意識レベル評価のJCSとGCS|違い・使い分け・脳卒中リハでの記録例
脳卒中患者のリハビリ前に、「JCSとGCSのどちらを使えばよいのか」と迷うことがあります。
結論から言えば、どちらか一方へ機械的に統一するのではなく、院内の標準、評価目的、共有先に合わせて使い分けるのが実践的です。
院内でJCSが標準として定められている場合は、その記録基準に従います。病棟・リハの日常共有ではJCSが使いやすい一方、救急・ICU・脳神経外科・転院先との共有では、GCSをE・V・Mに分けて併記した方が反応の内訳が伝わりやすい場合があります。
ただし、JCSもGCSも意識反応を共有する尺度です。脳卒中の状態を単独で診断したり、リハを続けてよいかを点数だけで決めたりするものではありません。麻痺、失語、構音障害、半側空間無視、瞳孔、バイタルサイン、普段からの変化も一緒に確認します。
目次
この記事で分かること
- JCSとGCSの違い
- JCS・GCSの評価方法
- 脳卒中リハでの使い分け
- 評価を誤りやすい条件
- リハ前後の記録・申し送り例
- 急な変化を認めたときの対応
- 患者・家族へ説明するときの注意点
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JCSとGCSの違い
| 比較項目 | JCS | GCS |
|---|---|---|
| 主な特徴 | 覚醒の程度を中心に、0・1桁・2桁・3桁で表す | 開眼E・言語V・運動Mを分けて表す |
| 強み | 短時間で把握しやすく、日本の院内共有で使いやすい | どの反応が低下しているかを成分別に共有できる |
| 記録例 | JCS 0、JCS 2、JCS 20 | E3 V4 M6、合計13 |
| 注意点 | 見当識、発語、開眼反応の解釈で誤り得る | 合計点だけでは反応の違いが隠れる |
| 評価不能時 | 条件や理由を具体的に併記する | 評価不能成分は無理に点数化せず、必要に応じてNTと記録する |
| 向く場面 | 病棟・リハ前後の日常的な経過共有 | 重い意識障害、救急・ICU、他施設連携、GCSを用いる分類 |
JCSは日本で頻用される尺度ですが、簡便だから誰が評価しても同じになるとは限りません。研修医を対象としたシミュレーション研究でも、見当識、呼びかけへの開眼、刺激に対する運動反応などで誤判定が生じています。
GCSは3成分に分かれるため情報量がありますが、失語、挿管、気管切開、鎮静、聴覚障害、強い運動麻痺などの影響を受けます。両尺度とも、数字だけでなく「どの条件で、どの反応が得られたか」を記録することが欠かせません。
JCSの評価方法
JCSは、まず「刺激なしで覚醒しているか」「刺激すると覚醒するか」「刺激しても覚醒しないか」を大きく分け、各群を3段階に細分します。
| JCS | 状態の目安 |
|---|---|
| 0 | 意識清明 |
| 1 | 刺激なしで覚醒しているが、意識清明とはいえない |
| 2 | 見当識障害がある |
| 3 | 自分の名前や生年月日が言えない |
| 10 | 普通の呼びかけで容易に開眼する |
| 20 | 大きな声や身体への刺激で開眼する |
| 30 | 強い刺激と呼びかけの反復で、かろうじて開眼する |
| 100 | 覚醒しないが、刺激を払いのけるような動作がある |
| 200 | 覚醒せず、刺激でわずかな運動や顔をしかめる反応がある |
| 300 | 刺激に反応しない |
評価表の細かな文言や刺激方法は、施設で統一してください。
痛み刺激を自己流で繰り返すと、患者へ不要な侵襲を加え、反応の解釈も不安定になります。通常のリハ場面で療法士が新たに強い刺激を加えるのではなく、既存の評価結果と施設手順を確認し、必要時は訓練された職員と評価します。
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JCSで残したい具体所見
「JCS 2」だけでは、何を誤ったのか分かりません。次のような所見を短く添えます。
- 呼名で開眼したか
- 開眼を維持できたか
- 日付、場所、人物のどこを誤ったか
- 返答まで何秒ほどかかったか
- 簡単な指示に従えたか
- 発語量や構音が普段と変わったか
- 左右の運動反応に差があったか
- 評価時刻、薬剤、睡眠、疲労、発熱、疼痛などの条件
GCSの評価方法
GCSは、開眼反応E、言語反応V、運動反応Mを別々に評価します。
開眼反応 E
| 点数 | 反応 |
|---|---|
| E4 | 自発的に開眼 |
| E3 | 呼びかけで開眼 |
| E2 | 圧刺激で開眼 |
| E1 | 開眼なし |
| E:NT | 眼瞼腫脹、眼外傷などで評価不能 |
言語反応 V
| 点数 | 反応 |
|---|---|
| V5 | 見当識が保たれた会話 |
| V4 | 混乱した会話 |
| V3 | 単語としての発語 |
| V2 | 声・音のみ |
| V1 | 発語なし |
| V:NT | 挿管、気管切開、重度失語、言語差などで評価不能 |
運動反応 M
| 点数 | 反応 |
|---|---|
| M6 | 命令に従う |
| M5 | 刺激部位へ手を持っていく局在反応 |
| M4 | 刺激から逃れる反応、または正常屈曲反応 |
