約されるのではないでしょうか?(他にもあるかもしれませんが)
管理人は転職サイトを利用して現在の職場に転職しました。
コーディネーターの方とは主に電話やLINEを通してのコミュニケーションを中心として自分の求める条件に合う求人情報を探してもらいました。
日々臨床業務をこなしながら、パソコンやスマホで求人情報を探すというのは手間ですし、疲れます。
そういう意味では、転職サイト利用のメリットは大きいと考えています。
転職サイト利用のデメリット
デメリットとしては、転職サイトを通して転職すると、転職先の病院や施設は紹介料(転職者の年収の20-30%)を支払うことです。これがなぜデメリットかというと、転職時の給与交渉において、給与を上げにくいということに繋がります。
それでも、病院や施設側が欲しいと思える人材である場合、給与交渉は行いやすくなるはずです。
そういった意味でも、紹介してもらった病院や施設のリハビリ科がどのような現状で、どのような人材が欲しいのかといった情報が、自分の持つ強みを活かせるかといった視点で転職活動を進めていくことが大切になります。
転職サイトは複数登録することも必要
転職サイトは複数登録しておくことが重要になるかもしれません。それは、転職サイトによって求人情報の数に違いが生じることがあるからです。
せっかく転職サイトを利用するのであれば、できるだけ数多くの求人情報の中から自分の条件にあった求人情報を探せる方が良いはずです。
その分複数のコーディネーターの方と話をする必要がありますが、自分のこれからのキャリアや人生を形作っていく上では必要なことになります。
また、コーディネーターの方も人間ですから、それぞれ特性があります。
自分に合う合わないと言うこともありますから、そういった意味でも複数サイトの登録は大切かもしれません。
とにかく行動(登録)!管理人も登録経験あり!転職サイトのご紹介!
ネット検索にある転職サイトの求人情報は表面上の情報です。最新のものもあれば古い情報もあり、非公開情報もあります。
各病院や施設は、全ての求人情報サイトに登録する訳ではないので、複数登録する事で より多くの求人情報に触れる事ができます。
管理人の経験上ですが、まずは興味本位で登録するのもありかなと思います。
行動力が足りない方も、話を聞いているうちに動く勇気と行動力が湧いてくることもあります。
転職理由は人それぞれですが、満足できる転職になるように願っています。
管理人の転職経験については以下の記事を参照してください。
「作業療法士になるには」「なった後のキャリア形成」、「働きがい、給与、転職、仕事の本音」まるわかり辞典
転職サイト一覧(求人情報(非公開情報を含む)を見るには各転職サイトに移動し、無料登録する必要があります)
①PT/OT/STの転職紹介なら【マイナビコメディカル】