認知症では、記憶障害などの中核障害とともに、問題になりやすいのが周辺症状の存在です。今回、認知症のBPSD(心理・行動症状)に対する評価とアプローチ、対応例などについてまとめていきたいと思います。

目次

認知症のBPSD(行動・心理症状)に対する評価とアプローチ、対応例など

引用、参考

 

認知症におけるBPSDについて

行動・心理症状(BPSD)の特徴

行動・心理症状(BPSD)とは

行動・心理症状(BPSD)は認知症に伴い出現する行動や心理的な症状をさします。

心理的なものとして、不安、多幸、妄想、幻覚、抑うつなどがあります。また行動面では興奮、夜間行動、易怒性、異常行動、脱抑制などがあります。

行動・心理症状(BPSD)があると、対象者本人のQOLの低下や、介護者の負担を大きくしてしまうことにつながります。

中核症状と行動・心理症状(BPSD)のつながり

認知症の中核障害があると、時間や場所(見当識)がわからくなったり、簡単な計算ができなくなるなど認知機能の低下がみられます。そのような機能低下が影響して、日常生活上が不自由になったり、不安感が大きくなってくると、行動・心理症状(BPSD)が出現することがあります。

また本人の置かれている環境や介護者の対応など、様々な要因が絡み合い行動・心理症状(BPSD)を生じさせる可能性があります。

認知症初期では、「自分は何か病気があるかもしれない」という意識から、不安感の増大や抑うつ症状が現れることがあります。また誤りや失敗を訂正されると怒り出すこともあります。

作業療法の立場からみた行動・心理症状(BPSD)

作業療法を実践するためのモデルとして、「人間作業モデル」というものがあります。

人間作業モデルにおいては、

BPSDを作業適応障害として捉えています。

認知症の方は、記憶障害や思考・判断力低下、失語などの中核症状により、意味ある作業に基づく生活ができていなかったり、他者に作業ニーズを伝えることができないことがあります。

作業ニーズが満たされないことで、不安や焦燥が生じ、BPSDが生じてしまうことにつながります。

これは、マズローの欲求段階からも、捉えることが可能と思われます。

認知症高齢者のBPSDはクライアントの作業適応障害の状態であるととらえることができる。

そのため、OTRが認知症高齢者のBPSDを理解して作業適応を促進するためには、クライアントの作業と作業的生活を理解することが必要である。

事例でわかる人間作業モデル P206

作業に対する価値観や思いを語ってもらうことで、BPSD改善の方策を見つけることが可能になることが考えられます。

作業ニーズの把握により、BPSDの原因と関係性を分析し、作業ニーズを満たす作業遂行を援助することでBPSDの改善につががることが考えられます。

認知症の重症度と行動・心理症状(BPSD)

軽度認知症での行動・心理症状(BPSD)でよく観察されることとしては、

活動性・意欲低下
興味関心の低下
抑うつ(気分の落ち込み)
不安感
異常に怒る
抵抗や攻めるような態度

などがあります。

中等度認知症での行動・心理症状(BPSD)でよく観察されることとしては、

質問を繰り返えす、後追い、突然の叫び声など
徘徊、睡眠障害、幻覚(幻聴、幻視)
脱抑制や攻撃などの不適切行動

などがあります。

重度認知症での行動・心理症状(BPSD)でよく観察されることとしては、

蹴る、たたくなど介護者への攻撃行動
叫ぶ、うめくなどの非言語的な行動
自宅内を一人で歩けない

などがあります。

 

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BPSDと薬物療法の知識

BPSDに対する薬物療法

BPSDに対しては、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠導入剤などが使用されます。

抗精神病薬(非定型含める)を使用する際には、自傷や他害の恐れがある場合など、薬剤投与によるメリットがデメリットを明らかに上回る場合に限って、適切なインフォームドコンセント(使用目的、他の代替療法がなく、適応する薬物もないこと、副作用の可能性)を行った上で開始する必要があります。

BPSDに対応する抗精神病薬使用ガイドラインにおいても、対応の第一選択は非薬物療法であり、抗精神病薬の使用は適応外使用で、基本的には使用しない姿勢が必要だとされています。

そのため、対象を焦燥、興奮、攻撃性や精神病症状等に限定し、非薬物療法との組み合わせにより多剤投与は行わないことが重要です。

錐体路症状やジスキネジアの出現が少ない薬剤の使用し、副作用(転倒、起立性低血圧、過鎮静)に加え、他の重篤なリスクを家族と共有しておくことが大切になります。

薬剤分類

薬剤名

抗精神病薬(非定型)

リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ペロスピロン、アリピプラゾール

抗精神病薬(定型)

ハロペリドール、スルピリド

ジスキネジア治療薬

チアプリド

抗不安薬(睡眠薬)

タンドスピロン、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ブロチゾラム

抗うつ薬

セルトラリン、トラゾドン、フルボキサミン、パロキセチン

気分安定薬

カルバマゼピン

コリンエステラーゼ阻害薬

ドネペジル、リスパダール

漢方薬

抑肝散、抑肝散加陳皮半夏

阿部式BPSDスコアの概要と評価方法、結果の解釈

阿部式BPSDスコアの概要

阿部式BPSDスコアは、認知症の周辺症状を簡易に測定し、その状況把握や治療効果の判定に用いるために開発された自己記入式の評価尺度です。

阿部式BPSDスコアでは、認知症患者において見られるBPSD10項目について、頻度と重症度により0〜9点を配点し、その合計点でBPSDの度合いを判定します。

記入には約1分程度を必要とし、非常に簡便な評価尺度です。

この評価尺度では、Neuropsychiatric Inventory(NPI)との関連があり、MMSEの得点低下に伴いBPSDの増加を認めることから、BPSDスコアとして信頼性が高いものとなっています。