| M3 | 異常屈曲反応 |
| M2 | 伸展反応 |
| M1 | 運動反応なし |
| M:NT | 鎮静、神経筋遮断、重度麻痺、外傷などで評価不能 |
M4の「逃避反応・正常屈曲反応」と、M3の「異常屈曲反応」は区別します。ここを曖昧にすると、運動反応を実際より重く評価してしまう可能性があります。
GCSは「13点」のような合計だけでなく、E3 V4 M6(合計13)のように内訳を残します。同じ合計点でも、開眼・言語・運動の組み合わせは異なり、臨床的な意味も同じとは限らないためです。
たとえば同じ13点でも、E3 V4 M6とE4 V3 M6では、変化している反応が異なります。合計点は便利ですが、臨床共有ではE・V・Mの内訳を優先して残します。
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評価できない成分がある場合
評価できない成分がある場合は、無理に点数へ当てはめません。
たとえば、挿管、気管切開、強い失語、眼瞼腫脹、重度麻痺、鎮静、神経筋遮断薬の影響などで評価できない成分がある場合は、施設の記録様式に従い、評価不能の理由を明記します。
GCSでは、評価不能成分を1点として扱うのではなく、必要に応じてNT:Not Testableとして記録します。評価不能成分がある場合は、合計点を機械的に出すよりも、E・V・Mの各成分と評価不能理由を共有することを優先します。
記録例は次のようになります。
GCS E4 V:NT M6。気管切開により言語反応は評価不能。開眼は自発的、左右とも一段階指示に従う。
このように記録すると、単に「GCS合計何点」とするよりも、どの反応が確認でき、どの反応が評価不能だったのかが伝わります。
脳卒中リハでのJCSとGCSの使い分け
| 場面 | 使いやすい方法 | 実践上のポイント |
|---|---|---|
| 病棟・リハ前後の日常確認 | 院内標準がJCSならJCS | 点数と具体所見、前回との差を記録する |
| 意識障害が強い | GCSの併記を検討 | E・V・Mのどこが変わったかを共有する |
| 救急・ICU・脳外科との共有 | 相手側の標準に合わせる | GCSなら合計だけでなく成分を伝える |
| 転院・救急搬送などの施設間連携 | GCSが共有しやすい場合がある | 施設間で用語と評価時刻をそろえる |
| 脳出血・くも膜下出血の重症度分類 | GCSが用いられる場合がある | ICH ScoreやWFNS分類は医師の総合評価の一部 |
| 急性期脳卒中の神経症状全体 | JCS/GCS+NIHSS・局所所見 | 意識だけでなく麻痺、失語、無視などを見る |
「病棟ではJCS、救急ではGCS」と固定するのではなく、施設の運用と共有相手を確認します。同じ病院でも、看護記録はJCS、医師記録や重症度分類はGCSということがあります。
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JCSとGCSを単純換算しない
JCSとGCSには関連がありますが、評価構造が違います。
JCSからGCSへの換算方法を検討した研究はありますが、個々の患者で一対一に置き換えられるわけではありません。研究やデータ処理上の変換と、目の前の患者の臨床評価は分けて考える必要があります。
臨床では、必要な尺度をその場で評価して記録するのが基本です。
脳卒中ではJCS・GCSだけでは足りない
JCSやGCSが前回と同じでも、新しい麻痺、失語、構音障害、半側空間無視などが出ている可能性があります。
反対に、失語がある患者では、理解していても言語反応が低く見えることがあります。強い麻痺や失行がある患者では、命令を理解していても運動反応が低く見えることがあります。
NIHSSは、意識に加えて眼球運動、視野、顔面・上下肢の運動、失調、感覚、言語、構音、消去・無視などを系統的にみる尺度です。JCS/GCSの代わりではなく、脳卒中の局所神経症状をみる別の評価軸として使います。
ただし、療法士が毎回NIHSS全項目を独自判断で実施するという意味ではありません。院内ルールと役割分担に沿い、少なくとも普段と異なる麻痺・発語・理解・視線・注意の変化を見逃さず共有します。
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リハ前後の評価手順
1.評価条件をそろえる
リハ前後の意識レベルを比較するには、点数だけでなく条件をそろえることが重要です。
確認したい条件は次の通りです。
- 評価時刻
- 覚醒に影響する薬剤や鎮静
- 睡眠、疲労、食事、発熱、疼痛
- 酸素投与、挿管、気管切開
- 補聴器、眼鏡、義歯
- 失語、認知機能、言語の違い
- 安静度
- 主治医・看護師からの申し送り
- 前回値と普段の反応
2.刺激なしの状態を観察する
まず、刺激なしの状態を観察します。
開眼、視線、姿勢、呼吸、表情、自発的な発語、自発運動を確認します。いきなり強い刺激から始めません。
3.呼びかけと簡単な指示への反応を見る
呼名への開眼、返答、簡単な一段階指示への反応を確認します。
返答内容だけでなく、反応までの時間、開眼の持続性、発語量、声量、構音、普段との差も見ます。
4.JCSまたはGCSを記録する
