臨床場面において、対象者がいつもより元気のない状態が続いている時に、うつ傾向なのか、もしくは意欲低下なのかを判別したいことがあると思います。うつ病とアパシーの概念的なことを理解していると、臨床における鑑別において役立つことが考えられます。今回、うつ病と意欲障害(アパシー)の違いや、臨床での鑑別方法の考え方を紹介していきたいと思います。

うつ病と意欲障害(アパシー)の違いとは?臨床での鑑別方法の考え方を紹介!

臨床場面での悩み

以前、お問い合わせをいただいた中で、以下のような質問がありました。

「やる気スコア」について質問があります。

当院でもDrよりやる気スコアの処方が出されるようになり、文献などを調べていますが…

解釈の部分でDrからは前頭葉機能不全とうつ症状の鑑別に有効との話を伺っておりますが、スコアをとる際の、意欲に対しての積極性(8項目)、消極性(6項目)の傾向で判断するという解釈でよろしいのでしょうか?

解釈について、もう少し詳しくお聞かせ願えると幸いです。

すみませんが、よろしくお願います。

やる気スコアの概要と評価方法、結果の解釈

これは、”やる気スコア”という、意欲障害(アパシー)の程度を評価するための記事に寄せられた質問です。

質問に、「前頭葉機能不全とうつ症状の鑑別」というキーワードがあるように、前頭葉の機能不全によるアパシーとうつ傾向の鑑別についての解釈が行いづらいという趣旨のことが書かれています。

確かに、臨床場面において、対象者の様子に活気が見られない場合、アパシーなのかうつ傾向にあるのか、正直わかりにくいということがあります。

これを確認していくために検査や評価バッテリーがあるのですが、その解釈の仕方を知っていることで、アパシーとうつ傾向の鑑別が行いやすくなると考えられます(あくまで診断を下すのは主治医ですが、我々は対象者の様子や検査の結果を主治医には伝えることが可能です)。

 

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アパシーとうつ傾向の違いとは

アパシーとうつ傾向の違いについて考えていくには、それぞれの違いについて理解していくことが大切になります。

ここで、アパシーとうつ症状を考えていく際のポイントを以下に記載します。

・うつ状態は、持続的な気分障害を指し、意欲そのものの障害ではない。
・うつ病には、不快な気分、抑うつ感、悲哀感、焦燥感などの気分障害以外に、興味・関心・楽しみの消失、精神運動制止、心的なエネルギーの喪失が伴う。
・うつ状態では、他の症候として睡眠障害、食欲低下、注意集中の低下、罪業感(自分自身を責める)、自殺念慮を伴うことがある。
・アパシーにはなくうつ状態にある患者独特のものは悲哀感や罪業感、自殺念慮である。
・アパシーには基本的にうつ状態を伴わない。

この辺りの事は、以下の書籍に詳しく載っているので参考にしてみてください。
 

 

これを見る限り、アパシーで見られるような、興味・関心や楽しみの消失もみられるということが書かれていますが、アパシーとうつは似て非なるものであることが書かれています。

ここで大切なポイントは、アパシーには見られなくて、うつ状態には見られる事項を理解しておく事です。

アパシーには見られず、うつ状態の際に見られることとして、

・悲哀感
・罪業感
・自殺念慮

が挙げられます。

 

悲哀感について、

単に気分が沈むとか面白くないといった、万人にわかってもらえる心理レベルの憂うつとはまったく違うものです。

例えば、何の原因もないのに涙が止まらなくなったり、楽しい話を聞いていてもなぜか悲しい結末を想像してしまったりするのが悲哀感です。

うつ病者は、本質的には気分が沈むのではなく「物悲しくなる」のです。

 確実に治るうつ、治らないうつ: 57の実例で見つかる、うつ病の抜け出し方

また、意欲低下については、

うつ病者は決して意欲は低下しません。

やらなくてはならないと強く思い、むしろ意欲は向上しているのですが、発動するエネルギーが枯渇しているのです。

投げやりになりやる気が起きない、状況反応的に何もできないといった状態とは、まったく違うので区別しなくてはなりません。

例えばやる気があるのに、何の原因もなく力が湧いてこない、やりたいと思うのに行動に移せないのがうつ病の症状です。

意志発動性低下ゆえに、何もできない自分を責めて自責的になり、自殺することさえあります。

 確実に治るうつ、治らないうつ: 57の実例で見つかる、うつ病の抜け出し方

このあたりは、以下の書籍にわかりやすく書かれています。
 

 

アパシーとうつ病を鑑別するための検査

うつ病を診断するための補助的な検査はいくつか存在します。

中でも、臨床場面で用いることの多い検査を紹介していきたいと思います。

SDS(うつ病自己評価尺度(Self-rating Depression Scale :Zung法))

うつ病自己評価尺度(SDS)は、20項目の質問から構成されます。
各項目に対し、「ない」、「ときどき」、「かなりのあいだ」、「ほとんどいつも」の4段階で自己回答します。

詳しくは以下の記事を参照してください。
うつ病自己評価尺度(SDS)の概要と評価方法、結果の解釈(カットオフ)

HADS日本語版(Hospital Anxiety and Depression Scale日本語版

Hospital Anxiety and Depression Scale日本語版は、身体症状をもつ方の不安と抑うつの評価に使用されます。
14項目から構成され、不安と抑うつの2つの下位尺度からなる自己記入式の評価尺度です(不安について7項目、抑うつについて7項目)。
記入時間は約5分と短いことが特徴です。

詳しくは以下の記事を参照してください。
HADS日本語版の概要と評価方法、結果の解釈

 

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臨床場面においてアパシーとうつ状態の鑑別には総合的な評価が必要

前途しましたが、うつ病(うつ状態)とアパシーは基本的に異なった概念です。

そのため、鑑別が必要であり、それに合ったアプローチが必要になります。

うつ状態では、希死念慮や動機のない悲哀感などの関係性から、対象者の普段の言動に注意する必要もあります。

そのためには、リハビリテーション場面のみではなく、日常の様子を看護師から情報収集したり、家族との面会においてどのような発言があったかといったことについて情報収集する必要があるでしょう。

アパシーの評価には様々なものがあります。

各検査により特徴も異なっているので、以下の記事を参照してみてください。
意欲の指標(Vitality Index)の概要と評価方法、結果の解釈
やる気スコアの概要と評価方法、結果の解釈
脳卒中うつスケール、脳卒中情動スケールの概要と使用方法、結果の解釈
意欲の評価:CASの概要と評価、結果の解釈について

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