また介護者による評価の信頼性も保たれています。

阿部式BPSDスコアの評価方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

CMAIの概要と評価方法、結果の解釈

CMAIの概要

Cohen-Mansfield Agitation Inventry(CMAI)は、Cohen- Mansfieldらによって開発された、介護者による評価方法です。

CMAIでは、攻撃的行動が11項目、非攻撃的行動が11項目の計22項目から構成されています(国立長寿医療研究センターの認知症・せん妄サポートチームマニュアルの資料では22項目から構成されていました)。

一定期間内の具体的な行動障害の出現頻度を7件法により介護者が評価を行います。

具体的な症状を評価できるため、実施しやすいことが特徴です。

Behave-ADの2つの下位尺度の代替として使用可能だとされています。

CMAIの評価方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

ABIDの概要と評価方法、結果の解釈

ABIDの概要

ABID(Agitation Behaviorin in Dementia Scale)は、BPSDの「興奮」に特化した評価尺度です。

ABIDは「興奮」に対して作業療法などのリハビリテーションアプローチを行った際の、効果判定に用いるために使用することができ、日本語版の妥当性も確認されています。

家族、または介護者に聴取して採点をしていきます。

評価項目は16項目あり、それぞれについて問題行動の頻度の評価(5段階)と、介護者の反応の評価(6段階)を行います。

評価手順と評価項目、結果の解釈

こちらをご覧ください。

NPI-Qの概要と評価方法、結果の解釈

NPI-Qの概要

NPI-Q(NPIのアンケート版NPI-Brief Questionnaire Form)は、認知症者のBPSDの頻度、重症度、介護者の負担度を数量化できる評価方法です。

「妄想」「幻覚」「興奮」「うつ」「不安」「多幸」「無関心」「脱抑制」「易怒性」「異常行動」「夜間行動」「食行動」の 計12項目からなっています。

妥当性と信頼性が確認されており、認知症者の精神症状、介護者負担度の評価に有用だとされています。

評価方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

BEHAVE-ADの概要と評価方法、結果の解釈

BEHAVE-ADの概要

BEHAVE-ADは認知症者のBPSDの評価尺度のひとつです。

評価項目は25項目あり、妄想と幻覚に関する項目が充実しています。

BPSDには様々な症状が存在し、BEHAVE-ADの様な項目数が多い評価法を用いることで、BPSDを見逃さずに評価することが可能です。

またBEHAVE-ADで評価を実施することによって、家族に対して現在認められない症状だとしても、今後出現する可能性があることを家族は知り、心理教育的アプローチの一助となる可能性もあります。

家族は、質問されることにより始めて精神症状と知ることがあり、それまでのことを性格と捉え、症状と捉えていないこともあるようです。

また,作業療法アプローチの効果判定においても、点数化して重症度を評価できるため利用できます(作業療法の成果を示すために重要です)。

BEHAVE-ADの評価方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

TBSの概要と評価方法、結果の解釈

TBSの概要

TBS(Troublesome Behavior Scale:問題行動評価尺度)は在宅、病院・施設で生活している認知症者の問題行動を評価するものです。

認知症者に比較的よく観察される問題行動を、介護者が過去1か月間に観察した頻度に基づき5段階評価を行います。

質問項目は14のから成り、在宅の対象者と病院・施設の対象者とでは内容が一部異なっています。

TBSは認知症者の行動異常を評価する尺度として、信頼性と妥当性があるとされています。

TBSの評価方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

DBDスケールの概要と使用方法、結果の解釈

DBDスケールの概要と使用方法

DBDスケール (Dementia Behavior Disturbance Scale)はBaumgartenらによって開発された、行動異常を定量的に評価し、介護者の負担を客観的に評価する方法のひとつです。