院内基準に従い、必要ならJCSとGCSの両方を記録します。
GCSはE・V・Mの内訳を残します。評価不能成分がある場合は、無理に点数化せず、評価不能の理由を記録します。
5.局所神経所見とバイタルを確認する
脳卒中では、意識レベルだけでなく局所神経所見も重要です。
患者の状態と施設基準に応じて、次の点を確認します。
- 顔面・上下肢の左右差
- 発語、構音、理解
- 視線、視野、注意
- 半側空間無視の変化
- 瞳孔の左右差や変化
- 頭痛、嘔気、嘔吐
- 血圧、脈拍、呼吸状態、SpO2
- 疲労、眠気、疼痛、発熱
6.リハ中と終了後に再評価する
離床や運動負荷の後は、開始前と同じ条件・尺度で比較します。
変化があれば、点数だけでなく、具体所見と負荷内容を残します。
たとえば、「歩行練習後にJCSが変化した」だけでは不十分です。何分歩いたのか、どの程度の介助だったのか、血圧・脈拍・SpO2はどうだったのか、発語や麻痺に変化があったのかまで残すと、次の判断に使いやすくなります。
評価を誤りやすい条件
| 条件 | 誤って見えやすいこと | 記録・対応 |
|---|---|---|
| 失語 | 質問に答えられず意識低下に見える | 非言語反応、理解、普段の言語所見を併記 |
| 挿管・気管切開 | GCS Vを評価できない | V:NTなど、評価不能理由を記録し、無理に点数化しない |
| 鎮静薬・睡眠薬 | 反応低下が病態悪化に見える | 薬剤名、投与時刻、普段との差を確認 |
| 強い麻痺・失行 | 指示に従えずMが低く見える | 動作能力と理解を分けて観察 |
| 聴覚障害・言語差 | 呼びかけへ反応しない | 補聴器、筆談、通訳、伝達手段を調整 |
| 眼瞼腫脹・眼外傷 | 開眼できずEが低く見える | 評価不能要因を記録 |
| 疲労・日内変動 | リハ後だけ点数が変わる | 時刻、負荷量、休息後の再評価を記録 |
| 疼痛 | 呼びかけや指示に集中しにくい | 疼痛部位、程度、鎮痛薬の使用を確認 |
| 発熱・感染 | 反応低下やせん妄様に見える | 体温、全身状態、普段との差を共有 |
大切なのは、点数を「正解」にすることではありません。反応を妨げる条件を見つけ、同じ患者の変化を再現可能な形で共有することです。
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脳卒中リハでの記録例
JCSを用いた記録例
9:00、安静時JCS 0。呼名に即時反応し、氏名・場所・日付を回答。右上下肢の運動、発語は前日と著変なし。端座位10分後、JCS 0を維持。返答遅延なし。血圧・脈拍・SpO2は院内基準内。
この記録では、JCSの点数だけでなく、呼名への反応、見当識、運動、発語、リハ後の変化、バイタルをまとめています。
変化を認めた記録例
リハ開始前JCS 1、呼名で即時開眼。歩行練習5分後、閉眼が増え、呼名への開眼に反復を要した。返答遅延と発語量低下を認めたため練習を中止し、安全な姿勢を確保。バイタルと左右差を再確認し、看護師へ開始前後の変化を報告。
この例は、特定の中止基準を示すものではありません。実際は患者ごとの指示と施設基準を優先します。
GCSを用いた記録例
14:00、GCS E3 V4 M6、合計13。呼名で開眼し、会話は成立するが日付を誤答。左右とも一段階指示に従う。午前記録E4 V4 M6から開眼反応が変化。鎮静薬追加なし。看護師・医師へ評価時刻、内訳、具体反応を共有。
評価不能成分がある場合の記録例
10:30、GCS E4 V:NT M6。気管切開により言語反応は評価不能。自発開眼あり。左右とも一段階指示に従う。前回と比較して開眼・運動反応に明らかな低下なし。
このように、評価できない成分がある場合は、無理に合計点を出すよりも、確認できた反応と評価不能理由を明確に残します。
申し送り例
14時のリハ前はJCS 1でしたが、端座位後は普通の呼びかけで開眼しにくくなりました。GCSでは午前のE4 V4 M6からE3 V4 M6へ変化しています。新しい明らかな麻痺は確認できませんが、返答が遅いためリハを中止し、ベッドへ戻して看護師へ報告しました。
申し送りでは、点数だけでなく、時刻、前回との差、リハ内容、具体的な反応、報告先を伝えます。
急な悪化を認めたとき
意識反応の急な低下、新しい片麻痺、言葉が出ない・理解できない、瞳孔の変化、けいれん、突然の激しい頭痛、嘔吐、呼吸・循環の変化などを認めた場合は、JCSやGCSの点数を最後まで確定することより、安全確保と院内の緊急連絡手順を優先します。
対応の基本は次の通りです。
- 動作・運動を止め、安全な姿勢を確保する
- 応援を要請し、院内ルールに沿って報告する
- 直前の活動内容を確認する
- 発症時刻、または最終正常確認時刻を整理する
- 意識、発語、麻痺、バイタルなど、確認できる範囲の変化を伝える
- 自己判断でリハを再開しない
療法士は、安全な姿勢の確保、直前の活動内容、最終正常確認時刻、意識反応、発語、麻痺、バイタルの変化など、確認できる範囲の情報を整理して報告します。ABCの評価や医学的判断は、施設の役割分担に沿って、医師・看護師を含むチームで行います。
