移乗動作がなかなか自立しない原因の一つに、身体機能的制限によるものと、高次脳機能障害によるものが考えられると思います。身体機能的なことに関してはわかりやすいですが、高次脳機能障害の視点から移乗動作を考えていくことも大切です。今回、移乗動作が上手くいかない原因としての高次脳機能障害についてまとめていきたいと思います。

移乗動作が上手くいかない原因!高次脳機能障害に着目して!

移乗動作の分析と動作に必要な高次脳機能

移乗動作の動作分析を行うときには、主に以下のような相に分けることができます。

・移乗可能な位置にまで車椅子を近づける
・左のブレーキをかける
・右のブレーキをかける
・左のフットレストを上げる
・右のフットレストを上げる
・立ち上がる
・その場で回転する
・着座する

安全で自立した移乗動作を行うには、これらの手順を毎回同じように行う必要があります。

また、脳卒中片麻痺の方であれば、非麻痺側を中心として下肢で支持し、バランスを保ちながら移乗動作を行う必要もあるでしょう。

移乗動作がうまく行えない原因を考える際、身体機能的な問題であれば考えやすいのですが、高次脳機能面の要因だと「なんでできないのか?」と思うことが多くあるかもしれません。

移乗動作は転倒のリスクが非常に高い動作のため、なぜ移乗動作にエラーが起こるのかをきちんと評価しておく必要性があります。

以下に、移乗動作で観察されるエラーと、高次脳機能面の関係性について示していきます。
なお、高次脳機能障害と関係あるエラーがみられやすいのは、立ち上がり動作までとなっています。

 

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移乗動作のエラーと高次脳機能障害

移乗可能な位置まで車椅子を移動する

この際にみられる動作遂行上のエラーとしては、例えば、
・車椅子とベッドとの間が離れすぎている
・車椅子とベッドとの間が近すぎる
などが観察されます。

このとき、原因として考えられる高次脳機能障害は、
・空間関係の障害
です。

空間関係の障害とは、自分と対象物との関係性を取ることが難しくなる状態です。
空間関係の障害があると、自分と対象物の距離を大きく見積もってしまったり、逆に小さく見積もってしまうことがあります。

ブレーキをかける

ブレーキをかける動作の遂行上のエラーは、当たり前ですが、ブレーキをかけ忘れることです。

このとき、原因として考えられるのは、
・半側空間無視
・順序立ての障害
などです。

順序立ての障害は、観念性失行(観念失行)において観察される他、認知症などの初期においても観察されることがあります。
一つの活動や動作を系統立てて、システムとして順序立てできない状態となります。

ブレーキ管理が不十分な要因として、他にも記憶の問題や、注意力の問題もあるかもしれません。

評価として、言葉で確認すると移乗の手順が順序立てて述べることができるかということも把握しておく必要があります。

フットレストを上げる

フットレストを上げる動作の遂行上のエラーは、これも当たり前ですが、フットレストを上げないことです。

このとき、原因として考えられるのは、
・半側空間無視
・順序立ての障害
などです。

先ほどのブレーキ管理の不十分さと同じような原因を挙げることができます。

 

立ち上がる

立ち上がる動作は、どちらかというと身体機能的な要素が大きくなる動作工程になります。
この動作の遂行上のエラーは、上手く立ち上がることができないことやバランスを崩したりすることになります。

このとき、原因として考えられるのは、
・空間関係の障害
・麻痺側身体の不注意
などが考えられます。

空間関係の障害は先ほど説明しましたが、立ち上がる前までの動作として手すりを持ちにリーチする際に、測定過大あるいは測定過小となる場合があります。

麻痺側の身体的な不注意があると、立ち上がる際の足の位置が適切にならず、重心を前方に移動しにくかったり、支持基底面が狭くなりバランスを崩しやすくなることが考えられます。

 

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毎回同じ手順で安全に移乗できるか、環境が変わっても移乗できるか

移乗動作は転倒の危険性がある動作であり、毎回同じ手順を踏んで安全に移乗できるのか、また、自室のベッド、トイレなど、環境が変わっても安全に移乗できるのかどうかも評価していく必要があります。

また、夜間は睡眠薬を服用することもあるかもしれません。
日中はうまく動作が行えていても、起床時や夜中トイレに行く時にリスクが高まる方がいるかもしれません。

このように、トータル的に考えて、移乗動作を評価していく必要性があります。