認知症者によく認められる行動異常、例えば、 徘徊、興 奮、摂食障害、攻撃性、性的異常等についての28の質問項目から構成されています。

質問前1週間における各行動異の出現頻度を「全くない」「ほとんどない」「ときどきある」「よくある」「常にある」の5段階に分け、0から4点の点数をつけ評価します。

評価点の合計は、 0から最高112点 までであり、 得点が高ければ高いほど、 異常行動の出現頻度が高いことを示しています。

形式は介護者に対する質問表となっており、介護者に対する面接聴取や、施設では介護者に直接記入することも可能です。

DBDスケールの評価項目と結果の解釈

こちらをご覧ください。

DBD-13(Dementia Behavior Disturbance Scal短縮版)の概要と評価方法、結果の解釈

DBD-13の概要

DBD-13は、認知症の行動障害尺度のDBDの短縮版です。

評価項目は13項目あり、これは出現頻度が多く、また作業療法などの治療介入に反応して変化が大きい下位項目となっています。

DBD-13は簡便に臨床場面で評価できるものであり、52点満点となっています(DBDは28項目112点満点)。

短縮版と原版は高い相関関係を有し、介護負担感とも良好な正の相関を認めたとされています。

評価方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

ひもときシートの活用

認知症者のケアを行うために、ひもときシートを活用することがあります。

ひもときシートは、

①援助者としての立場から感じる課題や対応方法

②課題の背景や原因の分析

③認知症者本人の立場から感じる課題や改善策

の3ステップから考えていくことで、ケアのヒントを生み出していこうとするものです。

このシートを活用することで、どのような背景や原因があって対象者がBPSDを生じているのかを、様々な視点から考えていくことに役立てることが可能になります。

特にステップ②の分析では、多くの視点があり、とても参考になるものです。

・病気や薬の副作用の影響、うつやせん妄などの精神症状の影響など
・身体的不調(痛み、便秘、不眠、空腹など)の影響
・精神的苦痛や性格の影響
・感覚過敏の影響
・ケアの関わり方や方法の影響
・環境整備の影響
・援助者が提供する作業が対象者の負担になっていないか、日常の過ごし方の影響

これらが、対象者にとってどのような影響を与えているかを考えていくことが重要になります。

ひもときシートは、こちらからダウンロードしてください。

似たようなことですが、以下のような事も分析の視点になります。

・身体的要因

身体的要因は認知症をもつ人の快、不快に直接的な影響を与えてしまうことになります。
この要因の項目をたくさん知っていると、観察の視点が増えることになります。

・麻痺/拘縮 ・頭痛 ・発熱 ・脱水 ・便秘/下痢 ・空腹/満腹

・眠気 ・痛み ・かゆみ ・しびれ ・むくみ ・のどの渇き ・虫歯

・義歯の不具合 ・白内障 ・難聴 ・薬の作用/副作用 など

”理由を探る”認知症ケア P116

他にも声が聞こえにくい原因として、耳垢がたまっていた。歩くのを嫌がるのが巻き爪があったからなどということもあります。

・心理的要因

感情、情動は一見しただけではわかりませんが、これも認知症の快、不快に影響を与える要因となります。

・不安 ・心配 ・いら立ち ・怒り ・悲しみ ・寂しさ ・心細さ

・困惑 ・後悔 ・焦り ・未練 ・孤独感 ・絶望感 ・虚無感 

・喜び ・嬉しさ ・思いやり ・感謝 など

”理由を探る”認知症ケア P120

例えば、寂しさを感じていることから帰宅要求が強まっていることも考えられます。その方の周りの人間関係や、職員の対応なども含め、寂しさがどのような理由でおこっているかを探ることも大切になります。

・環境的要因

環境の良し悪しによって、その方の能力を最大限に発揮できたり、逆に能力を奪ってしまうことにもつながります。

・なじみのある場所 ・使い慣れた道具があるか 

・見慣れたものが見えるか 

・五感に働きかけるもの(音、明るさ、温度、におい、風通し、など)は適切か

・親しい人がそばにいるか ・人や物が多すぎる など

”理由を探る”認知症ケア P124

・個人的要因

個人的要因も、その方の行動に影響を与えます。価値観は千差万別であり、それぞれの譲れないところ、こだわりなどがあります。

・生活歴(どこで、誰と、どのような暮らしをしてきたか) 

・職歴(職種・役職) ・生活習慣(なじんでいる方法、好み、こだわり、など)

・性格 ・問題に直面した時の解決スタイル など 

”理由を探る”認知症ケア P128

・介護者の要因

ケアにかかわるスタッフ、家族の方の言動や行動も、認知症をもつ人の行動に影響を与えます。

・介護者のペースである(本人のペースを考慮しない)

・声かけが早口である ・カタカナ語や専門用語をよく使う

・本人が訴えていることを軽く扱う 

・声もかけずにいきなり介助する ・こわばった表情で介助する

”理由を探る”認知症ケア P131

他にも、声かけの仕方も重要な要素になります。

急に立ち上がる方がいた時に「どうされましたか」と声かけするのと、「トイレですか」と思い込みが先走って声かけするのとでは違ってきます。

後者では、本当に困っていたことがあったとしても、ケアする側との信頼関係がとれていなければ本心を聞き出すことができないかもしれません。

事実と解釈を分けて考える

事実と解釈を同時に行うとどなるか

例として、入浴介助を必要としている認知症をもつ人がいるとします。

その人が「お風呂から出た後に寒くなるからお風呂に入りたくない」という訴えが聞かれたとします。

このとき、事実と解釈を同時に行うと「お風呂に入るのを嫌がって断った」ということになってしまう可能性があります。

事実と解釈を分けて行うとどうなるか

事実だけを抽出すると、「お風呂から出た後に寒くなるからお風呂に入りたくないと言って断ったこと」、「お風呂に入らなかったこと」の2点になります。

「お風呂に入るのを嫌がった」というのは、解釈になります。

事実と解釈を同時に行い、他者に報告するとどうなるか

先ほどの事実と解釈を同時に行った、「お風呂に入るのを嫌がって断った」という事を他者に伝えるとどうなるでしょうか。

「嫌がった」という解釈が入った報告を他者が聞くと、あたかもそれが事実のように感じられます。

つまり次回以降、その人の事を「お風呂に入るのを嫌がる人」というレッテルを貼られるようになってしまいます。

レッテルを貼られると、理由を探る援助の邪魔をしてしまう

一度レッテルを貼られてしまうと、その後の援助に悪影響が出てしまいます。

もし、他の日にその人が「お腹が痛いからお風呂に入りたくない」と言うことがあったとします。

すると、「お風呂に入るのを嫌がる人」というレッテルが貼られているために、お腹が痛いのはお風呂に入らないための嘘の理由(口実)だと解釈されてしまう可能性が高くなります。