スコアが1段階変わるたびに同じ対応を取る、という一律ルールではありません。点数の変化量だけでなく、変化の速さ、具体所見、バイタル、基礎疾患、医師の指示を統合します。
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患者・家族への説明例
患者さんやご家族へ説明するときは、点数の意味を細かく説明しすぎるよりも、「点数だけで判断しないこと」と「普段との違いを伝えること」を強調します。
説明例は次の通りです。
JCSやGCSは、目を開ける、話す、指示に反応するといった様子を、医療者同士で同じように共有するための指標です。点数だけで診断や回復を決めるものではありません。いつもとの違いや、手足・言葉の変化も一緒に確認します。
患者さんやご家族がJCSやGCSを自分で点数化する必要はありません。
大切なのは、「いつもより反応が鈍い」「言葉が出にくい」「片側の手足が動きにくい」「急に強い頭痛や嘔吐がある」「けいれんがある」など、普段との違いに気づいたときに自己判断せず医療者へ連絡することです。
新人療法士向けチェックリスト
リハ前後で意識レベルを確認するときは、次の点を確認します。
- 院内ではJCSとGCSのどちらが標準か確認した
- 前回値と評価時刻を確認した
- 薬剤、睡眠、疲労、失語、挿管、気管切開などの条件を確認した
- 刺激なしの状態から観察した
- GCSはE・V・Mの内訳を記録した
- 評価不能成分は無理に点数化せず、理由を記録した
- 点数だけでなく具体反応を記録した
- 麻痺、発語、理解、視線、注意などの変化を確認した
- リハ前後を同じ尺度で比較した
- 急変時はスコア確定より安全確保と報告を優先した
- 再開は自己判断せず、個別指示と院内基準を確認した
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FAQ
JCSとGCSはどちらを使えばよいですか?
院内の標準、評価目的、共有先で選びます。
日常共有にJCSを使う施設でも、重い意識障害や救急・ICU、他施設連携ではGCSを併記することがあります。大切なのは、施設の記録基準に従い、点数だけでなく具体的な反応を残すことです。
JCSとGCSは換算できますか?
両者には関連がありますが、構造が異なるため完全な一対一換算ではありません。
研究用の変換方法はありますが、臨床では必要な尺度を実際に評価するのが基本です。JCSしか記録がない患者を、あとから機械的にGCSへ置き換えて判断するのは避けます。
GCSは合計点だけ記録すればよいですか?
合計点だけでなく、E・V・Mの内訳を記録します。
同じ合計点でも、開眼・言語・運動の組み合わせが違うためです。たとえば同じ13点でも、E3 V4 M6とE4 V3 M6では、変化している反応が異なります。
評価できない成分があるときはどうしますか?
無理に点数へ当てはめません。
挿管、気管切開、眼瞼腫脹、重度失語、鎮静、強い麻痺などで評価できない成分がある場合は、評価不能の理由を記録します。GCSでは、必要に応じてNT:Not Testableとして記録します。
評価不能成分がある場合は、合計点を機械的に出すよりも、E・V・Mの各成分と評価不能理由を共有することが重要です。
失語がある患者ではどう評価しますか?
失語は言語反応へ影響します。
GCSやJCSの数値だけで意識低下と決めず、非言語反応、指示理解、普段の言語所見、失語の程度を併記します。理解しているが発語できないのか、理解そのものが難しいのかを分けて観察します。
リハ後にJCSが悪化したらどうしますか?
まず活動を止め、安全を確保します。
そのうえで、具体的な反応、局所神経所見、バイタル、直前の活動内容、開始前後の変化を確認し、院内手順に沿って報告します。再開は点数だけで決めず、個別指示と施設基準を優先します。
家族もJCSやGCSを覚えた方がよいですか?
点数を覚える必要はありません。
ご家族にとって大切なのは、普段と比べて反応が鈍い、言葉が出にくい、片側の手足が動きにくい、急な頭痛や嘔吐がある、けいれんがある、といった変化に気づくことです。そのような変化があれば、点数をつけようとせず、医療者や救急窓口へ連絡してください。
まとめ
JCSとGCSは、どちらが優れているかではなく、目的・院内運用・共有先で使い分けます。
JCSは短時間の日常共有に使いやすい一方、数字だけでは具体的な反応が伝わりません。呼名への反応、開眼の持続、見当識、返答の遅れ、発語、左右差などを併記します。
GCSはE・V・Mの内訳を記録し、合計点だけにしないことが重要です。挿管、気管切開、眼瞼腫脹、鎮静、強い失語や麻痺などで評価できない成分がある場合は、無理に点数化せず、評価不能理由を記録します。
脳卒中では、JCS/GCSだけでなく、麻痺、失語、構音障害、半側空間無視、視線、瞳孔、バイタル、普段との差も確認します。
リハ前後は評価条件をそろえ、点数、具体所見、負荷内容を比較します。急な悪化では、スコア確定より安全確保と報告を優先し、自己判断でリハを再開しないことが大切です。
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参考文献
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引用・参考文献

