橈骨遠位端骨折では、手関節の可動域を改善させることが重要です。その際、ただやみくもに関節を動かすだけではなかなか可動域の改善は期待できず、むしろ痛みを助長してしまうことが考えられます。今回、橈骨遠位端骨折と手関節背屈のROM改善方法について、まとめていきたいと思います。

橈骨遠位端骨折と手関節背屈のROM改善方法

他動的関節可動域訓練を行う時期に注意

橈骨遠位端骨折における関節可動域訓練の考え方として、自動運動によるROM訓練と、他動運動によるROM訓練を行う時期については注意が必要です。
例えば、手術においてロッキングプレートなどを用いた場合、術後すぐに他動運動によるROM訓練を行ってはいけません。
まずはマイルドな自動運動によるROM訓練を行っていく必要があります。

他動運動を開始してよい時期については、もちろんドクターに確認する必要がありますが、文献等を参考にすると概ね術後2週間程度から開始するようになっているのではないでしょうか。
それまでは自動運動によるROM訓練が中心で、リハビリ以外の時間においても自主練習として自動運動を行えるように指導し、習慣化をすすめていくことが大切になります。

手関節背屈運動のバイオメカニクス

手関節背屈運動の改善を図るには、まずはそのバイオメカニクスを知る必要があります。
日常生活における手関節の実用的な関節可動域としては、手関節背屈は約40度必要と考えられています。
しかし、床上動作を行う場合、手関節背屈40度ではどう考えても不十分だと考えられます。
床上動作を行うためには、手関節背屈は80〜90度は確保しておきたいところです。

手関節背屈は橈骨手根関節の動きが中心になって行われています。
その割合としては、橈骨手根関節が66,5%、手根中央関節が33,5%だと言われています(手関節掌屈は橈骨手根関節が40%、手根中央関節が60%だと言われています)。

筋肉との関係としては、背屈には長・短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、関与しています。
手関節を背屈すると自然に橈屈がみられますが、この事を考慮すると、手関節背屈の可動域を改善するには橈屈方向の可動域を改善させる必要もあります。
なお、橈屈、尺屈に関してはほとんどが手根中央関節の動きによって生じているとされています。

橈骨手根関節とは

橈骨手根関節とは、橈骨と近位手根骨で構成される関節です。
なお、近位の手根骨には、豆状骨、三角骨、月状骨、舟状骨があり、遠位の手根骨には、有鈎骨、有頭骨、大菱形骨、小菱形骨があります。

橈骨手根関節の動きを出すには、手根骨の位置の把握と触診をできることが重要になります。

橈骨手根関節を動かすにはどのようにすればよいのか

橈骨関節を動かすには、どのように行えばよいかを考えていきます。
まず、リスター結節の位置を確認します。
・橈骨茎状突起(橈骨遠位の出っ張っている部分)、尺骨茎状突起(尺骨遠位の出っ張っている部分)を確認します。
・その間の1/3(橈骨側)にリスター結節が確認できます(出っ張っている部分)。

次に、舟状骨、月状骨の位置を確認します。
第2、第3中手骨をたどっていくと、その近位の部分に有頭骨に触れます。

舟状骨と月状骨の位置を確認します。
・舟状骨と月状骨は、有頭骨のすぐ下にあります。


*丸で囲んだ部分

これらの手根骨の位置を確認できれば、橈骨手根関節を動かしていきます。
①一方の手で舟状骨と月状骨を固定します。
②もう一方の手でリスター結節を中心にして橈骨遠位(前腕部)を固定します。
舟状骨・月状骨を固定している側を固定しながら動かすことで、橈骨手根関節の動きを出していきます。

*その後、手関節背屈のストレッチも行いますが、その際には橈屈の動きを伴いながら背屈することで背屈の動きを改善させていきます。
もちろん、筋による制限因子がある場合は、その事も考慮していく必要があります。

手根骨や関節面の動きを出していく時には痛みが生じやすいですが、その際には無理に行いすぎないように注意してください。
痛みは患者様にとっては苦痛であり、リハビリテーションに対する負の情動や意欲低下にもつながることがあります。
そのため、まずは今現在行っていることの意義を説明したり、「痛みが出たらすぐに言ってくださいね。」などと患者様への配慮を忘れないようにしてください。