改めて、事実と解釈を分けて、他者に報告するとどうなるか

事実と解釈を分けて他者に報告するとどうなるでしょうか。

・「お風呂から出た後に寒くなるからお風呂に入りたくない」と言われた。(事実)
・「それはお風呂に入るのが嫌だというように感じた」(解釈)
・「今日はお腹が痛いと言っていた」(事実)
・「朝食、昼食はしっかり食べれていたので、お風呂に入らないための口実だったのかもしれない」(解釈)というようになります。

事実と解釈を分けるだけで、間違ったレッテルを貼ることはかなり少なくなるのではないかと思われます。

このような考え方が基本姿勢にあると、行動の理由を探りやすくなったり、援助のヒントが得られやすくなります。

個人因子(趣味や興味、役割)の評価

意味ある・重要な作業を目標に

リハビリテーションでは、病気によって引き起こされた機能障害に対し、機能訓練を実施します。

これは対象者の病気(機能障害)を治したいとうニードであり、間違った考え方ではありませんが、人生に対する満足度を高めていくためには、対象者の生活場面における意味ある・重要な作業を引き出し実現することが重要であると考えます。

生活場面における意味ある・重要な作業を引き出すためには、

①どのような生活を送りたいか
②それは、どのような作業を実現することで達成できるのか
③その作業は実際に達成可能なことなのか
④その作業を実現するために必要な準備は誰がどのようにすればよいのか

作業の捉え方と評価・支援技術 P66

という視点を持っておく必要があります。

興味関心チェックシートの活用

作業に対する具体的なイメージが浮かばない場合、作業の意識化にヒントを与えてくれるツールとして、「興味関心チェックシート」が役に立つ場合があります。

シートには様々な作業が記載してあり、このリストを使用することで、漠然とした本人の望む作業の的を絞ることができます。

記入方法:
セラピストが説明後、対象者が述べた結果を記入します。本人が内容理解し、自分で記入可能な場合、本人に行ってもらいます。
方法:
趣味・役割・したいと思っていることを各項目について聞き取りチェックします。
質問方法:
「リストについて、現在しているものには「している」、過去にしていたがしてみたい、してみたいができないと感じしていないものには「してみたい」、する・しないに関わらず興味があるものには「興味がある」にチェックをしてください」

各項目の確認:
チェックがあった項目について、「いつ」「どこで」「誰と」「どんなふうに」「どの程度」しているか、してみたいのかについて確認します。興味があるのチェックについては、どのように興味があるのか、どのような条件であればやってみたいかを確認します。

目標の設定:
これらの情報を基に、具体的な動作レベルでの目標を話し合い決定していきます。

役割の評価

役割チェックリストによる評価

・対象者が病気になる前にどのような役割があったか
・現在どの役割ができるか/できないか
・望む/将来しなければならない役割は何か
これを話し合うことにより、どの役割が対象者にとって重要かを決定する一助とします。

さらに、
・役割の変化が対象者や家族にどのように影響を及ぼすか
・役割の変化が対象者や家族にどのように影響する可能性があるか/影響の及ぼし方
を話し合う必要があります。

質問方法などの実施方法

こちらをご覧ください。

BPSD(心理・行動症状)と家族支援

認知症を有する方の家族の心理と支援をする意義

家族の心理

認知症を有する方の家族の心理のステップには4段階があると言われています。

第1ステップ(否定):
認知症の発症による生活機能の低下や変わった行動、言動があると、家族は「とまどい」ます。

また認知症によるものだと認めたくないために「否定」します。

この時期は他者に話さずにいる時期となります。

第2ステップ(混乱):
認知症が回復しないため、どう対応したらよいかわからず「混乱」がみられます。

説得や注意などをしても効果が出ないため、対象者に向けて「怒り」が生じます。

また効果がでないことから「拒絶」がみられることもあります。

第3ステップ(諦め):
家族は疲労困憊し、色々な理由をつけて「割り切り」「あきらめ」がみられます。

第4ステップ(受容):
認知症により現在の状態なのだと本人をそのままに受け入れる「受容」となります。

受容することにより、本人は落ち着きを取り戻していきます。

 

行動・心理症状(BPSD)について

中核症状は進行性で治りませんが、BPSDについては改善の可能性があります。

そのため、家族にはBPSDの理解と対応方法を説明し、取り組みをサポートしていくことが重要になります。

BPSDに一緒に取り組んでいくように伝え、家族を勇気付けることも大切になります。

また、認知症の進行により、BPSDは消失していくことも伝える必要があります。

認知症を有する本人のケアと家族負担

認知症では本人を中心にケアを進めていきますが、本人の意向と家族の意向が対立しないように調整していく必要があります。

本人と家族の両者を対象者としてとらえていきます。

家族の負担がある場合、家族は自分たちの生活がどうなるのかという不安を抱くことになります。

これでは悪循環となるため、家族の不安やストレスを把握し、その軽減を図ることも必要になります。

家族の負担を減らそうとして、介護サービス(デイサービスなど)を導入しようとしても、準備や送迎などで逆に負担になることも考えられるため、家族の生活リズムやサービス利用により家族がどのような状況になるかも考える必要があります。