福井 圀彦 医歯薬出版 2009-09-01
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楽天kobo
Yutaka Matsuoka, Yuko Miyake, Hiroshi Arakaki, Kuniaki Tanaka, Toshinari Saeki, Shigeto Yamawaki: Clinical utility and validation of the Japanese version of Memorial Delirium Assessment Scale in a psychogeriatric inpatient setting. Gen Hosp Psychiatry 23:36-40, 2001
加藤 佑佳ら「高齢者ケアにおけるアセスメント:精神的側面」高齢者のケアと行動科学特別号 2011 第16 巻 PP. 16–30
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意識障害の定義と分類、症状について:混乱しやすい概念を整理する
意識障害の定義

意識障害は、意識の清明度が失われている状態です。
意識清明とは、以下のことを指します。
外界の事物を正確に認識し、周囲に適切な注意を払い、外界からの刺激や情報を的確に受け取って理解し、目的にかなった思考に基づき、適切に行動し対処することのできる平常の覚醒状態をいう。
脳卒中最前線 第3版 P215
覚醒状態で意識内容が明瞭、現状の認識がしっかりとできており、思考や判断が保たれ、合目的的な行動が可能で、それを記憶にとどめておける状態をいいます。
意識清明状態の客観的指標は、見当識が良好なこと、課題に対しての熟考が可能なこと、記銘力が良好なことと、追想が可能なことなどがあります。
意識障害の分類と症状):意識混濁

