片側のみのTHA術後のADL指導は大丈夫だけど、両側になるとどのように指導すればよいのでしょう。今回、両側THAにおける日常生活動作(ADL)指導と注意点についてまとめていきます。
目次
スポンサードサーチ
スポンサードサーチ
THAでは、アプローチ方向により脱臼肢位が異なります。
THAにおいて、脱臼の発生率は約5%と言われています。
脱臼の多くは早期に発生し、術後3ヶ月(特に1ヶ月以内)が危ないため、注意が必要です。
よって、術前から脱臼肢位の指導を徹底し、術後も何気ない動作により脱臼肢位をとらないようにしっかりと指導をしていく必要があります。
一度脱臼してしまうと、その後何回も脱臼してしまった方を見たこともあります。そうならないように、リハビリ場面だけでなく、病棟とも連携して脱臼肢位を回避できるようにしていく必要があります。
後方アプローチでは、「屈曲・内転・内旋」、
前方(前側方)アプローチでは、「伸展・外旋・内転」に注意します。
両アプローチに共通して、深屈曲も行ってはいけません。
以下の姿勢は、術後1ヶ月はどの姿勢を取る際も危険が予測されます。1−3ヶ月は要注意となり、3ヶ月以降は制限なしとされています。
正座、和式トイレ、爪切り、蹲踞、あぐら、女座り。
しかしながら、担当医の指示を仰ぐことが必要です。
スポンサードサーチ
両側THAにおいて注意する点は、片側のTHAと変わらない点が多くあります。
しかし、両側股関節が脱臼するリスクを抱えているため、何気なくとった姿勢が脱臼肢位となる可能性は高くなってしまいます。
*写真は片側だけにしか印をつけていませんが、両側についていると考えてください。
床への座りこみや、床からの立ち上がりに関しては、前途したように術後3ヶ月まではとらないようにすることが理想だといえます。
下図のように、高い位置で支持できるものがあれば、股関節は深屈曲位にはならずに行うことは可能です。
その後正座やあぐらは可能ですが、正座でお辞儀、横座り、とんび座りは禁忌肢位となります。
しかし、低い位置に姿勢をとることは、股関節の深屈曲を誘導しやすく、医師の許可が出るまでは避ける方が無難だと考えます。
長座位になる場合、股関節をねじらないようにしながら体を回転させ、お尻をつきます。
自動昇降機能のついている椅子であれば、床への座りこみや床からの立ち上がりを行うことは可能です。
なお、要介護者であれば福祉用具のレンタルが行えます。
寝返り動作では、股関節が内側にねじれないように枕を足の間に挟むことで予防します。
下肢が置いていかれてしまうと、股関節がねじれる動きとなってしまいます。
起き上がり動作では、腹筋の力が強ければ真っ直ぐ上体を起こすように起き上がります。
この時も、股関節がねじれてしまうと脱臼の危険性が高くなってしまいます。
前側方アプローチでは、腹臥位にて体をひねらないようにすることが大切です。
ベッドに寝に行く際に、台の上に膝をつけて行おうとしてはいけません。
座位では、膝の位置が股関節よりも下にあるようにします。
低い椅子では、股関節深屈曲となり脱臼肢位となります。
座位では患側股関節が内側にねじれてはいけません。
「膝を離す」「踵をつけて足首を広げる(外に向ける)」と声かけをすると意識しやすくなります。
両側THAでは足を組む動作は行ってはいけません。
靴着脱の際は、股関節が深屈曲位や内側にねじれる動きで行ってはいけません。
座位であれば、股関節は外に開くようにしながら靴べらを使用します。
また、足を外に開いてベッドや台などに乗せることでも動作可能です。
できるだけ着脱しやすい靴を選ぶのがポイントです。
靴下着脱の際は、股関節が深い屈曲や内側にねじれる動きで行ってはいけません。
長座位で動作を行うと股関節は深屈曲となります。
ソックスエイドやリーチャー、マジックハンドを使用します。
足を外に開いてベッドや台などに乗せることでも動作可能です。
爪切りでは、長座位で行うと脱臼肢位となります。
座位で足を外に開いて台に足を乗せるようにして行います。
無理をしてはいけないので、爪切りは介助してもらうのも一つの考え方です。
立ち上がりでは、足の位置がポイントになります。
足の位置が「足を引いた状態」や「通常(膝屈曲90°程度)」では、股関節は深屈曲とはなりません。
足の位置が「前方」にあると、股関節は深屈曲となってしまいます。
足の位置は「足を引いた状態」「通常(膝関節屈曲90°程度)」とし、股関節が深屈曲とならないようにします。
上半身だけが動いてしまうと、股関節は屈曲・内転・内旋位となるため、少しずつ回転していき、正面を向いてから座るようにします。
両側THAでは、ズボン穴に足を通す場合、紐付き洗濯バサミを用いるほうがよいと思われます。
座位から行う場合は、浴槽と同じ高さの椅子を用意します。
基本は動きやすい側から入り、動きにくい側から出ます。
立位で行う場合、浴槽のまたぎ高が高すぎると、股関節が深屈曲となってしまうため、無理せず座位で行うようにします。
浴槽内に座る際は、長座位または正座で行います。
浴槽内椅子を使用する際は、股関節の屈曲角度が大きくなりすぎないようにします。
浴槽につかる動作は、最初のうちは控えるようにし、医師の許可がでてから行いましょう。
足を洗う際は股関節が深屈曲にならないようにするために、洗体用具を用います。
入浴後に足を拭く際には、長めのタオルを用います。
物を拾うさいには、足が内に入る、股関節を深く曲げてはいけません。
片側THAでは手術側の足を後ろに引く、または膝をつくことで股関節深屈曲を防ぐことができます。
しかし、両側THAではそのような姿勢はとれないので、リーチャーやマジックハンドを使用します。
洋式トイレで行います。
腹圧を高めるときに、股関節が深屈曲とならないように注意します。
後始末は両足の間から行います。
掃除機やモップを利用します。
洗濯では洗濯かごを下に置くと股関節が深屈曲となるため、かごを置く高さに注意します。
床を拭く動作は、股関節が知らず知らずのうちに深屈曲位となることがあるため行ってはいけません。
自転車や自動車運転では、サドルや座面に座ったときの股関節の角度に注意する必要があります。