家族が行っている介護を認め、ねぎらい、家族が介護を継続したいと思えるように支援していく視点も必要になります。

精神面と肉体面の支援

介護をする家族の苦しみを理解をすることが重要です。

「24時間気が休まる時がなく、心身ともに疲れている」ことに関しては、かなりの家族が感じている苦しみで、夜寝ていても音がすれば外に出て行ったのではないかと心配するなど、寝ても寝た気がしない状態が続くことで、神経が疲弊してしまいます。

「家族の生活の混乱」では、当たり前の生活ができず、様々な日常生活に影響が出ている状態です。

介護により夜あまり眠れず、昼間運転中に眠気に襲われ事故を起こしてしまうなど、危険なことにつながることがあります。

「先行きに大きな不安がある」ではいつまでこのような状態が続くのだろうかという先行きの見えない不安や心配があります。

「孤立無援」では、家族は一番苦しみます。

周囲の理解や介護に対して認めてもらうだけでも、介護を耐える力源にもなります。

家族のアセスメント

家族のアセスメントの視点としては、

①家族は何に精神的負担を感じているか、ストレスを抱えているか
②認知症の理解度はどれくらいか
③行動・心理症状(BPSD)の理解はどれくらいか
④家族の意向と本人の意向はどのくらい一致しているか
⑤家族の精神的負担はどの程度か
⑥家族の肉体的負担はどの程度か
⑦家族の介護力や、家族自身が何らかの疾患を抱えていないか
⑧主たる介護者とキーパーソンは同じかどうか

などがあり、家族の状況を把握していきます。

そして、安易にサービスを導入せず、家族の意向を確認しながらケアプランを立てていきます。

家族の介護負担感の評価

Zarit介護負担尺度日本語版の概要

Zaritによって開発され、身体的負担、心理的負担、経済的困難などの総合的な介護負担を評価できる尺度です。

日本語版では妥当性、信頼性が確認されています。

評価項目は22項目あり、短縮版では8項目で、自己記入式の質問票を用います。

各項目に対し、0:思わない、1:たまに思う、2:時々思う 3:よく思う 4:いつも思うの5段階で採点していきます。

評価項目と結果の解釈

こちらをご覧ください。

FCS ( 介護家族負担感尺度 )の概要と結果の解釈

FCS ( 介護家族負担感尺度 )の概要

FCS ( 介護家族負担感尺度 )は、自宅で生活している障害を持った方を同居もしくは別居という環境において、生活場面で支援をしている方の主観的介護負担感の評価表です。

日本の文化や国民性に合わせて開発されています。

10項目から構成され、支援をする家族全員の評価を行うことが大切です。

高い信頼性と妥当性、実用性が示されています。

自己回答式で、約5分程度で実施できます。

FCS ( 介護家族負担感尺度 )の評価方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

介護負担感指標の概要と評価方法、結果の解釈

介護負担感指標の概要

介護負担感指標は、日本で用いることができる要介護高齢者の介護に伴う家族の負担感を測定することを目的に開発されました。

介護負担感指標では、介護負担感を介護に伴う否定的感情と位置づけ、「要介護高齢者に対する拒否感情」「社会活動に関する制限感」「経済的逼迫感(追い詰められてゆとりがない状態)」の3つのカテゴリーに分け、それぞれ4項目が設定されています(12の項目による構成)。

各項目に対し、3件法にて回答します。

介護負担感指標の評価方法と結果の解釈

こちらをご覧ください。

評価を通じて、問題点の特定から目標設定、援助内容や対応の仕方を考える

問題点の特定

・日常生活活動において対象者の能力が十分に活用されているか
・1日の過ごし方は適当か
・日常生活活動と環境に問題はないか
・随伴症状に対する対応はなされているか
・家族の介護負担に問題はないか

ということがポイントになります、

対象者の現状の能力を最大限発揮できているのか、また、最大限発揮するにはどのような環境設定を行うとよいのかを評価していきます。

1日の過ごし方というのは重要で、対象者は何もすることがないと、身体機能的にも精神機能的にも活動性が低下してしまい、不安や不穏、周辺症状の増悪などにつながる可能性があります。

目標設定

目標設定において重要なことは、対象者の評価をもとにした、能力の活用と環境設定を適切に行うことになります。

また、1日の生活と活動の質と量を適切に設定していくことになります。

援助内容や対応方法の考え方

対象者は、記憶障害や見当識障害により、何をしていたのか、これから何をするのか、ここはどこか、周りの人は誰か、自分は誰か、などというような不安につながりやすい状態になっています。