①軽度意識混濁:
明識困難状態:意識混濁で最も軽度な状態。注意散漫で持続力低下、言い間違いや軽い了解の悪さ、軽度記憶力低下などの注意深い観察で把握できるもの。
昏蒙:観察で容易にわかるもの。放置するとベッドで臥床し、傾眠傾向、時に尿失禁あり。
軽度だと自己にて尿意を伝えたり、排泄可能。呼びかけへの反応やや低下あり、少し複雑な理解困難。
思考内容の乏しさが目立ち、自発話少なく、会話は長続きしない。

②中等度意識混濁
昏眠、嗜眠:睡眠様状態を呈し、知覚・精神機能が全般的に低下。呼名や体の揺さぶり、強い痛み刺激を加えるときのみ開眼、外界認知不十分。
簡単な問いへの反応(うなずきなど)あり、単語の発話あり。
見当識障害高度にあり、人物誤認あり。食事の咀嚼や嚥下不可、大小便失禁あり。
③重度意識障害
昏睡:精神活動と反応の欠如。褥瘡が生じやすい。
意識障害の分類と症状:意識変容

意識変容とは以下のような状態を指します。
一般的には、意識混濁が背景にあって同時に病的な精神運動興奮を伴った状態で、注意の分断と持続性の喪失、知覚の混乱や知覚と表象の混同、夢幻状態、思考散乱、感情不安定などを示す。
脳卒中最前線 第3版 P216
意識変容の代表はせん妄となります。
軽度ないしは中等度意識混濁の上に、活発な精神内界の活動が加わり、無秩序な観念、錯覚や幻覚(錯視や幻視が多い)、妄想が現れ、思考散乱(支離滅裂)を示し、不安や苦悶などの激しい情動の動き、まとまりのない行動を示す。
この状態は夜間に起こりやすいので夜間せん妄と呼ぶが、一日中続くこともある。
脳卒中最前線 第3版 P216
老年期の意識障害はせん妄として現れる傾向があります。
脳出血後の昏睡からの回復過程や、脳梗塞の発作時には、せん妄が出現することがあり、特徴としては、
①激しい精神運動興奮を示すことが少ない
②日中はうとうと、ぼんやりと過ごすことが多く、午後は清明な意識状態で、夜間になるとつじつまの合わない事を言ったりする
③症状の動揺は少ない
などがあり、認知症と間違われることもあります。
さらに詳しい解説を動画で確認
チャンネル登録よろしくお願いします⇨https://bit.ly/37QHaWc
意識障害の発生メカニズムとJCSによる評価、結果の解釈
意識障害の定義

意識障害は、意識混濁(外界を認知する覚醒度の変化)と意識変容 (刺激の受容と反応が狭く限局し、歪曲されるような変化)の両者が混在された形で生じる。
よくわかる失語症と高次脳機能障害 P421
意識混濁は、意識水準の変化ともいわれ、外からの刺激に対する反応の低下や、呼吸器・循環器 ・自律神経系の変化を伴うことが多くあります。
意識変容は、意識的経験の変化ともいわれ、対象者の精神状態や言動の不安定さ・多動・自律神経系の変化等がみられます。
どちらも脳の器質的異常にとともにみられることが多く、身体的・内分泌的異常や精神疾患が原因となることもあります。
どちらにしても脳に機能低下があることに変わりはなく、可逆的変化が起こりうるため、認知症などの非可逆的疾患との鑑別が必要になります。