そのため、安心できるような、記憶障害の影響を受けていないはっきりとイメージできるような自分の存在が必要になります。

問題行動は、そういった現実的な世界と本人の頭の中の世界との間のズレにより生じている可能性があります。

対象者が自分自身をしっかりと認識でき、対象者らしさを発揮することができる活動を探し、提供することで不安が解消できる可能性があります。

対象者が知らないことや、できないことだらけで不安が多い世界に、知っていることやできることがある世界に身を置けるということは、とても安心感につながります。

みなさんだって、初めていく海外旅行で、何も知らない土地に日本語を話すことができる日本料理屋さんがあれば安心するはずです。

できない、知らない世界にずっといるとうことは、対象者の活動性を低下させ、残存能力も奪ってしまう可能性があります。

残存能力を発揮できる場面を設定することは、家族やスタッフ、他者の対象者に対する認識に影響を与えます。

これは、うまくいけば対象者の存在価値が認められることにつながります。

 

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具体的な援助や対応方法

幻覚と妄想への対応

幻覚と妄想の関係

幻視が症状としてある認知症には、レビー小体型認知症があります。この幻視はリアルな幻視とされており、幻覚で見えているものを、実際に存在するかのように表現します。

「子供が見える」だけでなく、「ピンク色のフリルのついた服を着た子供が何人もいる」などと訴えにはリアルさがあります。

幻視に出てくる人と会話する中で怒り出して相手を殴ったりするケースもあるようです。

床に置いている紐を蛇と見誤る、庭の木が人間に見えるなどという場合では、存在するものを見誤るので幻視ではなく錯視になります。

リアルな幻視は妄想に結びつくことがあります。例えば、「親戚の子供が遊びに来ているからご飯の支度をしないといけない」などと言い、実際にご飯の用意をすることもあります。

また幻視との結びつきで「夜に夫の布団の中で女の人が一緒に寝ている」などと訴えることがあります。

リアルな幻視とそれに結びついた妄想は、レビー小体型認知症の約8割に見られると言われており、アルツハイマー型認知症でも低頻度ではありますが出現すると言われています。

レビー小体型認知症の幻視・妄想では薬物治療に反応しやすく、症状が軽減することがよくあるようです(難治例もあり)。

妄想と作話の鑑別

妄想は執着性が強く、同一内容を訴え、継続的にみられます。一方、作話は執着性が弱く、内容は変動し、一時的なものです。
作話のメカニズムについて、

出来事記憶の時間軸が失われたことが背景にあり、過去の記憶を使って現在の記憶の穴埋め(取り繕い)をしている症状と捉えることができます。

認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第2版 P95

とあります。
作話はその場しのぎな話であることが特徴です。

幻覚と妄想への対応

大原則として、幻覚や妄想に対して否定は強化になってしまいます。
本人にとっては実際に体験している事実なため、矛盾の指摘や否定は逆効果になります。

介護者から受けた否定的な感情反応は、幻覚・妄想の状態であっても意識化され自持続しますので、認知症を悪化させることになります。

認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第2版 P95

対応の基本的態度としては、受容的な態度で聞き、否定も肯定もしないことが大切になります。

対象者の背景因子(性格、生育歴、職歴、趣味、家族関係など)を把握し、幻覚・妄想状態における言動が何を意味しているのかを評価します。

5W1H(いつ、どこで、誰が、どのように、何を、なぜ)の質問により、本人が見えている・感じているものを把握し、その世界を受け止めます。

質問を深くしすぎると、逆に症状が増強されることもあるため一般的な質問に留めるようにします。

不安の原因となる要因がわかれば、それを取り除けるようにします。状況に応じた「よき演出者」になり対処する姿勢が必要です。

被害妄想がある場合、孤独感や不安感が軽減できるように本人が集中して取り組めることを探し、ともに取り組むようにします。

在宅介護では、話し相手や話す機会の減少により寂しさや不安が募ることも考えられます。

会話の機会を増やし、そのような心理を軽減させるような取り組みも必要と考えます。

被害妄想と所属の欲求

人間の欲求段階

被害妄想と所属の欲求のの関係性を考える前に、人間の欲求段階について知っておく必要があります。

人間の欲求段階とは、心理学者のA・H・マズローが唱えた「欲求段階説」に基づく考え方です。人間は5つの欲求段階に分けられると言われています。

①生理的欲求
生命維持のために必要な欲求で、食事、睡眠、排泄などがあります。
②安全の欲求
安全性、経済の安定、良好な健康状態、予測可能な秩序だった状態などがあります。
③所属の欲求
社会的に必要とされている、果たせる社会的役割がある、人間関係があり、他者に受け入れられている、どこかに所属しているという欲求です。
家族、友人、会社、生活している地域・コミュニティーなど誰かとの関係性を確認できることを意味しています。
④承認の欲求
他者から価値のある存在と認められ、承認されたいという欲求です。
⑤自己実現の欲求
自分の能力を最大限発揮し、創造的な事をしたいなどという欲求。

被害妄想と所属欲求のつながり

通常被害を訴える被害者がいるとき、加害者も存在します。

そこには被害者と加害者という他者との人間関係が存在することになります。

家族、ケアをする者など、身近にいる人を加害者として訴えるのには、その人の事を頼りにしていたり、その人との関係性を無くしたくないとの考えの表れだとも解釈できます。

このように、所属の欲求に基づく見方で捉えると、被害妄想も変わった視点で捉える事が可能になります。

被害妄想を訴える人は、どのような人間関係を満たしたいのか

新たな人間関係が作られることで、被害妄想が軽減したという例があるそうです。

例えば、ケアする側の人が認知症をもつ人に生活の知恵やその方法を教えてもらったりすることで、教えてもらう側と教える側の関係ができる、もしくは今まで本人が卑下していた関係性が対等になるといったことが起こります。

このような新しい関係性ができあがると、所属欲求が満たされやすくなります。

また、場合によっては承認の欲求も満たされる可能性もあります。

認知症をもつ人が満たしたい人間関係を考えることが、被害妄想軽減へのヒントとなるかもしれません。

物盗られ妄想のメカニズム

認知症の人は「なくした」と自己嫌悪の方向に考えるのではなく、「盗られた」と責任転嫁の方向に解釈します。これには、自身の記憶障害を認めないアルツハイマー型の病識欠如と共通する基盤があるように思えます。

認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第2版 P93

とあります。
また、物盗られ妄想のターゲットとなりやすいのは同居している身近な介護者(お嫁さん)などが多いことが特徴です。
近親者が妄想の対象になる背景として、以下のようなことが考えられます。

認知症の人の心に潜む「不安と寂しさ」がその背景にあると分析しています。『盗ったとなじる相手に対する彼らの「頼りたいのだけど、頼るのは絶対に嫌!」という両価感情』があるといいます。
〜中略〜
認知症の人がどれだけ深い不安と寂しさに包まれているかをよく理解することから、妄想への対応が始まるのです。妄想の背景にある不安や寂しさに気づくことが大切です。

認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第2版 P93

「盗った」を「もっとかまって」と捉え直すことも重要です。
認知症の進行により、自分や他者への関心の弱まりから物盗られ妄想は消失していきます。

物盗られ妄想の特徴

①背景に記憶障害がある
②置き忘れやしまい忘れを盗られたと即断する
③興奮しやすく騒いで知人や警察に連絡する
④犯人が身近な人
⑤対象はお金や土地などの高価なものから始まり、ぞうきん・スリッパなど些細な日用品に及ぶ
⑥説得や訂正は無効

認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第2版 P93

妄想は病前性格が積極的、仕事熱心、負けず嫌い、面倒見がよいなどに多いとされています。自立心の強い方は、「忘れる」ことを受け入れることができず、「盗られた」と相手に責任転嫁することで自分が守られます。これは、心理的防衛機制の合理化に当たります。

このような状態は、認知症者が心理的に苦しい状態を表しているため、認知症者が忘れても困らない環境設定や周囲の人の受け入れが必要になります。

妄想の背景の分析

認知症のBPSDでは本人が「何かおかしい」と感じている合図であり、ニーズが満たされていないために生じると考えることができます。

そのため、まずは何を最も不安に感じているかを把握することから始める必要があります。

「5W1H」の質問により、何に不安を感じているかを知る手がかりにします。
「いつからなくなったのか」
「何を盗られたのか」
「どこに置いたと思うか」
「誰が盗ったと思うか」
「なぜとられたと思うか」
「どのようにして盗ったと思うか」

などを聞いていきます。しかし、逆に相手を興奮させることもあるため、対応には注意が必要です。

物盗られ妄想の対応

普段から物盗られ妄想がみられる場合、介護者はだいたいの隠し場所を把握できていることが多いため、一緒に探すようにします。この時、介護者が見つけてしまうと介護者が隠したと認識されてしまうため、「相手に見つけさせる」ようにします。

普段から介護者が保管し、必要に応じ差し出すことも対応方法のひとつです。

手提げ袋やショルダーバックの中に入れて常時身につけておいてもらったり、少し間を置いてから、他の興味ある活動に誘導し、楽しく過ごしてもらうことも考えられます。

徘徊の分類と夕暮れ症候群への対応

徘徊の分類

①徘徊でない徘徊(迷子)
場所の見当識障害により道に迷い迷子になります。アルツハイマー型認知症でよく見られます。

②反応性の徘徊
馴染みのない場所(環境要因)にいることで生じる見当識障害と不安を元に出現する徘徊です。

リロケイショナルダメージという表現もあります。

環境が変わりそこがどこかわからない、家に帰りたいが帰れないなどの不安により徘徊にいたります。

環境への慣れにより「頭の中の地図」が完成すれば消失しますが、それには時間がかかります。

アルツハイマー型認知症でよくみられます。

③せん妄による徘徊

せん妄状態により集中力や注意力が低下し、また興奮状態(過活動)で歩き続ける、ぼんやりとして活動性低下(低活動)で夢遊病のようにフラフラと歩き続けるようなことが特徴です。

夜間の発生率が高く、時間経過により症状の変動があり、意識障害への対処により回復します。

レビー小体型認知症ではこのような症状が良くみられ、せん妄との鑑別が困難なことがあります。

④脳因性の徘徊
脳の器質障害により起こる衝動性亢進症状の一部です。

前頭葉障害により出現し、前頭側頭型認知症(ピック病)や前頭葉症状の強いアルツハイマー型認知症でみられることがあります。

周徊(周遊)と呼ばれ、常に同じような軌跡で早足、硬い表情で前に人がいても押しのけるように歩くという特徴があります。

⑤「帰る」と「行く」に基づく徘徊
徘徊というよりも無断外出に近く、不安な現在から古き良き時代への帰郷願望です。

現在行っていないことをもっともらしく訴え、外に出ようとします。

夕暮れ時に多いことから、「夕暮れ症候群」と呼ばれています。

ごく軽い意識障害を伴っているため、せん妄と捉える見解もあるようです。アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症でよくみられます。