意識混濁、意識変容を表す言葉は以下のようなものがあります。
| 「意識混濁」 | 「意識変容」 |
| 明識困難状態 昏蒙状態 傾眠 昏眠 昏睡 | せん妄 もうろう状態 夢幻状態 アメンチア 酩酊 |
意識障害の発生メカニズム

luriaは脳機能の基本的単位として、注意・覚醒に関わるものとして「トーヌスと覚醒を調整する単位系」があるとしています。
大脳皮質の賦活化の調整には、脳幹部にある脳幹網様体賦活系の働きが関与しており、意識・注意覚醒・睡眠と覚醒リズムの調整に関わります。
覚醒系に関する系は、2つのアミン上行系(上行性網様体賦活系)があるとされています。
ノルエピネフリン系では青斑核や周囲の外側被蓋系などを含むニューロン群から発生し、間脳・終脳に広く投射します。
セロトニン系は、脳幹中心線近くの縫線核に沿い、セロトニンを含むニューロン群から発生し前方は基底核・大脳皮質に投射します。

下行性網様体という下向きの系も存在し、 注意機構に関わっています。
前頭葉の遂行機能が働くときには、前頭葉連合野から、視床と脳幹部諸核に向かう下行性繊維が存在して、視床や脳幹網様体の機能を調整している。
また視床下部も辺縁皮質(古皮質、旧皮質)に作用して大脳皮質の活動を調整しているとされている(視床下部調整系)。
よくわかる失語症と高次脳機能障害 P423
上行性・下行性などの系が大脳皮質の賦活化の調整をし、同時に皮質からも各系に調整的影響を与えるるような二重の調整機構となっています。
そのため、二重構造の中の組織(網様体賦活系と視床・視床下部・それらに繊維連絡のある皮質・皮質下)の異常により意識障害が生じてきます。
意識障害の定量的評価(JCS:Japan Coma Scale)と結果の解釈

覚醒度の障害の評価としてよく用いられるものにJapan Coma Scaleがあります。3-3-9度分類という呼称で作成されています。
| Ⅰ 刺激しなくても覚醒している状態(―桁で表現) 1 大体意識清明だが、今ひとつはっきりbない 2 見当識障害がある 3 自分の名前、生年月日がいえない |
| Ⅱ 刺激すると覚醒する状態−刺激をやめると眠り込む−(2桁で表現) 10普通の呼びかけで容易に開眼する |
| Ⅲ 刺激しても覚醒しない状態(3桁で表現) 100痛み刺激に対し、はらいのけるような動作をする 200痛み刺激で手足を動かしたり、顔をしかめる 300痛み刺激に反応しない |
注 R :不穏、I: 失禁、A :無動性無言、 失外套症候群

軽度意識障害の場合、JCSでⅠ(1桁)の刺激しないでも覚醒している状態のことが多くあります。
軽度意識障害は発見されにくいこともあり、開眼して普通に話していても、その内容に見当識障害が現れていることがあります。
頭部外傷や脳血管障害の急性期・亜急性期に、健忘に伴う自発性の作話がみられることもあります。
こちらの記事も御覧ください。
実習に役立つ!意識障害の評価(JCSとGCSを中心に)と注意点
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高次脳機能障害における意識と軽度意識障害の評価法
軽度意識障害

軽度意識障害は、外見上はしっかりしているが、話をする中で返答が的外れであったり、反応時間の遅延がみられることがあります。
JCSでみつからない、または一桁の場合、軽度意識障害とすることがあります。
軽度意識障害の評価方法

軽度意識障害の定式的評価方法として以下の知的作業能力から評価する方法があります。
①1桁の数字カード5枚を音読(正常人平均所要時間9秒)
②1桁の数字カード5枚を数の大きさの順に並べる(13秒)
③2桁の数字カード10枚を数の大きさの順に並べる(30秒)
④10 枚の文字カードをアルファベット順に並べる(40秒)
⑤3桁の数字カード15枚を数の大きさの順に並べる
⑥板に固定した6個の日用物品の名称をいう(16秒)
⑦同じ6個の物品を想起させる(5個で正常)
⑧それぞれ5枚ずつ同色の、5種類の色カード25枚を、色の同色の凹みにはめ込む(80秒)
⑨先の6個の物品を再度想起する(5個で正常)
⑩Binet-SimonまたはHAWIE (WAISのドイツ版)の知能検査にある6枚の版画の欠損部を指摘させる(各3-4秒)
⑪この6枚の絵画を想起させる(5 個で正常)
⑫数字の直後復唱
⑬数字の想起復唱