一つは、道に迷って近くをうろうろするのではないこと、もう一つは、名前や住所は覚えているのに他人に尋ねようしないで歩き続けることから、単に地誌的見当識障害で迷子になるのではなく、迷子になったという状況判断をもてない、または迷子になったらどう対処したらよいかという判断ができないと捉えています。

認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第2版 P101

徘徊への対応

徘徊の出現に共通する要因は、場所の見当識障害と不安です。
対応の基本方針として、

①場所を覚え
②環境に慣れ親しみ
③今いる場所が楽しいところとなって
④そこに役割や日課があり
⑤ほかにどこにも行く必要がないと思うようになる

認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第2版 P101

が挙げられます。
馴染みの道具や介護者の笑顔、明るくて居心地よい雰囲気作りも必要です。

反応性の徘徊(失見当による)では、ポイントとなる場所がよくわかるようにします。

トイレには「便所」と大きく書いた紙を貼るなどです。

不安や孤独感を軽減できるように、なじみの関係作りも大切になります。

家(在宅では生家や元の家)への帰宅要求が強い場合、一緒に外に出て他の事に考えが行くようにすることもあります。

転居などで環境が異なる場合は、本人の馴染みの家具の配置などを以前と同様にし、コミュニケーションを密にするなどして対応します。

 

せん妄による徘徊では、原因の根本治療を行う事が重要です。

強引に制止しようとすると興奮して乱暴になる事もあるため、手を握るなどして安心感を感じられるようにし、夜間だと静かに眠れるように誘導します。

部屋や本人がいる場所を明るくすることも有効です。

昼夜逆転を避けるため、日中には活動してもらえるようにしていきます。

脳因性(欲動・衝動性)の徘徊では、活力があり、他の事に関心も高いため、運動や散歩などの興味あるものに誘導し、エネルギーを転換します。

一緒に行動し、安心感を持ってもらいます。薬物治療が有効な場合があります。

「帰る」と「行く」に基づく徘徊(夕暮れ症候群)への対応

夕暮れ症候群において、自宅にいるのに「家に帰る」と訴える場合、

①ここが自分の家だと説明する(名前、住所なども見せる)
②鍵を閉めるなどがあります。

認知症の進行を考えたときに、初期、中期、後期では良い対応方法が異なることがあります。
①は初期、②は後期では奏功する可能性があります。

徘徊について、

「いつ」「どこで」「どのように」起こるのかを把握し、「家に帰る」と言った瞬間は、そこは「自宅であって自宅でない場所」なんだということを援助者が理解しておくことが重要です。

掘り起こせ”人”のやる気!我らOTスコップ隊 臨床作業療法 Vol9 No.2 2012 P177

とあります。

行動が起こる時間が決まっている場合、その少し前に一度家の外に出てみることが良い対応になる可能性があります(介護者は大変です)。

行動が出はじめた時に、お菓子を差し出し、食べているうちに落ち着くこともあります。

様々な方法が考えられますが、根本原因は今現在の家を「我が家」だと思っていないことにあります。

その理由も今の家での生活に満足感が足りていないと捉えて、本人の役割や居場所作りをすることで「我が家」だと思うことにつながり、徘徊は減少する可能性があります。

興奮と対応例

興奮状態にあると、無理に相手を制止しようとしたり、行動を修正しようとしても、興奮がさらに強くなることがあります。

自他に危害が加わることがない状況であれば、介護者は一旦その場を離れて戻って来るなどすると、興奮が落ち着いていることがあります。

抑うつと対応例

抑うつ状態になると、食事摂取量が減り、体重減少が起こることがあります。

高齢者では脱水や低栄養状態がると日常生活機能を低下させることもあるので、食事や水分摂取量を確認していくことが大切です。

不安と対応例

本人が同じことを何度も確認して不安がる様子などがみられる場合、対応は本人の訴えに対して受容的に接するようにします。

疎ましく感じさせる態度をとることは避けるようにします。

先の予定を知らせることでかえって不安になるような場合、前もって伝えておく必要性が高くなければ言わないようにすることもあります。

多幸と対応例

多幸状態では、他者とのコミュニケーションにおいて、急に笑ってしまったりすることがあります。

このようなことは相手を不愉快にさせてしまうことも考えられます。

このような場合、可能であればあらかじめ周囲の人に認知症の症状としての態度だと説明しておくことが必要になります。

無関心と対応例

無関心では、本人に刺激が入らないとさらに反応が無くなり無関心が強くなります。

様々な話題を提供しながら、本人が興味をもてるようにし、刺激が入力されるようにします。

脱抑制と対応例

脱抑制でマナーや礼儀正しさが失われている場合、怒るのではなく本人に寄り添い、優しくボディタッチするなどして行動を止める声かけをします。

易怒性と対応例

易怒性があると本人はすぐ腹を立てるようになります。

このような時に介護者も反論するような態度をとると、さらに怒りが増すことが考えられるため、本人をしばらく一人にしたりすることで怒りが和らぐことがあります。

異常行動と対応例

異常行動があると、同じところを行き来したり、意味のない行動を繰り返すことがあります。

このような場合、他者に迷惑のかかる行動でない限り、何度か行わせることで行動がおさまることもあります。

おさまらないのであれば、別の行動(お茶休憩)などを提案して誘導します。

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