物品が用意しにくい場合もありますが、参考にできる項目はあると思われます。
検査項目には数の概念、並び替え、物品呼称など言語機能・認知機能の把握 、カードはめ込みなど動作性能力の把握、記銘・想起など記憶の把握などがあります
意識障害時では言語、認知、動作性能力、記憶低下があり、それらを支える注意機能低下の存在も考えられます。
軽度意識障害時に行う注意検査

前途したように、注意と意識障害は関連性があります。
ここでは、軽度意識障害時の注意検査を挙げていきます。
「覚醒水準vigilance」の検査:
等速打叩課題。
被験者に5 分間持続して1 回/秒の打叩させます。10 秒ごとで1ブロックとし、計30ブロックの平均打叩数を計算します。
脳血管障害群(特に右脳損傷群)が有意に成績低下がみられる傾向があるとの報告があります。
「注意の選択性」の検査:
Auditory detection test:聴覚性検出課題。
覚醒水準も同時に検査されます。
「注意の転導性」の検査:
Cancellation and Detection Test(抹消・検出課題)。
評価は、速度・誤反応、正反応の欠落で行います。前頭葉損傷群では正答数の有意な低下があると報告があります。
「注意の容量」の検査:
数唱(順唱、逆唱)、paced auditory serial addition tesi (PASAT)、trail making testなど。
数唱課題は順唱6 桁、逆唱5 桁が正常。逆唱は順唱よりも、鋭敏に脳損傷を反映するといわれています。
情報処理能力の評価に鋭敏で社会復帰の参考になるとされています。
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せん妄の重症度評価:MDASの概要と実施方法、結果の解釈
せん妄について


せん妄は急性期だけでなく回復期、維持期と様々な病期でみられ、また在宅や施設でもみられます。
せん妄があると転倒のリスクが高まったり、点滴の抜管があったりと、安全面での問題が生じやすくなるため、早期発見、早期治療を行っていくことが求められます。
せん妄の症状と観察の視点について、
せん妄は,意識の清明度が変化し,不安や幻視などの精神症状を伴う状態である。
意識の微妙な変化を捉えるには,継続的な観察が必要で,勤務帯毎の違いが重要な情報になる。
また,ぼんやりしていたり,眠そうにしていたりするといった変化以外に,普段と違ってイライラした様子がみられるなどの感情の変化や,急に排泄を失敗するよ うになるなど日常生活機能の低下としても観察される。
せん妄は入所時など環境が変化した時に生じやすいことから,入所時に普段の様子について十分情報収集しておく必要がある。
錯視や幻視などの知覚の異常は感覚刺激が少なくなり,意識レベルも低下する夜間に多くみられる。
知覚の異常に伴って妄想がみられることもあるが,断片的で被害的な色彩を伴うものが多い。
高齢者ケアにおけるアセスメント:精神的側面
とあります。
せん妄の治療には薬物療法が行われますが、その効果判定は夜間の行動を元に判断するため、夜間帯の様子を詳細にチェックしておくことが必要です。
薬剤の投与時間と、その後の行動の変化を把握していきます。
MDASの概要

MDASは10項目(意識障害、見当識障害、短期記憶障害、順唱と逆唱の障害、注意の集中および転換の障害、思考障害、知覚障害、妄想、精神運動抑制・精神運動興奮、睡眠覚醒リズムの障害)からなり、せん妄の重症度評価を目的として開発されました。
各項目を0:なし,1:軽度,2:中等度,3:重度で評価していきます。
日本語版も作成されており、信頼性と妥当性があり、せん妄と非せん妄を判別する上で有用だとされています。
またMDASは経時的変化を捉えることにも利用できます。
評価方法

対象者への面接または観察により、10項目について評価していきます。
各項目には設問内容、評価尺度の詳細が書かれてあるため、それをもとに採点していきます。
結果の解釈
各項目の得点を合計し、30点満点中10 点がカットオフ値となっており、せん妄と非せん妄を分けることが可能です。
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